ザッカリーファミリーのアジトは直ぐに判明した。
奉行所の手の者と覚しき者達が遠巻きに、
厳重な監視下に置いているのでソレと分かった。
歴史を感じさせる、と言うよりも廃棄された建物だ。
ファミリー側も気付いているようで、一触即発の気配がした。
危ない危ない。
巻き込まれたら俺まで火傷する。
他日を期したいが、アリスが承知しない。
『邪魔する奴等は蹴散らすのみよ』と意気盛ん。
俺は誰の注意も引かぬように、周辺をそれとなく歩いた。
ついでに新しいスキル、透視を起動した。
これなら内部まで見通せるはず。
「スキルレベルが足りません」脳内モニターに残念なお知らせ。
思わず自分で、ガ~ンと呟いてしまった。
『真面目にやれよ』アリスから突っ込み。
そこで探知君をフル稼働。
アジト内の人数を把握。
人間の位置に細心の注意を払い、3D表示。
初見の建物なので内部には詳しくないが、
彼等の位置から大雑把に読み取った。
二階建て。
一階部分には十二人。
二階部分には七人。
建物の外回りにも、それらしき人間は大勢見かけたが、
何れも目付きの悪い者達ばかりなので、
奉行所側かファミリー側か見分けが付かない。
俺はアジトから遠ざかった。
『逃げるつもりなの』アリスがフードの中で叫ぶ。
『信用がないな。まあ、任せてよ』
俺は二つ向こうの辻を曲がった。
幸い人影はない。
即座に身体強化、その場でジャンプ。
それを風魔法でサポート。
傍の建物の屋根に飛び乗った。
そこからは一本調子。
慎重も躊躇もない。
勢いに任せて屋根から屋根を移動し、目的の屋根に飛び移った。
アリスに注意した。
『尋問するから無闇に殺さないこと』
探知君で確認した。
建物内部で騒ぐ者はいない。
外側も同じ。
誰にも気付かれてない。
3D表示を頼りに屋根の上を歩いた。
ボスらしき男は周辺の連中の動きで、それとなく分かった。
守られてるポジションの男は一人だけ。
ボスの部屋の上に来た。
まず屋根に闇魔法、ダークボール。
下の天井部分にもダークボール。
空いた穴から飛び降りた。
物音一つ立てずに現れた俺に室内に居た三人は唖然。
理解が追い付かないのだろう。
アリスがフードから飛び出した。
大方の目に触れぬ妖精の姿ではなく、愛着のある子猫の姿。
変身スキルだと姿が露見するのだが、隠れるつもりは更々ないらしい。
その姿でもって攻撃した。
風魔法、ウィンドボールを放って三人を気絶させた。
それでも不満なのか、ご機嫌斜めな様子。
俺は三人を鑑定した。
二人は護衛で、デスクに突っ伏しているのがボスと判明した。
「名前、ザッカリー。
種別、人間。
年齢、四十二才。
性別、雄。
住所、足利国山城地方国都住人。
職業、ザッカリーファミリーのボス。
ランク、B。
HP、140。
MP、45。
スキル、槍士☆☆、剣士☆☆、盾士☆☆」
オークのような異様にでっかい身体。
加えてランクがB。
スキルも侮れない。
正面切って戦わなくて正解だったのかも知れない。
俺はザッカリー目掛けて鍛冶スキルを発動した。
こういう使い方が適切かどうかは知らないが、まあ・・・、相手は悪党。
失敗しても問題はない。
イメージは首輪。
太くて重い鉄製の首輪。
無限に漂う魔素を集め、首輪に変換するだけ。
意外に簡単に、相手の首に傷一つ付けずに出来た。
黒光りする鉄の首輪。
取り外し可能な魔道具の奴隷の首輪等とは別物に仕上げた。
一人も起きないので練習の一環として、
ついでに護衛の二人にも首輪を付けた。
それを見ていたアリスに尋ねられた。
『鍛冶スキル持ちに頼めば簡単に外せるの・・・』
『たぶん無理かな。
術式を施した首輪なら道具だから簡単に施錠解錠できるけど、
この手の単純な首輪だと逆に難しいと思う。
外すことを前提に作ってないから、手こずるんじゃないかな』
鍛冶スキルは、そもそもが素材を揃えることから始まる。
俺のはそれを省いた規格外のスキル。
余人に一朝一夕に超えられるとは思えない。
『このまま付けて置いても構わないわよね』
『話し合いの結果次第・・・かな』
最初にザッカリーが気が付いた。
寝惚けたように起き上がり、自分が置かれた状況に悪足掻き。
首輪を外そうと必死になった。
狭い隙間に指を差し込んで藻掻く、藻掻く。
ついには俺を睨み付けた。
「何の真似だ」怒鳴った。
ボス部屋の声は外に漏れない厚い造作のようで、
廊下の護衛に動きはない。
俺は風魔法で声音を変えた。
「質問がある」
「何様のつもりだ」
「俺様か、王様」
「巫山戯るな、これを外せ。
直ぐに外せば許してやる」
アリスが攻撃した。
ウィンドカッターでザッカリーの頬を浅く削いだ。
「うっ、痛っ」
頬に手をやり、血を確認するザッカリー。
憎しみを込めた目でアリスを見遣った。
「貴様、従魔か」
ようやく存在に気付いたらしい。
俺とアリスを交互に見遣る。
従魔、と言われたアリスが怒った。
もう一発、ウィンドカッターを放とうとした。
それを俺は慌てて止めた。
『これ以上、傷物にしたら答えが得られない』
俺を睨むアリス。
『私は眷属よ。従魔なんかと一緒にされたら怒りたくもなるでしょう』
俺達が答えないのでザッカリーが顔を強張らせた。
「お前達は何者なんだ」
「見たまんまだ」
護衛の一人がモゾモゾと動き出した。
途端、アリスが無造作にウィンドカッターを放った。
立ち上がろうとする相手の額を縦に切り裂いた。
「あー」
たぶん、致命傷ではないと思う。
髪と血が派手に飛び散り、男は膝から崩れ落ちた。
大量に流れ出る血。
次いで肉片らしき物も。
もしかして頭部の奥にまで届いたのか。
ザッカリーは状況をしっかり理解したらしい。
「これは何のつもりだ」
「質問がある。
正直に答えれば見逃す。
そこは約束しよう」
ザッカリーは少し考えた。
「奉行所の者には見えないが・・・」
「奉行所とは別口だ。
さあて、質問はいいかね」
「内容による。
知らないことは答えられない」
「心配するな。
お前が知っていることしか聞かない」
ザッカリーならアリスの一件からして、妖精の売買に絡んでいる筈だ。
奉行所の手の者と覚しき者達が遠巻きに、
厳重な監視下に置いているのでソレと分かった。
歴史を感じさせる、と言うよりも廃棄された建物だ。
ファミリー側も気付いているようで、一触即発の気配がした。
危ない危ない。
巻き込まれたら俺まで火傷する。
他日を期したいが、アリスが承知しない。
『邪魔する奴等は蹴散らすのみよ』と意気盛ん。
俺は誰の注意も引かぬように、周辺をそれとなく歩いた。
ついでに新しいスキル、透視を起動した。
これなら内部まで見通せるはず。
「スキルレベルが足りません」脳内モニターに残念なお知らせ。
思わず自分で、ガ~ンと呟いてしまった。
『真面目にやれよ』アリスから突っ込み。
そこで探知君をフル稼働。
アジト内の人数を把握。
人間の位置に細心の注意を払い、3D表示。
初見の建物なので内部には詳しくないが、
彼等の位置から大雑把に読み取った。
二階建て。
一階部分には十二人。
二階部分には七人。
建物の外回りにも、それらしき人間は大勢見かけたが、
何れも目付きの悪い者達ばかりなので、
奉行所側かファミリー側か見分けが付かない。
俺はアジトから遠ざかった。
『逃げるつもりなの』アリスがフードの中で叫ぶ。
『信用がないな。まあ、任せてよ』
俺は二つ向こうの辻を曲がった。
幸い人影はない。
即座に身体強化、その場でジャンプ。
それを風魔法でサポート。
傍の建物の屋根に飛び乗った。
そこからは一本調子。
慎重も躊躇もない。
勢いに任せて屋根から屋根を移動し、目的の屋根に飛び移った。
アリスに注意した。
『尋問するから無闇に殺さないこと』
探知君で確認した。
建物内部で騒ぐ者はいない。
外側も同じ。
誰にも気付かれてない。
3D表示を頼りに屋根の上を歩いた。
ボスらしき男は周辺の連中の動きで、それとなく分かった。
守られてるポジションの男は一人だけ。
ボスの部屋の上に来た。
まず屋根に闇魔法、ダークボール。
下の天井部分にもダークボール。
空いた穴から飛び降りた。
物音一つ立てずに現れた俺に室内に居た三人は唖然。
理解が追い付かないのだろう。
アリスがフードから飛び出した。
大方の目に触れぬ妖精の姿ではなく、愛着のある子猫の姿。
変身スキルだと姿が露見するのだが、隠れるつもりは更々ないらしい。
その姿でもって攻撃した。
風魔法、ウィンドボールを放って三人を気絶させた。
それでも不満なのか、ご機嫌斜めな様子。
俺は三人を鑑定した。
二人は護衛で、デスクに突っ伏しているのがボスと判明した。
「名前、ザッカリー。
種別、人間。
年齢、四十二才。
性別、雄。
住所、足利国山城地方国都住人。
職業、ザッカリーファミリーのボス。
ランク、B。
HP、140。
MP、45。
スキル、槍士☆☆、剣士☆☆、盾士☆☆」
オークのような異様にでっかい身体。
加えてランクがB。
スキルも侮れない。
正面切って戦わなくて正解だったのかも知れない。
俺はザッカリー目掛けて鍛冶スキルを発動した。
こういう使い方が適切かどうかは知らないが、まあ・・・、相手は悪党。
失敗しても問題はない。
イメージは首輪。
太くて重い鉄製の首輪。
無限に漂う魔素を集め、首輪に変換するだけ。
意外に簡単に、相手の首に傷一つ付けずに出来た。
黒光りする鉄の首輪。
取り外し可能な魔道具の奴隷の首輪等とは別物に仕上げた。
一人も起きないので練習の一環として、
ついでに護衛の二人にも首輪を付けた。
それを見ていたアリスに尋ねられた。
『鍛冶スキル持ちに頼めば簡単に外せるの・・・』
『たぶん無理かな。
術式を施した首輪なら道具だから簡単に施錠解錠できるけど、
この手の単純な首輪だと逆に難しいと思う。
外すことを前提に作ってないから、手こずるんじゃないかな』
鍛冶スキルは、そもそもが素材を揃えることから始まる。
俺のはそれを省いた規格外のスキル。
余人に一朝一夕に超えられるとは思えない。
『このまま付けて置いても構わないわよね』
『話し合いの結果次第・・・かな』
最初にザッカリーが気が付いた。
寝惚けたように起き上がり、自分が置かれた状況に悪足掻き。
首輪を外そうと必死になった。
狭い隙間に指を差し込んで藻掻く、藻掻く。
ついには俺を睨み付けた。
「何の真似だ」怒鳴った。
ボス部屋の声は外に漏れない厚い造作のようで、
廊下の護衛に動きはない。
俺は風魔法で声音を変えた。
「質問がある」
「何様のつもりだ」
「俺様か、王様」
「巫山戯るな、これを外せ。
直ぐに外せば許してやる」
アリスが攻撃した。
ウィンドカッターでザッカリーの頬を浅く削いだ。
「うっ、痛っ」
頬に手をやり、血を確認するザッカリー。
憎しみを込めた目でアリスを見遣った。
「貴様、従魔か」
ようやく存在に気付いたらしい。
俺とアリスを交互に見遣る。
従魔、と言われたアリスが怒った。
もう一発、ウィンドカッターを放とうとした。
それを俺は慌てて止めた。
『これ以上、傷物にしたら答えが得られない』
俺を睨むアリス。
『私は眷属よ。従魔なんかと一緒にされたら怒りたくもなるでしょう』
俺達が答えないのでザッカリーが顔を強張らせた。
「お前達は何者なんだ」
「見たまんまだ」
護衛の一人がモゾモゾと動き出した。
途端、アリスが無造作にウィンドカッターを放った。
立ち上がろうとする相手の額を縦に切り裂いた。
「あー」
たぶん、致命傷ではないと思う。
髪と血が派手に飛び散り、男は膝から崩れ落ちた。
大量に流れ出る血。
次いで肉片らしき物も。
もしかして頭部の奥にまで届いたのか。
ザッカリーは状況をしっかり理解したらしい。
「これは何のつもりだ」
「質問がある。
正直に答えれば見逃す。
そこは約束しよう」
ザッカリーは少し考えた。
「奉行所の者には見えないが・・・」
「奉行所とは別口だ。
さあて、質問はいいかね」
「内容による。
知らないことは答えられない」
「心配するな。
お前が知っていることしか聞かない」
ザッカリーならアリスの一件からして、妖精の売買に絡んでいる筈だ。