金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(アリス)87

2018-12-30 08:28:29 | Weblog
 大歓声が馬車の中に届かない分けがない。
思わずブルーノ足利は身震いした。
そわそわと挙動不審になった。
隣に腰掛けていたベティが気付いて、やくわりと窘めた。
「いけませんよ」
 ブルーノは微笑む。
「何が・・・、どうして叱られるのかな」
「窓を開けてはいけませんよ」軽く睨み付けた。
 馭者席から声がかけられた。
「スタートします」
 走り出しこそが馭者の腕の見せ所。
無様なダッシュではなく、ゆっくりと動き始めた。
徐々に速度を上げて行く。
ただし全力疾走ではない。
車列の左右を伴走している近衛兵の足を意識した速度に留めていた。
 ブルーノはベティを一瞥するや、
おもむろに立ち上がって窓を開けた。
沿道の観衆と視線が絡み合う。
 事態に気付いた観衆が身を震わせ、悲鳴に似た歓声を上げた。
彼等彼女等が心底から国王を敬愛している、と表情から読み取れた。
小さな子供を抱え上げて対面させる者。
両膝を地面につけて何やら祈りを捧げる者。
歓喜のあまり飛び上がって奇声を上げる者。
 ブルーノはにこやかな笑顔を向け、鷹揚に手を上げた。
隣のベティは苦笑いでブルーノを振り返るが、何も言わない。
言わないどころか、彼女も窓を開けた。
観衆に向かって、とびきりの笑顔を向けた。
 ブルーノは観衆を見ながら、ベティに尋ねた。
「よかったのか」
「夫に従うのが妻の役目でしょう」嬉しそうな声。
「それにしては楽しそうだが」
「女は生まれながらの嘘つきなんですのよ」
「そっ、・・・そうか」
「そうなんですのよ」窓から半身を乗り出し、両手を振った。
 観衆全てが知る事態となった。
熱気が一段と増した。大喝采して大熱狂。
これでは園遊会の前に喉が嗄れてしまいかもしれない。
 警護の者達も事態に気付いた。
気付いたが手遅れ。
こうなれば国王も王妃も止められない。
慌てて態勢を見直し、国王の馬車周辺の警護を厚くした。
 王宮本殿に着いた。
広々とした表玄関前に車列が並ぶ。
後列の馬車から侍従や秘書役の面々が飛び降り、
一両目の前に殺到した。
不満げな顔の近衛指揮官もいるが、それはそれとして、
部下達には万全の警護態勢をとらせた。
 国王夫妻が馬車から下りて来た。
観衆の熱気にあてられたままなので、機嫌はすこぶる良い。
だからかブルーノは指揮官に軽く手を上げて謝意を現すと、
ベティと腕を組んで、踊るようにして玄関口に消えた。
慌てて侍従と秘書役の面々が後を追う。
 王宮宮殿には表と奥があり、
表は国王夫妻の執務室を中心とした公用の空間、
奥は国王夫妻一家の私的生活の空間、と分けられていた。
奥は後宮ではない。
側室達が住まう後宮とは隣接しているが、明確に切り離されていた。
 奥に戻った二人を一粒種がメイド達に連れられて出迎えてくれた。
「おかえり、なしゃい、ましぇ」たどたどしい。
愛娘、イヴ、三才だ。
 ブルーノは思わずイヴを抱きかかえた。
頬擦りすると、キャツキャツと笑う。
 横からベティが手を伸ばしてイヴを奪い取る。
「アナタ、早く着替えませんと」
 引見の次は園遊会。
今日も朝から公務ラッシュ。
毎度の事ではあるが、その度に着替えを求められた。
国王主催の園遊会にも関わらず、多忙な国王に配慮、
国王代理として公爵の筆頭にある者が開会を宣言し、
招待客にも対応してくれるので、
国王は途中から出席して顔を見せるだけで良かった。
 貴族の最上位に位置する公爵は、
王の子のみに一代限りで授けられる爵位。
兄弟の誰かが王に即位すると、男女の区別なく授けられた。
ただし、規定があった。
俸禄は与えるが領地は持たない。
王都に屋敷を与えるが家臣は必要最低限。
二代目からは臣籍降下し、領地を与えて子爵家とする。
以上の取り決めが守られていた。
現在の筆頭は前王の三女、口喧しいのでブルーノは苦手にしていた。
だからといって欠席は出来ない。
 並んで立つ夫妻を侍女達が取り囲み、着替えを行っていた。
まるで着せ替え人形状態。
「あれ持って来て」
「こちらが良いんじゃない」侍女達が姦しい。
 それでも二人は嫌な顔一つしない。
自分達で選ぶより楽なので任せきっていた。
 ブルーノがベテイに問う。
「引見で面白い者はいたか」
 謁見を許されたのは美濃は尾張の者共だ。
「二人だけ」
「ほう、二人か」
「アナタ様は」
「こちらも二人だ。
たぶん、同じ者だろう」
 見方が違う。
ブルーノは勘、ベティはスキルの鑑定。
王宮区画での魔法の使用は禁止されているが例外も存在した。
近衛や国軍の文武官の魔法使いであった。
だからといって日常公然とは使用しない。
周囲の警戒を避けるように内密に使用していた。
ベティは例外の別口。
鑑定スキルそのものからして秘匿されていた。
 そのベティが二人の名前とステータスを告げた。
何れも今日、陞爵したバートとレオンだ。
「名前、バート斉藤。
種別、人間。
年齢、六十五才。
性別、雄。
住所、足利国美濃地方領都住人。
職業、美濃地方の寄り親、侯爵、侯爵領地所有。
ランク、C。
HP、125。
MP、50。
スキル、槍士☆☆☆、火の魔法☆」
「名前、レオン織田。
種別、人間。
年齢、二十七才。
性別、雄。
住所、足利国尾張地方犬山村住人。
職業、尾張地方の寄子、子爵、子爵領地所有。
ランク、C。
HP、100。
MP、125。
スキル、土の魔法☆☆☆、剣士☆」
ユニークスキル、楽市楽座☆☆」
 二人の名前にブルーノは満足げに頷いた。
「やはりあの二人か。
それにしてもレオン子爵は土の魔法☆三つか、驚いた。
出来る奴だな」
「それもそうですが、ユニークスキルが気になります。
意味は分かりませんが、楽市楽座☆二つには何かあるのでしょうね」
「犬山村が町規模に広がっている、とは秘書役の一人が調べてきた。領地経営に関連しているのではないか」
 周りには着替えを手伝っている侍女達の耳があるのだが、
二人は全く気にしない。
ベティが言う。
「領地経営ですか・・・、良いことですね。
バード斉藤侯爵にも驚かされました。
あの歳で矍鑠としているのですからね」
「年齢から評定衆は無理だと思っていたが、一考の余地ありだな」
 ベティがニヤリと笑う。
「あちら様の意向を汲んで嫡男を男爵にしたんですもの。
こちらに呼び寄せて使い潰しませんか」




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昨日今日明日あさって。(アリス)86

2018-12-24 07:18:26 | Weblog
 王宮区画には庭園や公園が多く、
建物と建物の隙間に造られた物まで含めると、かなりの数に上った。
火災対策の意味合いで、延焼を防ぐ為に造られている面もあり、
それを無駄と指摘する者はいない。
 最大の庭園は園遊会専用に造られていた。
そこには世界中から取り寄せた草木が植栽されていた。
気候の関係で枯れてしまった物もあるが、見て回る価値はあった。
その一画に謁見場が建てられていた。
 一見すると、それはただの岩山にしか見えない。
周辺の官庁の建物群が壮麗なのに対し無骨であったからだ。
切り出した石材を磨き上げることもせず、
適当に積み上げただけではないか、
大方の者はそんな感想を漏らした。
そんななか外観を、伏したドラゴン、と喩えた者がいた。
実際、迫り出した玄関屋根がドラゴンが大きく開けた口の上顎。
それを下から太い支える柱は牙。
屋根の下の長い表通路は下顎、と見えなくもなかった。
 正面の無骨な扉を開けると意外や意外、内部は全くの別世界。
石材は天井まで完璧に磨き上げられ、
分厚い濃紺の絨毯が通路一杯に敷き詰められていた。
だけでなく、随所で魔道具の照明が煌々と輝いていた。
 通路を進んで次の重厚そうな扉を開けると、
そこは広大なホールになっていた。
白と赤の世界。
天井と壁面は磨き上げられて白一色、
床に敷き詰められているのは真っ赤な絨毯。
最奥の階段を上がると、二階ほどの高さの、
まるで舞台のような広さの壇上に、王座が据えられていた。
 下を睥睨する位置の王座にはブルーノ足利、
その左の席にはベティ王妃がいた。
侍従と秘書役の面々を後ろに従えて二人は引見を行った。
魔物の大移動を阻止した美濃や尾張の者達を招き寄せて褒章した。
それに立ち会っていたのはホールの左右に居並ぶ文武百官と、
その伴侶、ないしは許婚か子供達。
非番の者達を集めただけであるが、同伴一人を許していたので、
数の圧力が国王の威圧と相まって引見を華々しい物に仕上げていた。
 階段下からボルビン佐々木侯爵がブルーノを見上げた。
ボルビンには司会進行役を任せていた。
表向きの理由は、声の通りが良いこと。
その彼は高齢にも関わらず、視線でも威圧を利かせ、
引見をスムーズに進めてくれた。
お陰で短時間で終えることが出来た。
満足げな表情で頷いて応えた。
ボルビンも軽く頷き返し、ホールを振り返り、全体を見回して告げた。
「本日は以上である。
国王陛下がご退席される」
 声がホール全体に響き渡ると全員が一斉に国王の方に正対し、
片膝ついて頭を垂れた。
応えてブルーノは立ち上がり、ベティに手を貸し、
二人仲良く壇上の最前に進み出た。
「本日は大義であった。
この後の園遊会を思い切り楽しんでくれ」
 ブルーノは取り巻きの者達を従え、壇上を奥に向かった。
そこには両開きの扉があり、
左右に礼服姿の近衛士官二人が立っていた。
ブルーノの指示で扉が開けられた。
礼服姿の近衛兵の一隊が国王一行を出迎えた。
 広い通路の先には優雅そうな手すり付きの階段があり、
下は馬車寄せになっていて、
ここでも大勢の関係者が一行を待ち構えていた。
 ブルーノは随員達を従えて階段を下りている途中、
下で待ち構えている近衛の一人が目に留まった。
肩章は中佐。
顔に見覚えはあるが名前までは思い出せない。
記憶に間違いがなければ、ここにいる役職ではなかった筈だ。
下りたブルーノの前にその中佐が片膝つき、口を開いた。
「お待ちしておりました」渋い声。
 その声で現在の役目を思い出した。
「バイロン神崎子爵の取り調べをしているのではなかったか」
 エリオス佐藤子爵に斬りかかったバイロンの取り調べを担当していた。
「早めに報告せよ、とのご指示でしたので、ここにまかり越しました」
「だったな。どうなった、事情が分かったのか」
 中佐は周囲の耳を気にした。
「立ち話では少し拙いのではないですか」
「気にするな。
みんな身内のような者達ばかりじゃないか」
 隣のベティも同意した。
「そうです。
それに皆も多少は承知しているので、気になっている筈です。
勿論、私もです。聞かせて下さいな」
 王宮区画内では滅多にない刃物沙汰であった。
今は箝口令が行き届いて、貴族社会には全く漏れていないが、
明日は分からない。
 深く頷いて中佐が答えた。
「あの者は変です。
気が触れての刃物沙汰自体は珍しくありません。
ですが、大抵の者は拘束されると正気に戻り、しきりに後悔します。
ところがバイロン神崎子爵は時間が経過しても、
態度が一向に変わらないのです。
口も目も据わったまま。
なに一つ申しません。
飯はおろか、水さえも口にしません。
ただ、宙を睨んでいるだけです」
「開き直っている、とその方は思っているのか」
「判断しかねます。
・・・。
あの者が口を開かないなら、周辺を調べてみるしか有りません。
その許可を頂けないでしょうか」
「分かった。
秘書の者達にも調べさせているが、手は多いほど良いだろう。
手空きの近衛を使い、思う存分調べてみよ。
関係者、関係先、全ての取り調べを許す。
身分は無視しても構わない。取り調べが最優先だ。
命令書は即刻にも届けさせよう。
ただし急げよ。期日は明後日の朝までだ。
明後日午後には是非の判断を下したい。朝一番で報告に参れ」
 中佐の顔が強張った。
「明後日の午後ですか」
「そうだ。
事が事だけに箝口令を敷いても漏れるのは早い。
そうなれば双方の子爵の寄り親が口出し、
紛糾するのが目に見えている。
それを避けるには、早めに決着させるしかなかろう」
「承知しました。直ちに開始します」
 中佐は尻を蹴飛ばされたように、その場から離れた。
ブルーノは中佐の後ろ姿を見送りながら、隣のベティに身体を寄せた。
誰にも聞こえぬように小声で尋ねた。
「あの中佐の名前を覚えているか」
「アルバート中川子爵でしょう。
机仕事は有能と評判の士官よ」
「ありがとう」尻をポンと軽く叩いた。
 ベティは苦笑い。
「どういたしまして」
 馬車寄せには五両の国王専用車が待機し、
それぞれに馭者と近衛兵が付けられていた。
保安上の理由から国王の移動については、
たとえ短距離でも常時五両編成で行う、と決められていたからだ。
目と鼻の先にある王宮本殿に戻るだけなのだが、
移動中に暗殺された国王の例があるだけに、無視は出来ない。
 ブルーノはベティと連れ立ち、ゆっくり歩を進めた。
何時もどの馬車に乗るかで迷う。
今も迷う。
なにしろ五両とも寸分の違いもないので、選びようがない。
 事前に国王が何両目に乗車するのかは誰にも分からない。
当人にも分からない。
その日、その場の気分で決めるから、予測のしようがない。
 ブルーノはベティの手を引いて一両目に乗り込んだ。
夫妻に遠慮したのか、随行していた者達は残った四両に分散した。
それを見て近衛士官十人が騎乗し、前衛と後衛に分かれた。
徒士の近衛隊もそれぞれの馬車の警護に付いた。
それら全ての動きを確認した近衛指揮官が出立の合図を出した。
馬車寄せの出入り口の重い扉が、
十数人の手によって外側に押し開かれた。
途端、轟音のような歓声が上がった。
 庭園は園遊会前ではあるが既に招待された客は入場し、
三つある野外ステージや五十近くある屋台の下見を行いながら、
今や遅しと開始を待っていた。
そこに引見終了の知らせ。
彼等彼女等は謁見場の馬車寄せ方向に押し掛けた。
間近で国王夫妻を一目見ようと群がる様は、
まるで餌を見つけた働き蟻のよう。
庭園から王宮本殿に繋がる通路の両側が大観衆で埋まった。
馬車寄せの重い扉が押し開かれた瞬間、
居合わせた全員が歓声を上げ、両手を大きく振った。




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昨日今日明日あさって。(アリス)85

2018-12-16 07:16:13 | Weblog
 俺は単刀直入に尋ねた。
「名付けによって起きる事は知ってたみたいだね」
 アリスの金色の瞳が泳ぐ。
「えっ・・・、ああ・・・、まあね。
でも事実だと確認できて嬉しいわ」
「種別変更してもかい」
「問題ないわ。
人族の繁殖力はゴキブリ並み、とは言わないけど、
色欲に溺れながら繁殖もする、その点においては立派よ。
欠点は私達妖精に比べて短命なこと。
病や怪我に弱いから長くても百年、普通は五十年ほど。
その間を我慢すれば、どうってことないのよ。
短い間だけど仲良くしましょう」真顔で言う。
 脳筋妖精の本音が分かった。
「ダンタルニャンの眷属妖精、だそうだよ、理解してるの」
 開き直ったのか、彼女の表情に変化はない。
「平気、平気、何の問題もないわ。
眷属妖精でも、妖精である事に変わりないもの。
要するにダンが親で、私は子、と言うだけのこと。
子は親を殺せない。親も子を殺せない。
そういう縛りに守られた疑似家族よ。
年下のダンが親で、年上の私が子になるんだけど、
もしかして気にしてるのかしら」
 俺は少々のことなら目を瞑れる器の大きな児童。
小難しい問題は先送り。
「分かった、分かった。
そっちが納得してるなら僕は何も言うことはないよ。
それじゃあね。
生まれ故郷まで気を付けて帰るんだよ。
明るい今なら帰路は分かるだろう。
元気でね。
そうそう、こんどは酒で飲み潰されないようにね」
 アリスが住んでいたペリローズの森が、どこにあるのかは知らないが、
話しを打ち切ることにした。
これも一つの親切、と自分を納得させた。
あに図らんや、アリスは怪訝な表情をした。
「はぁー、・・・、なに言ってるの。
眷属妖精なのよ。離れられる分けがないでしょう。
疑似でも家族の括りなのよ。
普通なら一緒に暮らすでしょうよ」俺をジッと見詰めた。
「一緒に暮らす・・・の」俺は途方に暮れた。
 アリスは金髪を軽くかきあげた。
「そうか、ダンは知らなかったのよね。
そうよ、それが眷属よ、私には何の支障もないわ。
ダンは子供でも男の子でしょう。しっかりしなさい」
 キャパオーバーだ。
俺は自分の置かれた立場を説明した。
まだ親に養われていること。
今は学校の寮暮らで、人様の世話を焼くような身分ではないこと。
丁寧に噛み砕いて説明し、納得させようとした、のだが、
アリスには届かなかった。
鼻で笑われた。
「フフン、寮暮らしか、面白い。
私は妖精の寝床を持ってるから問題ないわ。
食事にしても、魔素があれば充分よ。
お酒の手持ちもあるしね」
 俺は慌てた。
「妖精だと分かれば、また捕まるかもしれないよ」
 アリスは得意気に指を一本立てた。
「忘れたの、私の新しいスキルを」その場でバク宙した。
 途端、鮮やかなハレーション。
眩しい。
ハレーションの後に残ったのは白い子猫。
アリスの面影は金色の瞳だけ。
羽根もないのに宙に留まったままで俺に言う。
「これよ。
・・・。
割といけるわね」
 二枚貝に閉じ込められていた子猫そのままの姿ではないか。
違いは獣化の術式が施された首輪がないだけ。
「その姿が気に入っているのかい」
「チョイスとしては有りよ。
私の愛らしい姿を少しも損なっていない、いいわね。
でも獣化の術者を許す気はないわ。
・・・。
けど獣化の影響で変身スキルを得たのも事実。
見つけたら少しは手加減してあげようかしら。
手足の指を一本ずつ切り離し、それから手足四本、舌、
最後に首の予定だったんだけど、舌と首だけにしてあげる」
 聞かされただけで寒気がしてきた。 
児童の耳にはNGだろう。
「分かった、・・・、寮に案内するよ」俺は諦めた。
「それが賢明よ。
私が年上だからお姉さん。遠慮なく頼ってちょうだい」
 俺は散らかった荷馬車の中を片付けることにした。
手間取って面倒臭いが、誰かが遣らなければならない事は確か。
だとしたら俺でしょう。
アリスに見せるために並べた品々を元の木箱に戻し、蓋をした。
全部の木箱に蓋をしても仕事は終わらなかった。
死んだ者達から剥ぎ取られた武具と、
ぶちまけられた財布の中身が床に残っていた。
見渡したところ、今の俺に必要な物はない。
アリスを促して外に出、荷馬車を収納庫に戻した。
 場所に相応しくない物が視界に映った。
鍛冶スキルを得る切っ掛けになった磁器製品だ。
床タイルとその上のテーブルと椅子。
隣には余った粘土を渦巻き状にした山。
改めて見て、初仕事にしては中々の出来、と我ながら感心した。
しかし、ここには相応しくない。
逆に興味を持たれてしまうかも知れない、と心配になってきた。
まずい・・・、俺に繋がるような物は残せない。
今の俺は表向き、魔法使いではないからだ。
 前世の犯罪捜査で指紋採取によって犯人が特定されたように、
こちらでは魔道具等の製品から残留している魔紋が採取され、
発動者個人も特定ができた。
魔紋の採取も特定も捜査する側の鑑定のレベルにもよるが、
その前に興味を持たれるような物を残すこと自体を避けねばならない。
そこで俺はそれらを消し去ることにした。
撫で回すように見ながらスキルの選別を始めた。
すると子猫の姿のアリスが、勘を働かせたのか、
「待って、これは私の物よ」と返事も聞かずにテーブルの上に飛び、
小さな柄杓とナイフ、フォークを取り上げ、収納した。
気に入ってくれたらしい。
それはそれで嬉しい。
「危ないから僕の視界から外れて」
「分かった」
 消し去るのに用いるスキルは同じ鍛冶にした。
同一スキルなら問題は生じないだろう。
鍛冶スキルを発動。
対象物を視界に収め、雲散霧消をイメージした。
それだけ。
一瞬で跡形もなく消え去った。
すべて魔素に変換され、拡散して行くのを鑑定君で捉えた。
 アリスが俺の目の前に飛んで来た。
「終わったみたいね。町に案内してよ」
「迷わずに付いて来るんだよ」
 俺は歩きながら魔法使いの杖と一緒にグレーのローブを収納し、
冒険者パーティ用のカーキ色のローブを取り出して着替えた。
「着替える意味が分からん」アリスが首を捻った。
子猫の仕草なので可愛い。
ただ、宙を飛んでいるので、他人には見せられない。
 しばらく行くと探知君が魔物の存在を捉えた。
大物はいないが、かなりの数が周辺で獲物を探し回っていた。
獣道の先にも少なくない数が出張っていた。
俺は身体強化を続けたまま、戦いを回避しながら突破することにした。
「アリス、急ぐから肩に乗って。
たとえ接近されても魔法攻撃は禁止だよ」
「ええっー」
 不満顔のアリスに、
「逃げるのではないよ、これは鍛錬の一つだよ」と言い聞かせた。
 白い子猫が肩に乗って、その長い尻尾を首に回した。
それを横目で確かめるや、ダッシュ。
大方が平地なので足場に問題はない。
軽く跳んで、大きく長く跳んで、右に躱して、左を擦り抜けて、
人通りの多い街道を目指した。




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昨日今日明日あさって。(アリス)84

2018-12-09 07:51:17 | Weblog
 俺は困った。
懸念があった。
名前を与える行為は、イコール、テイムではないのか、と。
従魔として飼い慣らすつもりは毛頭ない。
それ以前に寮でペット飼育はないだろう。
「名付けはテイムにならないの」尋ねた。
 すると妖精に笑われた。
「アンタねえ、私は妖精よ。
低俗な魔物ならまだしも、妖精様をテイムできる分けがないでしょう。
私が許してあげるから、さっさと素敵な名前を付けなさい」
 キラキラした目で俺を見詰める。
期待に溢れた表情。
これでは無下にできない。 
何も思い浮かばないので、アイウエオ順で考えてみた。
真っ先に閃いたのは、「アリス・・・」疑問形で口にした。
 妖精は喜んだ。
「アリス、アリス、アリス・・・響きが素敵、無敵」
 矢庭に頭に妙な痛みが走った。
立ち眩み。
でもそれは一瞬のこと。
「ステータス欄に変更がありました」脳内モニターに文字。
 俺は自分のステータスを確認した。
「名前、ダンタルニャン。
種別、人間。
年齢、十才。
性別、雄。
住所、足利国尾張地方戸倉村生まれ、国都在住。
職業、冒険者、幼年学校生徒、アリスの名付け親。
ランク、B。
HP(222)残量、153。
EP(222)残量、69。
スキル、光学迷彩☆☆、探知☆、鑑定☆、水の魔法、☆火の魔法☆、
光の魔法☆、土の魔法☆、風の魔法☆、鍛冶☆、身体強化☆、
弓士☆。
ユニークスキル、無双☆☆☆☆☆(ダンジョン内限定)、
ダンジョンマスター☆、虚空☆、術式洗浄☆」
 スキルが分かり易いように整理されていた。それは良い。
問題は、アリスの名付け親、という記載。
ステータス欄に必要なのだろうか。はなはだ疑問なのだが・・・。
もう一つ、EPが急激に減っていた。
もしかして・・・、名付けで消費したのか。
「名付け親の記載は必要です。
名付け行為でEPを消費しました」脳内モニターに文字。
 終わってから知らされる。
まあ、人生って、大概そんなもんだよね。妙に納得してしまった。
 アリスに視線を戻すと、おかしなことになっていた。
さっきまで元気だった奴が、無言、姿勢を仰向けにして、
まるで湖面を漂う木の葉のように、空中を不規則にフワリフワリと・・・。
一見すると眠ったように見えなくもないが、どうやら違うようだ。
意識を失った状態で浮いている、が正解ではなかろうか。
 起こし方が分からない。
アリスが目覚めるのを待つことにした。
ところがなかなか目覚めない。
手持ち無沙汰。
暇なのでアリスの傍に寄って、ジッと見た。
手元にマジックがあれば顔に落書きするのだが、
その寝顔に見惚れてしまった。
黙っていると可愛いのだ。
 前世の物語を思い出した。
妖精が姫かどうかはしらないが、口づけで姫を起こす、が定番。
まじまじとアリスを見詰めた。
この眠りが続くようなら、・・・それもありか、と思った。
 不意に視線が衝突した。
予備動作もなく、いきなり目覚めたのだ。
驚愕のアリス。
漏れる小さな悲鳴。
あまりにも俺が間近にいるので驚かせたようだ。
 アリスは立ち直るのが早かった。
俺を見据えると身体を浮かし、両手を大きく動かした。
避ける暇がなく、俺は左右の頬にビンタを喰らった。
「パッパン」心地好く響く音を、まるで他人事のように聞いた。
妖精の小さな手でもHP数値はCランクの125、
それで叩かれたら痛くない筈がないのだけど、我慢、我慢、
口内がちょっと切れたけど文句を言うつもりはない。
黙っているとアリスに、「何してくれてんの」怒鳴られた。
「ごめん、寝たままだったから、心配して様子を見ていたんだ」
 俺の言葉にアリスはハッとした表情。
視線を左右に走らせ、自分が置かれた状況に気付いたようで、
おたおたと狼狽え始めた。
それでも流石はアリス、普通なら謝罪から入るのだが、
何もなかったかのように軽くスルーした。
「アリスだったかしら、素敵な名前をありがとう」
 俺は苦笑いを返すしかなかった。
「喜んでくれて、なによりだよ」
 アリスの視線は俺に向けられているのだが、熱を全く感じない。
上目遣いで独り言をぶつぶつ呟いているところから、
おそらく関心は自分のステータスに向けられているのだろう、と見た。
俺もアリスのステータスには関心があった。
再鑑定した。
「名前、アリス。
種別、ダンタルニャンの眷属妖精。
年齢、18才。
性別、女。
住所、ペリローズの森。
職業、なし。
ランク、B。
HP、150。
MP、150。
スキル、妖精魔法☆☆☆。
ユニークスキル、異種言語理解☆☆☆、収納庫☆☆☆、変身☆」
 何が起きた。
名前は当然だが、何が・・・。
種別からして理解ができない。
「アリスのさっきの状態は種別変更によるものです。
一時的に起動停止、改変、再構成されました。
それにより、ダンタルニャンの眷属妖精、という存在になりました。
同時に既存のランク、スキルレベルともに上がりました。
加えて新たなスキル、変身を得ました。
任意に姿を変えられるスキルです。
大きさは当人の身体の質量と同等になります。
変身している時間はMPで調整可能です。
変身しても他のスキル、ユニークスキルの発動には影響しません」
脳内モニターに文字。
何度か繰り返し読んでみた。
それでも理解不可能だ。
後段のスキル、ユニークスキルは理解の範囲内。
でも、ダンタルニャンの眷属妖精が・・・、理解できない。
「理解できなくても問題ありません。
影響はアリスにのみ現れるのです。
ここは静観してください」脳内モニターに文字。
 当の本人はまだ独り言。ぶつぶつ呟き続けていた。
俺と同じで理解できないのだろう、と思っていた。
違った。
視線に熱が戻って来た次の瞬間、俺の額にダイブして来た。
「ありがとう、これもダンのお陰よ。
ランクが上がって、スキルレベルも上がって、おまけに新しいスキル。
本当にありがとう。これ以上の喜びはないわ」素直な喜びの声。
 ええっ、種別の変更という事態はスルーかい。




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昨日今日明日あさって。(幼年学校)83

2018-12-02 06:38:36 | Weblog
 風の魔法獲得記念は草刈り。
思い浮かべたのは草刈り機。
標準装備の丸ノコギリの歯、チップソーをイメージした。
ウィンドチップソー。
空中に直径50センチの風の歯を形作り、作動させた。
姿はなく、音もしないが、空気から震動が伝わって来た。
歯を厚くしてサイズアップ、直径1メートルにした。
問題なし。
回転速度を上げ、ぼうぼうに生えてる一帯に解き放つ。
茎の分厚い雑草も苦もなく薙ぎ払い、
あれよあれよという間にタイル脇の広い一角を丸裸にした。
 それを見守っていた妖精が呆れたように言う。
「草を刈ってどうするつもり」
 場所が出来たので、魔法を解除。
収納庫から「悪党の荷馬車」を取り出し、ソッと置いた。
 妖精が目をぱちくりさせた。
「何なのよ、一体・・・」
「さっきの場所に大勢の人間が転がっていただろう。
あの半分がこの荷馬車を守って運んでいた連中で、
残りの半分がそれを奪おうとして襲撃した連中だ。
・・・。
結果は見たとおり、双方共に打撃を受けて共倒れ。
どちらも悪党だから同情はいらないと思う。
・・・。
で、通りがかった僕が荷馬車を拾ったという分けさ」端折って説明した。
 妖精はまたもや、ぶつぶつと独り言。
時折、俺に視線を投げかけ、表情を窺う。
それでも質問が飛んで来ないので俺は説明を再開した。
「僕が荷馬車を収納庫に仕舞おうとすると、
何かが抵抗して仕舞うのを拒否する。
何度か試したけど、ことごとく失敗。
それで調べてみたら、
亜空間への収納を拒否する術式が施された小箱を見つけた。
それに君が封じられていた、と言う分けさ。
そうそう、君は老人に騙されたと言っていたけど、
それらしい年寄りはあの中にはいなかったよ」説明を終えた。
 要約したが、大筋に間違いはない筈だ。
 妖精は溜め息をついた。
「話はわかった。
たぶん、そうなんでしょうね」
「で、もう一つの話し、これ大事」
「・・・何よ、それ」俺の目の前に寄って来て、片手を鼻にかけた。
「近い、近い、目が痛い。
目の焦点が合わないから少し離れてよ」
「分かったわ」羽ばたいて空中を器用に後退り。
「俺が拾った荷馬車だけど、君にも権利はある。
君は被害者だから、慰謝料を頂戴、と主張しても良いんだ」
「権利・・・、慰謝料・・・、理解できない・・・」腕を組み、頭を捻る。
 脳筋の妖精なんだけど仕草があまりも可愛いので、俺・・・胸キュン。
そんな感情を見抜かれぬように、話しを進めた。
「とりあえず荷馬車の中に入ろうか。
箱を開けるから欲しい物があれば、遠慮せずに収納してね」
 荷馬車に入り、木箱の蓋を次々に開け、中身を取り出し、
車内狭しと並べて見た。
全ては並べられないが、俺的に見て、高価な物に絞った。
古美術品から魔物の毛皮、魔卵、武具、工具等々・・・。
流石に腐るような物だけは積まれていない。
 妖精はザッと見渡した。
見て取るや、鼻をピクピクさせると羽ばたいて移動した。
丁寧に並べた反物の上で止まった。
羽根をパタパタさせて俺に言う。
「この下にある物を見せてくれる」
 鑑定君で事前に中身は分かっていた。
古酒の壺を詰めて並べた木箱だ。
それを見せたくないから反物を上に置いて隠した。
見つけるとは、残念な妖精の鼻・・・。
反物を退かし、木箱の中が見えるようにした。
蓋ではなく、木栓がしてある同じ大きさの壺が八個並べられていた。
木栓には封印の証紙。
搬送中の損壊を防ぐ為、
緩衝材としてのボロ布も隙間なく敷き詰められていた。
 妖精が表情を緩ませ、鼻の穴を大きく開いて木栓を一つひとつ、
丹念に嗅いで回った。
漏れぬように木栓がしてあるが、妖精の鼻は誤魔化せないらしい。
古酒の種類が分かるのか、時折、一人頷く。
一段と表情を緩ませた妖精、今にも牛のように涎を流しそう。
妖精の酒癖を懸念して隠したのだが、無駄に終わった。
「これにするわ」妖精は一つに手を翳し、トットと収納した。
 俺は余計なお節介かも知れないが、
「酒で失敗した教訓は生きていないの」思わず愚痴った。
「心配してくれたの。ありがとう。
でも大丈夫、私、失敗しないので」
 どの口が言う、と突っ込みたいが無駄そうなので堪えた。
「そう、もう失敗しないのか、良かったな。
・・・。
他には要らないの。
古美術品とか、魔物の毛皮とか、本当に遠慮はいらないよ」
「換金が面倒じゃない。
それに私、妖精だし・・・、
森でずっと暮らしていたから商売には慣れていないの。
分かるでしょう」
 困った俺は車内を見回した。
何かないか・・・、何か・・・、何かないか。
妖精が森に帰る際に、助けになるような物・・・。
そんな俺の視線に車内後部の物が映った。
一時的に勝った形になったテレンス側の連中が、
死体から、敵味方関係なく略奪した物だ。
装備品と財布が雑多に山積みされていた。
あれだけ血と埃で汚く塗れ、一部破損していた物もあったが、
収納庫の機能で修復され、新品同様、綺麗になっていた。
そこから財布を選り抜き、全てを逆さにして中身を床にぶちまけた。
出てくる、出てくる、銅貨、銀貨、金貨がザックザク。
悪党と言えども所詮はスラムの住人、と侮っていた自分が恥ずかしい。
儲かるんだ、悪党商売、と感心した。
勤勉に仕事した成果が床に小さな山を築いた。
でも、それは今は俺の物。
ありがとう、悪党のみなさん。
 俺は妖精に薦めた。
「現金なら邪魔にはならないと思う。
全部持って行けば。
元々、俺の物じゃないし、遠慮はいらないよ」
「現金か・・・、困ったわね」
「金貨銀貨なら武器にもなるよ。
風の魔法で飛ばせば礫にもなるだろうし、ばらまけば足止めにもなる」
 聞いた妖精が腹を抱えて笑う。
「はっはっはは、アンタ、馬鹿ねえ」
 褒め言葉として聞いておこう。
「ついでに土産を買って戻れば、家族や友達も喜ぶだろう」
「はぁ・・・、家族、友達・・・、何を言ってるの。
・・・。
もしかして妖精に家族とか友達がいるとでも思っているの」
「・・・、いないの」
「アンタ、妖精の事を何も知らないのね」
「知らないよ。
会ったのも君が初めてだし、既に滅亡したとばかり思っていたし・・・」
「なに、妖精の扱い・・・、ひどくない」
「・・・、世界を代表して謝るよ、ゴメン。
まあ、それはそれとして、現金は旅の友、持って行きなよ」
 妖精が鼻で笑う。
「ふっ、・・・まあ良いわ。お言葉に甘えて」現金の所に飛び、収納した。
 半分ほど残した妖精は満足そうな表情で俺を見た。
「残しても良いのかい」俺は確認した。
「良いのよ。
ところでアンタの名前を聞いてなかったわね」
「ダンタルニャン、ダンと呼んで」
「ダンか、いいわね生意気に名前があって」口調は優しい。
「君の名前は」
「一人で生まれたから名前なんてないわ。
妖精ばかりじゃなく精霊もそうよ。
たいていは生まれた地の名を付けて呼ばれるの。通称よ。
・・・。
ここで会ったのも何かの縁。
私に名前を付けてくれないかしら」
「えっ、君の名前を・・・僕が」
「名前がないと何かと不便でしょう」
 確かどこかの森の妖精であったはず。
聞いた感触では家族も友達もいない。
そんなボッチの妖精に名前が必要なのだろうか。




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