金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(営巣地)188

2020-10-25 08:05:45 | Weblog
 俺はパティ毛利と近況も話し合った。
「ボブとは最近どうなの」遠慮がないパティ。
 ボブ三好。
三好侯爵家の分家筋の男子で、
僕だけでなく平民には辛辣な対応に終始していた。
「ポブ三好殿は僕と目も合わせてくれなくなりましたよ」
「あの子は昔からそうなのよね。
身分に拘り過ぎて、逆に自分を不自由にしているわね。
もっとも、貴男が相手の場合は嫉妬ね。
見下していた人物が自分より上になったものだから、
どうしていいのか、分からないのでしょう。
今さら、友達面もできないし」
「ええ、今さらですね。
僕しても、友達面されると怖いです」

 後ろのアシュリー吉良の表情が険しくなってきた。
焦れている様子。
ついには口を出してきた。
「パティ様、そろそろ行きましょうか」
 パティの顔が微妙に変化した。
僕とアシュリーを見比べる視線。 
でも口にはしない。
言葉を飲み込み、どちらにともなく言う。
「難しいものね。
まあ、いいわ」アシュリーに頷き、僕に視線を戻し、
「ところでダンタルニャン佐藤子爵様、
貴方の御家来衆に魔法使いはいますか」意外な質問をくれた。
 彼女が僕を子爵様呼ばわりする時は、何かある。
「いませんが、それが何か」
「王宮区画の惨状はご存知かしら」
「遠目にですが、瓦礫でかなり酷い状態に見えます。
でも王宮区画ですから、近衛軍の魔法使い達が対処するのでしょう」
「普通ならそうです。
・・・。
子爵様のお耳に入れて置きますね。
管領のボルビン佐々木様より評定衆にお触れが回りました。
風魔法や土魔法の使い手を揃えて王宮区画へ参るようにと」

 管領職、ルビン佐々木公爵。
現国王が未成年時、その後見をしていたこともあり、絆は強い。
そんなボルビンが管領職として、
異例なお触れを出すからには只事ではない。
俺は尋ねた。
「管領職と評定衆ではどちらが上なんですか」
「古来よりは評定衆が上。
管領職が定席になったのは、つい最近ですから、
どう考えても管領職は下でしょう」
「世間では管領は国王の右腕と言われていますけど」
 するとアシュリー吉良が割り込んできた。
「それは無責任な世間の戯言。
国王を真下で支えるのが評定衆。
管領に指図される覚えはないわ」
 パティが苦笑いで言う。
「お父様から聞きました。
管領が評定衆にお触れを回すのは越権行為だそうです。
・・・。
つまり、それだけ管領様は追い詰められている」
「何に・・・。
そうか、風魔法や土魔法は瓦礫の除去。
王宮区画の除去は近衛軍の魔法使いだけでは足りない。
さりとて街中を受け持っている国軍は動かせない。
そこで評定衆が持つ魔法使いと言う訳か」
「評定衆限定ではなく、その影響下にある血縁貴族家も含めるそうよ」
「大掛かりですね。
もしかして、国王陛下の御一家に関わる事態ですか」
「たぶん・・・、地下に避難されてるとは思うけど・・・。
それ以外には考えられないわ」

 国王ブルーノは家族と共に地下室に避難していた。
堅固な造りなので上の階が潰れ落ちても、何の影響も出ていない。
時間の経過から頃合いとみて、ブルーノは外に出ようと、
警護の近衛兵に命じた。
「そろそろ外の空気が吸いたい。
直ちに扉を開けよ」
 警護の五人が扉に駆け寄った。
ところが外に繋がる扉は微動だにしない。
ガタともしない。
隊長が振り返った。
「瓦礫が邪魔しているみたいです」
「瓦礫か・・・、何とかならぬか」
 侍従長が宥めた。
「外の者達を信じましょう。
必ず来てくれます」
 王妃のベティが愛娘・イヴを抱いて歩み寄って来た。
「階下の貯蔵庫に非常食がありました。
これで当分は食い繋げます。
辛抱しましょう、この子の為にも」
 ブルーノは全員を見回した。
妻と子で二人、侍従長を含む侍従が四人、侍女が三人に女官が二人、
そして近衛兵が五人。
みんなの命をブルーノが預かっていた。
迂闊な言動は慎まなければならない。
「分かった。
ところで、ここの空気穴はどこに繋がっているんだ」鼻をムフムフさせた。
 近衛の隊長が答えた。
「地下水路です。
ちょっと臭いますが、ご辛抱下さい」

 国都の下を地下水路が縦横無尽に走っていた。
地上が計画的に造られたのに対し、
地下水路は魔物の侵入を防ぐ工夫もあり、複雑怪奇になっていた。
地図なしでは点検にも修理にも入れない、そんな有様だった。
 水路の端の通路を進む一団があった。
地図と魔道具の【携行灯】を先頭にして、
水路に落ちぬように慎重に進んでいた。
全員が武装していた。
まちまちの装備だが、良質の物ばかり。
とても個人で購える物ではない。
 先頭の男が足を止めた。
「先で交差しています。
右でよろしいのですね」確認を怠らない。
 真後ろの男が傍に寄り、地図と交差している地点を見比べた。
「地図を信用するなら、ここで右だな」
「万一はないですよね」
「俺達を騙して何とする。
奴等はそこまで馬鹿じゃない」
 男は後ろを振り返った。
「獲物までもう少しだ」
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昨日今日明日あさって。(営巣地)187

2020-10-18 07:12:22 | Weblog
 俺は眷属の二人を探した。
右手でワイバーン3翼と戦っていた。
当初は8翼であったはず。
 彼等の下の湖面を見た。
その湖面、何やら奇妙に一部が歪んでいる。
どうやら水棲の魔物が活動している気配。
落下したワイバーンを引きずり込んでいるのだろう。

 ハッピーの機体が1翼の片翼を突き破った。
その個体は必死に足掻いて飛行を続けようとした。
片翼をフル回転。
風魔法を駆使するも耐え切れずに高度を下げて行く。
 待ち切れぬのか、湖面から水棲の魔物が姿を現した。
たっ、タコッ・・・。
でかい禿げ頭。
大きな目をギョロリ。
湖面に12本の足を浮かべた。
蛸だ。

 噂に聞くオクトバスソールに違いない。
蛸の種から枝分かれした水棲の魔物。
大きな河や湖に棲む魔物でランクはA。
まさか本物とご対面とは、今日は蛸飯かな。
 そのオクトバスソールが12本の足で湖面を蹴り、空中に飛び上がった。
数本の足をワイバーンに絡ませた。
抵抗するワイバーン。
 オクトバースソールの全長は、足まで含めると約5メートル。
対するワイバーンは約8メートル。
大きさも体重もワイバーンが勝っていた。
純粋な数字だけの戦いだとワイバーンに軍配が上がる。
ところがそれを覆すものがオクトバスソールにあった。
足の吸盤だ。
その吸盤でワイバーンに喰らい付いて離れない。
 ついには12本の足でワイバーンを完璧に捕えた。
両翼の動きを封じた。
そのまま重力に任せて落下。
ドブ~ンとも、ドボ~ンとも聞こえる水音。
長い悲鳴を上げるワイバーン。
引きずり込まれる様にしてズブズブと姿を消して行く。

 湖面に新たなオクバスソールが姿を現した。
キョロキョロと上を見上げた。
空腹のようで、次を期待している様子。
 残った2翼に動揺が走った。
エビス二機が前門の虎なら、下には後門の狼。
2翼は煮え切らぬ動きをしつつ、未練がましい視線も巡らし、
ついには逃走に踏み切った。
営巣地方向に逃げる。

 追おうとした二機を俺は止めた。
『もういいよ。
これ以上は弱い者いじめだよ』
『それもそうね』アリスの余裕ある返事。
『ペー、しかたない、しかたないっペー』ハッピーも。
 俺は戻って来た二機を念入りに鑑定した。
ワイバーンとの連戦だっが、破損どころか剥がれも歪みも一つとてない。
凄い。
これを造り上げた奴を褒めてやりたい。
メイド・イン・俺。
『ねえダン、クイーンとキングの魔卵をどうするの』
『中身を調べてからだよ』
 魔卵には種類がある。
多いのは、魔素がゆで卵のように個体化した物。
少ないのは、魔素が液卵のような物。
同じく、魔素が砂状になって詰まった物。
 そのまま使えるのは個体化した魔卵。
魔水晶に施している付与を魔卵に同じように施すと、
魔水晶を上回る力を発揮する。
下二つの液卵や砂状の物は、調剤や鍛冶の際に添加すると、
これまた抜群の効果を発揮する。
『エビスに搭載するのよ』アリス。
『プー、僕のも、僕のも』ハッピー。
 クイーンとキングの魔卵を調べてもいないのに、
搭載するのが決まってしまった。
アリスは妖精だから脳味噌の容量自体が小さい、加えて脳筋。
ハッピーは脳味噌があるのかどうかすら不明。
こんな二人に説明するのは不毛。
暇な折にダンジョンでクイーンとキングのデーターを収集し、
それからどうするのかを考えよう。

 妖精の里の妖精達が群れなして飛んで来た。
先頭は長老。
速さが他とは一段も二段も違う。
風を切って俺の傍に飛来した。
『ありがとう。
約束を守ってくれたわね』
『はい、約束ですから』
『人間にしては律儀な奴、褒めてとらす。
何か欲しい物はないか、あれば褒美としてとらすぞ』
『褒美と言うより、うちで保護している妖精達はどうしますか』
『里の掟を破り、結界から出て、欲深い人間に騙された者達じゃな』
『そうです。
保護しています』
『今は自由なのじゃろう』
『はい。
ダンジョンで休養しています』
 長老は仲間達を振り返り、ちょっと考えた。
『そうじゃな・・・、好きにさせるしかないな。
帰って来るも良し、帰ってこないも良し。
力尽くで引き取っても、心根は治らぬじゃろう。
またいつか里を飛び出す。
そなたには悪いが、面倒をみてやってくれ、頼む』
 俺の代わりにアリスが応じた。
『頼まれた』
『ピー、頼まれた、頼まれたピー』
 長老は二人に苦笑い。
『頼んだぞ』

 俺は転移、転移で国都に戻った。
傍にアリスとハッピーはいない、
二人はダンジョンに寄ると言うので途中で分かれ、今は俺一人。
 幼年学校の遥か高々度から見下ろした。
街は復旧でてんやわんや。
瓦礫の撤去、ワイバーンの解体等、大勢が立ち働いていた。
 俺は光学迷彩のまま、人気がないのを確認し、
学校から少し離れた公園に風魔法で降り立った。
学校のローブに着替えて、公園を出た。
遠回りに学校へ向かった。
道々、街の様子を見聞きしながら、歩を進めた。
「討伐されたワイバーンが落ちて来て、家が圧し潰された」
「ワタバーンのブレスで屋根瓦が吹き飛ばされた」
「連弩の鉄矢が壁に突き刺さった」
「カタパルトで飛ばされた石が落ちて来て、頭に当たって死んだってよ」

 色々と耳にしながら街角を曲がった。
そこで意外な人物達と鉢合わせした。
パティ毛利とアシュリー吉良、二人の女の子とその従者達。
二人はクラスは違うけど同じ一年のクラス委員だ。
委員の集まりで顔を合わせるだけで、それほど親しくはない。
どちらかと言うと、吉良には嫌われている、きらだけに。
 俺は丁寧に挨拶した。
「こんにちは。
昨夜は大変でしたね。
お屋敷に被害はなかったですか」
 パティが愛想良く応じた。
「私の屋敷は被害に遭わずに済みました。
そちらは如何でした」
「うちの屋敷も被害に遭わずに済みました。
ただ、ワイバーンが落ちて来ましてね。
大きい奴が。
うちの上で力尽きたのでしょう。
感心なことに、お行儀良く何も壊さず、庭先に落ちてくれました。
今頃は解体されて、お肉になっている頃でしょう」
 とても児童とは思えぬ他人行儀な言葉の遣り取り。
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昨日今日明日あさって。(営巣地)186

2020-10-11 14:54:55 | Weblog
 ワイバーンキングは俺を牽制するように睨みつつ、
視線を素早く周囲に走らせた。
右に左に、上に下に。
クイーンの姿を追い求めているのだろう。
ついには物悲しげな声を漏らした。
 鼻をクイクイ・・・、臭いを嗅ぐ仕草。
クイーンの臭いを辿ろうと言うのだろう。
営巣地上空の旋回を開始した。
これに配下の8翼が従う。
 二周もすると飽きたのか、それとも見極めたのか、視線を俺に固定した。
いきなり空気を震わせる咆哮を上げた。
それを合図に8翼が俺に向かって来た。
敵と認識された。

 俺は当初、営巣地で雷魔法の一つ、
サンダープリズンを放つつもりでいた。
キングもろとも滅ぼすと決めていた。
それは妖精の里の長老の願いで潰えた。
が、今は長老に感謝している。
 キングを目の当たりにして、その真価がわかった。
クイーンもワイバーンとしては一段も二段も格上であったが、
こうして正面から向き合うとキングは違う。
クイーンとは存在そのものからして違う。
風格も力量も異質の存在。
 俺は手にしていた【ツインの複合弓】を虚空にしまった。
魔道具の武器なしでキングを体感しようと思った。
身体強化をさらに上げた。

 湖面からエビス二機が飛び上がった。
それまで湖面の波に同化していたので、全く気付かれていなかった。
だもので、二機の全速全開の魔力に8翼は驚いた。
固まるようにしてホバリング。
しかし対処するのに時間は要しない。
手早く左右に分かれた。
押し包む態勢を取った。
 俺は二人に注意した。
『邪魔だから8翼をどこかに誘導して』
『任せて』
『パー、パッパラパー』
『でも正面から突っ込むのだけは止めてくれよ。
潰れないけど、軽いから弾き飛ばされちゃうからね』
『そこらは信用しなさい』
『ピー、信用、信用ピー』
 二機は8翼を揶揄う様に奴等の鼻先を通過して上昇に転じた。
わざと速度を落として追い付けるようにも配慮した。
奴等が追い付いたと見るや急転回してコースを変更、湖の片側に誘う。

 キングがゆったりと飛来した。
俺を観察するように視線を巡らせた。
力量を推し量っているようだ。
やがて納得したのか、しないのか、図太い咆哮を上げた。
 戦いの火蓋が切られた。
初手はいきなりのブレス。
ウィンドストーム、風槍が複数放たれた。
 俺は重力魔法、グラビティで対抗した。
薄目のグラビティシールドを何層にも重ねて、前面に展開した。
重ね合わせで十分な強度になると思った。

 バリンバリン、バリン。
次々にシールドが破られて行く。
計算違いだった。
最後の一枚が破られると、キングそのものが突っ込んで来た。
 正面から受け止めるのは、ちょと怖い。
流して勢いを殺そう。
右肩で受け流した、つもり。
結局、それでも俺は遠くへ弾き飛ばされた。
身体強化していたから、軽い痛みで済んだ。
ラッキー、ラッキー。
それを二人に見られていた。
『油断したのね、格好悪い』
『プー、油断、油断プー』

 キングは俺を見定めると意外そうな表情をした。
納得できないのだろう。
そんな奴の鼻先に俺は転移した。
腰を据えて鼻の頭に正拳突き一発。
続けて頬に回し蹴り。
児童だが身体強化しているので威力はある。
主に人相手だが。
今回の相手はワイバーンキング。
蚊が刺した程度なのかも知れない。

 俺は効果を見ずに即座に元の場所に転移した。
キングを見返すと、驚くべきことに効果があった。
怒っている色。
答え代わりにブレスが来た。
ウィンドストーム。
風刃や風槍等を入り混ぜた暴風を繰り出して来た。
 児童相手に大人げないと主張したい。
再びグラビティシールド。
失敗を教訓にして厚目にした。
それを重ね合わせた。
そして前面に展開した。
 ゴンゴンと当たる音。
ギスギスと擦れる音。
それでも一枚も壊れない。
見兼ねたのか、再びキングそのものが突っ込んで来た。
体力と体重に物を言わせようとした。
ゴ~ワ~ン、鈍い汚音。
キングが大きく弾き飛ばされた。
湖に落ちて行く。
激しい水飛沫が飛び散った。
そのまま沈むかと思いきや、キングは必死に足掻いた。
足掻いて、足掻いて、ついには小さくだが、飛翔に成功した。

 キングがようようの事で元の高度に戻った。
表情が歪んでいた。
憎悪の表れか、疲労か、判断の下しようがない。
時間はかかったが、キングはブレスを行おうとした。
 俺にとっては三度目だ。
奴の呼吸のタイミングは覚えた。
見間違えようがない。
奴が口を開けた瞬間、光魔法、ライトスピアを放った。
 光の速さの物はキングでも避けられない。
ブレスを放とうとしているだけに尚更だ。
光槍が奴の口に吸い込まれた。
それも立て続けに三本。
 俺は念を入れた。
雷魔法を放った。
ビリビリと火花を散らすサンダーボール、雷弾。
鑑定で確認した奴の急所を狙った。
直撃。
キングの急所を火花が包んだ。
口が光弾で潰されているので悲鳴は上がらない。
キングは身体を硬直させ、落下を始めた。
 俺は慌ててキングの傍に転移した。
絶命しているので、急いで収納した。
キングは虚空でクイーンに再会できて喜んでいるだろうか・・・。

 脳内モニターに文字が走った。
「ランクアップしました」

「名前、ダンタルニャン佐藤。
種別、人間。
年齢、十才。
性別、雄。
住所、足利国尾張地方戸倉村生まれ、国都在住、美濃地方木曽。
職業、子爵、木曽の領主、冒険者、幼年学校生徒、アリスの名付け親、
ハッピーの名付け親、山城ダンジョンのマスター。
ランク、A。
HP(444)残量、444。
EP(444)残量、444。
スキル、弓士☆☆☆。
ユニークスキル、ダンジョンマスター☆☆☆、虚空☆☆☆、
魔女魔法☆☆☆、無双☆☆☆☆☆(ダンジョン内限定)。
加護、神竜の加護」
「光学迷彩☆☆☆☆、探知☆☆☆、鑑定☆☆☆、水魔法☆☆☆、
火魔法☆☆☆、光魔法☆☆☆、土魔法☆☆☆、風魔法☆☆☆、
闇魔法☆☆☆、錬金魔法☆☆☆、身体強化☆☆☆、透視☆☆☆、
契約魔法☆☆☆、時空☆☆、重力☆☆、氷魔法☆☆、雷魔法☆☆」

 同時に眷属も上がっていた。
「名前、アリス。
種別、ダンタルニャンの眷属妖精。
年齢、18才。
性別、女。
住所、山城ダンジョン。
職業、エビスゼロの所有者。
ランク、A。
HP、175。
MP、175。
スキル、妖精魔法☆☆☆☆。
ユニークスキル、異種言語理解☆☆☆☆、収納庫☆☆☆☆、変身☆☆、
光体☆☆」
「名前、ハッピー。
種別、ダンタルニャンの眷属スライム。
年齢、1才。
性別、女。
住所、山城ダンジョン。
職業、エビス一号の所有者。
ランク、B。
HP、150。
MP、150。
スキル、ダンジョンスライム魔法☆☆☆☆。
ユニークスキル、異種言語理解☆☆☆☆、収納庫☆☆☆☆、変身☆☆、
飛行☆☆」
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昨日今日明日あさって。(営巣地)185

2020-10-04 08:15:58 | Weblog
 俺は長老に言い返せない。
正しいかどうかは知らないが、理屈は分かる。
それがこの森の常識なのだろう。
だからと言ってワイバーンの営巣地を見逃すのも、なんだかなあ・・・。
 長老が反論せぬ俺をジッと見た。
『我等にとってはワイバーンよりも人間の方が質が悪い。
荒地や草原を見つけると、勝手に開拓して村にする。
森や林を見ると、当然とばかりに切り開き道を通す。
こんなに迷惑な連中は魔人か人間の二種だけだ』
 えっ、魔人・・・、魔人っているの。
寓話の中の魔人は知っているけど・・・。
それは置いといて、俺はワイバーンに国都が襲われた事を説明し、
『半分ほどを討伐しましたが、肝心のワイバーンキングを逃しました。
このまま終わるとは思えません。
必ずや機を見て、再び国都を襲うでしょう。
それを阻止する為に俺達は来ました。
何と言われようと営巣地を攻撃します』目的を話した。
『プー、攻撃、攻撃プー』鼻息の荒いハッピー。
『私も攻撃に参加するわ』アリスは言い切った。

 長老は腕を組んで溜息をついた。
少し考えてから俺を見た。
『そちらの事情は分かった。
しかし困ったものだ。
落としどころが分からぬ』
 俺も困った。
妖精の里と敵対関係になりたい訳じゃない。
妥協点を探ろう。
『営巣地を残せば良いのですね』
『そうじゃ、できるか』
 であれば、できる。
『ワイバーンキングとクイーンは討伐しても良いですね』
『キングとクイーンはどうなっても構わん。
肝心なのは営巣地じゃ』
『分かりました、何とかしましょう』

 俺はアリスとハッピーに伝えた。
『湖の上にキングとクイーンを誘い出して討伐するよ。
その2翼は俺が相手する。
二人には2翼に加勢しようとするワイバーンの討伐を任せる。
それで良いかい』
『私にもキングかクイーン、どちらか1翼を回してよ』
『ピー、キング、クイーン、どちらかピー』
 二人の意気込みが分かった。
断れない。
『できるのかい』
『任せて』
『ポー、任せて、任せてポー』
『二人でクイーンを討伐してよ』

 俺は光学迷彩を解いた。
風魔法ではなく重力魔法の飛行スキルで湖上に向かった。
手頃な辺りでホバリングし、【ツインの複合弓】を取り出した。
前回は風魔法に対抗する為、魔水晶の光魔法を選択した。
今回はそれと比較する為、魔卵の重力魔法を選択した。
矢は同じく鉄矢。
EPの数値は・・・、光魔法は15だったが、
遠距離なので重力魔法は20からのスタートにした。
 ワイバーンクイーンは営巣地上空にいた。
配下2翼を従えて旋回を続けていた。
遮る物がない湖上なので、一度だけ俺に視線を向けて来た。
でも小さいと侮ったのか、フンとばかりに視線を元に戻した。
 好都合。
俺は配下2翼を狙うことにした。
脳内モニターでズームアップ。
手前のは右目、奥のは頭部。
続け様に射た。
光より速度は落ちるが、ワイバーンが纏う風魔法には影響されない。
狙い通りのコースを二本の矢が飛ぶ。
 2翼は全く気付かない。
鉄矢が右目に深々と刺さった個体は身体を傾けて落下。
頭部に突き刺さった個体も同じ。
悲鳴一つ上げずに落下する2翼をクイーンは不思議そうに見送り、
やおら周囲を警戒するように見回し、そして、最後に俺に目にとめた。
探るように睨む。

 俺はクイーンを挑発することにした。
水魔法、ウォータボール・水弾を放った。
距離はあるが狙い通り着弾・・・。
やはり、クイーンが纏う風魔法で弾かれた。
 クイーンが怒りの咆哮。
旋回を止めた。
俺に正対した。
再び咆哮。
全速力で飛んで来た。
 釣れた。
針はなくても大物を釣り上げた。
俺は動かない。
 クイーンはとてもご立腹の様子。
まっしぐら。
周囲に気を配る余裕はなさそう。

 高々度にはエビスゼロとエビス一号が待機していた。
当然、アリスとハッピーが機上していた。
『行くよ、ハッピー』
『パー、降下、降下パー』
 瞬時に加速し、急降下した。
エビスゼロは機体にアリスの妖精魔法を纏わせ、
エビス一号はハッピーのダンジョンスライム魔法を纏わせ、
錬金魔法で造られた機体を更に魔法で強化していた。
 エビスゼロはクイーンの右の翼に狙いをつけた。
エビス一号は左の翼に狙いをつけた。
太い胴体よりも弱いだろうと二人で考えたのだ。
 クイーンが気付いた時には終わっていた。
両翼に穴を開けられ、その痛みの声を上げた。
湖上をその悲鳴が渡って行く。
 俺は自分が造り上げた機体が心配になった。
『機体に異常は・・・。
先端は潰れてない、大丈夫』
『ないない、大丈夫』
『プー、仕留める、仕留めるプー』
 二機は湖面すれすれで反転、クイーンの頭部に突っ込んで行く。
無謀にも突っ込むかと思いきや、違った。
それぞれが得意の魔法を放った。
アリスは右から妖精魔法の風槍・ウィンドスピア。
ハッピーは左からダンジョンスライム魔法の水歯車・ウォータギア。
 息の合った攻撃魔法が叩き込まれた。
弾けるクイーンの頭部。
HPがゼロになったのを俺は探知と鑑定で確認した。
このままにしては置けない。
もったいない、もったいない。
湖面に落下して行くクイーンの傍に転移した。
虚空の空きスペースにクイーンを収納した。

『ダン、どうかしら、私達の仕事は』
『ピー、仕事、仕事ピー』
 綺麗な頭部が欲しかったが、それは言わない。
『満点だよ』
『だよねー』
『プー、満点、満点』
 喜びも束の間、主役の登場だ。
営巣地からクイーンよりも強力な魔力が湧いた。
それが上空に舞い上がった。
ワイバーンキング。
ホバリングして俺達を視認、睨み付けた来た。
 遅れて配下が付き従う。
8翼。
それぞれが咆哮した。
かなりお怒りのようだ。
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