カトリーヌ明石少佐は少し考えた末、
自分に付いて来ていた副官に耳打ちした。
聞いた副官は小声で復唱すると、踵を返した。
それほど待たされなかった。
該当する人物は幸いにも近くにいた。
副官が背の高い女性騎士を連れて来た。
後宮警備に上番中の中尉であった。
俺は紹介された中尉に説明した。
「イヴ様の畝に蒔かれて種を鑑定して欲しいのです。
出来るのなら、他の子供達の畝の種と比較して下さい」
お安い御用とばかり、中尉が鑑定を始めた。
すると中尉の顔色が面白いように変化して行く。
一人頷きながら、イヴ様の畝と他の畝を何度も繰り返して鑑定した。
結論に至ったようだ。
俺とカトリーヌに報告した。
「異様ですが、イヴ様の畝の種に発芽の兆しがあります。
他の方の蒔かれた種よりも発育が早いのです。
土魔法の話は聞いていますが、これは有り得ません」
俺は説明した。
「まず最初にイヴ様の畝に他の畝とは違う魔力を感じ取りました。
所謂、生命力と言うか、活性化ですね。
その元になっているのは土なのか種なのかと迷いました。
そこで水魔法の使い手であるシンシアに水撒きをお願いしました。
普通の水ではなく、魔水です。
魔水で活性化をより促進して、答えを得ようと思ったのです。
・・・。
僕は専門家ではないので、正解かどうかの判断は差し控えます。
素人の想像として申します。
イヴ様の土魔法は土だけでなく、種にも影響を及ぼすようですね」
カトリーヌの目が点になった。
先に中尉が口を開いた。
鑑定スキル持ちだけに、理解が及んだようだ。
「ただの土魔法ではない、そういうことですね」
「はい、もしかするとですがね」
「あながち間違いではないかも知れないわね。
魔法は色々とあるのよ、方向性と言うか、偏りがね」
カトリーヌが口を挟んだ。
「私にも分かるように、お願い」
中尉が考えて言葉にした。
「身近な例で申しますと、レオン織田伯爵ですね
あの方も土魔法の使い手ですが、造られたゴーレムから判断するに、
あれは鍛冶師寄りになっています。
ただの土魔法の使い手では造れない仕様になっているので、
そう色分けしても差し支えない筈です」
カトリーヌがコクコクと頷いた。
「それは分かる。
他の土魔法の使い手では真似出来ないのよ。
それがイヴ様とは・・・」
「イヴ様は、大地魔法の色が濃いと言う話です」
シンシアの仲間のシビルが口を挟んだ。
「土だけでなく、種にも干渉できるのなら、そう言う結論になるわね」
シビルは土魔法スキル持ち。
俺達より土魔法に詳しい。
カトリーヌが疑問を口にした。
「大地魔法と言うのは聞いた事がないんだけど」
シビルが応じた。
「使い手が滅多に現れないので、あまり知られていないの。
それに当人も気付かないと言うのもあるわね。
土の中で完結してしまうから」
中尉とシビルで遣り取りした。
それを横で聞いてカトリーヌが理解したのか、フムフムと頷いた。
「肥えた土を作り、気候や害虫に左右されない種を育む。
それが大地魔法。
指導によってはイヴ様も大地魔法を使えるようになると」
俺はカトリーヌに注意した。
「無理強いはよくないですよ。
あくまでも可能性の話ですから」
「分かってるわよ、イヴ様は王女様よ。
無理強いする者はいないわ」
可能性のあるのが一人いたが、名は出さない。
イヴ様が俺に歩み寄って来て、上目遣い。
「ニャ~ン、遊ぼう」
仲間外れにされた、そう思っているのだろう。
俺は従者・スチュワートを呼んだ。
「あれを」
王宮内へのマジックバッグ等の持ち込みは禁止されていた。
それを破って持ち込んだ者は、如何なる者でも重罪に科されていた。
余程の事がない限り、処刑。
ただ特例があった。
近衛の許可。
誰でもと言う訳ではない。
国王ないしは王妃の御声掛かりを受けた者だけが、
近衛の許可のもとで持ち込めた。
本日は俺。
マジックバッグを持つのはスチュワート。
立会人はカトリーヌ少佐。
近くの四阿に移動した。
大きなテーブル二つと俺を数に入れた椅子が用意されていた。
一方のテーブルにスチュワートがマジックバックから物を取り出し、
綺麗に並べて行く。
ジユース樽、ホールケーキを入れた箱、レーキナイフ、カップ、皿等々。
普通は持参した者が毒味役なのだが、鑑定スキル持ちがいた。
中尉にお願いした。
俺達子供はもう一つのテーブルについた。
イヴ様は椅子ではなく、俺の膝の上でご満悦。
「ニャンは椅子、ニャン椅子」
それを侍女達が横目で見て、笑いながらケーキを切り分け、
カップにジュースを注いで行く。
配られたジュースを皆が飲む」
「おいちい」イヴ様。
俺は説明した。
「ジュースもケーキも木曽の産品が大部分です。
ジュースは木曽オレンチ。
ケーキは木曽麦に木曽牛の乳を練り込んでいます」
イヴ様はさておき、女の子達を見た。
商家の娘三人は満面の笑み。
貴族の娘の喰いつきは良い。
問題はないようだ。
俺はスチュワートに合図して、
マジックバッグから人形を取り出して貰った。
昨夜、錬金スキルを駆使して造り上げた物だ。
それをイヴ様の目の前に並べさせた。
一番大きな物にイヴ様の目が行く。
「これは」
「木曽で出遭ったパルスザウルスと言う魔物です」
「こわい顔、つよそう。
これは・・・」
「同じくダッチョウと言う魔物です」
「かわいいわね。
こっちは人よね」
一番小さな物を指差された。
「イライザと申します。
木曽に住む女の子です」
「イライザ、綺麗・・・」
「実はこのダッチョウと言う魔物が僕達の方へ逃げて来たのです」
「にげてきたの」
「はい、この大きなパルスザウルスと言う魔物に追われて、
僕達に擦り付けて来たのです」
俺はパルスザウルスとの一件を面白おかしく話した。
当然、俺は傍観者。
パルスザウルスを討伐したのは当家の兵士達。
イライザがダッチョウをテイムするまでを身振り手振りで語った。
思っていたよりも受けた、受けた。
「テイムしてチョンボと名付けました」
「みたい、チョンボとイライザを見てみたい」
自分に付いて来ていた副官に耳打ちした。
聞いた副官は小声で復唱すると、踵を返した。
それほど待たされなかった。
該当する人物は幸いにも近くにいた。
副官が背の高い女性騎士を連れて来た。
後宮警備に上番中の中尉であった。
俺は紹介された中尉に説明した。
「イヴ様の畝に蒔かれて種を鑑定して欲しいのです。
出来るのなら、他の子供達の畝の種と比較して下さい」
お安い御用とばかり、中尉が鑑定を始めた。
すると中尉の顔色が面白いように変化して行く。
一人頷きながら、イヴ様の畝と他の畝を何度も繰り返して鑑定した。
結論に至ったようだ。
俺とカトリーヌに報告した。
「異様ですが、イヴ様の畝の種に発芽の兆しがあります。
他の方の蒔かれた種よりも発育が早いのです。
土魔法の話は聞いていますが、これは有り得ません」
俺は説明した。
「まず最初にイヴ様の畝に他の畝とは違う魔力を感じ取りました。
所謂、生命力と言うか、活性化ですね。
その元になっているのは土なのか種なのかと迷いました。
そこで水魔法の使い手であるシンシアに水撒きをお願いしました。
普通の水ではなく、魔水です。
魔水で活性化をより促進して、答えを得ようと思ったのです。
・・・。
僕は専門家ではないので、正解かどうかの判断は差し控えます。
素人の想像として申します。
イヴ様の土魔法は土だけでなく、種にも影響を及ぼすようですね」
カトリーヌの目が点になった。
先に中尉が口を開いた。
鑑定スキル持ちだけに、理解が及んだようだ。
「ただの土魔法ではない、そういうことですね」
「はい、もしかするとですがね」
「あながち間違いではないかも知れないわね。
魔法は色々とあるのよ、方向性と言うか、偏りがね」
カトリーヌが口を挟んだ。
「私にも分かるように、お願い」
中尉が考えて言葉にした。
「身近な例で申しますと、レオン織田伯爵ですね
あの方も土魔法の使い手ですが、造られたゴーレムから判断するに、
あれは鍛冶師寄りになっています。
ただの土魔法の使い手では造れない仕様になっているので、
そう色分けしても差し支えない筈です」
カトリーヌがコクコクと頷いた。
「それは分かる。
他の土魔法の使い手では真似出来ないのよ。
それがイヴ様とは・・・」
「イヴ様は、大地魔法の色が濃いと言う話です」
シンシアの仲間のシビルが口を挟んだ。
「土だけでなく、種にも干渉できるのなら、そう言う結論になるわね」
シビルは土魔法スキル持ち。
俺達より土魔法に詳しい。
カトリーヌが疑問を口にした。
「大地魔法と言うのは聞いた事がないんだけど」
シビルが応じた。
「使い手が滅多に現れないので、あまり知られていないの。
それに当人も気付かないと言うのもあるわね。
土の中で完結してしまうから」
中尉とシビルで遣り取りした。
それを横で聞いてカトリーヌが理解したのか、フムフムと頷いた。
「肥えた土を作り、気候や害虫に左右されない種を育む。
それが大地魔法。
指導によってはイヴ様も大地魔法を使えるようになると」
俺はカトリーヌに注意した。
「無理強いはよくないですよ。
あくまでも可能性の話ですから」
「分かってるわよ、イヴ様は王女様よ。
無理強いする者はいないわ」
可能性のあるのが一人いたが、名は出さない。
イヴ様が俺に歩み寄って来て、上目遣い。
「ニャ~ン、遊ぼう」
仲間外れにされた、そう思っているのだろう。
俺は従者・スチュワートを呼んだ。
「あれを」
王宮内へのマジックバッグ等の持ち込みは禁止されていた。
それを破って持ち込んだ者は、如何なる者でも重罪に科されていた。
余程の事がない限り、処刑。
ただ特例があった。
近衛の許可。
誰でもと言う訳ではない。
国王ないしは王妃の御声掛かりを受けた者だけが、
近衛の許可のもとで持ち込めた。
本日は俺。
マジックバッグを持つのはスチュワート。
立会人はカトリーヌ少佐。
近くの四阿に移動した。
大きなテーブル二つと俺を数に入れた椅子が用意されていた。
一方のテーブルにスチュワートがマジックバックから物を取り出し、
綺麗に並べて行く。
ジユース樽、ホールケーキを入れた箱、レーキナイフ、カップ、皿等々。
普通は持参した者が毒味役なのだが、鑑定スキル持ちがいた。
中尉にお願いした。
俺達子供はもう一つのテーブルについた。
イヴ様は椅子ではなく、俺の膝の上でご満悦。
「ニャンは椅子、ニャン椅子」
それを侍女達が横目で見て、笑いながらケーキを切り分け、
カップにジュースを注いで行く。
配られたジュースを皆が飲む」
「おいちい」イヴ様。
俺は説明した。
「ジュースもケーキも木曽の産品が大部分です。
ジュースは木曽オレンチ。
ケーキは木曽麦に木曽牛の乳を練り込んでいます」
イヴ様はさておき、女の子達を見た。
商家の娘三人は満面の笑み。
貴族の娘の喰いつきは良い。
問題はないようだ。
俺はスチュワートに合図して、
マジックバッグから人形を取り出して貰った。
昨夜、錬金スキルを駆使して造り上げた物だ。
それをイヴ様の目の前に並べさせた。
一番大きな物にイヴ様の目が行く。
「これは」
「木曽で出遭ったパルスザウルスと言う魔物です」
「こわい顔、つよそう。
これは・・・」
「同じくダッチョウと言う魔物です」
「かわいいわね。
こっちは人よね」
一番小さな物を指差された。
「イライザと申します。
木曽に住む女の子です」
「イライザ、綺麗・・・」
「実はこのダッチョウと言う魔物が僕達の方へ逃げて来たのです」
「にげてきたの」
「はい、この大きなパルスザウルスと言う魔物に追われて、
僕達に擦り付けて来たのです」
俺はパルスザウルスとの一件を面白おかしく話した。
当然、俺は傍観者。
パルスザウルスを討伐したのは当家の兵士達。
イライザがダッチョウをテイムするまでを身振り手振りで語った。
思っていたよりも受けた、受けた。
「テイムしてチョンボと名付けました」
「みたい、チョンボとイライザを見てみたい」