Bランクの火魔法、ファイアスピア・火槍が飛んで来た。
Cランクの風魔法、ウィンドカッター・風刃も飛んで来た。
更には、もう一人のBランクが俺に向けて鑑定を発動した。
流石は公爵家の家来、無駄がない。
面白い。
歴とした魔法使いや兵士、複数と戦える。
まず鑑定は問題ない。
偽装に気付いて、より踏み込んで来れば自動的に撹乱が発動する。
相手の脳内を撹乱し、ついでに無用な大量のデータを送り付ける。
それでどうなるかは知らん。
攻撃して来る連中への対処で忙しいので、相手してる暇はない。
俺は水魔法、ウオータシールド・水盾を周りに張り巡らした。
それに火槍や風刃が当たる。
しかし、一発や二発では破壊できない。
焦った二人が連続して攻撃して来る。
間合いを詰めて来た兵士達も水盾に阻まれる。
槍や剣を振り回して壊そうとするが、これまたビクともしない。
見兼ねたAランクが駆けて来た。
得意の槍術一撃で水盾を破壊した。
それで持って部下達を叱咤した。
「腰を落として叩き壊せ」
理解していないようだ。
俺が反撃していない事に。
俺はAランク対策として水盾の弾力性をアップし、加えて厚目にした。
難しくはない。
瞬時で全ての水盾を新仕様に入れ替えた。
それに連中が気付いたかどうか、それは知らない。
Aランクが前進して水盾に阻まれると、
お手本とばかりに槍を振り回した。
今度は壊れない。
何度も挑むが壊れない。
怒り心頭で俺を睨む。
「卑怯者、後ろに隠れていないで前に出てこい」
魔法使いの本質は後方からの攻撃。
前に出てこいと言われて、はいはいと前に出る奴はいない。
Aランクの顔が怒り一色に染まった。
「この臆病者、尋常に勝負しろ」
児童の俺に挑むとは、なんて奴だ。
児童虐待で訴えたい。
訴える役所がないのが残念だ。
口喧しいAランクと違い、その部下達は攻撃の手を緩めない。
阻む水盾を突き崩そうと何度も何度も挑む。
蟻の一穴の故事を知っているのだろうか。
知ってるわけないな。
もっとも、その程度では俺の水盾は攻略できないのだが。
歴とした連中の実力が計れた。
やはりランクや個々の数値がモノを言う世界だ。
さて連中をどうしよう。
と、外が喧しい。
轟音も。
俺は風魔法を発動した。
テントの天井に開けられた穴から飛び出した。
何時の間にか夕暮れ。
テントの骨組みの一つを足場にして辺りを見回した。
響き渡る悲鳴と怒号。
公爵邸本館から大勢が我先に逃げ出している。
付近は来客らしき連中と屋敷使用人達が入り混じり、大混乱。
公爵邸本館そのものが無残な姿を晒していた。
見る限りの窓が破壊され、壁には穴が開けられ、
屋根の一部が崩れ落ちていた。
アリス達の仕業だ。
当のアリス達を探すと、彼女達は別館に取り掛かっていた。
風魔法で窓を粉々に破壊。
屋根や外壁にも絶え間なく攻撃を加えている。
人は狙ってないが、巻き込まれるのは承知の上とみた。
容赦のない攻撃。
俺はアリス達を止めようとは思わない。
囚われていた妖精達の気持ちが分かるからだ。
溜まっていた鬱憤はこうして晴らすしかないだろう。
足場に腰を下ろし、ジッと見守った。
下からAランクの挑発する声が届くが、相手にはしない。
ただ、念の為、魔法攻撃に備え、周辺に水盾を張り巡らした。
公爵邸表門付近が騒がしくなってきた。
脱出する馬車や徒歩の人々を押し退けるように、
新たな集団が入って来た。
奉行所の者達だ。
脱出しようとする連中を強制的に一角に押し留め、次々に入って来た。
公爵邸周辺を見遣ると、全ての屋敷が窓を全開にし、
主従の関係なく物見高い者達が身を乗り出し、こちらを見ていた。
路上の野次馬はそれ以上だ。
貴族街に平民までが波の様に押し寄せていた。
その野次馬の遥か後方には国軍の一隊が見えた。
騎兵隊を先頭に、野次馬の波を断ち割って急行して来る。
俺は念話でアリスに連絡した。
『奉行所や国軍の者達が現れた。
潮時だ、引き上げよう』
『ええ、まだお酒を回収してないわよ』
『珍しいね、お酒が後回しなんて』
『この子達から目が離せないもの。
回収して来るから、ちょっと待ってて』
アリスは皆を説得すると、一つの塊になって公爵邸本館に飛行。
壊れた窓から侵入して行く。
厨房か貯蔵庫を目指すのだろう。
奉行所の者達の行動は理に適っていた。
公爵邸から出ようとする者は全て、身分に関係なく拘束。
手の空いている者達が状況を確認すべく、
何組かに分かれて邸内を捜索する。
これに遅れて到着した国軍が加わる。
俺の尻の下の方で叫んでいたAランクの声が、
何時の間にか消えていた。
下を見渡すと、当人も部下達も姿がない。
んっ、一人、鑑定スキルを持つ魔法使いだけが残されていた。
俯せになって倒れていて、その耳から血が流れていた。
・・・見なかった事にしよう。
アリスから念話が届いた。
『回収した。
私達はダンジョンに向かうわ』
アリスはワイバーンの卵を忘れている。
俺はそれを指摘しようとして・・・、止めた。
一緒に飲まされるのは嫌だ。
俺も忘れよう。
『了解、気を付けてね』
奉行所と国軍の者達が一緒になって、下のテントに入って来た。
入るや否や、驚きの声。
「臭い」
「魔物の臭いだ」
「檻が並んでいます」
「うわー」足下が暗いので、倒れている者に気付かず、躓いて転ぶ。
「誰か携行灯を持ってこい」指示が飛ぶ。
さっそく魔道具の携行灯が持ち込まれ、明かりが点けられた。
周囲を照らす。
あちこちに人が倒れ、手足も転がっていた。
「生存している者はいるか」
それぞれが確認に当たった。
「出血多量で死んでいます」
「こちらでは二人が死んでいます」
「血を流し過ぎて危ういですが、まだ息が有ります」
結局、三人が生存していた。
すると別の誰かが叫んだ。
「魔物の幼体だけでなく、人や獣人の幼児も囚われています」
「えっ、・・・鍵は」
「掛かっているので開けられません」
それを聞いて俺は安心した。
二つの公的機関が発見したのだ。
人の口に戸は立てられない。
無視する事も、揉み消す事もないだろう。
俺は風魔法で空高く飛んだ。
途中で光学迷彩を再起動した。
こうなれば鑑定も探知も効かない。
そのまま寮の上へ転移した。
Cランクの風魔法、ウィンドカッター・風刃も飛んで来た。
更には、もう一人のBランクが俺に向けて鑑定を発動した。
流石は公爵家の家来、無駄がない。
面白い。
歴とした魔法使いや兵士、複数と戦える。
まず鑑定は問題ない。
偽装に気付いて、より踏み込んで来れば自動的に撹乱が発動する。
相手の脳内を撹乱し、ついでに無用な大量のデータを送り付ける。
それでどうなるかは知らん。
攻撃して来る連中への対処で忙しいので、相手してる暇はない。
俺は水魔法、ウオータシールド・水盾を周りに張り巡らした。
それに火槍や風刃が当たる。
しかし、一発や二発では破壊できない。
焦った二人が連続して攻撃して来る。
間合いを詰めて来た兵士達も水盾に阻まれる。
槍や剣を振り回して壊そうとするが、これまたビクともしない。
見兼ねたAランクが駆けて来た。
得意の槍術一撃で水盾を破壊した。
それで持って部下達を叱咤した。
「腰を落として叩き壊せ」
理解していないようだ。
俺が反撃していない事に。
俺はAランク対策として水盾の弾力性をアップし、加えて厚目にした。
難しくはない。
瞬時で全ての水盾を新仕様に入れ替えた。
それに連中が気付いたかどうか、それは知らない。
Aランクが前進して水盾に阻まれると、
お手本とばかりに槍を振り回した。
今度は壊れない。
何度も挑むが壊れない。
怒り心頭で俺を睨む。
「卑怯者、後ろに隠れていないで前に出てこい」
魔法使いの本質は後方からの攻撃。
前に出てこいと言われて、はいはいと前に出る奴はいない。
Aランクの顔が怒り一色に染まった。
「この臆病者、尋常に勝負しろ」
児童の俺に挑むとは、なんて奴だ。
児童虐待で訴えたい。
訴える役所がないのが残念だ。
口喧しいAランクと違い、その部下達は攻撃の手を緩めない。
阻む水盾を突き崩そうと何度も何度も挑む。
蟻の一穴の故事を知っているのだろうか。
知ってるわけないな。
もっとも、その程度では俺の水盾は攻略できないのだが。
歴とした連中の実力が計れた。
やはりランクや個々の数値がモノを言う世界だ。
さて連中をどうしよう。
と、外が喧しい。
轟音も。
俺は風魔法を発動した。
テントの天井に開けられた穴から飛び出した。
何時の間にか夕暮れ。
テントの骨組みの一つを足場にして辺りを見回した。
響き渡る悲鳴と怒号。
公爵邸本館から大勢が我先に逃げ出している。
付近は来客らしき連中と屋敷使用人達が入り混じり、大混乱。
公爵邸本館そのものが無残な姿を晒していた。
見る限りの窓が破壊され、壁には穴が開けられ、
屋根の一部が崩れ落ちていた。
アリス達の仕業だ。
当のアリス達を探すと、彼女達は別館に取り掛かっていた。
風魔法で窓を粉々に破壊。
屋根や外壁にも絶え間なく攻撃を加えている。
人は狙ってないが、巻き込まれるのは承知の上とみた。
容赦のない攻撃。
俺はアリス達を止めようとは思わない。
囚われていた妖精達の気持ちが分かるからだ。
溜まっていた鬱憤はこうして晴らすしかないだろう。
足場に腰を下ろし、ジッと見守った。
下からAランクの挑発する声が届くが、相手にはしない。
ただ、念の為、魔法攻撃に備え、周辺に水盾を張り巡らした。
公爵邸表門付近が騒がしくなってきた。
脱出する馬車や徒歩の人々を押し退けるように、
新たな集団が入って来た。
奉行所の者達だ。
脱出しようとする連中を強制的に一角に押し留め、次々に入って来た。
公爵邸周辺を見遣ると、全ての屋敷が窓を全開にし、
主従の関係なく物見高い者達が身を乗り出し、こちらを見ていた。
路上の野次馬はそれ以上だ。
貴族街に平民までが波の様に押し寄せていた。
その野次馬の遥か後方には国軍の一隊が見えた。
騎兵隊を先頭に、野次馬の波を断ち割って急行して来る。
俺は念話でアリスに連絡した。
『奉行所や国軍の者達が現れた。
潮時だ、引き上げよう』
『ええ、まだお酒を回収してないわよ』
『珍しいね、お酒が後回しなんて』
『この子達から目が離せないもの。
回収して来るから、ちょっと待ってて』
アリスは皆を説得すると、一つの塊になって公爵邸本館に飛行。
壊れた窓から侵入して行く。
厨房か貯蔵庫を目指すのだろう。
奉行所の者達の行動は理に適っていた。
公爵邸から出ようとする者は全て、身分に関係なく拘束。
手の空いている者達が状況を確認すべく、
何組かに分かれて邸内を捜索する。
これに遅れて到着した国軍が加わる。
俺の尻の下の方で叫んでいたAランクの声が、
何時の間にか消えていた。
下を見渡すと、当人も部下達も姿がない。
んっ、一人、鑑定スキルを持つ魔法使いだけが残されていた。
俯せになって倒れていて、その耳から血が流れていた。
・・・見なかった事にしよう。
アリスから念話が届いた。
『回収した。
私達はダンジョンに向かうわ』
アリスはワイバーンの卵を忘れている。
俺はそれを指摘しようとして・・・、止めた。
一緒に飲まされるのは嫌だ。
俺も忘れよう。
『了解、気を付けてね』
奉行所と国軍の者達が一緒になって、下のテントに入って来た。
入るや否や、驚きの声。
「臭い」
「魔物の臭いだ」
「檻が並んでいます」
「うわー」足下が暗いので、倒れている者に気付かず、躓いて転ぶ。
「誰か携行灯を持ってこい」指示が飛ぶ。
さっそく魔道具の携行灯が持ち込まれ、明かりが点けられた。
周囲を照らす。
あちこちに人が倒れ、手足も転がっていた。
「生存している者はいるか」
それぞれが確認に当たった。
「出血多量で死んでいます」
「こちらでは二人が死んでいます」
「血を流し過ぎて危ういですが、まだ息が有ります」
結局、三人が生存していた。
すると別の誰かが叫んだ。
「魔物の幼体だけでなく、人や獣人の幼児も囚われています」
「えっ、・・・鍵は」
「掛かっているので開けられません」
それを聞いて俺は安心した。
二つの公的機関が発見したのだ。
人の口に戸は立てられない。
無視する事も、揉み消す事もないだろう。
俺は風魔法で空高く飛んだ。
途中で光学迷彩を再起動した。
こうなれば鑑定も探知も効かない。
そのまま寮の上へ転移した。