金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(足利国の国都)54

2018-05-27 07:24:56 | Weblog
 新人冒険者講習が終わるとキャロルに誘われた。
「ねぇダン、お腹が空いたでしょう。
近くに美味しいお店があるの。行きましょう」
 彼女だけでなく、マーリンとモニカも俺の返事を待つ。
俺が同行しても嫌ではなさそうな空気感。
女児にリードされて大丈夫か、俺。
でも拒否はしない。
国都で初めて出来た同い年の友達。
女児でも縁は大切にしたい。
飛びっ切りの笑顔で頷いた。
 ギルドから少し歩いた。
一月だから外は寒い。
時折、寒風が俺達を襲う。
ところが俺達は子供、体温が高い、だからか意外と平気。
背を丸めることもなく、四人で颯爽と前に進む。
 途中から食欲をそそる匂いが漂って来た。
焼き肉に焼き鳥、焼き魚もか。・・・これ、カレー。
胃が刺激された。
 キャロルに尋ねられた。
「ダン、嫌いな食べ物は」
「嫌いなのは、まずい物」素っ気ない口調で。
「ダン、受けないわよ」苦笑いされた。
 マーリンとモニカもキャロルに同意の頷き。
国都の子供達の笑いのレベルは高いようだ。
以後、注意せねば。
 広い広場に出た。
広いから広場なんだが・・・。
匂いの発生源を見つけた。
屋台。
中央に色んな屋台が軒を連ねていた。
焼き肉、焼き鳥、焼き魚は当然として、
焼きそば、焼きうどん、ラーメン、カレーの店まであった。
これでは屋台村。流石は国都。
昼時だからか、どの店も賑わっていた。
 キャロルが言う。
「ダンはテーブルの確保、いいわね。
私達で食べ物を適当に見繕ってくるから、行儀良く待ってるのよ」
 子供扱いなのか、君達と同い年なんだけど。でも言わない。
三人は軽く打ち合わせると、それぞれ、目当ての屋台に駆けて行く。
俺は辺りを見回した。
屋台村を取り囲むようにテーブル席が無数に用意されていた。
その半分以上が埋まっていた。
それだけ集客力がある、と言うことなんだろう。
適当なテーブルを確保して待っていると、三人が食べ物を運んで来た。
まるで親鳥が巣に運ぶように・・・。
 キャロルは飲み物四人分。
マーリンは焼き肉、どう見ても六人分。
モニカは焼き鳥、こちらは七人分。
どうなんだろう。
焼き肉と焼き鳥の油ぽい組み合わせ。
俺の疑問を笑い飛ばすように、三人は食事を始めた。
「ダン、なに遠慮してしているの」キャロルに言われてしまった。
 何の肉かは知らないが、焼き肉も焼き鳥も美味しい。
村の味付けとは一味も二味も違っていた。初めての味。
醤油・大蒜は分かるが、他の香辛料の詳細までは分からない。
分からなくても口が分かる。手が止まらない。
これが国都の食文化なんだろう。
 一通り食べたところでキャロルが話し掛けてきた。
「ねえダン。幼年学校を受験かるって言ってたわよね。
どう、合格しそう」
「たぶん」
「たぶんなの」
「そりゃー、合格したいよ。
でも学校の都合もあるしね」
「学校の都合・・・、平民だから」首を傾げた。
「そう、平民だから。
建前は王族も貴族も、平民も獣人も平等に扱う、とか謳ってるけど、
実際はどうなんだろう。
ある程度、身分によって割り当てがあるんじゃないの」
 三人は目を丸くし、互いに視線を交わした。
暫くしてからキャロルが身を乗り出して来た。
「そんな噂が田舎で流れているの」
「違うよ。
俺が疑っているだけ。
・・・。
大人って汚いだろう。だから」
「確かに大人は汚いわ。
口では綺麗事を言っても、当の本人がやることは違うものね。
・・・。
もし不合格だったら」
「他の学校を受ける。
親父はガッカリするだろうけど、目的は冒険者になることだから、
別に不合格でも困らないよ」
「すると不合格でも国都にいるのね」
「いるよ」
「だったらお願いがあるの。
聞く前に、いいよ、って言って」哀願されてしまった。
「先に返事するの」
「そう」
「それが国都の流行」
「そうよ」躊躇いが微塵もない。
 キャロルだけの考えではないらしい。
他の二人も息を呑むようにして俺の返事を待っていた。
ここで断るのは子供らしくない。
如何にも子供らしく、無邪気に流れに乗るべきだろう。
「いいよ、受ける」
 三人の顔が弾けるような笑顔になった。
一斉に息を吐いて、「よかった」と顔を見合わせた。
 俺は先を促した。
「で、何を受けたの、俺」
「パーティよ。冒険者ギルドのパーティ。ようこそ私達のパーティへ」
 気付いたらパーティまで組んでしまった。
「学校があるんだけど」
「大丈夫。
学校は五日ごとに休みがあるの。
休みはどこの学校も同じ日になってるから、
学校が違ってもパーティは組めるの」
「そうなんだ、ところで君達はどこの学校を受けるの」




ランキングの入り口です。
(クリック詐欺ではありません。ランキング先に飛ぶだけです)
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ




触れる必要はありません。
ただの飾りです。
PVアクセスランキング にほんブログ村
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

昨日今日明日あさって。(足利国の国都)53

2018-05-20 06:30:27 | Weblog
 東門の冒険者ギルドの傍には人集りができていた。
新人講習を受けに来た子供達であった。
行き交う人の邪魔にならぬようにギルド側に寄り、
幾つかのグループに分かれ、ワイワイガヤガヤと雑談に興じていた。
様子から、同じ町内の友人知人で群れている、と見て取れた。
たぶん、余所者は俺一人だろう。
しようがない。
ここは東門に近い町内の子供達のテリトリー、ホームだ。
アウェー感が半端ない俺が入れる余地はない。
疎外感。
最後尾と覚しきところに黙って並ぼうとしたら、
前の方から声が掛けられた。
「ダン、こっちよ」
 手を振っているのはリス、じゃなかった、キャロル。
愛くるしい笑顔で、「こっちこっち」と俺を呼び寄せた。
何故か、嬉しかった。
思わず駆けてしまった。
 彼女の仲間らしい二人が俺を繁々と見回している。
二人ともキャロルよりも大きい。
太いのと頑丈そうなのが居た。
その二人も俺を見上げた。
 俺は遠慮気味に尋ねた。
「行列みたいになってるけど、・・・、俺も入って良いのかな」
「良いのよ。ダンの順番は私が取って置いたから遠慮しないで」
 キャロルが俺を二人に紹介した。
「前に話したダンタルニャンよ。
背が高いので成人にも見えるけど、私達と同じ十才」
 ここに居る子供達の中では俺が一番背が高い。
二番目は離れた所にいて、俺の目の高さくらい。
「ダンと呼んで下さい」俺は二人に愛想笑いを振りまいた。
「私はマーリン」太い子。
「私はモニカ」頑丈そうな子。
 俺は男児にしては精神年齢が高い、と自負していた。
ある種の優越感、・・・。
でも女児達は見た目通りにしか扱ってくれない。
何のかのと遠慮ない物言い。
「ねえダン、ダンってば。
尾張は知ってるけど、戸倉村、聞かないわね。名産はないのかしら。
たとえば桃とか、梨とか、蜜柑」
「ダンダン。
村長の家に生まれたと言うけど、結局は私達と同じ平民でしょう」
「冒険者になって一攫千金を狙うんだよね」
 玩具か、弟分扱い。
そうこうしているうちに、ギルドの女性職員が俺達に声を掛けてきた。
「お待たせ。入って良いわよ。
二階に上がって左の会議室よ」
 会議室の入り口では真偽の魔水晶が出迎え、一人ひとり確認した。
確認を終えた俺は認識票を新しいのと交換し、
大きな袋に入れられた新人冒険者セットを受け取ると、
キャロル達に手を引かれるようにして長テーブル席の一つに着いた。
 講師は見知った顔だった。
「東門の冒険者ギルドに、ようこそ。
優しい職員のバリーです」
 国都に入った初日に面識を得たバリーだった。
カールの友人で、大柄な身体に厳つい顔。一見すると悪党。
ところが子供達とは顔馴染みらしい。
あちこちから好意の笑いが漏れた。
「新人冒険者セットの説明に入ります。
袋から中身を取り出して並べて」
 竹籠。薄い本。折り畳まれた一枚の地図。
園芸用スコップ。園芸用鋏。
それらをテーブルに並べた。
「本を開いて。
国都周辺で採れる薬草の絵です。
薬草と言っても色々です。
草だけではありません。
木もあれば川草、果樹、それに虫、川魚も含まれています。
それらを含めて薬草、と言います。
この本には国都周辺で採れる薬草の絵と、
その薬草の必要とされる部位が描かれています。
薬草でも、それぞれです。
花が必要な薬草もあれば、実が必要な薬草、葉が必要な薬草、
茎が必要な薬草、根っ子が必要な薬草、球根が必要な薬草とあります。
その辺りを正確に覚えること。
・・・。
採れた部位は洗う必要はありません。
塵や土塊を軽く落として、竹籠に入れてから、
その日のうちにギルドのカウンターに提出して下さい。
新鮮さが一番です。
部位の状態によって買い取り値段が上下するので、
その辺りはよく注意して。
・・・。
次に地図を広げて。
薬草の自生する箇所が描かれています。
採る際の注意です。
まず森や雑木林には立ち入らないこと。
魔物に遭遇する確率が高いからね。
君たちのランクでは魔物相手だと、まず死にます。分かるよね。
父さん、母さん、兄姉が泣くよ。友達も。
冒険者だけど、無駄死にするのは冒険者とは言いません。
確実に生還するのが冒険者です。
 次に取り尽くさないこと。
取り尽くしたら、次の年から採れなくなり薬師や商人達が困ります。
採取を専門にしている冒険者達も迷惑します。
だから絶対に取り尽くさない。
目安として、必ず三株は残すこと。これはギルドからの命令です」
 人は見掛けによらぬもの。
バリーは顔に似合わぬ丁寧な説寧をしたばかりではない。
最後に笑みを浮かべて一礼をした。




ランキングの入り口です。
(クリック詐欺ではありません。ランキング先に飛ぶだけです)
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ




触れる必要はありません。
ただの飾りです。
PVアクセスランキング にほんブログ村
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

昨日今日明日あさって。(足利国の国都)52

2018-05-13 06:48:49 | Weblog
 ブルーノは目を覚ました。
右隣から伝わる人肌が温かい。
ベティが心地好い寝息を立てているので身動ぎは最小限にした。
ゆっくり、ゆっくり首を左に回した。
壁時計の方向を見た。
灯りとは反対方向なので、しかとは分からない。
たぶん、深夜の二時辺りではなかろうか。
 ブルーノは足利国の現国王、二十一代目のブルーノ足利であった。
年齢は年が明けたので二十八才。
隣で寝息を立てているのが王妃のベティ。
こちらは二十二才。
二人は後宮の最深部にいた。
 ブルーノは人の気配に気づいた。それも複数。
足音を消し、こちらに確実に近付いて来た。三人。
 後宮は女人のみで運営されていた。
当然、内外の見廻りの人員も全てが女。女武者達。
選び抜かれた者達が四六時中、隊を組んで巡廻していた。
彼女等の目を掻い潜って、こちらに接近するのは難しい、と言うか、
まず絶対に無理。
万が一、暗殺者の接近を許しても、最後の関門がある。
この部屋の前に立つ不寝番、二人。
女武者の中でも屈指の武芸者が最深部を守っていた。
 何事も起こらず、三人が部屋の外で足を止めた。
不寝番の二人と静かな言葉の遣り取り。
深夜を考慮して荒げた声は上がらない。
 暫くして小さなノック。
コンコン、コンコン。
不寝番の二人は、国王を起こす事態が出来した、と判断したのだろう。
 ブルーノが身を起こすより早く、ベティが声を上げた。
「どうしたのです」寝ぼけ顔でブルーノを見上げた。
「何か起きたらしい」
 聞くや否やベティはベッドから滑り落ちるかのように、床に降り立った。
薄明かりに全裸が映えた。
若さゆえか、弛みは一切無い。
彼女は暖房機の傍のコートスタンドよりガウンを取った。
それを羽織ると、「私が」とブルーノを手で制し、ドアの方へ歩み寄る。
「開けなさい」指示をした。
 ドアが小さく開けられ、一人が顔を覗かせた。
後宮の当直の長がいた。
「夜分、申し訳ありません。
国軍本部より危急の書類が届けられました」
 差し出された封筒一通を受け取ると、ベティは尋ねた。
「その使いの者は如何しました」
「表に待たせております。
国軍の当直の長で、少将です」
 ベティは頷くと、急ぎ封筒をブルーノに手渡し、
魔力で暖房機を全開にし、部屋の灯りを次々に点けて行く。
 ブルーノはベッドの上で上半身を起こしたままであった。
肌着を身に着けていないので寒いが、女達の目があるので我慢した。
受け取った封筒から書類を抜き出した。
岐阜の件の報告書、とある。
読み進めて行く。
 ベティがブルーノの上半身にガウンを掛けながら尋ねた。
「なにやら吉報のようですわね」
 表情が緩んでいたらしい。
読み終えた報告書をベティに手渡した。
「私が読んでも構わないのですか」
「これは構わない。みんなにも朝一番で知らせることだ」
 ブルーノはベッドから下りると、クローゼットへ向かった。
着替えていると、時折、ベティの声が聞こえてきた。
「まあ」
「ほんとに」
「凄いわね」
 報告書を読みながら一人で感心していた。
そしてブルーノが部屋を出て行こうとすると、
「国軍本部へ向かうのですか」と尋ねてきた。
「岐阜から伝令が五騎到着しているそうだ。
現地の様子を直に生の声で聞こうと思ってな」
「それなら私も一緒して宜しいですか」甘えてきた。
「んっ、・・・王妃なら問題ないだろう」
「ですわね。ちょっと待って下さいね」クローゼットに駆け込む。
 部屋の外にいた当直の長が慌てふためき、
共の二人を連れて王妃の手伝いに走り寄る。

 一月五日になり、俺は一人で冒険者ギルドに向かった。
新人講習を受けるためだ。
カールはいない。
実家に顔を出す、と言っていた。
 ギルドの方から事前に、
「当日は同伴者の方の付き添いは無用です。
当日はギルドも平常業務をしており、
混雑回避の為にご協力をお願い致します」と釘を刺されていた。 
それもあってカールはこの日、里帰りすることにしたのだ。
 街中を行き交う人々の表情が明るい。
岐阜からの吉報のせいだろう。
過去、魔物の大移動を阻止した例は記録にない。
小移動ならあるかも知れないが、大移動に限ってはない。
その大移動を岐阜城郭で阻止したのみならず、掃討に打って出、
元の木曽谷大樹海へ追撃している、と言うのだ。
 そこかしこから岐阜の斉藤伯爵を褒め称える声が聞こえた。
賞賛一色で、功績で侯爵に陞爵 されるだろう、とも。
 俺が気になったのは関連して名が上げられたレオン織田男爵。
彼がゴーレムを多数生み出して魔物を撃退した、と聞いた。
多数のゴーレムを一人で生み出したのみならず、魔物退治。
生憎、そこまで人の魔力は多くない。
現場で直に見ていないから判断は下しかねるが、
導き出される答えは、
土の魔法が使える魔法使い達を大勢雇用しているのではないか、
と言うことだ。
それはそれで恐い。
男爵は何か目論んで・・・。
軍用ゴーレム、・・・。
彼が尾張の織田伯爵の家系でなければ、どうでもいいのだが、
尾張には俺が育った村がある。
家族だけでなく友人知人も住んでいる。
気にならぬ分けがない。




ランキングの入り口です。
(クリック詐欺ではありません。ランキング先に飛ぶだけです)
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ




触れる必要はありません。
ただの飾りです。
PVアクセスランキング にほんブログ村
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

昨日今日明日あさって。(足利国の国都)51

2018-05-06 07:04:20 | Weblog
 俺達四人は冒険者あるある話に花を咲かせた。
色んな冒険者パーティが逸話を残していたので、
話題には事欠かなかった。
たわいない話で寒風を凌いでいると、行列も二倍ほどになっていた。
 ギルドの扉が内側から開けられた。
「お待たせしました。
これから受付を開始します。
番号札を渡しますので、中に入って順番をお待ちして下さい」
 女性職員が声を張り上げて、みんなを招き入れた。
温かい空気と漂う珈琲の香り。
中は魔道具の暖房機で温められ、併設のカフェーも営業していた。
行列の後方にいた何組かが、
誘い合わせたかのようにカフェーに吸い込まれて行く。
 全てのカウンターで登録できる態勢になっていたので、
それほど待たされることはなかった。
サクサクと行列が消化されて行く。
直ぐに順番がきた。
キャロルとシンシアは右のカウンター。
俺とカールは左隣のカウンター。
 カウンターの女性職員の笑顔と、真偽の魔水晶が迎えてくれた。
「ようこそ、冒険者ギルドに。入会手続きですね」
 手渡された手続き用紙に必要事項を書き込むと、
「カードをお作りしますか」と尋ねられた。
入会すると冒険者カードにするか、認識票に新たに刻印するか、
二者択一になっていた。
「冒険者は荒っぽい仕事が多いのでカードだとよく失う。
首から下げる認識票は落とすこともない」とカールから聞かされていた。
俺は認識票にした。
認識票を外して手続き用紙と一緒に、カウンターに差し出した。
 職員は手続き用紙を改め、書き漏らしがないことを確かめると、
認識票を魔水晶に翳した。
発光は青。
同伴者のカールの認識票も青。
「新しい認識票は一月五日にお渡しします。
それまでは旧来の物を使っていて下さい。
一月五日に交換しますから、なくさないで下さいね」認識票を返し、
「新人講習も当日です。必ず来て下さいね」と念を押された。
 カウンターで合計1000ドロンを支払った。
入会金に新人講習会料金、新人冒険者セット、新しい認識票の料金。
果たしてそれが高いのか安いのか。
平民の平均日給に近い、ということだけは分かった。
 カールは手慣れていた。
キャロル達が手続きが終わるのを待って、
「寒いから温かい物でも飲んで行きませんか」誘った。
同伴者のシンシアは家庭教師という立場なので目を白黒させたが、
キャロルが嬉しそうなのを見て、苦笑して頷いた。
「ちょっとだけなら」
 カールは俺を捨て置いて、二人を店内に案内した。
まさか、とは思うが、俺を忘れてナンパなのだろうか。
それとも、ただ単に気が良いだけなのだろうか。
俺は疑問を抱えながら、渋々三人の後ろに付いて行った。
 四人掛けに座りながらカールが俺を振り向く。
何故か、俺に軽くウインク。
もしかして、・・・、俺にナンパ指南、なのか。
 
 国都の中央に王宮があり、その回りには役所が建ち並んでいた。
そしてこの区画は外壁と同じ高さの壁で市街地からは隔てられていた。
堀はないが許可のない者はまず立ち入る事ができない。
 王宮区画に通う官吏は、たとえ年末年始と言えど途絶えることがない。
忙しいのは昼間だけではない。
夜間でも残業している部署があれば、窓口を開けている役所もある。
 この夜、深夜。外壁の東門。
火急の伝令が飛び込んで来た。
騎兵が五騎。
すでに跳ね橋が上げてあるので、鐘楼に向けて光の魔法で合図をし、下ろさせた。
 暫く待つと、門の片側が少し開けられて門衛二人が駆け出て来た。
一人は魔道具の龕灯機、一人は槍。
門の向こうでは多くの人影が忙しなく動き回っていた。
万一に備えているのだろう。
 門衛が龕灯機で五騎を照らし、誰何した。
「何者だ」
「岐阜地方駐屯地の者です。
これを国軍本部へ届けに参りました」
 先頭の騎兵が報告書の入った竹筒を手渡した。
門衛は竹筒を確認した。
確かに岐阜地方駐屯地の封印がしてある。
剥がされた形跡はない。
「異常はないですね。
岐阜からと言うことは、魔物の大移動の件ですか。
それで、どうなっています」竹筒を戻して尋ねた。
「詳しくは、これに」竹筒を指し示す。
口は固い。
しかし、言葉にはしないが、口元を緩めて表情で現す。
「そうですか。よかった。
・・・。
先触れを出しておきますので、一息ついてから向かって下さい」
 五騎は真偽の魔水晶で身元の確認を済ませると、
用意された珈琲を飲んで一息入れた。
ある程度、時間を推し量ると、頃合い良しと騎乗した。
 先触れのお陰で王宮区画の門も問題なく入れた。
門内には騎兵一騎が待っていて、国軍本部まで先導する、と言う。




ランキングの入り口です。
(クリック詐欺ではありません。ランキング先に飛ぶだけです)
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ




触れる必要はありません。
ただの飾りです。
PVアクセスランキング にほんブログ村
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

* フォントサイズ変更

* フォントサイズ変更 * drop here