金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(どうしてこうなった)15

2024-03-03 13:28:29 | Weblog
 イヴ様から良い香りがした。
石鹸。
隣の軍幕にお風呂が設置されていた。
「ニャ~ン、どうしたの」
「いいえ、さあ、食事にしましょう」
「わたしが、あんないする」
 イヴ様が俺の手を引かれた。
テーブルに案内された。
侍女二人が椅子を引いて待っていた。
「お二人様、こちらへ」
 二人で並んで席に着くと、それが合図になった。
次々と料理が運ばれて来た。
育ち盛りの俺には大盛ばかり。
流石にイヴ様に大盛はない。
バランスを考えてか、小鉢が並べられた。
ところがイヴ様、嫌いな物を俺の方へ寄越す。
「ニャ~ン、いっぱいたべるのよ」
 断れない。

 頃合いを見ていたのか、エリス野田中尉が側に寄って来た。
彼女に耳打ちされた。
「別館の掃除完了しました」
 掃除には色んな意味合いがあった。
「増員できたんだね」
「はい、それも」
 俺はイヴ様の後ろに控えている侍女を見た。
察した彼女が頷いた。
あちらも完了か。
男達の多くが管領の威圧に屈したのに比べ、彼女達は忠実で、且つ、
仕事も出来る。
もっとも、管領の膝下に入った女達がいたのも事実だが、・・・。
まあ、人生色々・・・。
個人としての思惑もあれば、家としての意向もある。

 食事を終えると俺はイヴ様の手を引いた。
「さあ、参りましょう」
「どこへ」
「お部屋へ」
 別館へ案内した。
イヴ様と俺を侍女とメイドが囲む。
さらにその周りを、エリスと女性騎士の一団が固めた。
少し遅れて、うちのメンバーが付いて来た。
執事のスチュアート、メイド長のドリス、メイドのジューン。
護衛のユアン、ジュード、オーランドの三名。

 庭園の側に別館があるのだが、増員された近衛の男性騎士の隊が、
隊伍を組んで立哨と巡回を受け持っていた。
別館と男性騎士の安全性は、エリスが掃除完了として保障していた。
その言葉を鵜呑みにはしないが、頼りにはしよう。

 二階の部屋の一つがイヴ様の寝室になるのだが、念の為、
トラップとしての寝室も二つ用意された。
なので寝室は計三つ。
正解の寝室は・・・、イヴ様に自分の寝室を選んで貰う。
だから、事前に知る者はいない。

 イヴ様を侍女とメイドに任せ、俺は階下のホールに入った。
ここを警護指揮所とした。
早速、エリスに新たな提案をした。
「イヴ様の警護として、イライザとチョンボを国都へ呼び寄せた。
たぶん、今頃は屋敷に入って待機してると思う。
どう、ここへ来てもらうかい」
 美濃の代官、カールに宛てた手紙でそう要請した。
その手紙はエリスが軍事郵便扱いにしてくれたので、
翌日には配達済みのはず。
イライザはカールの妻だが、同時に領地持ちの男爵。
女男爵。
チョンボは彼女にテイムされた魔物、ダッチョウ。
一人と一頭はイヴ様のお気に入り。
それはカールも承知のこと。
返事は貰ってないが、既に国都に入っている頃合いだろう。
なにせチョンボが飛べるので、国都まではほんの一っ飛び。

 エリスが諸手を挙げて歓迎した。
「勿論、大歓迎ですよ」
 非常の際、イライザが大型のベビーキャリアを胸元に装着し、
それにイヴ様を入れ、チョンボに乗って大空に飛び立つ。
こんな安全策は二つとない。
「それじゃあ、それで決まりと。
うちからの案内はオーランドを出す。
明日の朝一、屋敷へ近衛を差し向けてくれ」

 俺はようやく一人になれた。
用意された部屋で横になった。
当然、イヴ様の向かいの部屋だ。
光魔法を小さく起動した。
まず、心身の疲労を取り除く、ライトリフレッシユ。
それから、入浴と洗濯の合わせ技、ライトクリーン。
香り付き。
 横になったままステータスを確認した。
本来のHPとEPに異状はない。
さっきまでの疲れは、ただの気疲れだったようだ。
ああ、責任を負うって、なんて難しい・・・。
こんなんなら、大人になりたくないな。

 脳内モニターを起動した。
ます、地図機能に識別を重ねた。
そして、探知魔法を起動した。
頭上高くへ魔力の塊を打ち上げた。
無音で破裂させた。
大輪の花火のように、八方へ薄く広げて行く。
これに気付く魔法使いはいない筈だ。

 おおっ、見つけた見つけた。
花の蜜に吸い寄せられるように、それらが飛んで来た。
アリスとそのエビス飛行隊、計十五機だ。
こちらの合図に気付いての進発らしい。

 飛行隊が国都の上空に達してホバリングを開始した。
うちの二機が下降した。
俺は窓を少し開けた。
アリスとハッピーが機体を収納し、窓から飛び込んで来た。
『おひさ~』
『パー、元気だったぺか』
 俺は二人を眺めた。
変わらぬ笑顔、旅を満喫したらしい。
『遅いじゃないか』
『わりい、わりい、里のお婆に長居されられちゃった』
『ピー、お婆、怖い怖い』

 そんなこんなで二人は旅の話に入った。
聞かされた俺は、目を点にした。
当初は反乱の地、島津伯爵領へ赴き、
魔物、キャメルソンを駆使する傭兵団と遊ぶのが目的だったはず。
当然、キャメルソンとの力比べが前提であったが。
なのにコラーソン王国まで足を運んだ・・・、とは。
俺はそこまで頼んだ覚えはないんだけど。
『誰か怪我した人は』
『エビスが頑丈だから怪我人はいなわよ』
『プー、そんな間抜けはいないっぺ』
 だよね。
俺はそれでも確認する必要があった。
『コラーソン王国軍は』
 反乱に乗じて薩摩か大隅に拠点を築く恐れがあった。
『たぶん、引き返したと思うわよ』
『ペー、王都と周辺がねえ』
 二人の話を吟味するに、話通りなら王国の母体そのものが潰れた・・・。
エビス十五機の全力なら、それも可能かも知れないが・・・。
いいのだろうか。
その王国の民は・・・。
魔物が跋扈する地になって、果たして人が生きて行けるものだろうか。
 俺は逃げた。
話題を変えた。
今、俺とイヴ様が置かれた状況を説明した。

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