LOVE STORIES

Somebody loves you-J-POPタッチで描く、ピュアでハートウォーミングなラブストーリー集

ペーパーリレーション 4

2016-12-19 13:23:41 | 小説


(より続く)

 こうした場合、一切関わりを持たないことが大人の賢明な判断の第一だ。次の賢明な判断は、模試を実施した予備校に判断を仰ぐことだろう。しかし、それも一笑に付されるにちがいない。いつだって私は賢明な判断ではなく、物事がもめそうなややこしい選択肢をとるきらいがある。そう、私は高校に電話して、クラス担任の教師を呼び出したのである。赤塚と名乗る電話の向こう側の声は、若い女性のように聞こえた。しかし、電話の応対に慣れたプロフェショナルは50、60を過ぎた婦人でも、若々しい声を出すことができるものだ。電話口での応対は冷静なトーンで、あくまで話を聞いておくという程度だった。私も、本来こういうことはくちばしをはさむ立場にはないこと、事情を学内的に知らせてもよいが、予備校の方には内密にするようにと伝え、彼女も了承した。

「黒川さんなら大丈夫だと思います。リストカットの跡もないですし」

「一人ずつチェックしてるのですか」

「いえ、あの子卓球をやっているもので、そんなことすれば一目で分かってしまいます。手首にサポーターや包帯を巻いてもいないようですし」

「なるほど」

「今すぐというわけにはゆきませんが、模試の返却後に本人を呼んで聞いてみます」 

 あくまで差し迫った脅威はなく、参考までに話を聞いておくという態度に思われた。

「でも、どうしても気になるとおっしゃるというのなら、学校までいらしてくださって結構です。もしお手間でなければ」

特に交通費が出るわけでもないだろう、ただ働きのボランティアである。ただ、職業柄学校の雰囲気を知っておくのは無駄ではないと思った。

「わざわざお知らせいただいてありがとうございます。では、明日の午後4時に」

 ほっと肩の荷が下りる。こういう情報は、たとえその実現の可能性が低いものであろうとババ抜きのババと同じで、手元にキープしておくとろくなことはない。しかるべき人物にバトンを渡してしまえば、寝覚めの悪さは解消するのである。答案はすでに予備校に郵送で返却してあったが、念のため、黒川瑠衣の答案を、自宅の一体型プリンターでコピーしておいたのだった。                                             

                                                (へ続く)    


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