LOVE STORIES

Somebody loves you-J-POPタッチで描く、ピュアでハートウォーミングなラブストーリー集

ペーパーリレーション 2

2016-12-18 15:35:13 | 小説

2 

1より続く)

 模擬試験の採点講師(あるいは採点者)は、主婦でもない限り、あまり効率のよいアルバイトには見えないが、どうしていろいろな面で捨てがたい魅力を持って いる。予備校も浪人生のコースはほとんど崩壊状態で、昼間はガラガラだからめったなことでコマが回ってくることはない。夕方以降の講義だけだと過当競争に なり、一つの予備校でコマ数を確保できず、結果あちらの予備校・こちらの学習塾と掛け持ちになる。しかし、これも人気商売で、今年あったコマ数が翌年ある とは限らない。さらに、予備校業界全般で、リストラの渦が巻いていた。かつて多くの受験参考書を出していた大御所的な存在でさえ、人数が集まらなければコ マ数を減らされたり、時給をダウンさせられたり、クビになったりした。一時期一万円を超えていた私の時給も、いつしか五千円を割り、三千円を割ろうとして いた。小規模な塾では、知識や経験のあるベテランよりも二十代の若手の元気はつらつとした授業の方が人気がある時代なのだ。学生のアルバイトなら時給2千 円もあれば御の字で引き受けることだろう。コマ数の減少によって減った収入を何とか補てんしなくてはならない。予備校も、専任ではなく、非常勤となれば、 社会保険もなければ、退職金もない。単純に独身者が生活してゆくだけなら20万円もあれば十分だが、それでは何の保証もない浮草の生活だ。社会保険も加入 し、病気や怪我の場合仕事を休めるだけの貯金を作ろうとすると、やはり額面で30万以上は必要だろう。

  そんなとき、活躍するのが採点講師というお仕事だ。一つの予備校だけなら、マークシート方式の試験を除き、年に十回程度でトータルしてもサラリーマンの一 月分の収入になるかどうかだが、複数の予備校を掛け持ちすれば3倍程度になり、バカにできない金額になる。さらに、小論文や国語など複数の教科をかけもち するという裏技もある。最初に難関大学入試レベルの筆記試験を受けて合格してしまえば、授業のようにリアルタイムで質問が来ることはないし、採点要領は細 かく決まっているので、日ごろその教科を教えてなくても無問題だった。もっと割のよい仕事としては、予備校の模試の出題があったが、これはパイそのものが 小さいために、めったなことでは回ってこない。つまり、現在の私にとって、採点講師の仕事は、授業による収入減を補うリスクヘッジであり、経済的な生命線 となっていたのだった。

                                                                                       (へ続く)   

 

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『ホワイトラブ』 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19

 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関わりがありません。

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