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LOVE STORIES

Somebody loves you-J-POPタッチで描く、ピュアでハートウォーミングなラブストーリー集

ホワイトラブ 16

2014-11-12 12:14:33 | 小説

16 Friends & Lovers
15より続く)

(映画パンフレット用あらすじより)
 近藤京介(会堂竜二)は、かつて野球部のエースであった。野口宏美(浅倉洋子)は野球部のマネージャーでその恋人。京介の友人で、同じ高校のボクシング部でナンバーワンだったのが酒井誠(シンイチ)だった。インターハイの常連で、勉強でも上位の優等生。その幼なじみが西条かな(白井愛)だった。しかし、甲子園でも注目を集め、スカウトまで学校に殺到するほどだった京介だが、練習のしすぎで肩を壊し、プロ野球選手としての将来も閉ざされ、自暴自棄に陥る。一方、誠は有名私大への推薦入学を決め、人生の明暗が大きく分かれてしまった。高校を中退し、酒浸りになった京介を見て、あまりの醜態に腹を立てた誠は京介を袋叩きにしてしまう。しかし一方的に殴られっぱなしの京介を見て、かなは誠と対立し、その場で京介の介抱にあたるのだった。宏美はキャバクラで働きながら京介を支えるが、やがて喧嘩別れしてしまう。だが、音楽との出会いが京介を変えた。たまたま仲間に誘われたコンサートで雷に打たれたような衝撃を受け、それから京介は狂ったようにギターの練習をし、いつしかインディーズバンドのボーカルとして活躍するようになっていた。それを陰で見つめるかな。やがて二人は激しい恋におちる。一流企業の営業職についたものの、合わない営業の仕事に精魂疲れ果てた誠は、かなと再会しよりを戻そうとする。しかし、その前に現れた京介は、今やスーパースターとなっていた。アル中になり、身を持ち崩した誠を見た京介は、かつての自分の姿を誠の中に見つけ、雨の中で、殴り倒す。高校時代ボクシングでは無敵を誇った誠も今は京介のなすがままだった。なぜ、殴り返さないんだ。昔の闘志はどこへ行ったんだと泣きながら殴り続ける京介。それを雨の中、見つめるかなと宏美。人生と恋の明暗が変転するドラマの結末は?

 恋と友情、勝者と敗者、人生の明と暗が逆転し続ける物語はあまりにもベタだった。下手な芝居をしたら目も当てられないと思った。不自然なストーリー展開を、自然に感じさせるまでに、人物にリアリティがなくてはいけない。それを実現するのが、役者の仕事だった。僕は、酒井誠の役柄の中にどんどんとはまり込んで行った。それも高校時代から、大学、社会人という年齢を加えながら。難しい方程式に向かい合ったように、頭の中が混乱し、狂いそうになった。わけわからない。こんな人間になれるわけない、死ぬと思った。夜中になってつい電話で那珂川さつきさんに弱音をぶつけてしまった。

「いいこと、シンイチ。あなたは役者であって監督じゃないの。あなたが考える必要なんてないのよ。映画は一人で作ってるんじゃないんだから。もっと周りを信頼するのよ。全部を理解してやろうなんて考えてはダメ。その場のシーンだけを考えて演じなさい。そうすればその時の役柄にふさわしい演技ができるはずよ」
 今を生きろ、それはほとんど僕が白井愛に言った台詞と同じだった。ただ、僕はスタッフを信じることができなかっただけなのだ。

「ねえ、シンイチ。トリュフォーの『アメリカの夜』って映画知ってる?あの映画を見ればきっとあなたの何かが変わるわ。今からでも、ビデオをレンタルして来て、見なさい。私に言えることはそれだけ。じゃ、おやすみ。頑張ってね

 フランソワ・トリュフォー監督、La Nuit Americane 『アメリカの夜』。それは映画についての映画、映画づくりの困難と喜びを作品全体で表現した映画だった。一本の映画を作るために、大勢の人々が集まっては分かれてゆく。人生、恋、旅、失敗と成功、涙と笑い、そのすべてがそこにあった。彼女の言葉の魔法にかかったのか、僕はその映画をずっと泣きながら見ていた。猫が皿の上のミルクを飲むという、たったそのシーンを撮るためだけに、映画を作る人たちは人生を賭けるのだ。

(17へ続く)

この物語はフィクションです。実在の人物団体とは一切関係ありません。

『ホワイトラブ』目次
1.プロローグ
2.ホテルニューイサカ
3.白井愛
4.セントラルパーク
5.サタケ商店街
6.エトワール
7.ヤメセン
8.  那珂川さつき
9.White Love
10. 視聴率

11.フェニックス
12.ツダマガ
13.那珂川さつき PART2
14.読書の時間
15.相互作用

16.Friends & Lovers



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