LOVE STORIES

Somebody loves you-J-POPタッチで描く、ピュアでハートウォーミングなラブストーリー集

ホワイトラブ 13

2014-11-09 13:10:31 | 小説

13 那珂川さつき PART2   
12から続く)

 仕事の空きを見つけては、僕はこまめにアルバイトを入れていた。ブログの更新分の手当が上乗せされたので事務所から振り込まれる金額はかなり増えたが、手取りはまだ以前のアルバイトの合計に満たなかった。白井愛の話を聞いて、少しはお金を貯めなくてはいけないと思うようになったのだ。二つのアルバイトでは、完全にその役割になりきることを心がけた。スタッフには芸能界で仕事をしていることは伝わっていたが、店の中では一切話題にしないように、店長からお達しが出ていた。

 『ヤメセン』は20パーセント台の高視聴率をキープして、続いていた。僕の出番も増えたが、やはりアクションシーンが多かった。歩道橋から手すり越しに飛び降りるシーンとか、子守りを任された公園で大車輪をやって、それまで口を聞こうとしなかった男の子にお兄ちゃん凄いと言われるシーンとか。もっとも、歩道橋から飛ぶシーンは、真似をする子どもが出るといけないという理由でボツになったらしい。

 那珂川さつきには、番組の収録の後で、よく飲みに誘われた。当然他のキャストや番組スタッフも同席だが、なぜか番組そのままのノリで、ああ、シンイチ、そこの氷とってくれない、サンキューとか、あごで使われることが多かった。でも、冗談めかした話ばかりの中で、ちらりと本音トークをしてくるので、油断ならなかった。

「シンイチ君、最近恋してるでしょ」
「ええ、してます。那珂川先生にベタ惚れです」
「そうであろう、そうであろう。でも、ワシは見抜いておるのだぞ。わし以外にも好きなおなごがおってな、その子はヌシと同じ不幸の星の元に生まれ、それでもけなげに頑張っているので、ほうってはおけないのであろう。
「なぜ、そのようなことを、お代官様」
「ヌシのやることは何から何までお見通しだ。恐れ入ったか」
「ははー。で、これから先は、どのようにしろと。」
「焦らず、勝ちに行かず、地道に五年でも、十年でも待つのじゃ。要は、負けないことじゃ」
 まるで人生の辛酸をなめつくした老人のような口調で、さつきさんは言った。

 最後にぼそっと、急に女っぽくささやくような声で、彼女はこう付け足した。

「大事にしろよ、白井愛

 地獄耳。思わず口にしていた水割りを吹き出しそうになった僕を見据えて、彼女は高笑いした。

14へ続く)

この物語はフィクションです。実在の人物団体とは一切関係ありません。

『ホワイトラブ』目次
1.プロローグ
2.ホテルニューイサカ
3.白井愛
4.セントラルパーク
5.サタケ商店街
6.エトワール
7.ヤメセン
8.  那珂川さつき
9.White Love
10. 視聴率

11.フェニックス
12.ツダマガ
13.那珂川さつき PART2

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