LOVE STORIES

Somebody loves you-J-POPタッチで描く、ピュアでハートウォーミングなラブストーリー集

ホワイトラブ 8

2014-11-04 08:55:05 | 小説

8 那珂川さつき
から続く)

オーディション合格の知らせは、長瀬さんからじかに聞かされた。
「本当にビッグチャンスだから頑張るのよ」
「はい」
「あとね、事務所であなたのブログ作っておいたから、これから自分で更新するのよ。大したこと書かなくていいから。食べ物のこととか、番組のこととか。でもよその店の悪口も、番組やキャストの悪口も一切書いては駄目よ。たとえ、それが誰もが知っている疑いのない真実であっても。若いとついつい正義感に任せて書いちゃうのよね。でも、それをやったらどれだけ後始末が大変かは想像つくでしょ。それから共演者とは、許可もらってなるべく一緒に写真を撮るように。根回ししてあるから、ブログに載せても全然平気よ。このノートパソコン、自由に使っていいわ。それから、携帯も専用のを渡しておくから」

 ノートPCも、携帯電話もリンゴ印のやつだった。何という素早さ、手回しのよさだろう。さすが、五指にはいるだけのことはある。そんじょそこらの貧乏事務所とはわけが違うのだ。

 白井愛からも電話があった。
「凄い。『ヤメセン』レギュラー出演なんだって。私も出たいな~」
「ディレクターがいつか使いたいって言ってたよ」
「本当?」
「本当。出られるといいね」
「ねえ、好きなタレント聞かれて、私の名前挙げたでしょ
「うん、つい、いけなかった?
「ううん、とっても嬉しかった。でも、悔しかったな。那珂川さつきさんの後だったから」
「それは社交辞令で」
「わかってる。私でもそうする。でも、あの人は特別。ヤバいの、素敵すぎるもの」
「そうなんだ」
「会えばわかるって」

 那珂川さつきは二十代後半、ストレートの黒髪が似合う面長でスリムなスタイルの人気女優だった。凛とした立居振舞、上品だがシンの強さがうかがえる語り口、気さくで気取らない性格で、現場でも男女を問わず人気があった。

 番組のための初顔合わせでも、ガチガチになり挙動不審になりかけていた僕に声をかけてきたのは彼女の方だった。
「あなたがシンイチ君ね。那珂川さつきです。よろしくね」
 にっこりと笑い、手をさしのべてきた。
「こちらこそよろしくお願いします
 真っ赤になりながら、手を握り返した僕を見ながら、スタッフは笑っていた。
「いろいろあると思うけど、何かあったら相談して。頑張るのよ」
 僕にだけ聞こえるような小声で耳打ちした。うわ、男前。惚れそうやん。彼女が離れてもしばらく放心状態だった僕は、あることに気がついた。
 そう、一緒に写真撮るのを忘れていたのである。
 先は長い。まあ、いいか。

(9へ続く)

この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切かかわりありません。


『ホワイトラブ』目次
1.プロローグ
2.ホテルニューイサカ
3.白井愛
4.セントラルパーク
5.サタケ商店街
6.エトワール
7.ヤメセン
8、那珂川さつき

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