LOVE STORIES

Somebody loves you-J-POPタッチで描く、ピュアでハートウォーミングなラブストーリー集

ホワイトラブ 3

2014-10-30 15:52:09 | 小説

3 白井愛
から続く)

 たとえアルバイトであろうと、機械的に作業をするだけではつまらない。だから、何か言われた以外のことを僕はやろうとした。こっそりと自分の世界を店の中に築くのだ。それを指摘され苦情を言われたらその時はその時だ。ブックオンでは、著者の五十音順が徹底するように、棚を隅から隅まで回って目を光らせた。一冊でも狂いがあると気分が悪いのだ。同じ著者の著書が多数並んでいる時は、出版社名で揃えた。装丁が共通しているシリーズもあり、タイトルで揃えるよりも見栄えがよいからだ。コンビニのノーソンでも、雑誌の棚や商品の乱れがないようにいつも目を光らせていた。ほんの少し目を離すと、立ち読みで乱雑になってしまう。それを絶えず、元の位置に戻した上、さらに雑誌の大きさや表紙のビジュアルが揃うように工夫するのだ。よれた雑誌は必ず一番上に。みな二番目以下のものを買ってゆくから、よれるのは一冊で十分だ。そんな作業をやっている最中に、ふとあるグラビア雑誌の表紙に白井愛とあるのに気がついた。ほんの一瞬ページをめくり、カラーで彼女のビキニの水着のページを見つけ、あやうく雑誌を落としそうになった。平然と棚に戻し、レジへと戻ったが、心臓はどきどきと音を立てていた。その日のシフトが終わるまで、うわの空で接客し、レジの打ち間違いなど、小さなミスをいくつもした。ふだんの僕にはありえないことだった。

 本屋はとうに閉まっている時間だった。僕は駅の反対側のかなり離れたコンビニで、その雑誌を手に入れた。1Kのマンションに戻るまで、その雑誌を開くことはなかった。部屋の蛍光灯をつけ、横になりながら、雑誌のページを開いてみる。白いビキニのブラの間には、丸く形のいい乳房が太陽の光を浴びて輝いていた。目の前にいた時には、感じなかったボリューム感に驚いてしまった。身長157センチ、体重45キロ、スリーサイズは82、56、84となっていたが、数字以上に大きさがあるように感じた。いつの間にか股間が固くなっているのを感じた。でも、それ以上の行為を行おうとすることを僕は自分に禁じていた。

 心の中に波紋が広がり、彼女の存在は忘れがたいものに思えたのだった。それは恋とは違う何かだった。彼女の顔立ちは丸顔で、それまでの僕の理想のタイプ、ロングヘアで面長で、長身のスリム系とは離れていた。守備の隙間にポトリと落ちてきたテキサスフライのような感じだった。
「友達さ、ともだち、いいともだちでいよう。それ以上近づくとあぶない」

 僕の中で、直感が告げていた。数日前、目の前にいた彼女も、グラビアの中の彼女も無垢の存在のように見えた。見かけほど危険なものはない。芸能界とは、おどろおどろしい魑魅魍魎の跋扈する魔の世界なのだ。開けてはならないパンドラの箱。だから、もう一度彼女と顔を合わせるようなことがあろうと、このうわべの世界の中で、いいお友達を演じきるのだ。そんな風に直観は告げていた。
へ続く)



この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

『ホワイトラブ』目次
1.プロローグ
2.ホテルニューイサカ
3.白井愛

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