11 フェニックス
(10から続く)
小さな出来事が、大きな見出しとなって世の中を跋扈する。それが、芸能界に置かれたものの宿命だ。エトワールは、ハードなスケジュールを別にすれば、可能な限り、芸能界の炎上体質を食い止めようとしてきた事務所であったと思う。しかし、別のやり方を得意とする芸能プロダクションも存在する。フェニックスと呼ばれる芸能プロがそれである。番組や映画の前宣伝をねらい、共演者同士の熱愛やスキャンダルを発覚させる。打ち上げになりたまたま二人で歩いていたカップルを、週刊誌記者にスクープさせ、大々的に報道させるのである。あちこちの週刊誌には、息のかかった記者が何人かいるらしい。もちろん、プロモーション目的だから致命的なスキャンダルにはならない。煽りはほどほどで止め、しばらく続報が続いた後で、いつの間にか立ち消えになるというお馴染みのパターンだ。炎上しながら炎の中で生きのびるというフェニックスの名にふさわしい。業界最大手ということもあり、それなりに効果を挙げていたこともあって、フェニックスのやり方を快く思わないにせよ、周辺のプロダクションも黙認の形をとっていた。世の中なんて、そんなものだろうと僕も冷ややかな目で眺めていた。その中に、白井愛が巻き込まれるまでは。
フェニックスには、会堂竜二というトップスターがいた。長髪のイケメン、顔立ちはノーブルだが、不良ぶった言動が目立ち、危険な雰囲気を漂わせていた。俳優としては主演ドラマや映画は数多く、率いるバンドとともに出したCDはミリオンセラーを記録するなど、文字通りの大スターだった。
その会堂竜二の次の映画の共演候補として、白井愛の名前が挙がっていた。主演はオーディションなしで、製作スタッフと会堂側の意向で決めるらしい。会堂じきじきの指名であり、監督も大乗り気とあらば、ほとんど決定したも同然だ。後は、事務所がどう判断するか、そして白井愛がどう判断するかである。
ある雑誌のインタビューに答え、彼女はこう言った。
「会同さんは、俳優としても、ミュージシャンとしても、心に残る大きな仕事をたくさんされていて、本当に尊敬しています。共演できるとしたら、こんな嬉しいことはないです。」
見事なまでの優等生の答えだ。みず江さんは、不安がる事務所のスタッフに、こう言っているのを耳にした。
「会堂竜二がワルなんて、営業用のフェイクにすぎないわ。それに、愛なら絶対大丈夫。あの子も、来年の三月で二十歳だし、そろそろかわいい少女アイドルのイメージから脱皮しなくてはね。ちょうどいい機会だわ。」
そんなころ、白井愛より電話があった。
「久しぶりに会いたいな。」
「そう言えば、二人きりで会ってないね。」
「二人とも芸能人になったから。」
「今度は大丈夫な場所、多分。いえ、絶対に。」
(12へ続く)
この物語はフィクションです。実在の人物団体とは一切関係ありません。
『ホワイトラブ』目次
1.プロローグ
2.ホテルニューイサカ
3.白井愛
4.セントラルパーク
5.サタケ商店街
6.エトワール
7.ヤメセン
8. 那珂川さつき
9.White Love
10. 視聴率
11.フェニックス
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