3月31日(6名)
●小口泰與
いたずらに土竜の道や黄水仙★★★★
土竜と黄水仙で、童話が始まりそうな春の野だ。農作物に害をもたらす土竜も、こうなれば、楽しくかわいい動物に代わる。高橋正子)
はくれんや鴉のあまゆ声聞こゆ★★★
いち早く逃げ去る犬や蜂の剣★★★
●河野啓一
川沿にようやく近き街の花★★★
そよ風にいざ出掛けなむ花求め★★★
花曇り遠く望みて信貴生駒★★★★
●古田敬二
牧場の牛へ流れるシャボン玉★★★
残雪の鈴鹿嶺夕陽に染まりけり★★★
いつもより高し残雪鈴鹿嶺★★★★
●桑本栄太郎
土堤に沿う桜名所や花の雨★★★
春耕の畝の黒さよ春の雨★★★★
咲き満てば白の零るる紫木蓮★★★
●小西 宏
ベランダに窓開け放ち花の風★★★
犬と来て辛夷の下の花宴★★★
欅の芽小さな紅を空に張る★★★★
●多田有花
鳥歌い花咲き三月終わりけり★★★
峰々はそれぞれ桜の花を抱き★★★
結婚の知らせを聞きぬ花月夜★★★★
花に月のかかる画のような夜に、結婚の知らせを受けて、ほんのりと幸せをいただく。いい花月夜だ。(高橋正子)
3月30日(5名)
●河野啓一
抽んでて冴ゆる白山残雪に★★★★
春浅き流れ越前嶺九頭竜川★★★
北摂の桜は未だ雨を待ち★★★
●小口泰與
ご先祖の墓に詣でし合格子★★★★
ぜんまいや佐久の山辺に泊りける★★★
春風や赤白黄と咲きにける★★★
●多田有花
明るさの極まり菜の花畑かな★★★★
菜の花の咲き集まる菜の花畑は、菜の花の色、一色が広がる。黄色い光を集めたような菜の花畑は、「明るさの極まり」と捉えられる。混じりけがなくて、気持ちがよい句だ。(高橋正子)
ちらほらの花に帰宅を迎えられ★★★
穴を出づ蛇に出会いし山路かな★★★
●桑本栄太郎
<祇園二句>
ぼんぼりの花見小路や春の雨★★★★
外つ人の庭のごとくに春の京★★★
オルガンの音に讃美や受難節★★★
●古田敬二
天に辛夷地にいぬふぐり満る日よ★★★★
式前の新郎新婦花の下★★★
角隠し真白満開の花の下★★★
3月29日(6名)
●河野啓一
いとこ会案内受けたり黄水仙★★★★
黄水仙さ揺らぎもせず並び咲く★★★
白木蓮ポッカリ咲いて空を受け★★★
●小口泰與
鳥雲に鎮守の杜の芽吹きける★★★
落椿水輪とともに流れけり★★★★
水の上に垂れる椿の枝から花が落ち、水輪を作って流れてゆく。落花して瞬時の、水輪とともに流れる椿の美しさは、樹上の椿とは違った趣。(高橋正子)
青空へ今朝三輪の桜かな★★★
●高橋秀之
菜の花の黄色が作る道しるべ★★★
リビングが散らかる一日春休み★★★
暖かい朝に新芽の色づきし★★★★
●小西 宏
蛙の子掬えば泥の動きだす★★★
黄水仙集いピエロの歌うたう★★★
日曜の雨に辛夷の暮れてゆく★★★★
雨の日曜のやや退屈な、少しもの憂い気分が、夕暮れの辛夷の花に乗せられている。辛夷にはそういった雰囲気がある。(高橋正子)
●桑本栄太郎
叔母の亡き真夜の報せや春の月★★★★
芥子菜の土手に雨降る明かりかな★★★
無垢なれどすでに朽ち居り白木蓮★★★
●祝恵子
手を振りてミニSLの春汽笛★★★★
花杏嬰児そろそろ這う気配★★★
君子蘭花芽の白の二本見え★★★
3月28日(5名)
●迫田和代
(正子添削)陽を浴びて桜さくらの出迎えに★★★★
全身に陽を浴びて外に出ると、あちらこちらに咲くたくさんの桜に出迎えられた。今年もまた、花の中に身を置いて、明るい気持になれたことだろう。(高橋正子)
ゆったりと流れる川面に春の雨★★★
帰り鳥茜の雲の中に消え★★★
●小口泰與
曇天に響き渡りし初音かな★★★
里山の畑の片隅すみれかな★★★★
いたいけのばらの新芽や風の中★★★
●桑本栄太郎
春光の明かり眩しきバスの窓★★★★
鍼灸の医院の門やミモザ咲く★★★
焼肉の刻みて甘き春キャベツ★★★
●小西 宏
昏き崖行けばひときわ紅椿★★★
桜道はち切れそうな芽を空に★★★
お花見の子ら茣蓙を捨て泥遊び★★★★
お花見に連れ出した子らは、茣蓙の上にじっとしているわけにはいかない。茣蓙の上で花見をする大人をよそに泥遊びに興じる。うららかな日差しが子どもたちを生き生きさせている。(高橋正子)
●川名ますみ
反り返るほどの陽射しがデージーに★★★★
デージーの花弁陽を溜めそり返る★★★
雪柳背に座す人の首太き★★★
3月27日(7名)
●小口泰與
茂林寺のたぬきを愛でる糸桜★★★★
春耕をいそしむ媼群からす★★★
薄雲を被く浅間山(あさま)の斑雪かな★★★
●河野啓一
春光や嶺北を行くレンタカー★★★
きわだちて白山白く残雪に★★★
春厳し案内の僧や永平寺★★★★
中七と下五は月並みだが、上五の「春厳し」の季感がいい。「案内の僧や永平寺」があって、上五の「春厳し」がいいのだ。(高橋信之)
●祝恵子
投函し堤登れば初土筆★★★★
日常生活のお仕事を終え、楽しみの散策に近くの「堤」を登った。偶然の出会いは嬉しい。それも春先駆けの「初土筆」である。自身の生活を素直に写生した佳句。(高橋信之)
四万十の菜花輪を取り放つ水★★★
少年は姉の背を抜き卒業す★★★
●多田有花
水音と鶯の声山寺に★★★
よく晴れて染井吉野の開き初む★★★
はくれんの咲く空いつも真青なり★★★★
●桑本栄太郎
青空を尚みがき居り柳垂る★★★★
冴え返る空や梢の水色に★★★
園児等の散歩帰りや風車★★★
●佃 康水
朝日浴び匂い菫の濃紫★★★★
枯れしかと見れば山椒の青芽かな★★★
被爆川陽の斑揺らぎ水草生う★★★
●川名ますみ
さくら咲き初めて空見る人多し★★★★
療苑に短く立てる雪柳★★★
すみれの名病衣の父が子に教え★★★
3月26日(7名)
●小口泰與
今まさに開かんとせむ桜かな★★★
土手青む放れし山羊の飛躍かな★★★★
水が押す利根川(とね)の流れや雪柳★★★
●内山富佐子
高々と証書掲げて卒業す★★★★
一日中背比べしてつくしんぼ★★★
大空に花芽膨らむ柳かな★★★
●多田有花
アクロバット飛行鮮やか花の空★★★★
如月の青空にあり薄き月★★★
子をふたり抱き若夫婦春風に★★★
●桑本栄太郎
ふるさとの海を想えり誓子の忌★★★★
寄り添うてつがい一つや春の鴨★★★
つんつんと紅かなめもち芽吹き居り★★★
●河野啓一
越前へ一泊旅行
春の陽を待つや電話は孫の声★★★
残雪の比良耀きてサンダーバード★★★
ずわい蟹夜景の中に消えて行き★★★★
●小西 宏
飼い犬の水飲む音や春の昼★★★
乳飲み子を抱く手の優し花李(すもも)★★★★
乳飲み子を抱く若い母の手と、それを象徴するような李の白い花のとりあわせがよく、優しい母子像を詠んでいる。(高橋正子)
池の亀春日に甲羅重ね干す★★★
●上島祥子
桜木の開花の準備整えり★★★
桜木の蕾ほどけぬ雨雫★★★
ヒヤシンス香り満つ部屋帽子置く★★★★
日常の何気ない所作に味わいを感じるのが俳句を作る者の特権と言えるのだろう。外出から帰ったあと、ヒアシンスのよい香りがする部屋があるのは嬉しいことだ。(高橋正子)
3月25日(4名)
●小口泰與
畦草の柔き明るさ揚ひばり★★★★
縦横に湖を翔たる燕かな★★★
かげろうや長き裾野は靄被き★★★
●多田有花
春の山ザックを背負った少年ら★★★★
<ブルーインパルス姫路城天守大修理完成祝賀飛行>
花冷えの空に散開戦闘機★★★
戦闘機去りにし空に初燕★★★
●桑本栄太郎
<祇園~高瀬川>
紅ふふみ芽木のふくらむ高瀬川★★★★
ぼんぼりの調い都をどりかな★★★
咲き満てば落下しきりや白木蓮★★★
●小西 宏
陽の明るい崖の風なり竹の秋★★★
ひかり一条春の箱根の雪時雨★★★
白ワインのテーブルに出る蛍烏賊★★★★
蛍烏賊と言えばその食味もさることながら、夜、海上に光を明滅させる光景が目に浮かぶ。そんな光景を想像させる蛍烏賊が供され、「ほう!」と白ワインが進む。(高橋正子)
3月24日(5名)
●小口泰與
初蝶の畝に消えたる朝かな★★★
雉鳴くや今朝の赤城の彫深し★★★★
愛媛に住んでいたとき、雉の声をよく聞いた。そのころを思い出してみると、白木蓮が咲き、桜がもうすぐ咲きそうなころ、急に冷え込む朝があった。赤城の山も雉の鳴くころは冴え返る空気に山襞が彫が深くなるようだ。(高橋正子)
初蛙畝を越えけりそれっきり★★★
●河野啓一
冴え返る空滑りゆく鳶一羽★★★★
春寒し乾布摩擦の頃思う★★★
春選抜高校野球の甲子園★★★
●多田有花
梅林を囲む竹林風の音★★★
梅が香を胸いっぱいに吸い込みぬ★★★
喇叭水仙光と風に呼びかける★★★★
喇叭水仙があちこちで花を咲かせ、光を浴び、風に花をゆすられている。喇叭水仙に親しんで見れば、喇叭水仙の方から風と光に呼びかけ、戯れているように思える。春の明るさに満ちた句だ。(高橋正子)
●桑本栄太郎
建仁寺塀の高みの藪つばき★★★
春耕の畝水光る田面かな★★★★
風落ちて嶺の茜や冴え返る★★★
●小西 宏
朝の陽に楓の芽ぐむ水の明るさ★★★★
この空に季(とき)を散らして花辛夷★★★
山麓に一叢覗く桃の花★★★
3月23日(6名)
●古田敬二
雪柳埋もれてみたくなる白さ★★★★
喜びの声を揃えて咲く木蓮★★★
白木蓮満開枝を撓らせて★★★
●小口泰與
青麦の風や里山鳥の声★★★
校門に落ちる椿と咲く椿★★★★
常節や染付磁器の偽ものぞ★★★
●河野啓一
黄水仙そよ風に揺れ花開く★★★★
子や孫の行き交う春の休みかな★★★
大輪の椿挿したり鹿沼土★★★
●多田有花
花咲山春の三川合流す★★★
風にまだやや冷たさの彼岸桜★★★
ぽつぽつと峰を彩り初桜★★★★
山に、峰に桜の淡い色が点在すると、この眺めを絵に描きたくなる気持ちが湧いてくる。山に、峰に、春が来たのだ。(高橋正子)
●桑本栄太郎
<高瀬川界隈>
張りだして白き歩道や雪やなぎ★★★
高瀬川の風に揺るるは連翹黄★★★★
せせらぎの向こうはカフェや桜の芽★★★
●高橋秀之
一本の土筆を見つけて立ち止まる★★★
春風の吹く朝日差しも暖かく★★★
合格のメール届いた春の朝★★★★
合格おめでとうございます。さわやかで、うれしい春の朝です。琵琶湖畔での子ども俳句の表彰式に三兄弟揃って出席されたときのことが、つい、最近のことのように思い出されます。受験があるのにずっと俳句を作って、本当に立派です。希望に膨らんで、高校生活を出発させてください。(高橋正子)
3月22日(8名)
●小口泰與
いただきし白酒飲みてほっこりと★★★
山茱萸や金平糖の角の数★★★
春雨や芝の雑草おちこちに★★★★
●祝恵子
パンジーの水辺で子らのかくれんぼ★★★★
鯉池より分かち流れく春の水★★★
御苑の梅愛でて足腰神詣で★★★
●古田敬二
登り切る坂の上なる初黄蝶★★★★
桜咲く豚は七頭仔を産めり★★★
桜咲く桜色して乳房含む★★★
●小西 宏
たこ焼き屋お面屋も出てお中日★★★
一打してバットを放る春の野に★★★★
洋館のレンガに高く紫木蓮★★★
●福田ひろし
春の雨一人の夜の広さかな★★★★
春の雨が降る夜、一人いる自分は夜の真ん中に位置するような感覚になって、しんとした、あたりの広さが思われる。春の雨や春の夜の質感を感じたとった句。(高橋正子)
生垣に横顔きりり紅椿★★★
春の午後とんかち響く静けさよ★★★
●桑本栄太郎
高槻の雨止むころや春田打★★★
白れんの雨に濡れいる芦屋かな★★★★
白れんの咲く空からの雨が、芦屋の瀟洒な住宅街を包むように降っている。白れんの雨は、芦屋にこそふさわしい雨と思える。(高橋正子)
初花や雨の重みに堪えかねて★★★
●川名ますみ
花李オフィスの朝に影ひろく★★★★
瀟洒なオフィスの「朝の影」が花李の満開でも翳りのある印象とぴったりと呼応している。都会的な感覚のセンスある句。(高橋正子)、
休日のビルに映りし花李★★★
日曜のオフィスに李ばかり咲く★★★
●高橋秀之
紅白の梅が並んで咲き競う★★★
子の顔を見て今年も木蓮を見る★★★
お子さんの誕生を待っているとき、窓に白木蓮?が咲いていた句を、確か詠まれたですね。
早咲きの桜は一本三分咲き★★★★
3月21日(7名)
●小口泰與
雨後の樹の春光受けし滴かな★★★★
春燈今だ書類に埋まりける★★★
春火鉢友のたずさう清酒かな★★★
●迫田和代
山近く草から飛び出す雉に遭う★★★
彼岸来て生き仏さんへの胡麻団子★★★
初燕ふと大声出して挨拶を★★★★
初燕の飛来を見つけ、なにやら嬉しくなって、挨拶の声もつい大きくなった。遠く南国からやって来た燕と今年も出会えた心の弾みが楽しい句になった。(高橋正子)
●多田有花
ていねいにストーブを拭き納めけり★★★
鶯を聞き山上の洞窟に★★★
城跡に蝶のもつれる昼下がり★★★★
●河野啓一
春場所も満員御礼難波津に★★★
大輪のパンジー鉢を溢れ出て★★★
お早うの挨拶はずむ春彼岸★★★★
●桑本栄太郎
とき至り庭の山茱萸あちこちに★★★★
無垢ゆえや傷つき易き白木蓮★★★
春なのに今剪られ居り庭の木々★★★
●小西 宏
地謡の漏れきて楚なり土佐水木★★★
空見上げもうすぐですね花便り★★★
草萌に児の這い我は若かりし★★★★
草萌を眩しみつつ思い出したのだろう。連れ出したみどり児が草萌えを喜んで這い這いした日のことを。若い父としての日が、静かに光彩を放っている。(高橋正子)
●古田敬二
永別や街路樹に咲く白木蓮★★★
永別の友への献歌鳥帰る★★★
初音聞く猿投の山の谷深し★★★★
●小口泰與
いたずらに土竜の道や黄水仙★★★★
土竜と黄水仙で、童話が始まりそうな春の野だ。農作物に害をもたらす土竜も、こうなれば、楽しくかわいい動物に代わる。高橋正子)
はくれんや鴉のあまゆ声聞こゆ★★★
いち早く逃げ去る犬や蜂の剣★★★
●河野啓一
川沿にようやく近き街の花★★★
そよ風にいざ出掛けなむ花求め★★★
花曇り遠く望みて信貴生駒★★★★
●古田敬二
牧場の牛へ流れるシャボン玉★★★
残雪の鈴鹿嶺夕陽に染まりけり★★★
いつもより高し残雪鈴鹿嶺★★★★
●桑本栄太郎
土堤に沿う桜名所や花の雨★★★
春耕の畝の黒さよ春の雨★★★★
咲き満てば白の零るる紫木蓮★★★
●小西 宏
ベランダに窓開け放ち花の風★★★
犬と来て辛夷の下の花宴★★★
欅の芽小さな紅を空に張る★★★★
●多田有花
鳥歌い花咲き三月終わりけり★★★
峰々はそれぞれ桜の花を抱き★★★
結婚の知らせを聞きぬ花月夜★★★★
花に月のかかる画のような夜に、結婚の知らせを受けて、ほんのりと幸せをいただく。いい花月夜だ。(高橋正子)
3月30日(5名)
●河野啓一
抽んでて冴ゆる白山残雪に★★★★
春浅き流れ越前嶺九頭竜川★★★
北摂の桜は未だ雨を待ち★★★
●小口泰與
ご先祖の墓に詣でし合格子★★★★
ぜんまいや佐久の山辺に泊りける★★★
春風や赤白黄と咲きにける★★★
●多田有花
明るさの極まり菜の花畑かな★★★★
菜の花の咲き集まる菜の花畑は、菜の花の色、一色が広がる。黄色い光を集めたような菜の花畑は、「明るさの極まり」と捉えられる。混じりけがなくて、気持ちがよい句だ。(高橋正子)
ちらほらの花に帰宅を迎えられ★★★
穴を出づ蛇に出会いし山路かな★★★
●桑本栄太郎
<祇園二句>
ぼんぼりの花見小路や春の雨★★★★
外つ人の庭のごとくに春の京★★★
オルガンの音に讃美や受難節★★★
●古田敬二
天に辛夷地にいぬふぐり満る日よ★★★★
式前の新郎新婦花の下★★★
角隠し真白満開の花の下★★★
3月29日(6名)
●河野啓一
いとこ会案内受けたり黄水仙★★★★
黄水仙さ揺らぎもせず並び咲く★★★
白木蓮ポッカリ咲いて空を受け★★★
●小口泰與
鳥雲に鎮守の杜の芽吹きける★★★
落椿水輪とともに流れけり★★★★
水の上に垂れる椿の枝から花が落ち、水輪を作って流れてゆく。落花して瞬時の、水輪とともに流れる椿の美しさは、樹上の椿とは違った趣。(高橋正子)
青空へ今朝三輪の桜かな★★★
●高橋秀之
菜の花の黄色が作る道しるべ★★★
リビングが散らかる一日春休み★★★
暖かい朝に新芽の色づきし★★★★
●小西 宏
蛙の子掬えば泥の動きだす★★★
黄水仙集いピエロの歌うたう★★★
日曜の雨に辛夷の暮れてゆく★★★★
雨の日曜のやや退屈な、少しもの憂い気分が、夕暮れの辛夷の花に乗せられている。辛夷にはそういった雰囲気がある。(高橋正子)
●桑本栄太郎
叔母の亡き真夜の報せや春の月★★★★
芥子菜の土手に雨降る明かりかな★★★
無垢なれどすでに朽ち居り白木蓮★★★
●祝恵子
手を振りてミニSLの春汽笛★★★★
花杏嬰児そろそろ這う気配★★★
君子蘭花芽の白の二本見え★★★
3月28日(5名)
●迫田和代
(正子添削)陽を浴びて桜さくらの出迎えに★★★★
全身に陽を浴びて外に出ると、あちらこちらに咲くたくさんの桜に出迎えられた。今年もまた、花の中に身を置いて、明るい気持になれたことだろう。(高橋正子)
ゆったりと流れる川面に春の雨★★★
帰り鳥茜の雲の中に消え★★★
●小口泰與
曇天に響き渡りし初音かな★★★
里山の畑の片隅すみれかな★★★★
いたいけのばらの新芽や風の中★★★
●桑本栄太郎
春光の明かり眩しきバスの窓★★★★
鍼灸の医院の門やミモザ咲く★★★
焼肉の刻みて甘き春キャベツ★★★
●小西 宏
昏き崖行けばひときわ紅椿★★★
桜道はち切れそうな芽を空に★★★
お花見の子ら茣蓙を捨て泥遊び★★★★
お花見に連れ出した子らは、茣蓙の上にじっとしているわけにはいかない。茣蓙の上で花見をする大人をよそに泥遊びに興じる。うららかな日差しが子どもたちを生き生きさせている。(高橋正子)
●川名ますみ
反り返るほどの陽射しがデージーに★★★★
デージーの花弁陽を溜めそり返る★★★
雪柳背に座す人の首太き★★★
3月27日(7名)
●小口泰與
茂林寺のたぬきを愛でる糸桜★★★★
春耕をいそしむ媼群からす★★★
薄雲を被く浅間山(あさま)の斑雪かな★★★
●河野啓一
春光や嶺北を行くレンタカー★★★
きわだちて白山白く残雪に★★★
春厳し案内の僧や永平寺★★★★
中七と下五は月並みだが、上五の「春厳し」の季感がいい。「案内の僧や永平寺」があって、上五の「春厳し」がいいのだ。(高橋信之)
●祝恵子
投函し堤登れば初土筆★★★★
日常生活のお仕事を終え、楽しみの散策に近くの「堤」を登った。偶然の出会いは嬉しい。それも春先駆けの「初土筆」である。自身の生活を素直に写生した佳句。(高橋信之)
四万十の菜花輪を取り放つ水★★★
少年は姉の背を抜き卒業す★★★
●多田有花
水音と鶯の声山寺に★★★
よく晴れて染井吉野の開き初む★★★
はくれんの咲く空いつも真青なり★★★★
●桑本栄太郎
青空を尚みがき居り柳垂る★★★★
冴え返る空や梢の水色に★★★
園児等の散歩帰りや風車★★★
●佃 康水
朝日浴び匂い菫の濃紫★★★★
枯れしかと見れば山椒の青芽かな★★★
被爆川陽の斑揺らぎ水草生う★★★
●川名ますみ
さくら咲き初めて空見る人多し★★★★
療苑に短く立てる雪柳★★★
すみれの名病衣の父が子に教え★★★
3月26日(7名)
●小口泰與
今まさに開かんとせむ桜かな★★★
土手青む放れし山羊の飛躍かな★★★★
水が押す利根川(とね)の流れや雪柳★★★
●内山富佐子
高々と証書掲げて卒業す★★★★
一日中背比べしてつくしんぼ★★★
大空に花芽膨らむ柳かな★★★
●多田有花
アクロバット飛行鮮やか花の空★★★★
如月の青空にあり薄き月★★★
子をふたり抱き若夫婦春風に★★★
●桑本栄太郎
ふるさとの海を想えり誓子の忌★★★★
寄り添うてつがい一つや春の鴨★★★
つんつんと紅かなめもち芽吹き居り★★★
●河野啓一
越前へ一泊旅行
春の陽を待つや電話は孫の声★★★
残雪の比良耀きてサンダーバード★★★
ずわい蟹夜景の中に消えて行き★★★★
●小西 宏
飼い犬の水飲む音や春の昼★★★
乳飲み子を抱く手の優し花李(すもも)★★★★
乳飲み子を抱く若い母の手と、それを象徴するような李の白い花のとりあわせがよく、優しい母子像を詠んでいる。(高橋正子)
池の亀春日に甲羅重ね干す★★★
●上島祥子
桜木の開花の準備整えり★★★
桜木の蕾ほどけぬ雨雫★★★
ヒヤシンス香り満つ部屋帽子置く★★★★
日常の何気ない所作に味わいを感じるのが俳句を作る者の特権と言えるのだろう。外出から帰ったあと、ヒアシンスのよい香りがする部屋があるのは嬉しいことだ。(高橋正子)
3月25日(4名)
●小口泰與
畦草の柔き明るさ揚ひばり★★★★
縦横に湖を翔たる燕かな★★★
かげろうや長き裾野は靄被き★★★
●多田有花
春の山ザックを背負った少年ら★★★★
<ブルーインパルス姫路城天守大修理完成祝賀飛行>
花冷えの空に散開戦闘機★★★
戦闘機去りにし空に初燕★★★
●桑本栄太郎
<祇園~高瀬川>
紅ふふみ芽木のふくらむ高瀬川★★★★
ぼんぼりの調い都をどりかな★★★
咲き満てば落下しきりや白木蓮★★★
●小西 宏
陽の明るい崖の風なり竹の秋★★★
ひかり一条春の箱根の雪時雨★★★
白ワインのテーブルに出る蛍烏賊★★★★
蛍烏賊と言えばその食味もさることながら、夜、海上に光を明滅させる光景が目に浮かぶ。そんな光景を想像させる蛍烏賊が供され、「ほう!」と白ワインが進む。(高橋正子)
3月24日(5名)
●小口泰與
初蝶の畝に消えたる朝かな★★★
雉鳴くや今朝の赤城の彫深し★★★★
愛媛に住んでいたとき、雉の声をよく聞いた。そのころを思い出してみると、白木蓮が咲き、桜がもうすぐ咲きそうなころ、急に冷え込む朝があった。赤城の山も雉の鳴くころは冴え返る空気に山襞が彫が深くなるようだ。(高橋正子)
初蛙畝を越えけりそれっきり★★★
●河野啓一
冴え返る空滑りゆく鳶一羽★★★★
春寒し乾布摩擦の頃思う★★★
春選抜高校野球の甲子園★★★
●多田有花
梅林を囲む竹林風の音★★★
梅が香を胸いっぱいに吸い込みぬ★★★
喇叭水仙光と風に呼びかける★★★★
喇叭水仙があちこちで花を咲かせ、光を浴び、風に花をゆすられている。喇叭水仙に親しんで見れば、喇叭水仙の方から風と光に呼びかけ、戯れているように思える。春の明るさに満ちた句だ。(高橋正子)
●桑本栄太郎
建仁寺塀の高みの藪つばき★★★
春耕の畝水光る田面かな★★★★
風落ちて嶺の茜や冴え返る★★★
●小西 宏
朝の陽に楓の芽ぐむ水の明るさ★★★★
この空に季(とき)を散らして花辛夷★★★
山麓に一叢覗く桃の花★★★
3月23日(6名)
●古田敬二
雪柳埋もれてみたくなる白さ★★★★
喜びの声を揃えて咲く木蓮★★★
白木蓮満開枝を撓らせて★★★
●小口泰與
青麦の風や里山鳥の声★★★
校門に落ちる椿と咲く椿★★★★
常節や染付磁器の偽ものぞ★★★
●河野啓一
黄水仙そよ風に揺れ花開く★★★★
子や孫の行き交う春の休みかな★★★
大輪の椿挿したり鹿沼土★★★
●多田有花
花咲山春の三川合流す★★★
風にまだやや冷たさの彼岸桜★★★
ぽつぽつと峰を彩り初桜★★★★
山に、峰に桜の淡い色が点在すると、この眺めを絵に描きたくなる気持ちが湧いてくる。山に、峰に、春が来たのだ。(高橋正子)
●桑本栄太郎
<高瀬川界隈>
張りだして白き歩道や雪やなぎ★★★
高瀬川の風に揺るるは連翹黄★★★★
せせらぎの向こうはカフェや桜の芽★★★
●高橋秀之
一本の土筆を見つけて立ち止まる★★★
春風の吹く朝日差しも暖かく★★★
合格のメール届いた春の朝★★★★
合格おめでとうございます。さわやかで、うれしい春の朝です。琵琶湖畔での子ども俳句の表彰式に三兄弟揃って出席されたときのことが、つい、最近のことのように思い出されます。受験があるのにずっと俳句を作って、本当に立派です。希望に膨らんで、高校生活を出発させてください。(高橋正子)
3月22日(8名)
●小口泰與
いただきし白酒飲みてほっこりと★★★
山茱萸や金平糖の角の数★★★
春雨や芝の雑草おちこちに★★★★
●祝恵子
パンジーの水辺で子らのかくれんぼ★★★★
鯉池より分かち流れく春の水★★★
御苑の梅愛でて足腰神詣で★★★
●古田敬二
登り切る坂の上なる初黄蝶★★★★
桜咲く豚は七頭仔を産めり★★★
桜咲く桜色して乳房含む★★★
●小西 宏
たこ焼き屋お面屋も出てお中日★★★
一打してバットを放る春の野に★★★★
洋館のレンガに高く紫木蓮★★★
●福田ひろし
春の雨一人の夜の広さかな★★★★
春の雨が降る夜、一人いる自分は夜の真ん中に位置するような感覚になって、しんとした、あたりの広さが思われる。春の雨や春の夜の質感を感じたとった句。(高橋正子)
生垣に横顔きりり紅椿★★★
春の午後とんかち響く静けさよ★★★
●桑本栄太郎
高槻の雨止むころや春田打★★★
白れんの雨に濡れいる芦屋かな★★★★
白れんの咲く空からの雨が、芦屋の瀟洒な住宅街を包むように降っている。白れんの雨は、芦屋にこそふさわしい雨と思える。(高橋正子)
初花や雨の重みに堪えかねて★★★
●川名ますみ
花李オフィスの朝に影ひろく★★★★
瀟洒なオフィスの「朝の影」が花李の満開でも翳りのある印象とぴったりと呼応している。都会的な感覚のセンスある句。(高橋正子)、
休日のビルに映りし花李★★★
日曜のオフィスに李ばかり咲く★★★
●高橋秀之
紅白の梅が並んで咲き競う★★★
子の顔を見て今年も木蓮を見る★★★
お子さんの誕生を待っているとき、窓に白木蓮?が咲いていた句を、確か詠まれたですね。
早咲きの桜は一本三分咲き★★★★
3月21日(7名)
●小口泰與
雨後の樹の春光受けし滴かな★★★★
春燈今だ書類に埋まりける★★★
春火鉢友のたずさう清酒かな★★★
●迫田和代
山近く草から飛び出す雉に遭う★★★
彼岸来て生き仏さんへの胡麻団子★★★
初燕ふと大声出して挨拶を★★★★
初燕の飛来を見つけ、なにやら嬉しくなって、挨拶の声もつい大きくなった。遠く南国からやって来た燕と今年も出会えた心の弾みが楽しい句になった。(高橋正子)
●多田有花
ていねいにストーブを拭き納めけり★★★
鶯を聞き山上の洞窟に★★★
城跡に蝶のもつれる昼下がり★★★★
●河野啓一
春場所も満員御礼難波津に★★★
大輪のパンジー鉢を溢れ出て★★★
お早うの挨拶はずむ春彼岸★★★★
●桑本栄太郎
とき至り庭の山茱萸あちこちに★★★★
無垢ゆえや傷つき易き白木蓮★★★
春なのに今剪られ居り庭の木々★★★
●小西 宏
地謡の漏れきて楚なり土佐水木★★★
空見上げもうすぐですね花便り★★★
草萌に児の這い我は若かりし★★★★
草萌を眩しみつつ思い出したのだろう。連れ出したみどり児が草萌えを喜んで這い這いした日のことを。若い父としての日が、静かに光彩を放っている。(高橋正子)
●古田敬二
永別や街路樹に咲く白木蓮★★★
永別の友への献歌鳥帰る★★★
初音聞く猿投の山の谷深し★★★★