4月30日(4名)
小口泰與
夏隣間近き山の樹木の色★★★★
間近に立つ山の木々を見ると、夏が近い、濃い緑になっている。年中緑ながら、微妙に変わる木々の色が夏隣となって、すがすがしい。(高橋正子)
雛菊や隣家は天寿全うす★★★
朝日差す楓の花の初初し★★★
廣田洋一
整然と畝並びたる春の畑★★★
春の日や畑の土の瑞々し★★★
一畝に立ち続けをる葱坊主(原句)
一畝に立ち続けたり葱坊主★★★★(正子添削)
多田有花
一面ににんじん育つ春の畑★★★
灯台のまわりはすべて春の潮★★★
突堤に座れば春の波近し★★★★
突堤に座ることは海に近いことなのだが、腰を据えて座ってみると、春の波が寄せて来るのが、身体に響くように感じられる。穏やかな春の海だからこそ「波近し」なのだ。(高橋正子)
桑本栄太郎
荷風忌のシャンソン聴くや電蓄に★★★
雨上がり葉擦れの音の弥生尽★★★
花びらの散りてピンクや花みづき★★★
4月29日(4名)
小口泰與
春の宵八十路の酒量凛凛と★★★
紅雲の育つ夕暮花こぶし★★★
盤石は神の化身や風光る★★★
廣田洋一
行く春や外出止める雨降りて★★★
何の日と問はれ昭和の日と答へる★★★
白き蝶光揺らして飛び去りぬ★★★★
「光揺らして」に新しい発見があって、飛び去る蝶が眩しいほどの存在になっている。焦点が良く絞られている。(高橋正子)
多田有花
キックボード春の河口へ走らせる★★★
釣れますかと釣り人に問う春の磯★★★
突堤に並ぶ釣り人風光る★★★
桑本栄太郎
雨水の坂に溢るる菜種梅雨★★★
との曇る天の明るき菜種梅雨★★★
吾が歳の戦後生まれや昭和の日★★★
4月28日(4名)
小口泰與
有明の風の水田や赤蛙★★★
家長我床の間を背に春火鉢★★★
銀輪や風を切り行く新入生★★★★
廣田洋一
言われればピンクに見える春★★★
背高き草のはびこり春深し★★★
横浜にロープウエイや春惜しむ★★★
多田有花
春日さんさん墓石と向かい合い★★★
地蔵菩薩胸まで埋まる春の土★★★
憩うのはすでに木陰よ春深し★★★★
桑本栄太郎
寄せ植えのパンジー鉢をこぼれけり★★★
花ゑんどう支柱の丈に飽き足らず★★★
茄子苗の小さき支柱や朝の日に★★★★
茄子には高い支柱はいらないが、しっかり根付くように支柱を立てられる。その支柱が小さくて、朝日を浴びて、茄子苗をけなげに支えている。成長を応援したくなる。(高橋正子)
4月27日(4名)
小口泰與
白竜のなれの根付や春の宵★★★
群青の湖や公魚朝まだき★★★
残照の空は紅蓮や花こぶし★★★
廣田洋一
明星の光も見えず春満月★★★
一仕事終えたる夕べ春の月★★★
スカイツリー消えたる空に春満月★★★
桑本栄太郎
青空のまつたきありぬ新樹晴れ★★★
中州なる小さき一画うまごやし★★★
なんじゃもんじゃ酒舗の庭なる夏隣★★★★
「なんじゃもんじゃ」という面白い名前の木。もじゃもじゃのよくわからない花をつけるのが、よっぱらって咲くわけではないが、酒舗の庭にある。夏の近い明るさがいい。(高橋正子)
多田有花
川ここで海に入りたり春深し★★★★
惜春の地蔵に赤きよだれかけ★★★
葱坊主お地蔵様のかたわらに★★★
4月26日(4名)
小口泰與
春灯下遺愛の時計かちかちと★★★★
求愛の犬の尻尾や春の野辺★★★
山門へ辞儀して通る新入生★★★
廣田洋一
若葉して風見鶏の尾動かざる★★★
公園を駆け抜けて行く若葉風★★★★
新しき庭に根付きて若葉光★★★
多田有花
点々と島を並べて春の海★★★
麗かな沖ゆく船を眺めおり★★★
整然と植え付けを待つ春の畑★★★★
じゃが芋など春に植え付けがはじまる準備が済んだ畑。雑草を取り払い、よく耕し、整然と整えら得ているのをみると、のどかな春の天気も手伝って気持ちの良いものだ。(高橋正子)
桑本栄太郎
わらわらと葉の靡き居り新樹冷ゆ★★★
風に乗り風にあらがい蝶の昼★★★
みどり濃き中に未だし余花落花★★★★
4月25日(4名)
小口泰與
若鮎の魚道を遡上朝まだき★★★
待ちわびる勿忘草や時流★★★
谷川の真っ向にくる濃山吹(原句)
谷川の真っ向にあり濃山吹★★★★(正子添削)
谷川に来ると向こう岸の眺めが目に入る。ちょうど自分の真向かいに位置をずらさず山吹が濃い黄色の花をつけている。偶然とは言え、山吹と向かい合う面白さ。(高橋正子)
廣田洋一
枯れ果てし切り株囲む春の草★★★
夕暮れの流れのどかな街の川★★★★
細かなる泡湯に浸かりのどかなる★★★
桑本栄太郎
大樹とてうすきみどりや手鞠花★★★
花びらの紅差し散りぬ花みづき★★★
風吹けばさざ波皺に代田かな★★★★
多田有花
蜥蜴出づスカイブルーの尾を引いて★★★
藤見上ぐ九十九折を上りつつ★★★
尺取りの虚空に伸ばす体かな★★★★
尺取り虫がついに枝の先まで来た。その先に尺を取る枝はない。自然、体は虚空にのけぞる。枝の端の夏空にのけぞった体の尺取りの姿が面白い。(高橋正子)
4月24日(4名)
小口泰與
鉄棒へましらのようや新入生★★★★
桜しべ風の矢じりに絡まれし★★★
山裾へ馬棚続きけり鼓草★★★
廣田洋一
春の草意外と長き根を張りて★★★
荒畑の香り芳し春の草★★★★
のどけしや牛散らばりて草を食む★★★
桑本栄太郎
野ばら咲く窓や認定保育園★★★
花びらを鋪道に散らしポピー咲く★★★
黒蟻の行方定めず石の上★★★★
多田有花
見上げれば視界いっぱい八重桜(原句)
見上げれば視界にあふる八重桜★★★★(正子添削)
見上げた時の視界は、それほど広くない。ほぼ真上あたりか。この視界に八重桜の花がふわふわと重なり合い、あふれるほど。あでやかさはいかばかり。(高橋正子)
低く座し三色菫と向かい合う★★★
山路ゆく足元に咲きすみれ草★★★
4月23日(4名)
廣田洋一
食後の茶ゆったり啜る春の昼★★★
春昼や額に手を当て眠りをり★★★
春昼の見るとはなしに橋の上★★★★
小口泰與
吾妻の四万湖の青さ濃山吹★★★
桜しべ降りつくしたり空は蒼(原句)
「空は蒼」の「は」によって、空が強くなりすぎています。(高橋正子)
桜しべ降りつくしたり空真青★★★★
満開の桜が散り、赤い桜しべも降りつくしてしまった。空の色が真青になり、いよいよ葉桜の季節を迎える。花の時から葉桜へとうつりゆく桜の木である。(高橋正子)
おずおずと教室へ行く入学児★★★
川名ますみ
空へ伸びやがてうつむき紫蘭咲く(原句)
「空へ伸び」に対して、「うつむき」がマイナス思考へ働きますので、添削しました。
空へ伸びやがてむらさき紫蘭咲く★★★★(正子添削)
蕾をつけた茎が空へ伸びて、やがてむらさきの花を咲かせる。紫蘭の花のうつむいたイメージは読者に想像を委ねます。(高橋正子)
うつむきし紫蘭のつぼみ紅ほのか★★★
春闌けて髪の重さをカットする★★★★
桑本栄太郎
青柳の上へと靡く川の風(原句)
青柳を上へ上へと川の風★★★★(正子添削)
石垣の上に築地やつつじも燃ゆ★★★
夕闇にかざす明かりや花水木★★★
4月22日(4名)
小口泰與
渓流の迅き流れや濃山吹★★★
魚釣の今日は坊主や夕霞★★★
川沿いの菜の花畑まさやけし★★★★
廣田洋一
春日傘畳みて足を早めけり★★★
風受けて閉じたるままの春日傘★★★
橋の上立ち止まりたる春日傘★★★★
桑本栄太郎
わらわらと葉のゆらぎ居り若葉吹く★★★
ぶんぶんと羽音おそろし藤の棚(原句)
藤棚に蜂の羽音のおそろしき★★★★(正子添削)
藤棚の藤が満開で垂れ下がり、それに蜂が恐ろしいまでの羽音を立てて蜜をすっている。藤の花の生き生きとした豪華さを印象付けられる。(高橋正子)
花びらの色濃く散りぬ八重桜★★★
多田有花
無人の公園八重桜満開★★★
滑り台すべりゆくかな花びらも★★★★
生垣の平戸つつじの咲き初めし★★★
4月21日(4名)
廣田洋一
いつも通り事務所を出でて日永かな★★★★
日永なりお茶を一杯入れやうか★★★
春の風邪人には知らせず治しけり(原句)
春の風邪人に知られず治りけり★★★★(正子添削)
春の風邪があまりひどくならなくて、人に知られることもなく治ったというのも「春の風邪」らしくて俳句としていいのではと思います。
小口泰與
片雲や和同遺跡の遍路道★★★
春暁や湖を見下ろす丘に立つ★★★
残る鴨沼広びろと紛れなし(原句)
「紛れなし」と「残る鴨」が離れすぎて一読意味がとりにくいです。(高橋正子)
沼広びろ残る鴨の紛れなし★★★★(正子添削)
冬の間沼を占めていた鴨がおおかた帰り、残る鴨もわずかになった。沼が広々となり、沼に点在する鴨一羽一羽がはっきりと確かめられる。まぎれもない鴨の存在。(高橋正子)
多田有花
花吹雪いま盛んなる丘に立つ★★★★
平戸つつじにロードバイクの青年★★★
リード長きトイプードルがつつじに寄る★★★
桑本栄太郎
媼らのベンチ占めたる藤の棚★★★
たんぽぽの絮毛旅立つ野辺の風★★★
木洩れ日の木陰を歩む春落葉(原句)
「歩む」ことを言うより、「春落葉」に焦点を絞って、様子を述べるのが良いと思います。
木洩れ日の木陰にあまた春落葉★★★★(正子添削例)