2月29日(2句)
★花ゑんどう高き支柱の足もとに/桑本栄太郎
えんどうに支柱が立ててあるが、えんどうは支柱の足元に固まる程度の生長だが、すでに花を付けて、これから暖かくなれば、蔓がどんどん伸びていくのだ。支柱の足元で力を溜めている。(高橋正子)
★父母の墓覆う桜木芽吹きけり/古田敬二
父母の墓は故郷の桜の木の下に。桜が咲けば桜に覆われ、夏には葉桜が木陰を作ってくれる。
そんな桜が今芽吹いた。父母への優しい思いが伝わる。(高橋正子)
2月28日(2句)
★病室の向かいは梅咲く小学校/多田有花
病室からの眺めがいいと嬉しいものだ。この病室からは梅の花が咲いている小学校が見える。子供たちの声も聞こえるかもしれない。梅の花は精一杯咲いている。どこか楽しく、すがすがしい気分になる句だ。(高橋正子)
★祝日の学校花壇やチューリップ/桑本栄太郎
祝日の小学校の校庭。日当たりのいい花壇にはチューリップが明るく咲いている。子供たちのいない祝日の学校だが、子供たちに代わるような元気なチューリップだ。(高橋正子)
2月27日(1句)
★千代紙の雛の迎える緩和ケア/川名ますみ
緩和ケアの病棟に入院されたのだろうか。痛みを抱え、不安な思いで病室に入ると千代紙の雛が飾ってあった。雛様に会えるとは思わなかったであろうが、温かい心遣いがうれしく、気持ちが明るくなる。(高橋正子)
2月26日(1句)
★朝市のバケツに盛られ春大根/廣田洋一
通常の大根は初秋に種を播くが、春大根は晩秋に種を播いて収穫時期を遅らせ、春収穫する。
そんな大根が朝市のバケツにいっぱい盛られ売られている。採れたての大量の大根のみずみずしさがうれしい。(高橋正子)
2月25日(1句)
★渓流の水が水乗せ蕗の薹/小口泰與
蕗の薹が出ている渓流の沢辺。渓流は、雪解けの水で水が水を乗り越えるように急ぎ流れる。蕗の薹の淡い緑、渓流の水が織りなす早春の息吹がよく感じられる。(高橋正子)
2月24日(2句)
★残雪や鳥足跡と風の跡/小口泰與
残雪に跡を残したのは、鳥と風。鳥と風と残雪の世界が詩的な世界を見せている。(高橋正子)
★呼ぶ声に雪崩れて返す木霊かな/廣田洋一
積雪は人の呼ぶ声の振動で雪崩を起こすこともあると聞く。雪崩の木霊に、しんとした静けさが一層広がる。(高橋正子)
2月23日(2句)
★牛車をば転がし遊ぶ雛祭/廣田洋一
雛祭りの男の子であろう。雛のお道具いろいろは、なかなか興味深いものが多くて、牛車があれば、動かしてみたくなる。刀は抜いてみたくなる。子供の雛祭りが楽しそうだ。(高橋正子)
★妻戻り田舎土産や春大根/桑本栄太郎
出かけていた妻が帰って来た。田舎土産とあるから、故郷へ帰ったのであろう。土産に春大根をもらって帰った。春大根に故郷への愛着が感じられる。(高橋正子)
2月22日(2句)
★疎開児のいまも心に春の山/小口泰與
戦争中に疎開をした児童も今はどのくらいおられるだろうか。戦後すでに75年になろうとしている。その頃の疎開してきた子どもとの思い出。春の山や野で遊んだことが今も心にのこっている。しみじみと、なつかしさが湧いてくる。(高橋正子)
★ゆるやかにカーブする道梅開く/多田有花
車やバイクで道を辿ってゆくとゆるいカーブに差しかかる。それまで見えなかった梅の花がカーブにそってゆるやかに見え始める。うれしい光景だ。(高橋正子)
2月21日(1句)
★篩かけ日にさらしけり春の土/廣田洋一
春の日の土いじり。冬の間、寒さに耐え、固まったような土を、篩にかけて細かくし、種や苗を植える準備をする。篩うとらさらと春の土が明るく落ちる。春の土が効いている。(高橋正子)