3月31日(6名)
川名ますみ
花の宴福祉車両の傍に待ち★★★
囀や高窓あふれ処置室へ(原句)
①「囀の高窓あふれ」、または、②「囀や高窓にあふれ」となるのが、文法てきに良いと思いますが、⓶にした場合中七が8音になって説明的になりますので、工夫が必要です。(髙橋正子)。
高窓に囀あふれ処置室へ★★★★(正子添削)
囀も陽も高窓を零れくる★★★★
小口泰與
釣人の顔に纏いし虻の声★★★(原句)
釣人の顔に纏える虻の声(添削)
山鳥の鋭声と羽音聞えける★★★
長き日や棚に沿いて馬駆ける(原句)
「棚」は、「柵」のミスタイプでしょうか。(髙橋正子)
弓削和人
落ち桜水輪一重になりにけり★★★(原句)
「落ち桜」は桜の花一花が花ごと落ちている意味でしょうか。きれな情景で、着眼点もいいです。ただ、「落椿」からの類そうで「落ち桜」とするのは、無理があります。ここが直れば、★4つです。(髙橋正子)
こうこうとおのがひかるや夜の桜★★★
にぎやかに露店開くや花盛り★★★
多田有花
きらきらと花咲く山の下流れ★★★
通学す桜の下を自転車で★★★★
ベランダで洗濯しつつお花見を★★★
桑本栄太郎
散るべきを知りて色づく花あはれ★★★
夕日透き更に色濃くにはざくら★★★
吾が影の夕日そびらや三月尽★★★
廣田洋一
選挙間近春塵かぶる掲示板★★★
一本の桜のために池廻る★★★
青空に枝を張りたる桜かな★★★
3月30日(5名)
小口泰與
花曇り机辺の堆書そのままに★★★
頬白や秀つ枝下枝の芽ぐみける★★★★
蒼天やばらの新芽のふふみける★★★
多田有花
自転車を押してふたりは花の下★★★
ふるさとは朝日に匂う山桜★★★★
白壁の庭に咲きけり紫木蓮★★★
川名ますみ
菜の花を広場に咲かす五年生★★★★
まるまると木瓜の蕾の寄り添いぬ★★★
チューリップ手首を反らすごとひらく★★★
廣田洋一
かぐわしき桜並木や夕まぐれ★★★
桜散る順番待ちの滑り台★★★★
枝先に花一輪や枝垂桜★★★
桑本栄太郎
中腹に忽とあらはる花の雲★★★
満開となりし川辺や花の昼★★★★
西山の嶺の茜や春の宵★★★
3月29日(4名)
小口泰與
春の森羽音密かに吾の肩へ★★★
仲春の鳥語すずろに清清し★★★
春山路野鳥次つぎ手の平へ★★★★
多田有花
夜の闇去りゆき浮かぶ山桜★★★
誰が植えしスノーフレーク土手に咲く★★★
残る鴨古き橋桁のうえに★★★★
桑本栄太郎
舞いながら時には縺れ蝶の昼★★★
川べりの家族憩いぬ花の昼★★★★
散るべきを知らずや誇る花あはれ★★★
廣田洋一
たんぽぽの絮白々と風を待つ★★★
蒲公英やおかっぱ頭逝きにけり★★★★
ふんわりと桜並木の拡がりぬ★★★
3月28日(5名)
小口泰與
凄まじや野鳥争う春の森★★★
春光や柾目通りし床柱★★★
春の森右往左往の小鳥どち★★★
廣田洋一
霾るや車の窓のうっすらと★★★
街角のしらじら浮かぶ夜桜よ★★★
点々と菫かたまり遊歩道★★★
多田有花
朝霧の晴れ行くなかより山桜★★★★
初燕ときおり日差し降る中へ★★★
やまざくら数多彩る増位山★★★
桑本栄太郎
子供らの声まだ耳に春やすみ★★★
春休み終えて去ぬる子愛(かな)しかり★★★
夕日透くうすきみどりや木の芽張る★★★
弓削和人
やわらかな土に落ちたり大椿★★★
「やわらかな土に落ちたり」はとてもいいです。(髙橋正子)
たんぽぽや浅瀬近くに定め咲く★★★
薺花土塀を圧して咲きにけり★★★
3月27日(5名)
小口泰與
霾や洪積台地鳥の声★★★
山径の春の山雀手のひらへ★★★★
山雀は人懐っこい留鳥で、春の季節感は、山雀よりも、むしろ山径(春山路など)にあるのではないでしょうか。それが表現できれば、申し分ないと思います。(髙橋正子)
仲春の紺青の天鳶の笛★★★
廣田洋一
ざぶざぶと川を渡りて芹摘めり★★★★
積上げし本にうつすら春の塵★★★
選挙間近春塵被る掲示板★★★
多田有花
風の音聞きつつ眠る桜時★★★★
山桜煙らせ雨の降り続く★★★
鶯に夜明けの珈琲の香り★★★
桑本栄太郎
金閣寺目指すリュックや春休み★★★★
北山の花冷え通り金閣寺★★★
花粉症メガネ異形や次男坊★★★
友田 修
黒々と畝盛り上がる春の畑★★★
三日月を雲間に見ゆる春の宵(原句)
「見ゆ(連体形は見ゆる)」は自動詞なので、「三日月を・・見ゆる・・」となりません。「見ゆ」には自発的に、おのずとの意味があります。または、受け身の意味にも使われます。
三日月の雲間に見ゆる春の宵(添削1)(三日月が雲間に(自然と)見える)
「見る」(他動詞)を使うなら、
三日月を雲間に見るや春の宵(添削2)(三日月を雲間に(意識して)見る)
になります。
文語「見ゆ」「見る」の違いを辞書でご確認ください。(髙橋正子)
夜桜の散りゆく様に立ち止まる(原句)
原句は詠もうとすれば、捉えどころに困る場面です。つい説明的、散文的になります。表現にほんの少し工夫が要ります。(髙橋正子)
立ち止まるわが目に散れり夜の桜(添削例)
3月26日(3名)
小口泰與
浅間嶺の黒き山襞鳥交る★★★
手の餌に飛び來る春の山雀よ★★★
庭の蝶今日は見ずして山の風★★★
廣田洋一
小諸なる虚子遊歩道菫咲く★★★
川面へと枝を垂れたる桜かな★★★
零れたる花弁浮かべ庭水★★★潦
下五「庭水」はなんと読むのでしょうか。(髙橋正子)
「潦」は日本語変換「あ」を右クリックし、IMEパッドから手書きなどで、探すことができます。ご参考までに。(髙橋正子)
桑本栄太郎
昇降機降りて庭なるこうめ咲く★★★
吾が思い君につたえん天狼忌★★★
雨しととど降れば並木の花万朶(原句)
「降れば・・・花万朶」は論理的に不自然です。(髙橋正子)
雨しとど降るや並木の花万朶(添削1)
雨しとど降りて並木の花万朶(添削2)
3月25日(4名)
小口泰與
眼間の皴みてやまず雪解山★★★
春昼や焼き饅頭の味噌の香よ★★★
春昼や焼き饅頭の味噌香り(添削例)
「春昼や」の「や」は切れ字で、ここに詠嘆があります。「香よ」の「よ」は感嘆・詠嘆の意味がり、切れ字の働きをしています。二つ使うのは避けたいです。(髙橋正子)
青空へ白木蓮の咲きほこり★★★
廣田洋一
小諸なる城跡ゆかし菫かな★★★
石垣の隙間に伸びる菫かな★★★
人差し指撫でて確かめ春の塵★★★
桑本栄太郎
やはらかな雨が降り居り木の芽吹く★★★
孫たちは「U・S・J」へ春やすみ★★★
エレベーター降りてピンクやにはざくら★★★★
弓削和人
藪陰に雪の名残や朝夕と★★★
春寒や白き連山雄々と(原句)
「雄々と」は、なんと読みますか。「ゆうゆうと」なら、「悠々と」の字を当てます。あるいは「雄々しい」(おおしい)の意味ですか。(髙橋正子)
春寒や白き連山雄々しくも(添削例)
鳥雲のほかにさざ波のこりけり★★★
3月24日(3名)
小口泰與
若鮎や峡の岩間の轟轟と★★★
「岩間の轟轟」は舌足らずです。峡を省いてそれに代わる言葉をいれてください。(髙橋正子)
若鮎や岩間の水の轟轟と(添削例)
引鴨や沼を統ぶるる山の風★★★
「統ぶ」は、バ行下二段活用の動詞なので、体言の「山の風」を修飾するときは、「統ぶる山の風」となります。
5・7・5に整えるなら、「たり」を加えて、
引鴨や沼を統べたる山の風(添削例)
「統べ」(統ぶの連用形)+たる(たりの連体形)+山の風(体言(名詞))
動かざるマッサージチェア目借時★★★
多田有花
雨あがる夜明け盛んに雉の声★★★★
週末は雨の予報や花曇る★★★
フィットネスアプリを入れて春の野へ★★★
桑本栄太郎
降りしきる雨に崩るる白木蓮★★★
晴れいてもまた降りしきる菜種梅雨★★★
さみどりのぽつぽつ競う木の芽雨
競うのは、「木の芽雨」ですか。(髙橋正子)
3月23日(4名)
小口泰與
はくれんや夕暮のワイシャツの皴★★★
ふらここや赤城の風を連れて來し★★★
「連れて来し」の擬人法が思わせぶりです。そのままを描写(写生)すると、一段上の句になると思います。(髙橋正子)
ふらここや赤城の風の吹き抜けし(泰與改作)
私は、改作のこちらの句が好きです。景色が想像しやすくなり、ワンランク上の句になったと思います。(髙橋正子)
喧騒と言うほかは無し猫の恋★★★
廣田洋一
蓬摘み今日の団子に味を付け★★★
草摘むや和食恋しき異国の野★★★
花散らす雨の降りたる北の丸★★★
多田有花
雨の朝そめいよしのの開き初め★★★★
春暖の部屋広々と電話撤去★★★
電気契約新しくして春なかば★★★
桑本栄太郎
春雨のワイパー頻りバスの窓★★★
白れんの雨のしとどに散りにけり(原句)
「雨の」の「の」は主格(主語を表す)。したがって、「雨がしとどに散る」意味になります。添削句の「や・・けり」の切れ字の使い方に問題がないわけではありませんが、許容されいていますので、添削のようにしました。(髙橋正子)
白れんに雨やしとどに散りにけり★★★(正子添削)
雨に咲く桜並木や花あはれ★★★
「雨に咲く桜並木」は「あはれ」の風情で、「花あはれ」は、「雨に咲く桜並木」の説明になっています。(髙橋正子)
3月22日(4名)
小口泰與
辛夷咲く棚田へ水を張りにける★★★★
解禁の鮎を描きし道しるべ★★★
蟻出でて芝の森へとさまよえり★★★
廣田洋一
道の端色濃く群れて花菫★★★
ワイパーを動かし続け春の塵★★★
玄関前パタパタ落とす春の塵★★★
桑本栄太郎
春興の朝よりテレビ”オオタニサン”★★★
白れんの傷つきながら仕舞いけり★★★
推敲の間にも虚ろや目借時★★★
多田有花
春分やピアノの音に静かな雨★★★
春分に集いて食べる晩御飯★★★
窓開けて昼餉の支度暖かし★★★
3月21日(4名)
小口泰與
湖の波二重三重なり帰る鴨★★★
「二重三重」は常套句なので、ここにご自分の言葉で見た(観察・発見)ことを言い表すと「帰る鴨」を惜しむさびしさが出るはずです。(髙橋正子)
「湖の波風に逆らい帰る鴨」(泰與改作)
「二重三重なり」より、作者の心情や心の動きが感じられるようになりました。読者にとって、作者がより身近に感じられます。感情や心情の動きは、言葉のリズムによく表れます。自分の言葉で表現するとは、自分のリズムで表現することです。(髙橋正子)
噴き上がる薔薇の赤芽や春夕べ★★★
ワイシャツの一日の皴暮遅し★★★
廣田洋一
観音像を間に挟み桜かな★★★
正面に白富士見つつ彼岸詣★★★
咲満ちし彼岸桜の菩提寺かな(原句)
「・・かな」までがメリハリなく続いているのが惜しいです。(髙橋正子)
菩提寺の彼岸桜や咲き満ちし(添削例)★★★★
桑本栄太郎
お彼岸のふるさと遠く祈りけり★★★★
お彼岸のふるさと遠し祈りけり(正子添削1)
お彼岸やふるさと遠く祈りけり(正子添削2)
切れを入れる方法で添削しました。
孫来たる準備に追われ春うらら
「孫来たる(孫来たり )」は、すでに孫が来ている意味です。(髙橋正子)
孫の来る準備に追われ春うらら★★★(正子添削)
しずく垂れ/花の明かりや/山茱萸黄(原句)
二か所で切れています。つまり、句が整理されていないので、このような切れ方になってしまいます。「しずく垂れ」、「花の明かり」、「山茱萸黄」のどれを一番言いたいのでしょうか。(髙橋正子)
弓削和人
苔道を照らす夕べの朧かな★★★
田沢湖に夕霞して鳥立ちぬ★★★
鳥曇湖底の瑠璃の濃しきかな(原句)
鳥曇と湖の瑠璃色に着目したのは良いですね。俳句では多くは言えませんので、素直な表現を心がけるのがベストと思います。
「湖底」は「湖の底」です。「濃しきかな」の「濃しき」はまちがいです。「濃し」の連体形は「濃き」です。(髙橋正子)