6月10日(3名)
小口泰與
田水ひく小川の音の滔滔と(原句)
「滔々と」は、水の流れや、話の流れの表現に使います。
田水ひく小川の流れ滔々と★★★★(正子添削)
また雨の太くなりたり薔薇の庭★★★
浅間山良く見え今朝の桐の花★★★
桑本栄太郎
睡蓮の池を迫り出す浮葉かな★★★★
雨誘う風の窓辺や花南天★★★
降りそうで曇りの茅花流し吹く★★★
弓削和人
串鮎のしずく滴る河川敷★★★
向日葵の天を仰ぎて咲きにけり★★★
打水や街に活気を放ちけり★★★★
6月9日(4名)
小口泰與
山古志の田を悠然と錦鯉★★★
魚はみな濁り好まずキャンプ場★★★★
隣家より夕餉の匂い桐の花★★★
桑本栄太郎
姫女苑の畑を被いぬ休耕地★★★
山並をそのまま映す植田かな★★★★
地道行く川風ありぬ草いきれ★★★
多田有花
緑陰に掛けサックスを吹く人よ★★★
道隔て紫陽花の色変わりけり★★★
前山の中腹栗の花盛り★★★
弓削和人
書に触れて横たわりおり夏の夜★★★
弁当箱ひとりで食べる端居かな★★★
列車乗り大緑陰を見て過る(原句)
「列車乗り」は、日本語としては片言です。(原句)
列車に乗り大緑陰を見て過ぎる(口語)(正子添削)★★★★
列車に乗れば、旅でなくても、通勤や通学などでも、思わぬ景色に出会うことがある。たまたま「大緑陰」のある涼しそうな景色を見た。大きな緑陰に入って見たい気持ちが湧いたであろう。(髙橋正子)
6月8日(4名)
小口泰與
緑陰の空深きかな湖の風(原句)
緑陰に空深きかな湖の風★★★★(正子添削)
老鶯や赤城の裾の樹木の色★★★
枝伸びて樋を隠せる青葉かな★★★
多田有花
青鷺の翼広げてわが頭上★★★
青葉山今朝青空を戴けり★★★★
朝となれば、青々とした青葉の山とその上に広がる青空が新鮮に、またきっぱりと目に映る。深い緑と空の青の色がシンプルでいい。(髙橋正子)
色づいて小さき紫陽花雨を待つ★★★
桑本栄太郎
堰水の白き飛沫や朝涼し★★★★
川べりの地道を行けば草いきれ★★★
花合歓の川風に浮く栄華かな★★★
弓削和人
眼鏡越し仰いで空に羽蟻とぶ(原句)
眼鏡越し仰げる空に羽蟻とぶ★★★(正子添削)
老夫婦夏の停車場腰かけぬ(原句)
「老夫婦/夏の停車場/腰かけぬ」と3つに切れていますが、これは俳句では嫌います。
老夫婦夏の停車場に腰をかけ★★★(正子添削)
夕立晴大和路ゆけば轍あと★★★★
6月7日(4名)
小口泰與
白鷺や川の中州の岩あらわ ★★★
靴紐を取り換えており夏の山★★★★
虹の根を探しに行けり吾子と犬★★★
多田有花
開け放つ窓に幾度もほととぎす★★★★
ほととぎすが鳴くと夏が来たと思う。次第に暑くなったこのごろ、窓を開け放すと、窓に何度もほととぎすの声を聞くことになった。明らかに夏が来た思い。(髙橋正子)
梅雨入りの前に洗濯を済ます★★★
明け早し旭光雲を照らしおり★★★
桑本栄太郎
忽と出で翅の透き居り夏とんぼ★★★★
老鶯の頻りになげく薮の空★★★
からころと竹林歌う青あらし★★★
弓削和人
青田風投網のごとく吹きわたり★★★★
夜の雷電光石火闇覆い★★★
晩涼や猫の眼差しのみありて★★★
6月6日(4名)
小口泰與
青鷺や川原の石の顕なる★★★
若竹や川風弾く五六本★★★★
五月山布団干したる両隣★★★
多田有花
ぽつぽつと代田が宅地の中に増え★★★★
雨音に目覚めておりぬ芒種かな★★★
軒下に雀のとまり走り梅雨★★★
桑本栄太郎
身ほとりの緑に染まる芒種かな★★★★
芒種は、「芒(のぎ)」の種、穂の出る植物を蒔く日とされ6月5日ごろに当たる。梅雨入り前の湿気が多くなるころであるが、身辺は木々や草々の美しい緑に染まる。味わいたい一日である。(髙橋正子)
犬連れの辻に集いぬ朝涼し★★★
恋染めしあの娘気になり草矢打つ★★★
弓削和人
夏の蝶雨風に舞い何処ゆく★★★
淡紅の夾竹桃が咲く団地★★★
紫陽花に雨だれにじみ藍深し★★★★
6月5日(4名)
小口泰與
急流に戸惑う我やバンガロー★★★
青鷺や湖の夕映え覚めやらぬ★★★
翡翠や渓流さやに歌いける★★★★
翡翠のいる渓流。その渓流が「さやに歌う」。清涼感のある句。(髙橋正子)
桑本栄太郎
犬連れの辻に集いぬ朝涼し★★★
つる薔薇の赤き垣根や美容院★★★
ついついと白き筋見せ青すすき★★★
多田有花
河川敷一樹がなせる大緑陰★★★
川風を楽しむ日曜デイキャンプ★★★
夏の夕陽のあるうちに湯につかる★★★
弓削和人
夏果のふるさとを発ちにけり★★★
「字足らず」になっています。それで、物足りない感じがします。(鷹はh氏正子)
夕山を下る卯の花腐しかな★★★
万緑の中の透き目の民家かな★★★
6月4日(4名)
小口泰與
郭公や暁の一声それっきり★★★★
暁の郭公の一声。そのあと鳴くかと声を待つが一声だけだった。郭公の一声ののちの暁の静寂。(髙橋正子)
松落葉宅地造成進みける★★★
雀らの昼の芝生や捩り花★★★
多田有花
花好きの家なり八重のさつき咲く★★★
夜勤明けの男を迎え朝の薔薇★★★
赤き薔薇窓辺いっぱいに咲かせ★★★
桑本栄太郎
朝日さすつる薔薇赤き垣根かな★★★
つぶつぶの雨を待ちをり四葩咲く★★★
青すすき筋目を白く通しけり★★★★
弓削和人
炎昼の路を貫く耕運機★★★★
暑いさかり、道路を耕運機がまっすぐに進んでいるのに出会うことがある。畑や田に向かうところであろうが、道路を移動する動きが面白い。「炎昼」が効いている。物事がさらけだされる時刻。(髙橋正子)
夕暮れまで立ちにけり鷺一羽★★★
夕風が網戸を透きて吹きわたり★★★
6月3日(4名)
小口泰與
桐咲くや祖母の小紋を妻纏う★★★★
釣糸の枝より外る雲の峰★★★
白薔薇や心に響くことのあり★★★
桑本栄太郎
木洩れ日の影を踏みつつ朝涼し★★★★
朝の涼しさは、木洩れ日にちらちらと動く影を踏むときに、特に感じる。「涼しさ」と言う目に見えないものを「木洩れ日の影」によって表した。(髙橋正子)
紫陽花の色移りゆく垣根越し★★★
下校児の賑やかなりぬ青あらし★★★
多田有花
蛍袋朝のチャペルの鐘の音★★★★
このごろは青きサルビアも多し★★★
十薬が主となりし空き家かな★★★
弓削和人
姫女苑売り地にそよぐ白さかな★★★
夏浅し運河の果てを見ゆる鷺(原句)
「見ゆる(終止形は、見ゆ)」は、口語になおすと「見える」(自動詞)です。自然に目に映る意味です。「見ゆ(自動詞)」ではなく「見る(他動詞)」を使います。「見る」はマ行上一段活用なので、「鷺」につなげるには連体形の「見る」を使います。
夏浅し運河の果てを見る鷺よ★★★(添削①)
夏浅し鷺は運河の果てを見て★★★★(添削②)
猫来たり凪の植田に身を映し★★★
6月2日(4名)
小口泰與
黄帽子の子らの歓声鳰浮巣★★★
順番に飛び立つ川鵜夕間暮れ★★★
郭公や里の社の古びたる★★★★
多田有花
芋の葉は芋の葉なりき夏の朝★★★
茄子の花うつむきひとつ咲き初めし★★★★
葉も茎も花もむらさき色の茄子。咲きはじめた一つの花がうつむいて、いっそう愛おしく思える。そんな花が咲きはじめたのだ。(髙橋正子)
夏草の茂れるばかり廃屋に★★★
桑本栄太郎
治療果て家路となりぬ夏日影★★★
緑蔭の家路のつづくバス通り(原句)
緑蔭のつづく家路やバス通り★★★★(正子添削)
昼寝より目覚めつづくや五里霧中★★★
弓削和人
緋ダリア溢るる笑みの眩しさよ(原句)
「笑み」とするところを、しっかり写生するのが良いと思います。俳句は、写生が基本です。(髙橋正子)
緋ダリアの咲き溢れたる眩しさよ★★★★(正子添削)
緑さす苗の並びに雲かかり★★★
蒲の穂の新兵のごとなびくかな★★★
6月1日(4名)
小口泰與
正面に奇岩の山や昇り藤★★★
嶺雲や文机に置く三国志★★★★
今日迎う三年目の目高かな★★★
桑本栄太郎
黄金になるには早し小判草★★★
独り居の午後の眠けや六月に★★★
くもりても雨ともならず流しかな★★★
多田有花
新しき日の始まりやアマリリス★★★★
アマリリスは、ラッパ状の赤い花が、見るからに元気で溌剌としている。新しい日の始まりに相応しい花と言えよう。(髙橋正子)
ベゴニアの小さき一輪路地裏に★★★
高く咲く薔薇に朝日の差しにけり★★★
弓削和人
鮎釣りの父と向かうや長良川★★★★
夏草や宮参りたる通学児(原句)
通学の児童は、この時期なんのための宮参りでしょうか。
夏草や宮参りする通学児★★★(正子添削)
通学の鞄重しや氷菓子(原句)
「通学の鞄重し」ということと「氷菓子」の関係がわかりません。二つのことをくっつければいいと言うことではありません。(髙橋正子)
通学鞄の重きをおろし氷菓食ぶ★★★(正子添削)