書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

内村鑑三 「宗教の大敵」

2009年04月16日 | 人文科学
 今年04月10日、「白井堯子 『福沢諭吉と宣教師たち 知られざる明治期の日英関係』」から続き。
 引用された内村鑑三の文章につき、原文に当たる。
 副題「十月十日東京高輪西本願寺大学校に於ける演説の一節」。題名下、「明治35年11月1日『万朝報』 署名 客員 内村鑑三」の但し書き有り。

 政治家の政略は少しは許せる、然しながら学者の政略に至ては少しも許すことが出来ない、若し哲学者とか文学博士と称えられる人が出て仏教は別に基督教に優る所がなくとも国体を保存するに必要であれば之を保護しなければならないなど云ふ奇怪千万の説を唱へ出したならば、その時こそ実に宗教家たる者の大憤慨を発すべき時であつて、我等は共同して斯かる宗教の大敵を排斥すべきである。 (339頁)

 内村鑑三の怒りの原因がこれで分かった。内村は、福澤の態度を真理を蔽う不実・偽善の所業と看たのだ。

(『内村鑑三全集』第10巻、岩波書店、1981年、同書338-340頁)