〈http://query.nytimes.com/mem/archive-free/pdf?res=F10E14FD3A5C117088DDA90994DF405B848CF1D3〉
From The London Times, July 10, 1904; Translated by V. Tchertkoff and I.F.M.
レフ・トルストイによる「ロンドン・タイムズ」への寄稿文。日本では『日露戦争論』として知られる。日本語訳としては平民社(幸徳秋水/堺利彦)訳および東京朝日新聞(杉村楚人冠)訳が有名。どちらもこの英語版からの重訳。
ネット上でロシア語原文が見つからないまま、「ニューヨーク・タイムズ」のフリー・アーカイブで英語訳を読む。
いい訳だと思う。トルストイのときに息苦しくなるほどに重厚な文体を、おそらく英語に変換するうえでの最低限の軽減をはかっただけで、ほぼそのまま再現していると思う。内容の正確さについては原文を見ていない以上なんとも言えないが、これを見て、幸徳・堺のコンビによる平民社訳(注)が、そのもととなった英訳に忠実な、内容的には極めて正確な訳であることはわかった。秋水が「翻訳の苦心」でひどく気にしているほどには共同作業による文体のギクシャク感はない。全体としての統一は取れている。文語だから誰が書いても形がある程度決まってくるということもあるかもしれない。
ただそれに関連してくるのだが、明治37年ということもあり文体が古すぎる。そもそもこの文章を文語で訳す必要はあったのかと思う。漢字は多用すべきであろうが、最初から現代語文にすべきだったろう。時代の制約を超えた精神の人だったのだから。いまでさえ新しい。
注。『日露戦争論』のテキストは『平民社百年コレクション』第1巻「幸徳秋水」(平民社資料センター監修、論創社、2002年11月)による。以下に引用する『平民主義』(明治40・1907年)も同じ。
幸徳秋水も、そうである。
戦争は罪悪也、何人が之を行ふも罪悪也 (『平民主義』「非戦論 戦争と道徳」上掲書125頁。原文傍点)
吾人の非戦論は一時の為めにする者に非ず、永遠の真理の為めにする者也、真理は時に従つて変ずる者に非ず、吾人は時に従つて之を放擲することを得る乎 (同上、「非戦論 戦時と非戦論」上掲書137頁。原文傍点)
秋水は、口語で書くべきだったろう。
From The London Times, July 10, 1904; Translated by V. Tchertkoff and I.F.M.
レフ・トルストイによる「ロンドン・タイムズ」への寄稿文。日本では『日露戦争論』として知られる。日本語訳としては平民社(幸徳秋水/堺利彦)訳および東京朝日新聞(杉村楚人冠)訳が有名。どちらもこの英語版からの重訳。
ネット上でロシア語原文が見つからないまま、「ニューヨーク・タイムズ」のフリー・アーカイブで英語訳を読む。
いい訳だと思う。トルストイのときに息苦しくなるほどに重厚な文体を、おそらく英語に変換するうえでの最低限の軽減をはかっただけで、ほぼそのまま再現していると思う。内容の正確さについては原文を見ていない以上なんとも言えないが、これを見て、幸徳・堺のコンビによる平民社訳(注)が、そのもととなった英訳に忠実な、内容的には極めて正確な訳であることはわかった。秋水が「翻訳の苦心」でひどく気にしているほどには共同作業による文体のギクシャク感はない。全体としての統一は取れている。文語だから誰が書いても形がある程度決まってくるということもあるかもしれない。
ただそれに関連してくるのだが、明治37年ということもあり文体が古すぎる。そもそもこの文章を文語で訳す必要はあったのかと思う。漢字は多用すべきであろうが、最初から現代語文にすべきだったろう。時代の制約を超えた精神の人だったのだから。いまでさえ新しい。
注。『日露戦争論』のテキストは『平民社百年コレクション』第1巻「幸徳秋水」(平民社資料センター監修、論創社、2002年11月)による。以下に引用する『平民主義』(明治40・1907年)も同じ。
幸徳秋水も、そうである。
戦争は罪悪也、何人が之を行ふも罪悪也 (『平民主義』「非戦論 戦争と道徳」上掲書125頁。原文傍点)
吾人の非戦論は一時の為めにする者に非ず、永遠の真理の為めにする者也、真理は時に従つて変ずる者に非ず、吾人は時に従つて之を放擲することを得る乎 (同上、「非戦論 戦時と非戦論」上掲書137頁。原文傍点)
秋水は、口語で書くべきだったろう。
『日露戦争論』の平民社訳は、現在、国書刊行会から『トルストイの日露戦争論』という題で、現代語版が刊行されております。仏紙「フィガロ」のトルストイへのインタビューや英紙「ロンドンタイムズ」の『日露戦争論』に対する批判記事、石川啄木による批評も収録されており、同時代人たちの反応についても詳しく知ることができます。
『トルストイの日露戦争論』、御教示ありがとうございました。さっそく繙いてみます。どんな現代語に訳されているのか、楽しみです。