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炭鉱画家の鉱脈展(9月4日まで)…7月23日の日記・5

2006年07月24日 12時07分39秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 23日は最後に、夕張市美術館に「ヤマのグラフィック 炭鉱画家の鉱脈展」を見に行った。夕張、赤平など空知を中心とした道内の炭鉱に勤めながら絵筆を執った33人の絵画を紹介している。

 いま、33人と書いたけれど、正確には、このうち2人は炭鉱勤務ではない。北炭札幌営業部に勤めていた伊坂重孝さん(1923-)と、国鉄赤平駅で石炭輸送にたずさわっていた勝見渥さん(1944-)がふくまれている。また、三菱美唄美術サークルによる合作「人民裁判記録画」も出品されている。この絵や、平山康勝さん(1930-)の近作以外はほとんどはじめて見る作品ばかりで、筆者の目には新鮮だった。
 ちなみに、伊坂さんはのちにSTV社長、会長を歴任した人で、一時期道展の会員でもあった。道内のテレビ局でSTVが際立って美術展の主催に熱心なのは、伊坂さんのおかげかもしれない。

 以前、別エントリでも書いたけれど、空知地方は炭鉱とともに発展した。炭鉱町にはたくさんの人が住んでいたから、文化活動も盛んだった。この展覧会でも、戦争直後から50年代にかけて札幌で毎年ひらかれていた「炭鉱絵画展」のポスターが展示されているが、たしか、全道展の巡回展が炭鉱でおこなわれたこともあったように記憶している。
 描かれているのは炭鉱や地元の風景が多いが、それだけではない。他の地方の風景や人物、デザイン画、抽象などもある。
 写実傾向の絵がわりと多いのは、炭鉱では労働組合の力が強く、ソ連の社会主義リアリズムの影響があったせいかもしれない。

 炭鉱やその周辺を題材にした絵では、歌志内の中山教道さん(としみち。1930-2002)の丁寧なタッチが印象深い。油彩「空知最後のヤマ」もそうだが、市の広報かなにかのために描いたという10枚のスケッチは、1本の線をもゆるがせにしない画家の意思が感じられる。
 ぜんぜん知らない人だが、倉持吉之助さん(1901-96年)の日本画もおもしろい。展覧会ポスターにも採用された「夕張二鉱繰込」など、何ものも見逃さないぞと現実を見つめる作家の気合がつたわってくるようだ。坑内を描いた作品などは、炭鉱勤めでないとかけない臨場感がある。
 また、道展で活躍中の小林政雄さん、浜向繁雄さんが1918年生まれというのもおどろきだ。
 草刈喜一郎さんの絵がないのがちょっと残念。

 ■「人民裁判記録画」を美唄で見た際の感想(2002年4月1日の項)

 それにしても、夕張市が財政再建団体となることが決まって、美術館の行方が気になる。
 年2回の企画展がそのまま来年度以降もひらかれなくなるかもしれないが、美術館自体がなくなるという最悪の事態はなんとか回避できないだろうかと思う。


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3 コメント

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Unknown (SH)
2006-07-24 12:57:20
ヤナイさん、こんにちは。



先日夕張に行っただけに、何とかならないものかと思います。でも、収支の観点からすると真っ先に廃止対象になりそうです。



私、個人としては図書館も残して欲しいですが、2者択一となると・・・
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収支の観点 (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2006-07-25 22:27:09
SHさん、いつもどうも。

そう悲観したものでもないと思います。

美術館は赤字でも、第3セクターや病院とは、赤字額が2けたか3けたは違うので、まずそっちからの議論になると思います。
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Unknown (SH)
2006-07-26 08:35:31
そうか、桁の問題もありますね。
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