
会場の正面に掲げてある、いちばん大きな絵(冒頭の画像)を見て、すぐに思った。
「流氷の海だ!」
この絵を含め、題名が添えられた作品はひとつもない。
人物が描かれたもの、赤を基調にした抽象など、作風は多彩だ。
左下の画像で、レモンイエローの壁にうがたれた穴からのぞく色が、上の作品の背景に似ている。
冷たく、どこまでも深い青緑。
以前、流氷砕氷観光船「ガリンコ号」に乗って見た海の色にそっくりだと思った。
作者本人からは、そんな話はひとことも聞いていないにもかかわらず。


佐々木さんは札幌在住だが、近く故郷の網走に戻って漁業にたずさわるという。
ファイルを見せてもらったが、クラブイベントのフライヤーなどをおびただしく手がけている。
自らもクラブでライブペインティングを行っていた。
ちょうど筆者がギャラリーにうかがった日の前夜、札幌で最後のライブペインティングをしていたようだ。見たかったなあ。
このほか、以前の(移転前の)praha2が閉鎖となる直前、建物をフルに活用した期間限定の展示空間「ボイラーギャラリー」を展開していた。
ただし、筆者はこのとき、札幌にいなかったので、このめざましい活動は間接的にしか知らない。
じつは、このときの活動ぶりは、かなりマメに「北海道美術ネット掲示板」に投稿されていたのだが、当時のログを保存しておくのを怠っていて、もう残っていない。
年末年始のチQさんとの2人展も、インフルエンザなどのためとうとう足を運べなかった。佐々木さんには申し訳なく思っている。
というのは、単なる社交儀礼ではなくて、佐々木さんの立ち位置がとてもユニークだと強く感じていたのは、ほんとうだからだ。
教育大や美大を卒業して、道内の団体公募展に出したり、札幌の中心部にある貸しギャラリーで個展・グループ展を開いたりというのが、通常の作家が歩むコースであるとしたら、佐々木さんはもっとストリートに近いところから登場したなかでも代表選手的な存在だと思うのだ。
なんにしたって、人材の供給源は多様であればあるほどいいにきまっている。
その分野を活性化するからだ。
佐々木さんの活動が札幌で見られなくなるのは残念だ。
しかし、或る程度の規模のマチであれば、表現への志を持った人は、かならずいると思う。
網走の地でなにかをしていれば、きっと北の大地の振動が札幌まで伝わってくるんじゃないか。
2009年3月3日(火)-15日(日)11:00-19:00、月曜・14日休み
temporary space(北区北16西5 地図H)
■ART! MEET! MART! (2008年11月)