札幌芸術の森美術館で開催中の「森山大道写真展<北海道>最終章」にあわせ、森山大道さんと、札幌の美術作家伊藤隆介さんによるトークショーが4月19日、同美術館で行われた。
トークショーの模様は、おそらく道内の美術館での催しとしては史上初めて、Ustream放送でネット中継された。
この放送は、カメラを複数用いた本格的なもので、しかも、中継前には、これまでに道内各会場で行われた森山大道さんのトークショーのダイジェストが流されるという、うれしいサービスつき。さらに、これまで彼の写真展が開かれた、市立小樽文学館、上川管内東川町の文化ギャラリー、夕張市美術館などで、パブリックビューイングも行われた。
そのおかげで、北見を離れることができなかった筆者も、見ることができた。
もちろん、これまで幾度となく北海道を訪れてトークショーなどに出演してきた森山大道さんの行事の、今回が掉尾になることを思えば、現地まで足を運びたかったのはやまやまである。
もし今度のトークショーが当初の予定通り3月に行われていれば、まちがいなく出席できていただけに、のど元まで
「大震災で延期にさえならなかったら…」
という言葉が出てきそうになる。とはいえ、このフレーズは、この程度の事情に使うものではないだろう。
寝床にいながら、気になった言葉をいくつかツイッターで書きとめておいたので
「4月17日(日)のつぶやき」
「4月17日(日)のつぶやき 続き」
の両エントリをご覧ください。
むろん、これは、トークで話されたことのほんのごく一部を記録しただけであり、文責は筆者にある。本気を出したときの、1割か2割程度を、打ち込んだに過ぎない。
さて。
森山大道さんについては説明は不要だろう。伊藤隆介さんは、映像を使ったインスタレーションで、道外の美術館の展覧会にもたびたび招かれている40代の作家である。
で、これは筆者の勝手な推測であるが…。
伊藤さんは、映像と現代アートの2領域にまたがって活動している。一方で、森山大道さんは、もともと「写真」業界の人ながら、近年は「現代アート」かいわいからのラブコールが強まっている。
森山大道さんに限らず「写真」が「現代アート」の一分野として認知されるようになってきたのは、わりあい近年のことである。
そこで、「写真」を含む「映像」と、「現代アート」の双方に詳しい伊藤さんから、アート寄りの視点で森山芸術を語ってもらおうという主催者側の意図が、ひょっとしたらあったのではないか。
もっとも、森山大道さんはノンシャランというか、大上段に構えて
「アートとしての写真を語る!」
みたいなことは、やらない人である。
(すくなくても表面的には)大文字でアートや写真を語ることを潔しとしないのである。
「現代アート」の領域で語られる、ということは、多少なりとも、コンセプトという理詰めの側面から語られるということである。
ただ、森山大道さんは、自らの作品を現代アートのことばで評されることを拒否はしないが、そういう理詰めの側面からは身をかわし続ける人ではあるまいか。
たしか、彼のエッセー集「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」にこんなことが書いてあったと記憶する。
-若いころは、ムズカシイ顔をして、写真とは何か、写真を撮る自分とは何かなどと、考えていた。今思えば、そんなことを考えているヒマがあったら、一枚でも多く写真を撮るべきだった…。
例によって、現物にあたることができないため、正確な引用ではないし、もしかしたら「犬の記憶・終章」あたりにあった文章かもしれない。
しかし、彼がものすごい量の写真を撮り続けるのは、頭でっかちの理屈に追いつかれないためではないかと、考えたりもするのである。
したがって、伊藤隆介さんが、現代アートという立ち位置から話を進めようとしても、なかなか会話はスムーズに転がって行きづらく、後半、わりあい現場に近い部分の話になってから、言葉のキャッチボールも順調になってきていたのも、ある種の必然だったのかもしれない。
また、森山大道さんが「現代アート」業界から捕捉され続けるのは、そういう理詰めの言説に耐えるだけの内容と個性を作品が持っているからにほかならないからだろう。あるいは、いまの森山さんが反省している、理詰めの時期の作品(1970年代)があったからこそ、なのかも…と思ったりする。
なお、この日のトークショーでは、会場からの質問のほかに、Ustream経由でひとつだけ森山さんへの質問が読まれた。
それは、実は、筆者が発したものであり、ほかにも何人かの方から質問が寄せられていたので、いささか心苦しいのだけれど、一番早い書き込みだったということでお許しいただきたい。
内容は、先ごろ亡くなった多木浩二さんの思い出を聞くというものだったが、Twitterで平凡社さん(http://twitter.com/heibonshatoday)が、反応してくださったのを見て、質問したかいがあったな~と、感じたのだった。
【告知】森山大道写真展 ブエノスアイレス/サンパウロ (2月11日~5月15日)
【告知】森山大道写真展 北海道<最終章> (2月6日~5月8日)
■森山大道写真展 北海道 第2章 展開(2010年)
【告知】森山大道写真展 北海道-第2章/展開 小樽展
■森山大道写真展、6月11日から
東川で森山大道展を見た(1) (2010年3月)
■森山大道写真展 北海道<序章> at PARCO (2009年9月)
2009年9月14日。森山大道への旅
■森山大道写真展-北海道<序章> (2009年8月)
●森山大道展、道内5カ所で
■アーティストトーク(2009年6月)
森山大道「北海道」(9)
森山大道「北海道」(8)
森山大道「北海道」(7)
森山大道「北海道」(6)
森山大道「北海道」(5)
森山大道「北海道」(4)
森山大道「北海道」(3)
森山大道「北海道」(2)
森山大道「北海道」(1)
=例の2万円写真集の解読。中断してます。
森山大道氏が道教大特任教授となったことについて(2006年)
トークショーの模様は、おそらく道内の美術館での催しとしては史上初めて、Ustream放送でネット中継された。
この放送は、カメラを複数用いた本格的なもので、しかも、中継前には、これまでに道内各会場で行われた森山大道さんのトークショーのダイジェストが流されるという、うれしいサービスつき。さらに、これまで彼の写真展が開かれた、市立小樽文学館、上川管内東川町の文化ギャラリー、夕張市美術館などで、パブリックビューイングも行われた。
そのおかげで、北見を離れることができなかった筆者も、見ることができた。
もちろん、これまで幾度となく北海道を訪れてトークショーなどに出演してきた森山大道さんの行事の、今回が掉尾になることを思えば、現地まで足を運びたかったのはやまやまである。
もし今度のトークショーが当初の予定通り3月に行われていれば、まちがいなく出席できていただけに、のど元まで
「大震災で延期にさえならなかったら…」
という言葉が出てきそうになる。とはいえ、このフレーズは、この程度の事情に使うものではないだろう。
寝床にいながら、気になった言葉をいくつかツイッターで書きとめておいたので
「4月17日(日)のつぶやき」
「4月17日(日)のつぶやき 続き」
の両エントリをご覧ください。
むろん、これは、トークで話されたことのほんのごく一部を記録しただけであり、文責は筆者にある。本気を出したときの、1割か2割程度を、打ち込んだに過ぎない。
さて。
森山大道さんについては説明は不要だろう。伊藤隆介さんは、映像を使ったインスタレーションで、道外の美術館の展覧会にもたびたび招かれている40代の作家である。
で、これは筆者の勝手な推測であるが…。
伊藤さんは、映像と現代アートの2領域にまたがって活動している。一方で、森山大道さんは、もともと「写真」業界の人ながら、近年は「現代アート」かいわいからのラブコールが強まっている。
森山大道さんに限らず「写真」が「現代アート」の一分野として認知されるようになってきたのは、わりあい近年のことである。
そこで、「写真」を含む「映像」と、「現代アート」の双方に詳しい伊藤さんから、アート寄りの視点で森山芸術を語ってもらおうという主催者側の意図が、ひょっとしたらあったのではないか。
もっとも、森山大道さんはノンシャランというか、大上段に構えて
「アートとしての写真を語る!」
みたいなことは、やらない人である。
(すくなくても表面的には)大文字でアートや写真を語ることを潔しとしないのである。
「現代アート」の領域で語られる、ということは、多少なりとも、コンセプトという理詰めの側面から語られるということである。
ただ、森山大道さんは、自らの作品を現代アートのことばで評されることを拒否はしないが、そういう理詰めの側面からは身をかわし続ける人ではあるまいか。
たしか、彼のエッセー集「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」にこんなことが書いてあったと記憶する。
-若いころは、ムズカシイ顔をして、写真とは何か、写真を撮る自分とは何かなどと、考えていた。今思えば、そんなことを考えているヒマがあったら、一枚でも多く写真を撮るべきだった…。
例によって、現物にあたることができないため、正確な引用ではないし、もしかしたら「犬の記憶・終章」あたりにあった文章かもしれない。
しかし、彼がものすごい量の写真を撮り続けるのは、頭でっかちの理屈に追いつかれないためではないかと、考えたりもするのである。
したがって、伊藤隆介さんが、現代アートという立ち位置から話を進めようとしても、なかなか会話はスムーズに転がって行きづらく、後半、わりあい現場に近い部分の話になってから、言葉のキャッチボールも順調になってきていたのも、ある種の必然だったのかもしれない。
また、森山大道さんが「現代アート」業界から捕捉され続けるのは、そういう理詰めの言説に耐えるだけの内容と個性を作品が持っているからにほかならないからだろう。あるいは、いまの森山さんが反省している、理詰めの時期の作品(1970年代)があったからこそ、なのかも…と思ったりする。
なお、この日のトークショーでは、会場からの質問のほかに、Ustream経由でひとつだけ森山さんへの質問が読まれた。
それは、実は、筆者が発したものであり、ほかにも何人かの方から質問が寄せられていたので、いささか心苦しいのだけれど、一番早い書き込みだったということでお許しいただきたい。
内容は、先ごろ亡くなった多木浩二さんの思い出を聞くというものだったが、Twitterで平凡社さん(http://twitter.com/heibonshatoday)が、反応してくださったのを見て、質問したかいがあったな~と、感じたのだった。
【告知】森山大道写真展 ブエノスアイレス/サンパウロ (2月11日~5月15日)
【告知】森山大道写真展 北海道<最終章> (2月6日~5月8日)
■森山大道写真展 北海道 第2章 展開(2010年)
【告知】森山大道写真展 北海道-第2章/展開 小樽展
■森山大道写真展、6月11日から
東川で森山大道展を見た(1) (2010年3月)
■森山大道写真展 北海道<序章> at PARCO (2009年9月)
2009年9月14日。森山大道への旅
■森山大道写真展-北海道<序章> (2009年8月)
●森山大道展、道内5カ所で
■アーティストトーク(2009年6月)
森山大道「北海道」(9)
森山大道「北海道」(8)
森山大道「北海道」(7)
森山大道「北海道」(6)
森山大道「北海道」(5)
森山大道「北海道」(4)
森山大道「北海道」(3)
森山大道「北海道」(2)
森山大道「北海道」(1)
=例の2万円写真集の解読。中断してます。
森山大道氏が道教大特任教授となったことについて(2006年)
多木氏のことは前日の宮の森の方で中平氏のことも含めて語られていました。
多木浩二さんのことは宮の森美術館のトークで詳しく語られていたそうですね。
大道さんは嫌な顔ひとつしないで、同じ質問にも答えていただける。オトナだなあとしみじみ思います。
遅ればせながら・・そのトークショーを現場で食い入るように見て、聞いていた一人です。
最後にヤナイさんのお名前が読まれて そこにいらっしゃらないとわかり 残念だったなぁ~と思っていたんですよ。
私は最近 大道氏のファンになったのですが 伊藤さんとの会話が噛みあわない部分があったにも係わらず^^; 丁寧に受け答えされてる様子を見て 彼の人柄に触れたようでますますファンになりました。
何度も大道氏とお会いしている写真家の上原先生に同行していただいたので 事前に大道氏のお人柄は聞いていたのですが 決して上から目線ではなく 想像していた以上に飾らない 穏やかな口調で正直な方なのだと感じました。
最近はデジタルカメラでたくさん撮る・・ということも楽しんでいらっしゃる様子や「撮る」という部分での考え方に 街撮りを殆どしない私ですが 勉強になることばかりでした。
昨日は宮の森美術館へ行ってきました。
そこで ビデオや資料を見ていくつかの疑問への答えが見つかりました。
サインしていただいた「犬の記憶」~この休みに読めたら・・と思います^^;
わたしも、行くつもりだったので、うらやましかったのですが、いまは文明の利器Ustreamがあって、ほんとに良かったです。
大道さんはほんと、気さくな方で、いいですよね。
文章もなかなかのもので、わたしも「犬の記憶」のほか「犬の記憶 終章」「過去はいつも新しく未来はいつも懐かしい」など何冊か読みました。文庫サイズで「新宿」「遠野物語」などの写真集が手に入るのもウレシイです。
ただ、こんなに足しげく北海道にいらしていた大道さんの、一連のイベントがこれで終わりかとおもうと、ちょっとさみしいですね。
このトークは、僕にとってもトラウマ企画です。
弁解をすると、この年は震災があってこのトーク企画自体が延期になったんですが、その間に担当の学芸員の方も異動になってしまったんです。
依頼当初は司会(美術館のヒト)がいて、森山さんと僕がそれに答える(まぁ、森山さんの作品について僕がコメントする、写真と映画の相違について話す)という段取りだったんですが、当日美術館に行ったら「司会はいない」という流れになっていました(泣)。
ご存知の通り、森山さんの鉄板のトーク・スタイルは「答える」というものなので、事実上、僕が司会を兼務することになっちゃったんでした。しかも、全く準備なしに。これは無理!
そういうわけで、来られた皆さんには本当に申し訳なかったです。と同時に、少しは僕にも同情してほしいと思います(笑)。
それじゃ、なかなかスムーズにいかないですよね。
同情します(笑)。
たくさん見て書いているといわれれば、そうかもしれないとも思いますが、実は、宮の森美術館の個展について、ついにアップできてなかったり、反省点も多いです。
いままでの自慢は、サンフランシスコで「A Flat,Split Reel」を見たということでしたが(笑)、昨年は天神にも天王洲にも行けなかったし…。
今後はもっと早く書くよう、頑張ります(って毎年こればっかり言ってますが…)。