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■艾沢詳子展-闇のシナプス-(5月19日まで)

2007年05月15日 22時43分33秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 艾沢(よもぎさわ)さんは、札幌の版画家である。
 正式に調査したわけではないけれど、道内在住の版画家としては、鬼才・一原有徳さんを別格とすれば、全国的な知名度はトップであろう。
 めずらしいコラグラフという技法をつかって、抽象的な画面をつくっている。

 しかし、振り返ってみれば、近年の艾沢さんは、CAIが現在地に移転した際のオープニングを飾って以来、ほとんどインスタレーションばかり発表している印象がある。下のリンクにはないけれど、2004年の、札幌芸術の森の有島武郎旧宅でのインスタレーションも強く印象にのこっている(余談だが、筆者はテキストを書かないまま札幌から転居したのだ)。
 平面といえば、旧テンポラリースペースで、版画と似た作風のドローイングをならべたことがあったけれど、それも、すでに6年前のことだ。
 じつは、この間、東京では版画の個展をひらいており、今回の個展会場で、向かって右側の壁に貼られていた作品は、そのときの既発表作だと思われる。
 で、左側の作品は新作だと思うのだが、会場に作者がいなかったので、このへんはたしかめようがない。

 どの作品にも感じられるのは、ざわめくような「気配」である。
 草のようにゆらぎ、そよぐ線。
 あぶくのように現れては消える点。
 それらは、なんの形もなぞっていないけれど、作者の心の内奥深いところで日々発せられるつぶやきのように、発生している。
 ひとつひとつの線やあわが、作者の日々の精神のひだの反映であるかのように、ひかれ、曲がり、打たれ、そして消えていく。
 左側の壁と右側の壁で、あえて違いを指摘すれば、右の壁に展示されている作品が、紙のほとんどを黒い部分が占めているのに対し、左側のほうは、黒い部分がすくなく、黒でひとつのフォルムをかたちづくっているように見える作品が多い。たとえて言えば、左サイドの作品は、遠目で見るかぎり墨象に似ているのだ。

 人は日々、感情の糸をひそかに紡いでいる。誰にも知られることなく。わたしたちが個展の会場で出会うのは、本来、目にするはずのない、自分たちの感情のざわめきの軌跡なのだ。  

 なお、近年のインスタレーションで使われた、パラフィン(ろう)の、ひとがたのような立体は、カウンターの背後の窓のさんや、テーブルの上にいくつか配置されている。


07年5月3日(木)-19日(土)10:00-18:00(最終日-16:00)、火曜休み
茶廊法邑(東区本町1の2)

01年のドローイング展(画像なし)
02年の版画、ドローイング展(画像なし)
03年の「札幌の美術」
06年の「北の彫刻展」 (画像なし)


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