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■「和」を楽しむ (2014年1月5~23日、札幌)

2014年01月23日 01時23分23秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 お正月にあわせ、茶廊法邑 さ ろうほうむらが企画した展示。あかり、写真、日本画、書の屏風、漆の立体など、多彩な分野の作品が展示されており、会期も、おなじ会場での通例の展覧会よりも長めだ。

 で、特筆したいのは、会場構成の見事さ。
 25組も出品しているのに、ごちゃごちゃした感じはまったくなく、すっきりとしている。
 会場に入ってすぐ、左側に写真や洋画が置かれ、奥には大きなサイズの屏風やあかりを配して全体を引き締め、右側の壁には篆刻てんこくや日本画を並べ、最後に見る壁には抽象的な平面を展示している。さらに、空間の中央に、渡邊希さんの漆の立体を置いている。これらを、「ここからここまでは、●●のコーナーですよ~」という区分けした感じを醸し出すことなく、自然な流れで見せるのは、並大抵の技ではない。

「構成はどなたが中心になってやったんですか」
と法邑美智子さんに問うと、法邑さんご自身とのこと。
「キュレーターとかギャラリーオーナーとか、そんな大層なものじゃないですけど、10年やってますから。でも、出品をお願いした段階で、どなたからどんな作品が来るかは、だいたい予想できて、頭の中に入っていました」
 そして、こう付け加えた。
「わたしは主婦なので。お料理を盛りつけるのと似てるんですよ」

 やるなあ~。
 法邑さんは、謙遜気味に語るが、日本画の腕の見事さが会場づくりにも反映しているように、筆者には思われた。
 ご自身もおっしゃっていたけれど、この茶廊法邑は、広さも、天井の形状も、じぶんの希望でつくった会場なのだ。




 出品者は、次の通り。

眞鍋庵(あかり)
渡邊希(漆)
蒼野甘夏、浅野天鐘、山田恭代美、植田莫、藤井正治、法邑美智子(絵画)
伊賀新(幾何学造形)
鎌田光彦、山岸せいじ(写真)
天内岳堂、吉田宗理(書)
ダン・クール(生花)
石黒いづみ、丹波シゲユキ、前田育子、松原成樹(陶磁器)
岸本幸雄(木工)

 このうち、鎌田さんはアマチュアのネイチャーフォト愛好家だが、米国のスミソニアン博物館で作品「蒼の幻想」が1年間余り展示されているという。
 3点あるうち、左の「雲流」は、7月に津別峠で、中央の「蒼の幻想」は3月にニセコで、右の「静寂の音」は10月に釧路湿原で撮影した。左右の写真は一見水墨画のようで、モノクロ変換しているかと思いきや、カラーである。
 「蒼の幻想」はF値の明るいレンズで数十秒間露光したもので、羊蹄山、星空、2本の木と、完璧な構図。
 鎌田さんは、金曜の夜に仕事を終えると、津別峠まで車を走らせ、近くの宿で仮眠した後、夜明け前からシャッターチャンスを狙っているという。津別峠は雲海で有名になり、多くのカメラマンが待ち構えているそうだ(そして、太陽が昇るとすぐに退散してしまうらしい)。それにしても、写真に懸ける熱意には脱帽である。筆者とそれほど年も変わらないのだから、すこしは見習わなくてはと、反省した。

 山岸さんは「写真」に分類されているが、作品「wa」は、幅1.2メートルの長く茶色い紙に、さまざまな色の直線がひかれているという抽象画のような画面で、どこが写真なのだろうと不思議だった。
 それぞれの色の線は、たしかにカメラで撮影したイメージで、それをコンピューターで引きのばした物を何十本も並べてプリントアウトしたらしい。
 まるで、抽象画である。

 藤井正治さん「秋月-I」は、厚みのある小さな正方形を9個ならべた。上の四角には月が配され、しっかりと描かれた秋の夜の野の情景である。


 
2014年1月5日(日)~23日(木)午前10時~午後6時、火曜休み
茶廊法邑(東区本町1の1)



・地下鉄東豊線「環状通東」駅から約790メートル、徒歩9分

・札幌駅北口か環状通東駅から、中央バス「東64 伏古北口線」に乗り、「本町1条2丁目」降車。約180メートル、徒歩3分(1時間に1本)

・中央バス札幌ターミナルから中央バス「26 丘珠空港線」に乗り、「北13条東15丁目」降車。約460メートル、徒歩6分。なおこの路線は、環状通東、元町、新道東、栄町の東豊線各駅とも連絡

・地下鉄南北線「北18条駅」から中央バス「東62 本町線」に乗り「本町2条1丁目」から約450メートル、徒歩6分


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