
(承前)
前項が半世紀の歴史で終わってしまったので、展覧会の内容について。
地方の団体公募展はほかもそうだと思うが、オホーツク美術展も絵画作品が多い。
招待2、会員41、会友15、一般47点と、展示作の過半数を占める。
ただ、オホーツク美術展の大きな特色として、工芸も一大勢力をなしていることが挙げられる。
会員12、会友4、一般12点が出品されている。
染織などもあるが、大半は陶芸。安藤瑛一さんの門下が多い(全員ではないが)。
審査も、絵画などと工芸とで、別に行っているという。
ほかには、彫刻が会員、一般各1点である。
絵画の会員でもインスタレーションを出品している人もいる。
特徴としては、オーソドックスな風景画が目立つこと。
北見の中心部に住んでいても、車で10分も走れば、雄大な田園風景が広がっているのだから、無理もないことだ。
その一方で、抽象画や、実験的な絵画もあり、バラエティーに富んでいるといえる。
陶芸は壺がほとんどで、道展などの会場と似ている。これは、道展会員や出品者が多いことを思えば、当然であろう。
もちろん、特定の作風に偏っていることはない。
昨年に比べて、作品が増えた以上に壁面が埋まっている印象を受けたのは、巨大な絵画が何点か陳列されているためかもしれない。
上の画像、会員・小林雪雄の「麦秋」はF100×2。
創立会員・堰代大幹の「黄昏れる都心」は、なんとS300号だ。おそらく東京の巨大なビル群がモティーフだが、手前の川もしくは海と、紺色の空以外は、明かりをともしたビルが画面を埋め尽くしていて、息苦しいほどだ。
ほかの風景画は、緑豊かなオホーツク地方が題材のものが多いので、いっそう異彩を放っている。

手前左の壺が、ことしの協会賞を得た坪井洋子「さざ波」。抽象彫刻のような自由な造形。
背後の壁面右側に並んでいるのは、会友・橋本高士の2点。
右側の「紅葉を奏でる」は、黄色の葉が地面にびっしりと散り敷いた広い公園で、トランペットや太鼓を演奏しながら歩く4人を描いた明るい絵だが、演奏者の手の指が6本あると、筆者の娘が驚いていた。
その左側は、会友賞を受けた横山恭子「孫との語らい」。
北海道新聞を広げながら読む老父と若い男性の姿は、新聞の広告に用いたくなるほどほのぼのとした好ましい雰囲気。手前の食卓には、瓶ビールや日本酒、料理、マヨネーズなどがところ狭しと置かれている。背後のソファの上には、赤ちゃんの写真立てが据え付けられている。細かな部分にも配慮を怠らないこの作者らしい作。
左端は、写真が切れてしまったが、会友・中村二二二「モヨロコタンの詩『モヨロ人ギリヤークシャーマン』」。かなり粗いタッチで人物を描いているが、構図などはしっかりできている。

創立会員・勝谷明男「雪道の日ざし」(F100)
これまでも何度か書いているが、雪景色を描かせたら勝谷さんの右に出る人はいない。
厳冬期の雪、早春の雪、日なたと陰、それらをたくみに描き分けられるのは、勝谷さんならではだ。
新興住宅街なのにちゃんと絵になっているのもすごい。

こちらも創立会員で、置戸コンテンポラリーアートでも元気なところを見せていた、田丸忠「巣&板」(手前)と、林弘堯「淡立つふるえの中で」。
林さんがタブローの枠内におさまる作品を出したのは久しぶりではないだろうか。
奥の壁に見えているのは、50周年記念大賞に輝いた太田玲子「静波の記憶」。
風景を独自のやりかたで処理しつつ、安定した構図をつくりあげている。
2012年9月8日(土)~23日(日)
北網圏北見文化センター(北見市公園町)
網走移動展
9月25日(火)~30日(日)9am~5pm
網走市立美術館(南6西1)
□オホーツク美術協会 http://space.geocities.yahoo.co.jp/gl/mhrwh865
■北見・現代写実の眼 展(2012年6月12~17日、北見)
■第49回オホーツク美術展
■道展 オホーツクの作家展 ■つづき
■第34回春季オホーツク美術展(2011年)
前項が半世紀の歴史で終わってしまったので、展覧会の内容について。
地方の団体公募展はほかもそうだと思うが、オホーツク美術展も絵画作品が多い。
招待2、会員41、会友15、一般47点と、展示作の過半数を占める。
ただ、オホーツク美術展の大きな特色として、工芸も一大勢力をなしていることが挙げられる。
会員12、会友4、一般12点が出品されている。
染織などもあるが、大半は陶芸。安藤瑛一さんの門下が多い(全員ではないが)。
審査も、絵画などと工芸とで、別に行っているという。
ほかには、彫刻が会員、一般各1点である。
絵画の会員でもインスタレーションを出品している人もいる。
特徴としては、オーソドックスな風景画が目立つこと。
北見の中心部に住んでいても、車で10分も走れば、雄大な田園風景が広がっているのだから、無理もないことだ。
その一方で、抽象画や、実験的な絵画もあり、バラエティーに富んでいるといえる。
陶芸は壺がほとんどで、道展などの会場と似ている。これは、道展会員や出品者が多いことを思えば、当然であろう。
もちろん、特定の作風に偏っていることはない。
昨年に比べて、作品が増えた以上に壁面が埋まっている印象を受けたのは、巨大な絵画が何点か陳列されているためかもしれない。
上の画像、会員・小林雪雄の「麦秋」はF100×2。
創立会員・堰代大幹の「黄昏れる都心」は、なんとS300号だ。おそらく東京の巨大なビル群がモティーフだが、手前の川もしくは海と、紺色の空以外は、明かりをともしたビルが画面を埋め尽くしていて、息苦しいほどだ。
ほかの風景画は、緑豊かなオホーツク地方が題材のものが多いので、いっそう異彩を放っている。

手前左の壺が、ことしの協会賞を得た坪井洋子「さざ波」。抽象彫刻のような自由な造形。
背後の壁面右側に並んでいるのは、会友・橋本高士の2点。
右側の「紅葉を奏でる」は、黄色の葉が地面にびっしりと散り敷いた広い公園で、トランペットや太鼓を演奏しながら歩く4人を描いた明るい絵だが、演奏者の手の指が6本あると、筆者の娘が驚いていた。
その左側は、会友賞を受けた横山恭子「孫との語らい」。
北海道新聞を広げながら読む老父と若い男性の姿は、新聞の広告に用いたくなるほどほのぼのとした好ましい雰囲気。手前の食卓には、瓶ビールや日本酒、料理、マヨネーズなどがところ狭しと置かれている。背後のソファの上には、赤ちゃんの写真立てが据え付けられている。細かな部分にも配慮を怠らないこの作者らしい作。
左端は、写真が切れてしまったが、会友・中村二二二「モヨロコタンの詩『モヨロ人ギリヤークシャーマン』」。かなり粗いタッチで人物を描いているが、構図などはしっかりできている。

創立会員・勝谷明男「雪道の日ざし」(F100)
これまでも何度か書いているが、雪景色を描かせたら勝谷さんの右に出る人はいない。
厳冬期の雪、早春の雪、日なたと陰、それらをたくみに描き分けられるのは、勝谷さんならではだ。
新興住宅街なのにちゃんと絵になっているのもすごい。

こちらも創立会員で、置戸コンテンポラリーアートでも元気なところを見せていた、田丸忠「巣&板」(手前)と、林弘堯「淡立つふるえの中で」。
林さんがタブローの枠内におさまる作品を出したのは久しぶりではないだろうか。
奥の壁に見えているのは、50周年記念大賞に輝いた太田玲子「静波の記憶」。
風景を独自のやりかたで処理しつつ、安定した構図をつくりあげている。
2012年9月8日(土)~23日(日)
北網圏北見文化センター(北見市公園町)
網走移動展
9月25日(火)~30日(日)9am~5pm
網走市立美術館(南6西1)
□オホーツク美術協会 http://space.geocities.yahoo.co.jp/gl/mhrwh865
■北見・現代写実の眼 展(2012年6月12~17日、北見)
■第49回オホーツク美術展
■道展 オホーツクの作家展 ■つづき
■第34回春季オホーツク美術展(2011年)