
(承前)
正面から見て左側のa box of my life。
これもいくつかのパートにわかれており、いちばん奥は、やはりライトボックス方式で、トレーシングペーパーに絵が描かれている。
一見、木や道を色鉛筆(一部ペン)で描いたおだやかな風景のイラストのようだが、透視図法的に描写するのではなく、いろいろな要素が自由に配置され、一種の心象風景ともいえそう。
その左側は、照度を落とした部分。
三つのシャーレのような、透明な容器が並び、左端は青い鉱石のようなもの、中央はたくさんのビー玉、右は桜の花びらが、それぞれ入っている。

前のエントリで“hikari”について書いたときとおなじような指摘になるかもしれない。この三つのシャーレは、いわば果澄さんのごく個人的な思い出を載せたものである。にもかかわらず、見る人の琴線にふれる何かを持っている。
極私的な思いがそのまま世界に連なっていくというのは、詩人(芸術家)にふさわしい資質の持ち主なのであろう。そうとしか言いようがない。
この画像からもわかるように、この周囲にもたくさんのテキストが配されている。
それらは、とくべつレトリックに巧みだというわけではない。
しかし、作者の心のとても根源的な、根っこのところから発せられている声であるために、読む人の心を、静かに立ち止まらせる。
私は幸せだということ
なんというポジティブさだろう、と思う。

たとえば、時計の絵が描かれているところに
生まれてからの、あらゆる事をさまざまな歯車やネジに例えると
時計が回るのに、一つとして欠かせない、全てが必要だったこと
とあるのを読む。
「時計の歯車」という比喩が出てきたときは、たいがい
「人間はしょせん組織の歯車さ」
という後ろ向きのニュアンスを持つことが多いのに、ここでは「どうせ」という色調は一切排されている。
作品は、羽根を入れた試験管のコーナーのあと、鳥かごの絵が描かれたコーナーで、幕を閉じるのだが、それほど巨大な作品でもないのに、まるで長い時間が経過したかのように感じた。
全体を通して特徴的なのは、テキストが多いわりに、彼女得意の書道を封じて、活字体を全面に使っていることがあげられると思う。
さて、彼女は、このたび菅原英二さんとユニット「ブラキストン」を結成し、来年はJRタワーのアートボックスで発表するという。
菅原さんは、もともと彼女の先生で、小樽・張碓のダラ・スペースで、13日まで
2人展をひらいていた人だ。
2人展では写真を発表していたが、じつはこの会場に流れていたオリジナル音楽も担当したといい、幅広い領域をこなす方のようだ。
■結界の紡ぎ目 中川多理×菅原英二作品展
ブラキストン線とは、津軽海峡で動物の分布が異なることを発見した英国人の名による。
ブラキストンの作になるアートブック「ST.GIGA」を見せてもらった。
アーティスト果澄さんにとって、また新たな領域への出発となる作品だと思った。
以上、長々とまとまりのないことを書いてきて、ここまでお読みくださった方には感謝を述べるしかないが、とにかく言えることは、果澄さんの作品が、なにか、人の精神や心のとても深い地点に届いているのではないか-ということだけだ。
そういう意味で、めったにない体験をさせてもらったと思う。
2009年9月9日(水)-14日(月)9:00-18:00(最終日-14:00)
さぱらホール(中央区南1西4 地図B)
□果澄's art home http://visionquest-jp.com/kasumin/
□ブログ 風と星をさがす旅 http://kasumiart.exblog.jp/
■専門学校札幌デザイナー学院 卒業制作展(2008年2月)
正面から見て左側のa box of my life。
これもいくつかのパートにわかれており、いちばん奥は、やはりライトボックス方式で、トレーシングペーパーに絵が描かれている。
一見、木や道を色鉛筆(一部ペン)で描いたおだやかな風景のイラストのようだが、透視図法的に描写するのではなく、いろいろな要素が自由に配置され、一種の心象風景ともいえそう。
その左側は、照度を落とした部分。
三つのシャーレのような、透明な容器が並び、左端は青い鉱石のようなもの、中央はたくさんのビー玉、右は桜の花びらが、それぞれ入っている。

前のエントリで“hikari”について書いたときとおなじような指摘になるかもしれない。この三つのシャーレは、いわば果澄さんのごく個人的な思い出を載せたものである。にもかかわらず、見る人の琴線にふれる何かを持っている。
極私的な思いがそのまま世界に連なっていくというのは、詩人(芸術家)にふさわしい資質の持ち主なのであろう。そうとしか言いようがない。
この画像からもわかるように、この周囲にもたくさんのテキストが配されている。
それらは、とくべつレトリックに巧みだというわけではない。
しかし、作者の心のとても根源的な、根っこのところから発せられている声であるために、読む人の心を、静かに立ち止まらせる。
私は幸せだということ
なんというポジティブさだろう、と思う。

たとえば、時計の絵が描かれているところに
生まれてからの、あらゆる事をさまざまな歯車やネジに例えると
時計が回るのに、一つとして欠かせない、全てが必要だったこと
とあるのを読む。
「時計の歯車」という比喩が出てきたときは、たいがい
「人間はしょせん組織の歯車さ」
という後ろ向きのニュアンスを持つことが多いのに、ここでは「どうせ」という色調は一切排されている。
作品は、羽根を入れた試験管のコーナーのあと、鳥かごの絵が描かれたコーナーで、幕を閉じるのだが、それほど巨大な作品でもないのに、まるで長い時間が経過したかのように感じた。
全体を通して特徴的なのは、テキストが多いわりに、彼女得意の書道を封じて、活字体を全面に使っていることがあげられると思う。
さて、彼女は、このたび菅原英二さんとユニット「ブラキストン」を結成し、来年はJRタワーのアートボックスで発表するという。
菅原さんは、もともと彼女の先生で、小樽・張碓のダラ・スペースで、13日まで
2人展をひらいていた人だ。
2人展では写真を発表していたが、じつはこの会場に流れていたオリジナル音楽も担当したといい、幅広い領域をこなす方のようだ。
■結界の紡ぎ目 中川多理×菅原英二作品展
ブラキストン線とは、津軽海峡で動物の分布が異なることを発見した英国人の名による。
ブラキストンの作になるアートブック「ST.GIGA」を見せてもらった。
アーティスト果澄さんにとって、また新たな領域への出発となる作品だと思った。
以上、長々とまとまりのないことを書いてきて、ここまでお読みくださった方には感謝を述べるしかないが、とにかく言えることは、果澄さんの作品が、なにか、人の精神や心のとても深い地点に届いているのではないか-ということだけだ。
そういう意味で、めったにない体験をさせてもらったと思う。
2009年9月9日(水)-14日(月)9:00-18:00(最終日-14:00)
さぱらホール(中央区南1西4 地図B)
□果澄's art home http://visionquest-jp.com/kasumin/
□ブログ 風と星をさがす旅 http://kasumiart.exblog.jp/
■専門学校札幌デザイナー学院 卒業制作展(2008年2月)
丁度ヤナイさんとは入れ違いだった
ようです。
自分の描きたい世界がたくさんあり、
それを表現する技量と持続する力が
ホール一杯に溢れていました。
足穂や宮賢が好きな人には、きっと
果澄さんの世界に浸れそうですね。
ずっと以前サッポロファクトリーに
こんな世界観で作られた常設展が、
あったのを思い出しまた。
たしかに、宮沢賢治や稲垣足穂の世界に通じるところもあるかもしれませんが、賢治好き・足穂好きのよくとる表現手法からはいくらかへだったものを感じます。
(ファクトリーの星空工場は、いかにも賢治・足穂の世界でしたね)
植物や鉱物という題材を、単なる趣向に終わらせてないなあとつくづく思いました。
とても嬉しかったです。何度も見させて頂きました!
お話した以外の事も、分かって描いて下さってて、
伝えたい、と思って作ってた作品が、本当に伝わって下さったんだな、、、、そう思って、私自身も本当に嬉しく思ってます。
さぁ、次はBlakistonでのアートボックスに向けて突っ走ります!!
すばらしい展示だったと思います。
やっぱり「伝えたい」という、気持ちの勝利ですよねー。
お礼を言いたいのはこちらのほうです。ほんとです。
あ、CD見つかったので、あとで送ります。