北海道美術ネット別館

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■専門学校札幌デザイナー学院 卒業制作展・鈴木果澄さんの作品 (2月26日で終了)

2008年02月26日 23時58分28秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 まず、北海道美術ネットの「最新情報」で、開催時間が誤っていたことをおわびいたします。
 ネタもとになったリーフレットが間違っていたのです。
 もしかしたら、言い訳のエントリを別にたてるかもしれません。

 ともかくも、関係者のみなさまにはご迷惑をおかけしました。


(以下、グランプリ作品の記述だけで長文になってしまいました)

 さて、最終日の搬出時間ぎりぎりに見に行って、そろそろ会社へ行かなくては-というころ、札幌デザイナー学院で教壇に立っているFさんにばったり会い、グランプリの作品の所在を教えてもらいました。
 グランプリの作者は、Fさんの個展の際、会場にいたらしく、筆者のことも見知っていました。
 そこで、筆者は、スムーズに作品の前まで来ることができたのです。

 受賞作「ある小さなものがたり~風と星をさがす旅」は、ちょっとモンゴルのゲル(移動式住宅)を思わせる小屋のような格好をしていました。入り口の手前に、紙でつくった花が点在し、天井からは、コンセプトなどが書かれた板がつり下げられています。
 小屋のなかに入って鑑賞するというスタイルは内藤礼を思い起こさせますが、中は意外と広く、7、8人が同時に入れます。内壁は和紙かなにかが貼られ、木や風景が描かれています。地面には、外側にもあった紙の花が点在し、白い砂利のようなものが敷き詰められています。そして、中央に丸い池があって、そこにたまった白い水に映像が投影される仕組みになっています。

          

 映像はループで約15分とのことでした。
 ときおり、天井から水のしずくが、ぽとり、と池に落下します。

 映像は、文字や写真を組み合わせたもので、おだやかに変化していきました。
 文字によるメッセージは、「過去より、未来より、今を大切に」といったもので(メモしていなかったので、正確に再現できません。ごめんなさい)、それだけを読むと、とりたてて詩的だとか独自の内容というふうでもないのですが、こういうお膳立ての中だと、とても感動的に迫ってきます。
 また、文字は、活字と、鈴木さん自身の筆とがまじりあったもので、小学校のころから書を習っているという彼女の「筆力」も大いにあずかっているのだと思います。

 薄暗い空間で、ゆったりとうつろう映像を見ていると、筆者には、ここがまるで三途の川のほとりのように感じられてしかたありませんでした。
 筆者はもともと、来世とか輪廻といった発想に懐疑的なのですが、鑑賞中はなぜか、とても大きな存在にわが身をゆだねているかのような、心からいやされているような気持ちになっていました。ニルヴァーナとは、ひょっとするとこういう境地でしょうか。
 20歳ぐらいの若者の作品がこれほどまでに完成してみえるのはなぜだろう? ふしぎでなりませんでした。

 あえて言えば、白い液体の表面に映像を上から映すというのは端聡さんの真似でしょうし、漏斗(ろうと)に氷を入れておき溶けた水を落とす仕組みは佐々木秀明さんの模倣でしょうが(もし独力で思いついたのでしたらごめんなさい)、それもいけないことには思えません。逆に、この作者はよく見て回って、いろいろ吸収しているなあと感心してしまいます。 

 会場にはこのメーン作品のほか、得意の書を生かしたカードなどが展示されています。
 あかりを組み入れた木の箱に透明なスクリーンを入れ、つぎつぎと場面が展開していくような仕掛けの立体もありました。

 作品と同様におどろいたのは、作者のプロフィルです。在学中の2年間におびただしい数のコンペやコンクールに挑戦してきたことが記されています。
 この積極的な姿勢には舌を巻きました。


 いくつもの偶然に導かれるようにしてこの作品にふれることができたのは、ほんとうによかったです。
 それにしても、もっと早く見に行くべきでした。
 機会があれば、再展示を強く希望します。多くの人に見てもらいたい作品です。


08年2月22日(金)-26日(火)10:00-19:00(最終日-15:00)
札幌デザイナー学院 校舎内(中央区大通西9)

□拓の値段を見ない買い物ごっこ(参考。ここより良い写真アリ) http://takudesign.exblog.jp/7543281/


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
卒業制作展 (S-toshi)
2008-02-27 12:12:06
イラストレーション専攻の(私の)学生です。Fさんは彼女の担任です。1年生のころからSOSOやエスキスの様々なアートトークやイベントを見せてきました。2月29日(金)~4月29日(火)まで、札幌デザイナー学院1階ロビー奥のギャラリー7において、卒業制作優秀作品展を開催いたします。他にも多才な作品があります。ついでにお立ち寄りください。

他校卒制展は全て選抜展です。我が校の売り?は全作品を展示するところです。(ここが辛い、正直!)
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参考リンクありがとうございます☆ (taku)
2008-02-27 22:47:46
軽い気持ちで見に行って、カウンターパンチを食らいました。
↑ 長く展示されるみたいなので、もう2~3回見に行こうと思います。

>メーン作品のほか、得意の書を生かしたカードなど

えっ、小屋だけ見て帰ってきてしまいました・・・。
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2008-02-27 23:19:52
>S-toshiさま

ありがとうございます。
ほかにもいろいろ見たんですが、やはりグランプリの作品が圧巻でした。

また、見られるんですね~。

他校は市民ギャラリーのスペースもあって、選抜なんですね。
でも、選に漏れたらショックでしょうね。
まあ、社会に出たら、そんなこともいってられないか。


>takuさま

takuさんが紹介してくださったおかげです。
またいろいろ教えてください。

明かりのついたハコで幕をぐるぐる回すやつがあって、おもしろかったですよ。
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