抽象派作家協会というのは、なかなか勤勉な団体で、毎春に、同人に招待作家をくわえた展覧会を札幌市民ギャラリーでひらくほか、秋には同人だけによる展覧会を、時計台ギャラリーで開催しています。
同人の顔ぶれはここ数年不動。
五十音順に
あべくによし(旭川)
今荘義男(岩見沢市栗沢町)
後藤和司(札幌)
佐々木美枝子(同)
近宮彦彌(旭川)
外山欽平(函館)
服部憲治(苫小牧)
林教司(岩見沢市栗沢町)
三浦恭三(小樽)
の9氏です。
冒頭の画像は、創立メンバーの一人で、大ベテランの佐々木さん。
手前から「作品A」「作品B」「作品C」。
鮮烈な赤やピンクを用いることの多い佐々木さんですが、「作品A」は、めずらしく紫が全体を支配しています。
「作品B」は、薄いピンクや黄色の矩形や三角形が積み重なったもの。「ゆるい幾何学抽象」といったあんばい。
「作品C」は、佐々木さんらしく彩度の高い赤が全体を覆っており、エメラルドグリーンで「Octobre」(フランス語で10月の意)と殴り書きされています。
その奥に見えるのが三浦さん。
三浦さんは昨秋あたりから作風が変わりました。
アクリル絵の具に、周囲の濃い灰色の部分には油絵の具を併用。
中央の部分は、何層も色を重ねた上に、サンドペーパーをかけて油分を抜き、流動的な感じを出しています。
紙吹雪のような中央の形は、最後にかき加えるのだそうです。
「やりながら考えているので、うまくいっているかどうか」
と三浦さんは謙遜しますが、これまでの楕円形の作品に比べても、自由で軽快な感じがします。
画像は「移行過程№8」。
ちょっと画像がかしいでいて、すいません。
左は、色面で日本的な情緒の世界を表現する、創立時の同人・今荘さんの「古里イ」。
秋は小品展ということだと思っていたのですが、これは120号もあります。カンバスではなく、ベニヤ板です。
抹茶色の地の上に浮かぶ茶色の固まり。画面の下方は、ほの明るく黄色みを帯びています。
全体を、擦過傷のような細い線が覆っており、単に鈍重な色が塗ってある絵とはひと味もふた味も違う、深みのある世界です。
そのとなりは「古里ロ」。こちらは、目の粗いカンバスを用いており、中央部分は、その目がはっきり見えます。砂をまぜたマティエールも特徴的です。
さらに右側には近宮さんの「ノンタイトル」(同題3点)。
黒い箱の中に、形や大きさの異なる灰色の板(段ボール?)を何枚か重ねたもの。
赤の着彩を施したり、表面に線を刻むなどしており、独特の作品になっています。
奥は、あべくによし(阿部國良)さんの「記憶の箱「風が透き通った日」秋」の№1-3。
マスキングを駆使して、垂直・平行・斜めに色帯を重ね合わせた絵画です。
左は、先述した三浦さんの「移行過程№7」。
このほか「移行過程№9」も出品されています。
右は後藤さんの「緑のScene 07-1」。ほかに「緑のScene 07-2」も。
いつものように、ツイード織りのような細い線をひたすら反復した作品。ところどころ、緑の階調の中に、赤や黄色が織り交ぜられていて、アクセントになっています。
左は外山さんの「K-2」。ほかに「K-1」も。
アルファベットシリーズも、ついに11番目の文字になりました。
2点とも、Kの文字が横倒しになっています。
レモンイエローの線、ビリジアンの面などは、いつも通りですが、「K-2」はいつになく全体が直線で構成され、幾何学的な印象を強めています。
その奥は林さん。
3点組は「種子A-C」で、となりの大きな作品が「種子D」、立体が「種子E」です。
「E」は、古い木の台座の上に、着彩した軟石がのっています。
林さんは、おなじ会期でひらかれているギャラリーたぴおの「OCTOB1」にも立体を出品しています。
抽象派作家協会は、来春からアンデパンダン形式で新メンバーを募集することになっています。
興味のある方は会場を訪れて、抽象美術の醍醐味を感じてほしいと思います。
07年10月1日(月)-6日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
□協会のサイト http://members3.jcom.home.ne.jp/hokkaidou.tyuusyouha/
■07年4月の第34回春季展
■第33回
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