日本は公的年金制度への不信が世界一強い先進国です。
私から見ると、経済リテラシーが根本的に欠如している人でさえ
偉そうに「公的年金は当てにならない」と断言します。
そうした方々はなぜ国債と社債の利回りが違うのか
GPIFのポートフォリオがどう組まれているのか、
全く説明すら出来ないにも関わらず、です。
「いや、あなたより政府機関の役人の方が遥かに優秀です。
あなたはせいぜい非常勤職員としてしか採用されませんよ」
とつい親切心で真実を教えてしまいたくなるのですが、
彼らにはそれを理解する能力がないので
気の毒ですが黙っているという次第です。
「公的年金が信用できないので払わない」と言っているのは
その殆どが経済リテラシーのない大馬鹿者です。
公的年金は税制において盛大に優遇されている上に、
突然重病になったり大怪我をしたりする脆弱な個人よりも
遥かに持続性において勝ります。
「公的年金が信用できないので払わない」と本気で思うのなら
自分で市場運用してGPIFを上回るパフォーマンスを見せましょう。
しかも、公的年金のような税制優遇なしで、ですよ。
日本人が公的年金への強い不満を持つ理由、
それは単なる「政府への不信」です。
しかもそれは全く合理的な理由ではなく、
自らが政府の上層部以上の能力と決断力を持つからでもない。
大竹文雄教授は、上掲書で次のように記されています。
”「貧富の格差が生じるとしても、自由な経済市場で多くの人々はより良くな
る」という考え方にあなたは賛成するだろうか。PEW研究センターという
米国の調査機関が2007年に各国で意識調査をしている。 日本では49
%しか、この質問に賛成していない。米国では70%の人が賛成している。
実は、調査のあった多くの国で70%以上の人が市場経済のメリットを認識
している。カナダ、スウェーデンは71%、イギリス、韓国は72%、イタ
リア73%、中国75%という具合だ。70%以下の賛成だったのは、スペ
イン67%、ドイツ65%、フランス56%、ロシア53%であり、主要国
の中では日本人の市場経済に対する信頼の低さは際立っている。
では、自由な市場経済に信頼を置かない日本人は、政府に頼っているのだろ
うか。同じ調査で「自立できない非常に貧しい人たちの面倒を見るのは国の
責任である」という考え方に賛成するか否かを尋ねている。
日本でこの考え方に賛成しているのは59%である。この数字も国際的には
際立って低い。ほとんどの国で80%以上の人が、貧しい人の面倒を見るの
は国の責任だ、と考えている。カナダ81%、フランス83%、イタリア、
スウェーデン、ロシアいずれも86%、韓国87%、中国90%、イギリス
91%、ドイツ92%、スペイン96%であった。国の役割について否定的
だと考えられる米国でも、70%の人が貧しい人たちの面倒を見るのは国の
責務だと考えている。
多くの国では、市場経済と国の両方を信頼している。つまり、市場経済によ
って国全体の豊かさを増し、市場競争から貧困者が生まれれば、その面倒を
見るのは国の責任だという考え方だ。しかし、日本では格差拡大への対策と
して、セーフティネットではなく規制強化が議論される、少し変わった国で
ある。”
公的年金制度に置き換えて言えば、
民間の個人年金(=市場経済に立脚)への信頼も
公的年金(=政府が運営)への信頼もないということです。
「では、どのような制度が最もましなのか」と徹底的に考え抜く
現実的な思考も持ち合わせている筈がないので、
絶対に実現する筈のないお伽話を妄想するしか能がないのです。
(例:「安い保険料・税負担で充分な年金給付を受けたい」)
選択の手引:’09衆院選 公的年金改革(その1) 募る不信(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090621ddm001010189000c.html
”ウェブデザイナーの男性(41)=東京都在住=は、社会に出てから年金の
保険料を一度も払っていない。「払わなくて本当に良かった」。00年代初
め、「グリーンピア」(年金保養施設)が赤字を垂れ流す実態が報じられた
時に確信した。
横浜市で生まれ、中学から有名私大付属校に進学。大学は進学せず、飲食業
や不動産業などさまざまな仕事に就いた。
初めて年金を身近に感じたのは15年前。60歳になった母親が年金を受け
取り始めた。2カ月ごとの受給額は6万円余り。当時の給付基準では、60
歳で受給を始めると満額から42%減額された。保険料を40年間払い続け
ても年金額は月額3万7000円前後。「オレなしで、母さんはどうやって
暮らせるのか」。公的年金への不信が募った。
ウェブデザイナーとなって3年。収入はならして月50万~60万円。月額
1万4660円の国民年金保険料は十分払えるが、少子高齢社会で現役が高
齢者を支える仕組みに無理を感じる。
将来は「まとまって利益が出た時に、保険会社の個人年金に入ろうと思う」。
◇
00年代に入り「年金不信」は急速に広がった。国民年金保険料の納付率は
02年度に7割を切ったまま回復する兆しはない。当初、自営業者らを想定
した国民年金加入者の半数以上は、今や無職やパート・アルバイトの非正規
雇用者。その4割が年収200万円未満だ。
08年夏に内閣府が行った「社会保障制度に関する特別世論調査」では「社
会保障制度の中で満足していない分野」(複数回答)のトップは「年金」で
69.7%。2位の「医療」(56.4%)と10ポイント以上の差があった。
「満足していない」のは20~30代で7割、40~50代は8割に達する。
〔以下略〕”
→ 本当にひどい経済リテラシーです。
40年間払い込んだ保険料総額と税負担を無視して
給付にだけ文句を言うからこういう支離滅裂な主張になる。
突然重病になったりしてから態度を豹変させて
「政府が救ってくれ!」と言い出すのは
こうした連中です。
少子高齢化で年金制度がもたないと考えながらも
責任ある有権者として制度を変えようとは考えずに
自分だけ救われようと個人年金に加入するその行動。
充分な収入があり、少しは社会的弱者に分配する
余裕があるにも関わらず自分のことしか考えない、
身勝手極まりない本性が実によく表れています。
選択の手引:’09衆院選 公的年金改革(その2)負担、給付の均衡は(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090621ddm003010183000c.html
”今後、求められるのは多様化する働き方や、不安定な雇用形態への対応だ。
19日、04年改革の総仕上げとなった改正国民年金法の成立を受け、麻生
太郎首相は「今後は無年金・低年金の問題に取り組み、国民の安心を支える
しっかりとした年金制度を構築したい」との談話を発表した。
自民党などが構想するのは、所得の少ない人に国民年金の保険料を支援する
「保険料軽減支援制度」だ。現在の保険料減免制度は、保険料負担が減る分、
年金額も少なくなる。新制度は公費で保険料の不足分を補い、所得が少なく
ても未加入や未納さえなければ年金が満額受け取れる。
現時点では「現在の政権の枠組みが続けば、次のコア(中核)となる政策」
(厚生労働省幹部)と位置付ける。
だが、現行制度を時代に合わせて改良を重ねてきた結果、常に経過措置を抱
えて複雑で分かりにくい制度を生んでいる。”
「今後、求められるもの」は完全に見当違いです。
社会全体で負担を分かち合うこと(=特に高収入層の負担増)、
世代会計の異様なアンバランスを是正すること、
年金保険料を国税庁が徴収して未納を一気に改善すること。
この三つこそが最優先事項です。
年金制度においては負担増に対し感情的に反発する
メディアのミスリードの責任も非常に大きいです。
△ 社会保障の専門家の抱く最大の懸念は、「世代格差」です。
私から見ると、経済リテラシーが根本的に欠如している人でさえ
偉そうに「公的年金は当てにならない」と断言します。
そうした方々はなぜ国債と社債の利回りが違うのか
GPIFのポートフォリオがどう組まれているのか、
全く説明すら出来ないにも関わらず、です。
「いや、あなたより政府機関の役人の方が遥かに優秀です。
あなたはせいぜい非常勤職員としてしか採用されませんよ」
とつい親切心で真実を教えてしまいたくなるのですが、
彼らにはそれを理解する能力がないので
気の毒ですが黙っているという次第です。
「公的年金が信用できないので払わない」と言っているのは
その殆どが経済リテラシーのない大馬鹿者です。
公的年金は税制において盛大に優遇されている上に、
突然重病になったり大怪我をしたりする脆弱な個人よりも
遥かに持続性において勝ります。
「公的年金が信用できないので払わない」と本気で思うのなら
自分で市場運用してGPIFを上回るパフォーマンスを見せましょう。
しかも、公的年金のような税制優遇なしで、ですよ。
日本人が公的年金への強い不満を持つ理由、
それは単なる「政府への不信」です。
しかもそれは全く合理的な理由ではなく、
自らが政府の上層部以上の能力と決断力を持つからでもない。
『格差と希望―誰が損をしているか?』(大竹文雄,筑摩書房) |
大竹文雄教授は、上掲書で次のように記されています。
”「貧富の格差が生じるとしても、自由な経済市場で多くの人々はより良くな
る」という考え方にあなたは賛成するだろうか。PEW研究センターという
米国の調査機関が2007年に各国で意識調査をしている。 日本では49
%しか、この質問に賛成していない。米国では70%の人が賛成している。
実は、調査のあった多くの国で70%以上の人が市場経済のメリットを認識
している。カナダ、スウェーデンは71%、イギリス、韓国は72%、イタ
リア73%、中国75%という具合だ。70%以下の賛成だったのは、スペ
イン67%、ドイツ65%、フランス56%、ロシア53%であり、主要国
の中では日本人の市場経済に対する信頼の低さは際立っている。
では、自由な市場経済に信頼を置かない日本人は、政府に頼っているのだろ
うか。同じ調査で「自立できない非常に貧しい人たちの面倒を見るのは国の
責任である」という考え方に賛成するか否かを尋ねている。
日本でこの考え方に賛成しているのは59%である。この数字も国際的には
際立って低い。ほとんどの国で80%以上の人が、貧しい人の面倒を見るの
は国の責任だ、と考えている。カナダ81%、フランス83%、イタリア、
スウェーデン、ロシアいずれも86%、韓国87%、中国90%、イギリス
91%、ドイツ92%、スペイン96%であった。国の役割について否定的
だと考えられる米国でも、70%の人が貧しい人たちの面倒を見るのは国の
責務だと考えている。
多くの国では、市場経済と国の両方を信頼している。つまり、市場経済によ
って国全体の豊かさを増し、市場競争から貧困者が生まれれば、その面倒を
見るのは国の責任だという考え方だ。しかし、日本では格差拡大への対策と
して、セーフティネットではなく規制強化が議論される、少し変わった国で
ある。”
公的年金制度に置き換えて言えば、
民間の個人年金(=市場経済に立脚)への信頼も
公的年金(=政府が運営)への信頼もないということです。
「では、どのような制度が最もましなのか」と徹底的に考え抜く
現実的な思考も持ち合わせている筈がないので、
絶対に実現する筈のないお伽話を妄想するしか能がないのです。
(例:「安い保険料・税負担で充分な年金給付を受けたい」)
選択の手引:’09衆院選 公的年金改革(その1) 募る不信(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090621ddm001010189000c.html
”ウェブデザイナーの男性(41)=東京都在住=は、社会に出てから年金の
保険料を一度も払っていない。「払わなくて本当に良かった」。00年代初
め、「グリーンピア」(年金保養施設)が赤字を垂れ流す実態が報じられた
時に確信した。
横浜市で生まれ、中学から有名私大付属校に進学。大学は進学せず、飲食業
や不動産業などさまざまな仕事に就いた。
初めて年金を身近に感じたのは15年前。60歳になった母親が年金を受け
取り始めた。2カ月ごとの受給額は6万円余り。当時の給付基準では、60
歳で受給を始めると満額から42%減額された。保険料を40年間払い続け
ても年金額は月額3万7000円前後。「オレなしで、母さんはどうやって
暮らせるのか」。公的年金への不信が募った。
ウェブデザイナーとなって3年。収入はならして月50万~60万円。月額
1万4660円の国民年金保険料は十分払えるが、少子高齢社会で現役が高
齢者を支える仕組みに無理を感じる。
将来は「まとまって利益が出た時に、保険会社の個人年金に入ろうと思う」。
◇
00年代に入り「年金不信」は急速に広がった。国民年金保険料の納付率は
02年度に7割を切ったまま回復する兆しはない。当初、自営業者らを想定
した国民年金加入者の半数以上は、今や無職やパート・アルバイトの非正規
雇用者。その4割が年収200万円未満だ。
08年夏に内閣府が行った「社会保障制度に関する特別世論調査」では「社
会保障制度の中で満足していない分野」(複数回答)のトップは「年金」で
69.7%。2位の「医療」(56.4%)と10ポイント以上の差があった。
「満足していない」のは20~30代で7割、40~50代は8割に達する。
〔以下略〕”
→ 本当にひどい経済リテラシーです。
40年間払い込んだ保険料総額と税負担を無視して
給付にだけ文句を言うからこういう支離滅裂な主張になる。
突然重病になったりしてから態度を豹変させて
「政府が救ってくれ!」と言い出すのは
こうした連中です。
少子高齢化で年金制度がもたないと考えながらも
責任ある有権者として制度を変えようとは考えずに
自分だけ救われようと個人年金に加入するその行動。
充分な収入があり、少しは社会的弱者に分配する
余裕があるにも関わらず自分のことしか考えない、
身勝手極まりない本性が実によく表れています。
選択の手引:’09衆院選 公的年金改革(その2)負担、給付の均衡は(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090621ddm003010183000c.html
”今後、求められるのは多様化する働き方や、不安定な雇用形態への対応だ。
19日、04年改革の総仕上げとなった改正国民年金法の成立を受け、麻生
太郎首相は「今後は無年金・低年金の問題に取り組み、国民の安心を支える
しっかりとした年金制度を構築したい」との談話を発表した。
自民党などが構想するのは、所得の少ない人に国民年金の保険料を支援する
「保険料軽減支援制度」だ。現在の保険料減免制度は、保険料負担が減る分、
年金額も少なくなる。新制度は公費で保険料の不足分を補い、所得が少なく
ても未加入や未納さえなければ年金が満額受け取れる。
現時点では「現在の政権の枠組みが続けば、次のコア(中核)となる政策」
(厚生労働省幹部)と位置付ける。
だが、現行制度を時代に合わせて改良を重ねてきた結果、常に経過措置を抱
えて複雑で分かりにくい制度を生んでいる。”
「今後、求められるもの」は完全に見当違いです。
社会全体で負担を分かち合うこと(=特に高収入層の負担増)、
世代会計の異様なアンバランスを是正すること、
年金保険料を国税庁が徴収して未納を一気に改善すること。
この三つこそが最優先事項です。
年金制度においては負担増に対し感情的に反発する
メディアのミスリードの責任も非常に大きいです。
『大貧困社会』(駒村康平,角川SSC) |
『だまされないための年金・医療・介護入門―社会保障改革の正しい見方・考え方』(鈴木亘,東洋経済新報社) |
△ 社会保障の専門家の抱く最大の懸念は、「世代格差」です。
リスク分散だけでなくコストの観点から言っても、大数の法則が大きく作用する公的年金が個人年金よりも有利なのは自明の理なわけですが。まあ、つくづく無知は罪ですね(汗)。
貴ブログを拝見させて頂きました。
企業年金は私が詳しくない分野ですので
貴ブログで勉強致します。
色々教えて頂けますと幸いです。
恥ずかしながら「大数の法則」が分からず、
ネット検索してしまいました。。
無知は恥ですね(汗)
私は今年、401kを全額新興国投信に
しているので勉強しないと! です。
ところでtonny様、一般向けの本として
駒村康平教授の『大貧困社会』は
いかがですか? 私的には一推しです。