酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

ミッシェル・ガン・エレファント~燃え尽きた初期衝動

2011-01-15 05:26:58 | 音楽
 アメフト漬けの日々を過ごしている。NFLのプレーオフだけでなく、カレッジのボウルゲームまで録画して見ているから時間が足らない。BCSチャンピオンシップでオーバーン大が全米王座に輝いたが、創意工夫とギャンブル精神に溢れた敗者オレゴン大の戦いぶりも見事だった。

 相変わらずネタ切れだが、今回は<世界標準>をキーワードに記したい。

 「タイガーマスク運動」が全国に広がっている。民主党政権が社民主義を放棄した今、政府は当てにならない。矛盾に喘ぐ人々の役に立ちたいという<世界標準>の意識が、この国に定着すればいい。

 アジア杯の日本代表は本田圭、香川、長友、内田ら<世界標準>の選手揃いだが、無名軍団を圧倒できない。〝足し算〟が簡単に成立しないのは、サッカーという競技の特性なのだろう。

 言葉の壁が高いロック界はどうか。タカ・ヒロセ(フィーダー=ベース)、カズ・マキノ(ブロンド・レッドヘッド=ボーカル)らがトップシーンで活躍中だが、バンド(ユニット)として海外で評価されたのはコーネリアス、ボアダムス、ブンブンサテライツぐらいではないか。

 国内で活動しながら<世界標準>をクリアしたバンドを挙げるなら、ブランキー・ジェット・シティとミッシェル・ガン・エレファント(以下MGE)だ。両者はフジロックで00年、グリーンステージのヘッドライナーに指名されている。

 日本映画専門チャンネルで先日、「ミッシェル・ガン・エレファント“THEE MOVIE”―LAST HEAVEN―031011」(09年)を見た。幕張メッセに4万人を集めた解散ライブ(03年10月11日)とフジロック'98の映像に、初期インタビューなどが織り交ぜられている。殺気さえ覚えるパフォーマンスで〝鬼〟と評されたアベ・フトシ(ギター)追悼プロジェクトの一環として公開されたドキュメンタリーだ。
 
 CDは数枚持っているが、俺は決してMGEのファンではなかった。いや、ファンになるにはあまりに老いていた。ライブに触れたのはフジロック'98(豊洲、8月2日)の一度きりだが、最後方で目の当たりにした衝撃は忘れられない。死者が出なかったのが奇跡と思えるほどの混乱で、演奏は何度も中断される。聴衆を熱狂させるパワーに、「この瞬間、こいつらが世界一のバンド」と感じた。

 チバユウスケは悪声の部類に属するボーカリストだ。歌うというよりがなっていて、ビートを刻む楽器に近い。メッセージやイメージを歌詞に込めるのではなく、潔いほど日本語をぶっ壊して記号化しているのに、どこか哀調を帯びている。

 MGEの凄まじいライブ映像に触れるたび、「長くはもつまい」と感じていた。解散時、彼らは30代半ばだったが、肉体的にも精神的にも限界に達していたのだろう。一切の虚飾を排して真摯に自らを切り刻み、初期衝動を保ったまま燃え尽きた稀有なバンドだった。

 本作冒頭、メンバーがフジロック'98のステージに向かうシーンに、「俺たちは世界一だと思ってる」というチバのモノローグが重なる。<世界標準>どころか天辺まで突き抜けたことに、当人たちも気付いていたのだ。MGEという熱く乾いた麻薬を体験した若者はその後、どこに漂着したのだろう。

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2 コメント

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アホは国境を越える (すみれ)
2011-01-15 08:21:32
世界標準といえば、ズボンズというバンドもなかなか活躍していますよ。タイトなビートがウケているようです。
初期衝動といえばミシェルが台頭してきた頃にアツかったマザリン・ストリートの1stもグッときたものでした。
知らなかった (酔生夢死浪人)
2011-01-15 11:30:56
 ズボンズですか。知りませんでした。ミクシィの日記にアップされたバンドですね。機会があれば聴いてみます。

 一つのバンドが台頭する時、同じぐらいの実力を秘めたライバルが多く存在する。マザリン・ストリートもそのようなバンドだったのでしょうか。 

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