新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

フェルメールの2点の「真珠」が上野に来訪中(その6)

2012-07-22 18:22:50 | 美術館・博物館・アート

「フェルメールの2点の『真珠』が上野に来訪中(その5)」のつづきは東京国立博物館(東博)本館(日本ギャラリー)で観た作品を紹介するのですが、その前に、これはどこだと思いますか?

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立派な「窓口」ですねぇ。

これは、東博・本館正面エントランスを入ったすぐ右側にあります。
昔は東博の受付窓口として機能していた気配がありませんか?

この反対側ミュージアムショップに下りていく階段の右側)には、小さめの「窓口」があります。

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こちらはチケット売り場っぽい…
さすがは建物自体が重要文化財東博・本館、見どころは展示品だけではありません

エントランスの壮大な大階段と大時計もそうだし、たびたび紹介している照明器具の数々もそうだし…。

そんな中から、私が大好きなスペース、本館1階北側中央部にあるラウンジ時計を載せておきましょう。

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数字の字体がノスタルジックで、良い雰囲気です

   

この日の観覧で一番印象深かったのは、こちら「鐔(つば)」でした。

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江戸時代・18世紀の「文字大小鐔 安親作」

「活人劔・殺人刀」と彫り込まれた文字のうち、「殺人刀」鏡文字なのはなぜ?
「劔(剣)「刀」を使い分けているのはなぜ?

といった疑問より何よりも、この形、こちらを連想させませんか?

120722_2_05 手塚治虫が生み出した謎のキャラクター「ヒョウタンツギ」の顔とそこはかとなく似ていると感じるのは私だけでしょうか?

この鐔で拵えたた大小(刀)を佩びたお侍さんに出会ったら、おもわず吹き出しそうで、そして無礼討ちを喰らいそうで、おもしろ怖い…

   

120722_2_06この日の目玉展示は、渡辺崋山の筆による国宝「鷹見泉石像」でした。

この作品も「教科書で見た系の作品ですな。

それはともかく、説明書きを見ますと、

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崋山伊達や酔狂で絵を嗜んだのではなく「苦しい家計を助けるため画業にも精進した」とあります。
江戸詰家老の崋山にして、副業に精を出さざるを得なかったというのは驚きです。
社会不安が増してきた幕末の一端を垣間見た気分…
一方で、崋山の柔らかな筆致が、心に平穏を運んでくる気もします。

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崋山はこの作品を描いてからわずか2年後の1839年(天保10年)に蛮社の獄で罪に問われ、そのまた2年後の1841年(天保12年)、蟄居先の国元で自害しています。

全然心は穏やかではなかったはずなのに、この作品の穏やかさは何なんでしょうか
生計の一助とするための画業ながら、崋山にとって絵を描くことは、政治の世界で疲れ切った心身をリフレッシュできる至福の一時だったのではなかろうかと推察します。

   

ちょうど1年前、九州国立博物館での「よみがえる国宝」展で観た作品に再会できました。

120722_2_09 足利義政がこの茶碗を所持していた時、ひび割れてしまい「これと同じのを注文したい」と中国に送ったところ、「こんな名品は今の明(みん)にはない」と、鎹(かすがい)で止めて送り返されてきたと伝えられる南宋時代(13世紀)の名品「青磁茶碗 銘 馬蝗絆(ばこうはん)です。
確かに美しい茶碗ですなぁ~。

120722_2_10 それにしても、「こんな名品はない」と、を打って、いわば、ホチキス止めして日本に送り返すなんて、大胆さもさることながら、中国(明)の業者の誠実さが楽しいし、蝗(いなご)に見えるからと「馬蝗絆」と名付けた日本側の対処も楽しい

   

最後に紹介するのは本館1階15室の「民俗資料」から「琉球 琉球の工芸」3点です。

まず、「王子冠」(琉球 第二尚氏時代・19世紀)。

120722_2_11 琉球王国では、聖徳太子の「冠位十二階」のように、身分によって冠(はちまき)色や生地が決められていたのだそうで、展示されていたのは、国王に次ぐ高位となる「王子」の冠(はちまき)でした。

Wikipediaによれば、「王子」の冠は、「赤地金入五色浮織冠」とのことですが、確かに

また、これまた官位や身分によって使える材質が定められていたという簪(かんざし)も展示されていました。


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そして、こちら紅型(びんがた)衣装 白地竹梅鶴模様」(がら)に、何とも興味深いものがありました。

120722_2_13 この写真ではよく判りませんので、アップしてみましょう。

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説明書きによれば、

雪の降らない沖縄本島でも、日本の文様の影響を受けて、雪の積もった竹がデザインされている。


ということで、竹の葉の上にあるのはだったんですねぇ。
まさしく日本=琉球の文化の融合ってヤツです

東博のHPには、


東京国立博物館が保管する琉球民俗資料は、明治17(1884)年に当時の農商務省が沖縄県から購入したものが基本となっています。また、明治15(1882)年にドイツ人類学会が研究用の参考資料として琉球の民俗資料の収集を農商務省に依頼してきており、当館にはドイツに資料を送られた後に東京へ送られてきたもの、複数ある資料の一方を東京に残しておいたものが移管されました。沖縄県では、第2次世界大戦により灰燼に帰した文化財も少なくはないのですが、それは民俗資料においても同様です。それ故、当館が保管する民俗資料は現存するもっとも古いものの一つといえます。


と書かれています。
そういえば、6月24日に放送されたNHK日曜美術館「琉球の心を染める~紅型・悠久の美~」では、首里の攻防で紅型の型や図案の多くが失われた話が出てきていましたっけ…

一連の展示を観ていると、2か月前の沖縄旅行のことが懐かしく思い出されました(旅行記は例えばこちら)。


また沖縄に行きたいゾ

つづき:2012/7/26 フェルメールの2点の「真珠」が上野に来訪中(その7)

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フェルメールの2点の「真珠」が上野に来訪中(その5)

2012-07-22 10:39:18 | 美術館・博物館・アート

「フェルメールの2点の「真珠」が上野に来訪中(その4)」のつづきは、予告どおり先週土曜日(もう一週間前だ…)に東京国立博物館(東博)で観たモノのご紹介。


東博の総合文化展(かつての平常展)では、ところどころで「特集陳列」が行われています。


120722_1_01 そのうち、7月3日~10月28日平成館1階の考古展示室で開催されているのが、「動物埴輪の世界」です。
埴輪好き」の私としては見逃すことができません


展示を紹介する前に、右の表示の中に、「撮影禁止マークが見えます。
でも、説明をよく読みますと、


120722_1_02このマークがある作品は、所有者の意向により撮影することはできません。


とあります。
総合文化展の他の展示と同様、考古展示室でも、基本的に写真撮影OKです。
ただし、


フラッシュおよび三脚を用いてのビデオ、写真撮影はできません。


ですのでご注意ください。


   


さて、「動物埴輪の世界」、かなりこぢんまりした展示ながら、楽しかった…
看板にあしらわれている「埴輪犬」こちらこちらで触れたお気に入りの埴輪の一つ)が、ほかと並んでいるし、


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がかわいらしいし、


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水鳥もなかなか


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この「埴輪鶏」は、栃木県真岡市にある、その名も「鶏塚古墳」から出土したモノだとか。
そして、Wikipediaによれば、この「埴輪鶏」が出土したから「鶏塚古墳」と名付けられたようです。
また、こちらのブログによれば、石室がかなりしっかりと残っているようで、なかなか魅力的な古墳です。ただし、私有地内にあるそうなので、おいそれと見学するわけには行かないでしょうな…


食料になったであろう鶏や水鳥、猪辺りは、亡くなった人へのお供物的な意味があるだろうし、犬や馬は、故人のペットだったのではないかと想像されます。

埴輪の造形を楽しむだけでなく、どうしてこの埴輪を造ったのかを想像するのもまた一興です。


特集陳列としてひとかたまりに展示された動物埴輪の他にも、いつもの埴輪コーナーには魅力的な埴輪が展示されていました。


120722_1_06 埴輪界のスーパースター、国宝「挂甲の武人」を始めとして、彩色が残っている「両手を挙げる女子」とか、


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「子を背負う女子」鶏塚古墳の出土品)とか、


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そして久しぶりに拝見できた、埴輪界のお笑い芸人(?)というか、東博シンボルの一つにもなっている「踊る人々」


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と、埴輪の魅力満載東博・考古展示室です。
あ、そうだ。もちろん埴輪以外の考古史料も展示されていますよ


以上で今回の東博・考古展示室の紹介は終了しまして、次回は東博・本館で観た展示を紹介しましょう。
何度も何度も総合文化展に行き、このブログで紹介していますけれど、またもや「初見」が登場します。

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