OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

キャンドヒートとブルースロックの本音と永劫

2012-08-29 15:51:41 | Rock

Time Was / Canned Heat (Liberty / 東芝)

アメリカのブルースロックではポール・バターフィールド率いるバターフィールド・ブルース・バンドが絶対と思われがちですが、同時期にもうひとつ忘れてはならないのが、キャンド・ヒートでしょう。

まあ、そりゃ~、様々なロック史の名場面に登場し、不滅の傑作アルバムも残し、後々まで活躍するメンバーが去来したという視座からすれば、バターフィールド・ブルース・バンドの実績は揺るぎないものでしょう。

しかし白人も黒人も分け隔てなく、とにかくブルースという、アメリカが生み出した素晴らしい音楽への情熱は、キャンド・ヒートの面々にしても、引け目を感じるところは無いはずです。

なにしろバンド成立の経緯には、参加メンバーの黒人ブルース研究&レコード蒐集の行きつく姿が投影されている感が強いのです。

そして大手会社からの公式レコードデビューが1967年!

となれば、そこにはサイケデリックロックの重要ポイントであったブルースの存在に極めてジャストミートしていたのがキャンド・ヒートであり、当然ながら「モンタレー・ポップ・フェスティバル」と「ウッドストック」という、1960年代ロックを象徴した二大野外イベントにも登場し、リアルタイムで作られていたレコードもヒットしています。

で、ここで本日、特に強調しておきたいのが、音楽をやる時の気分とでも申しましょうか、簡潔に言えば、歌を歌い時に歌う、楽器を演奏したい時に演奏する、バンドをやりたい時にやるっ! というような衝動において、ブルースはやる側が一番に楽しいという真実(?)です。

中でもバンドを組んで歌い、演奏するブルースロックの快感は、それこそやった者が最高に感じる、官能的享楽でしょう。

その意味において、ブルース好きが高じてスタートしたキャンド・ヒートのブルースロックがウケたのは、そういう姿勢と意気込みがライプギグの現場に集った観客、あるいはレコードを買ったリスナーにストレートに伝わったからだと思います。

さて、そこで本日掲載したシングル盤A面曲「Time Was」は、1969年頃に発表されたキャンド・ヒートのLP「ハレルヤ」からのカットなんですが、とにかく全篇から滲み出す怠惰の雰囲気と刺激的なキメを絶妙のアクセントにする演奏、さらには何時までも延々と続けることが可能としか思えないギターソロ♪♪~♪

そんなこんなのブルースロック保守本流の魅力に溢れた名曲名演で、実際、サイケおやじも入れてもらっていたバンドでも度々、これをやろうっ! と我儘を押し通してはジコマンに浸っていた前科があるのです。

いゃ~、本当に絶妙のキメを弾いてしまうベース、鋭さと軟弱の共存がたまらないリードギター、幾分ショタっぽいボーカル等々、流石にアメリカのチャートでは見事にヒットしたのも頷けます。

ちなみに当時のキャンド・ヒートのメンバーは、黒人ブルース及びブルースマン研究に多大な功績を残したアル・ウィルソン(g,vo)、ブルースレコードの偉大なるコレクターと言われるボブ・ハイト(vo,hmc)、エレクトリックなブルースギターの隠れ名手と評価も高いヘンリー・ヴェスティーン(g)、後にはジョン・メイオールに引き抜かれるラリー・テイラー(b)、そして途中参加のフィート・ド・ラ・パラ(ds) の5人が揃っていた全盛期!

と言うのも、実はこの後しばらくして、中心メンバーのアル・ウィルソンが悪いクスリ(?)で夭折、さらにヘンリー・ヴェスティーンやラリー・テイラーの脱退、1980年頃にはボブ・ハイトの逝去……、等々の苦境困難が続く事になったからです。

しかし、それでもグループはその都度、新メンバーを入れつつ、最近でもフィート・ド・ラ・パラが率いる事でキャンド・ヒートは存続しているというのですから、ブルースロックは不滅!

というよりも、ブルースロックを演じる楽しさ、それを共有出来るリスナーの喜びこそが永劫!

そう、言うべきなんでしょうねぇ~♪

ということで、最後にちょいと裏話ではありますが、スライドギターの名人でもあったアル・ウィルソンは、ベンチャーズのドン・ウィルソン(g) の実弟であり、またラリー・テイラーが同じくペンチャーズのメル・テイラー(ds) の弟か従兄弟という繋がりを知った時には吃驚仰天!

う~ん、キャンド・ヒートって、ベンチャーズの弟バンドかっ!?

さらにアル・ウィルソンとヘンリー・ヴェスティーンを失ったキャンド・ヒートには助っ人として、これまたベンチャーズとは深い関わりを持つジェリー・マギー(g) が参加していたというのですから、所属レコード会社がベンチャーズ所縁のリバティである事も自然の流れだったんでしょうか?

とにかくそういう因縁(?)も芸能界の面白さであるとすれば、キャンド・ヒートも殊更憎めない存在と思えるのでした。

 

<付記>
文中、「アル・ウィルソンがドン・ウィルソンの弟」という件は間違えた思い込みでした。

アル・ウィルソンのプロフィールは下記にリンクさせていただきます。

http://en.wikipedia.org/wiki/Alan_Wilson_(musician)

 

 

 

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする