OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ラテン&ブラスロックなマロが好き♪

2012-08-09 14:08:39 | Rock

Malo (Warner Bros.)

1970年代初頭のレコード業界で最も新しいトレンドはブラスロックとラテンロックであり、例えば前者ではBS&Tやシカゴ、後者ではサンタナが圧倒的な人気を集めていたのですから、その折衷スタイルで売り出すグループが登場したとしても、それは自然の成り行きでした。

中でも本日の主役たるマロは、メンバーにカルロス・サンタナの弟だというホルヘ・サンタナがギタリストで参加していた事から、掲載したデビューアルバムには最初っから話題が集中!

なんとっ! 驚くなかれっ!!

発売当時の1972年、弱冠17歳だったホルヘ・サンタナが率いる、なぁ~んて大宣伝されていたんですよねぇ~~~。

しかし結論から言うと、これは明らかにレコード会社やマネージメント側の策略であり、現実的にはサンフランシスコのベイエリア地区で活動していた歌手のアルセリオ・ガルシアと仲間達がやっていたザ・マリバスというラテンバンドが母体であり、ホルヘ・サンタナはそこへ時折に参加していたのが真相でありました。

ただし、その頃には兄のカルロス・サンタナがサンタナ・ブルース・バンドからサンタナに進化したバンドで大手のCBSと契約し、デビューするや忽ちにして世界中で売れまくったのですから、業界がその周辺や関連ミュージシャンに手を伸ばすのも、これまた当然の仕儀でしょう。

もちろん前述したザ・マリバスの面々が、このチャンスに舞い上がったことは推察に易く、こうして1972年、マロと名乗る新しいグループがやってくれたのが、冒頭に述べたブラスロックとラテンロックの幸せな結婚♪♪~♪

そしてアルセリオ・ガルシア(vo,per)、ホルヘ・サンタナ(g)、アペル・ザレート(g,vo)、リチャード・カーモード(key)、パブロ・テレス(b)、リチャード・スプレミッシェ(ds,per)、コーク・エスコベート(per)、ビクター・パントーハ(per)、ルイス・ガスカ(tp,per,vo,arr)、ロイ・マーレー(tp,tb,fl,ss,etc.) 等々の参加メンバーが、前述サンタナ・ブルース・バンドをサンタナに進化させる縁の下の力持ちだったプロデューサーのデヴィッド・ルーピンソンの指揮下、鋭意専心で作り出したのが、掲載したデビューアルバムというわけです。

 A-1 Pana
 A-2 Just Say Goodbye / さよならを言うだけ
 A-3 Cafe
 B-1 Nean / いとしのネナ
 B-2 Suavecito
 B-3 Peace

冒頭に書いたとおり、マロの演奏はブラス入りのラテンロックを狙ったものだとは思いますが、そうしたスタイルは既にラテンミュージックでは昔っからの基本であって、当時のニューヨーク辺りではブーガールーとか、あるいはサルサとか称されていたR&B風味のラテン系大衆音楽が広く認識されていたのですから、特段に新しい目論見ではないでしょう。

ところがマロの歌と演奏には、やはり兄貴格のサンタナが提示した極めてロックな勢いが強く感じられるのですから、たまりません。

それは極言すればホルヘ・サンタナとアペル・ザレートによるツインギターの炸裂であり、またルイス・ガスカやリチャード・カーモードという、ジャズプレイヤーとしても一流の名手が本気でロックのグルーヴを追求した結果でしょう。

つまり個人的にはラテンロックというよりも、根底にはジャズロックがあるような気がするんですよねぇ~。

例えばリー・モーガンが口火のヒットにした「The Sidewinder」以降のハードバップ系ジャズロックは、正当的なロックの8ビートではなく、実質的にはラテンピートの変形と思い込んでいるサイケおやじの独断と偏見ではありますが、それがここでは非常に上手く、最新型ロックに合流したんじゃ~ないでしょうか?

なにしろA面ド頭「Pana」からして、若々しいラテンソウルなピートに煽られてルイス・ガスカが吹いてしまう、これぞっ! 哀愁のトランペットが最高の導入部ならば、後は一気呵成に繰り広げられる享楽と刹那の情熱ミュージック♪♪~♪

あぁ、このなんとも言えない哀感と熱気のゴッタ煮こそが、ラテン音楽の一般認識という事なんでしょうか、とにかくブラスもピアノも打楽器も、そうした流れと雰囲気を大切にした保守性に拘っていく方針は、アルバム全篇に安心感を与えているはずです。

しかし一方、ギターがニューロックというか、それなりにハードなフレーズとロックのリズムを弾きまくっているのが、これまた大きな魅力で、例えば「Cafe」におけるツインリードのユニゾンからアドリブソロの饗宴には素直に熱くさせられますし、オーラスの「Peace」におけるプログレな展開にも、それは欠かせないものになっていると思います。

またラテンミュージック特有の「甘さ」の表現手段として、ギターの役割は「さよならを言うだけ / Just Say Goodbye」や「Suavecito」の実に良い雰囲気を醸し出しすキモになっていますが、ちなみに2本のギターはアルバム全篇を通して左右のチャンネルに分離定位はしているものの、どちらが誰かはちょいと不明なの残念であり、これは皆様からのご教授をお待ちしております。

とはいえ、マロの魅力は決してギターやブラスだけではなく、基本的なラテンミュージックの要である打楽器の充実度は圧巻!

加えて各トラックの楽曲そのものが極めて秀逸で、中でも短縮編集バージョンでシングルカットもされた「いとしのネナ / Nena」の躍動的快楽性は永遠に不滅でしょう。その覚え易い曲メロとキメのリフのコンビネーションの良さは思わず口ずさんでしまうほどですし、ホーンセクションやキーボードのアドリブソロもシンプルでありながら、実に上手いんですよねぇ~♪

ということで、結局のところ、冒頭に述べたブラスロックとラテンロックの融合追求は、それを意図的に狙う以前から、既にマロのメンバーには自然体の認識であったのかもしれません。

当然ながらアルバムは人気を呼び、続けて数枚のLPが発売されていきましたが、個人的にはデビュー作が最高に好きなんですねぇ~♪

それは何んと言うか、野望や欲望や希望や情熱、そうした如何にも人間的な「らしさ」が感じられるところにあって、同時に妙な勘繰りなんか、どっかへ吹き飛ばしてしまうエネルギーに酔わされるのです。

またブラスロックとラテンロックの融合というポイントでは、既に本家サンタナが前年に出していた3rdアルバム「サンタナⅢ」に収録し、シングルカットで大ヒットも達成した「新しい世界 / Everybody's Everything」が、ファンキーソウル&ブラスロックを標榜していたタワー・オブ・パワーとの見事なコラポレーションであった事を踏まえれば、マロが先駆者では無いという結論も当然あるでしょう。

しかしマロにはストレートなラテンミュージックの哀愁と享楽性を強く打ち出す情熱が確かにあって、決して新しくはないスタイルゆえに受け入れられる土壌も広かったと思います。

ただし、残念ながらマロは尻つぼみになったのが現実であり、それはプログレやクロスオーバー等々の迷い道に踏み込んだ所為もありますが、その意味で直截的な楽しみが横溢したデビューアルバムこそが、マロの最高作品と信じております。

皆様も、ぜひっ!

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