■雨をみたかい c/w Hey Tonight
/ Creedence Clearwater Revival (Fantasy / 東芝)
1970年年代初頭、やはり驚異的な人気を集めたバンドのひとつがクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル=CCRでした。
ご存じのとおり、当時はハードロックやプログレ、あるいはシンガーソングライター、そしてニューソウルが乱戦状態の洋楽天国♪♪~♪ しかもポップス王道の所謂「3分間物」と称されるシングルヒット狙い専門の歌手やグループも数多活躍していましたからねぇ。業界全体に勢いがあったのも当然でしょう。
ですから、本来はLP単位で勝負するロックバンドにとっても、シングルヒットは絶対条件的なものであり、例えばディープ・パープルなら「Black Night」、ゼップならば「移民の歌」等々、わざわざ新作アルバムを出すプロモーション的な意味合いのシングル曲を吹き込む事に恥ずかしさはあったとしても、リアルタイムのファンならば納得して大歓迎だったのです。
ところがCCRの人気の大きな要因は、そうしたシングルヒットを苦も無く、実に自然体で連発出来たことで、それは1969年の「Proud Mary」あたりから特に顕著! しかも連動して出されるアルバムの中には、どれをカットしてもヒット間違い無しというキャッチーな楽曲がびっしり入っていましたし、実際にそうやって流行りまくった歌と演奏は数えきれません。
ただし誤解してはならないと思うんですが、CCRの作ったアルバムは決してシングルヒットの寄せ集めではなく、きっちりと目的意識を強くしたプロデュースがあったはずで、それは当時の流行だったスワンプロックやカントリーロック、さらにはファンキーロックに近いものまでを自分達流のR&Rで纏めていた成果に他なりません。
そのあたりは残されたスタジオ録音のLPを聴けば、シビれるような感覚と共に伝わってくるはずです。
そしてもうひとつ、CCRが絶対的な人気を獲得した裏には、アマチュアのバンドがコピーし易いというポイントがありました。
なにしろ楽曲そのものが、どっかで聞いた事があるような親しみに溢れていますし、基本的にはギターバンドでありながら、難しいコードやリフは用いず、それでいてカッコ良すぎるキメとリズムのコンビネーションは、素人が最も「やれそうな気持」にさせられるものでしょう。
例えば本日ご紹介の「雨を見たかい / Have You Ever Seen The Rain」も説明不要、1971年のウルトラ大ヒットなんですが、ギターのカッティングや黄金律的なコード進行も、全く当時の我国では歌謡フォークに一脈通じるが如き魅力として、広く歓迎されていましたですねぇ。
このあたりは、まさにリアルタイムのCCRが目指していたと思われる、なかなか内省的な世界であって、それまでの豪快に突進し、ドロドロに熱して弾ける独得の曲調とサウンドからは離れてしまった異質な仕上がりなんですが、それこそが時代の空気感!?
一方、B面収録の「Hey Tonigh」は痛快無比! これぞっ! CCRが十八番のスピードがついたR&Rであって、言うこと無し♪♪~♪
ちなみにCCRの大きな魅力は、ほとんどの楽曲を作ってしまうジョン・フォガティの豪胆な熱血ボーカルにも決定的なんですが、それでいて絶妙の哀愁を滲ませるあたりは名人芸で、特に「雨を見たかい / Have You Ever Seen The Rain」は何時聴いても、強い印象が残ります。
ただし、それにしてもトム・フォガティ(g)、スチュ・クック(b)、ダグ・クリフォード(ds) という他のバンドメンバーが、一途なリズムとビートを刻んでいればこそっ!
些か確信犯的な結果論ではありますが、この「雨を見たかい」の大ヒットを出した後、トム・フォガティが脱退し、三人組となった末路のトホホ感……。さらにCCR解散後にジョン・フォガティがソロとして出したアルバム&シングルは、それなりに良く出来てはいたものの、明らかに物足りなさが……。
つまり全盛時代のCCRが発散させていた濃密なR&Rワールドは、唯一無二!
ジョン・フォガティが思いっきり自分の才能を活かせたのも、寡黙で堅実なリズム隊が骨太のビートを提供していた事に尽きます!
それは次なる新展開のスタートを目論んだのかもしれない「雨を見たかい」のメガヒットによって、確実な成功へのベクトルが提示されただけに、以降のバンド分裂は勿体無い限りでした。
ということで、CCRが残した楽曲は誰もが親しみ易く、歌と演奏はギュ~~っと凝縮されたロックの醍醐味に満ちています。
思えば当時は、ゼップやイエスにはなれなくとも、CCRには成りきっていたアマチュアバンドがどっさりありました。もちろん、その中にはアコースティックギターがメインのフォーク系のグループもあって、日頃は海援隊とか、かぐや姫とかやっている奴らが、ストーンズの「悲しみのアンジー」等々を歌っているのに接すると、不条理な憤りを覚えたものですが、何故か「雨を見たかい」には憎めませんでしたねぇ……。
そのあたりの気分は、あの時、自分も若かったという事でしょう。
失礼致しました。