OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

正々堂々のデビューだったクルセイダーズ

2011-04-27 16:38:57 | Jazz

Freedom Sound / The Jazz Crusaders (Pacific Jazz)

フュージョン全盛期の1970年代にクルセイダーズとして大活躍していた人気グループの、これは未だモロジャズをやっていた当時に作られたデビューアルバムです。

そしてこの時期に愛着を抱くファンが今も多いという現実は無視出来ないでしょう。

なにしろバンド名に「ジャズ」という単語が堂々と使われていますからねぇ~~~。

しかしそれは決してシリアスな面を強調するではなく、むしろ大衆的なモダンジャズを新しい感覚でやろうとしていたと推察出来る、そうしたクルセイダーズの姿勢に共感しての事でしょう。

ですから如何にもデビュー作に相応しい意気込みと幾分の未完成な部分が絶妙のコントラストとして記録されたこのアルバムが、決定的な人気を集めるのも当然かと思います。

録音は1961年5月、メンバーはウェイン・ヘンダーソン(tb)、ウィルトン・フェルダー(ts)、ジョー・サンプル(p)、スティックス・フーパー(ds) の4人がメインのクルセイダーズで、ここでは他にロイ・ゲインズ(g) とジミー・ボンド(b) がサポートメンバーとして参加しています。

ちなみにクルセイダーズを語る時、必ず問題となるのがレギュラーベース奏者の不在なんですが、ご存じのとおり、ウィルトン・フェルダーはスタジオセッションの世界でも堅実で個性的なエレキベースの名手として後に活躍する事を鑑みれば、実際のライプの現場でもそれを演じていた事は想像に易いのですが、だからと言って、これまた非常に魅力的な本業のテナーサックスが鳴っていなければ、あの魅力的なクルセイダーズのサウンドにはならないのですから、事態は複雑!?

おそらく当時から幾人かのサポートメンバーを入れながら活動していた事により、このセッションもそれが具象化としたのではないでしょうか。

A-1 The Geek
 ワルツテンポのハードバップで、もちろん時代の要請からジャズロックフィーリングも滲むというウィルトン・フェルダーのオリジナル曲は、これしか無いというクルセイダーズ的な演奏に仕上がっています。
 それは重心の低いジャズビート、トロンボーン&テナーサックスというジャズテット直伝の2管ハーモニーとユニゾンの心地良さ、さらには如何にもファンキーなグルーヴの醸し出し方が、ハードドライヴなアドリブパートと見事に融合したもので、特にジョー・サンプルのピアノは既にたまらない魅力を発散していますよ♪♪~♪
 また作者本人の硬質なテナーサックスの豪快さや助っ人ギタリストのロイ・ゲインズが披露する短くもR&Bな素養も好ましく、もちろんスティックス・フーパーのモダンジャズ王道のドラミングも痛快!

A-2 M.J.S. Funk
 これまたジャズビートを上手く利用した刺激的なテーマからウィルトン・フェルダーのハードボイルドなテナーサックスが炸裂するというアドリブへの入り方が潔いかぎりという演奏ですが、続くウェイン・ヘンダーソンの明朗闊達なトロンボーンや熱血ピアノのジョー・サンプルも手抜きがありませんねぇ~♪
 こういう全力投球はデビュー盤という条件を差し引いても、常にクルセイダーズが持っていた魅力のひとつじゃないでしょうか。
 そして後半はドラムソロから各人のアドリブの応酬という王道路線で締め括られます。

A-3 That's It
 ウィルトン・フェルダーのオリジナルという事ですが、とにかくメチャメチャにカッコE~~♪ まるっきりスタンダード曲をアレンジしたかのようなテーマメロディとアンサンブルがシャープなアップテンポで演じられる時、それはジャズメッセンジャーズとは似て非なる親しみ易さと痛快さが見事な化学変化を誘発した感じです。
 そしてコルトレーンフレーズを適度に使ったウィルトン・フェルダーのテナーサックスから、今度はJ.J.ジョンソンのヘッドアレンジを借用したようなウェイン・ヘンダーソンの稚気が披露されるに及んで、その場は完全に楽しさ優先モードのジャズ天国♪♪~♪
 ただし演奏全体にテープ編集疑惑が濃厚なのは賛否両論でしょうか……。
 個人的にはスティックス・フーパー&ジミー・ボンドのリズム隊が提供するビートの溌剌さに心惹かれます。

B-1 Freedom Sound
 今日ではジャズクルセイダーズを代表する人気演目であり、ジョー・サンプルにしても畢生のオリジナル曲は、何度聴いても感動的なテーマアンサンブルが最高です! それは微妙に幻想的なムードと前向きな姿勢が強く出たものでしょう。
 リズム隊が提供するマーチのビートと新主流派っぽいハーモニーの融合は、各人がクールで熱い気持で自らのパートを演じるしかない境地を導くのでしょうか。とにかくジョー・サンプルのピアノからはキメまくりのフレーズしか放たれませんし、じっくり構えてツッコミも鋭いウィルトン・フェルダーのテナーサックスやエグ味の強いジミー・ボンドのペースも名演だと思いますが、一番印象的なのは、やっぱりグッと力が漲ってくるテーマアンサンブル♪♪~♪
 もしも自分に管入りジャズバンドが組めるなら、絶対に演目に入れたいほどです。

B-2 Theme From Exodus / 栄光への脱出
 映画音楽からのモダンジャズヒットのひとつとして、例えばエディ・ハリスのバージョンが有名な名曲ですから、クルセイダーズの面々も神妙なのでしょうか。
 しかしここでは見事に前曲からのムードを引き継ぎ、厳かにして豪快な演奏に仕上げたのは、流石「ジャズ」とバンド名に冠しているだけのことがあります。そして何んと言ってもテーマをリードし、アドリブパートでは爆裂するウェイン・ヘンダーソンの存在感が強烈ですねぇ~~♪
 それとスティックス・フーパーのヘヴィなブラシが全体をビシッと纏め上げているのも特筆されると思います。

B-3 Coon
 そこでオーラスでは徹底的にスティックス・フーパーのドラミングが楽しめるという趣向がサービス満点!
 と言っても、決してドラムソロの曲ではなく、アップテンポの王道ハードバップの中に変幻自在、強靭なビートをあらゆるリズムを駆使して敲きまくる、まさにドラマー冥利に尽きるような演奏が秀逸ですよ♪♪~♪ もちろん他の面々も力演ばかりですから、熱くなります!

ということで、実にがっちり仕上げられたアルバムで、しかも人気盤の要素がテンコ盛り♪♪~♪

既に述べたようにクルセイダーズは1970年頃に「ジャズ」という冠を外してから、さらに音楽性を広げ、人気を拡大したわけですが、さりとてそれ以前の音源が忘れられるということはありませんでした。

実際、ジャズ喫茶ではクルセイダーズはお断りでも、ジャズクルセイダーズは大歓迎という店もあったほどですし、ジャズ者が中古屋で漁る定番のブツのひとつが、1960年代の彼等のアルバムであったという真相も否定出来ないでしょう。

特にこのアルバムが初演とされる名曲「Freedom Sound」は、クルセイダーズにしてもステージでは必須の演目だったということで、レコードでもライプバージョンが残されていることから、自然とスタジオバージョンにも人気が集まるという好循環(?)も素敵でしょう♪♪~♪

これは正々堂々、愛聴盤と宣言させていただきます。

コメント (2)
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