■ステレオ! これがビートルズVol.1 (Parlophone / 東芝オデオン)
今でこそアナログ盤はモノラルミックスが優先的に重宝されていますが、逆に1960年代はステレオミックスこそが強くファンにアピールするウリになっていました。
特に我国では高度成長のひとつの証でもあった高機能オーディオ装置の普及により、尚更それが顕著だったように思います。
例えば本日ご紹介のビートルズのLPは昭和41(1966)年5月末頃に発売された、所謂来日記念盤なんですが、無くしてしまったとはいえ、日本盤特有の「帯」には「ステレオ!」と大きなロゴが踊っていたほどです。
しかし中味は掲載したジャケ写にある原盤タイトルどおり、ビートルズの英国デビューLP「プリーズ・プリーズ・ミー」と同じ内容であり、それを我国独自のデザインを用い、さらに曲順までも再構成して発売したというわけですが……。
A-1 Please Please Me
A-2 Anna
A-3 I Saw Her Standing There
A-4 Boys
A-5 Misery
A-6 Chains
A-7 Ask Me Why
B-1 Twist And Shout
B-2 A Taste Of Honey
B-3 Love Me Do
B-4 Do You Want Know A Secret
B-5 Baby It's You
B-6 There's A Place
B-7 P.S. I Love You
実はそうした企画が罷り通ったのも、我国ではビートルズの初期音源がモノラルバージョンでしか発売されておらず、もちろんLPにしても最初の2枚となった「ビートルズ!」と「ビートルズ No.2」が独自の選曲によるモノラル盤だったからに他なりません。
ですから、そこで既に聴かれてした楽曲を、あえて再発する意義と言えば、それは「ステレオ!」という目論見も当然だったのですが、いくら「来日記念盤」とはいえ、メーカーも流石にそれだけは弱いと思ったのでしょう。新デザインのジャケットは見開き仕様であり、中にはメンバーのカラーピンナップがつけられていました。
ということは当時、野郎どもに比べて明らかに多かった女性ファンをターゲットにしていたことは明白で、実際、サイケおやじの周囲でもリアルタイムでこれを買ったのは従姉でした。
しかし、その頃は団地住まいの所為もあって、未だステレオを持っていなかった彼女がそうした行為に走ったという事実は重大!
そこで鑑賞するにはレコード共々に我が家へ来てくれるのですから、サイケおやじは自らの経済力の無さが霧散するほど、嬉しかったですねぇ~~♪
おまけに驚愕するしかない新事実にも遭遇したのですから、これは所謂ひとつのカルチューショックに近いものがありました。
何んとっ! 初っ端に収められた「Please Please Me」で、ジョンが歌詞を間違えたばかりか、その所為でしょうか、続くキメのフレーズともいえる「カッマ~ン」では思わず吹き出したような歌い方を演じていたんですねぇ~~~!?!
これをもう少し詳しく書くと、本当は「I know you never ever my girl」と歌うべき3番を何故かジョンは「Why know I ~」云々と、テキトーに作って(?)しまったような感じですから、次の「Come On」を笑ってごまかした(?)のも当然が必然だったんでしょうか?
今となっては皆様、良くご存じのとおり、これはステレオとモノラルの両バージョンが決定的に異なっている証拠のひとつであって、共に幾つかのテイクを編集して作られた完成バージョンにしても、その過程が違っていたという、まさにスタジオレコーディングの魔法の結果でした。
それでもリアルタイムのサイケおやじは、耳慣れたモノラルミックスからあまりにも違うステレオミックスの存在に不条理さえ感じましたよ、大袈裟ではなく!
つまり欧米ではもっと早くから知らされていた真相が、日本では3年近く遅れていたという差別的な扱いにコンプレックスを感じていたのであり、サイケおやじの世代では決して拭い去ることの出来ない欧米への無暗な憧れの裏返しだったと、今は自嘲するばかり……。
まあ、このあたりは現在の冷静な(?)立場での分析ではありますが、それにしてもビートルズという世界最高のスタアが、こんなトホホを演じていたという事実も、これまた重大!!
う~ん、なんて面白い事をやってくれるんだろう~~~♪
そんな不思議とウキウキした気分にさせられたのも、隠しようがありませんでした♪♪~♪
そして以降、サイケおやじのマニア心が辿る奥の細道の出発点となったのは言わずもがなでしょう。
最後になりましたが、掲載した私有盤は前述したとおり、従姉がリアルタイムで買った後、永久貸与してくれたものですが、ご推察のように見開きジャケット内のピンナップはきっちりと剥がされていますし、今では貴重なお宝となっている帯なんか、おそらくは買ったその日に棄てられたんじゃないでしょうか?
そういう扱いもまた、ブームの中の芸能人だったビートルズの本質を表していると思います。
さらにジャケに使われたグループショットは明らかにメンバーの目線が揃っていないところから、何かの記者会見あたりで撮影されたものでしょうから、実にイージーな制作姿勢に???の気分にさせられるかもしれませんね。
しかし、これでも当時のレコード会社は精一杯やっていたと思いますし、今となっては、昔は良かったねぇ~♪
そんな気分にさせられる1枚なのでした。