■太陽野郎 / 寺内タケシとバニーズ (キング)
昨日はスパイダースのインスト物をご紹介致しましたが、本日は一転、その正逆とも言えるバニーズの歌物ヒットです。
演じている寺内タケシとバニーズは、歌謡曲さえ包括されていたGS全盛期でも、あえてエレキインストを強引に展開させていた名バンドでしたが、やはり時代の要請からボーカルメインの楽曲もかなり出していた事は、皆様がご存じのとおりです。
結論から言えば、バンド内に寺内タケシのギターと互角に渡り合えるボーカリストが居なかったこともあり、どうしてもエレキインストに軍配が上がるのは避けられません。
しかし、そんな中で一番有名なのが、この「太陽野郎」じゃないでしょうか。
発売されたのは昭和42(1967)年11月で、実は同じ頃に放送が始まった同名テレビドラマの主題歌だったのですから、その覚えやすくて痛快な歌と演奏は忽ち大ヒットしています。
とにかくイントロから炸裂する寺内タケシのギターはボーカルに絡みつく熱い裏メロ、そして間奏での強烈なアドリブ! まさにエレキの真髄が存分に発揮されています。
ちなみにこれを書いたのは作曲:いずみたく、作詞:岩谷時子というお馴染みのコンビですが、編曲はもちろん寺内タケシですから、歌謡曲に近いとはいえ、エレキなロックはお約束♪♪~♪
しかも同時期のバニーズは寺内タケシ(g,arr) 以下、黒沢博(g,vo)、鈴木義之(g.vo)、荻野達也(key)、小野肇(b)、井上正(ds,per,vo,etc) という、まさに鉄壁の布陣で世界に誇るエレキインストの超名盤LP「運命」を出したばかり! つまり何をやっても盛り上がる他はない勢いに満ちていたのです。
おそらくボーカルパートは黒沢博と鈴木義之のユニゾンでしょう。また、間奏での掛け声も井上正の一発芸として、揺るぎない魅力がありますねぇ~♪
さて、気になる本篇ドラマの「太陽野郎」ですが、これは夏木陽介主演による和製カウボーイの物語で、確か北海道や富士山麓の牧場を舞台にしていたと記憶しています。
そして既にご推察のように、制作は東宝系ということで、出演女優さんには北あけみ、宮内恵子=牧れい、豊浦美子、松本めぐみ、島かおり等々、全くサイケおやじ好みの素敵なお姉様が大勢登場しましたですね♪♪~♪
当然ながら物語展開は青春熱血であり、人情の機微や溌剌としたアクションも満載!
放送が土曜日の夜だったことを思えば、モノクロ作品ながら、当時の人気番組のひとつだったと思います。
このあたりもDVD化してもらえると面白いんですがねぇ。
ということで、このシングル曲もまた昭和元禄を体現しています。
既に述べたように、この時期の寺内タケシとバニーズは大傑作アルバム「運命」を出し、またシングル盤もインストでは「勧進帳」や「津軽じょんがら節」といった邦楽エレキロック、さらにボーカル物では「悪魔のベイビー」や「愛のりメンバー」等々、今もってアクの強い隠れ人気作を毎月のように発売していた全盛期! シングルカットした「運命」も大好評でした。
そして決定打となったのが、この「太陽野郎」だったのです。
残念ながらサイケおやじは、この頃の寺内タケシとバニーズの生演奏には接することが出来ませんでした。しかしテレビ出演で歌って演奏するエレキなバンドといえば、寺内タケシとバニーズがダントツの存在感であり、明らかに他のGSとは異なるカリスマ性を感じていました。
今日の歴史では、GSと言えばブルー・コメッツやスパイダース、タイガースやテンプターズ、カーナービーツやジャガーズ等々、ボーカル系のバンドばかりが人気を集めていたと思われがちですが、インストがメインのグループも忘れてはならないでしょう。
しかもそうした中にあって、ちゃ~んと歌物ヒットも出していた寺内タケシとバニーズは、後追いで昭和元禄を楽しまれんとする皆様には、ぜひとも早い段階で接していただきたい素晴らしいバンドだと思います。
なんといっても実力の裏付けがある強烈なプロ意識は、寺内タケシの薫陶は当然ながら、既にしてエレキの神様だった親分のバンドに在籍しているという誇りと自負心が絶対的でしょう。
結果的に、後には寺内タケシから離れて独立したバニーズが極端に歌謡曲化し、また以前のブルージーンズが同じくムードコーラスの如きグループになっていたことを思えば、如何に寺内タケシのロック魂が凄かったか、痛感されるはずです。
ただし個人的には歌謡曲化したGSは決して嫌いではありませんし、それがロックじゃないとは決して言えない部分も確かにあるでしょう。
それでも、この頃の寺内タケシとバニーズを聴いていると、それはやっぱり悪夢かもしれませんね……。
つまり、こういう直截的で分かり易い歌謡曲さえロックになっていたのが、昭和元禄だったんじゃないでしょうか。
本当にそう思います。