OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ロニー画伯は上機嫌

2010-05-13 16:33:30 | Rolling Stones

Gimme Some Neck / Ron Wood (Columbia)

1970年代も最後の2~3年になると、なかなかサイケおやじ好みのロックの新譜が出なくなっていましたが、例外的に速攻で楽しんだのが、本日ご紹介の1枚でした。

主役のロン・ウッドは初期ジェフ・ベック・グループフェイセズでの活躍によりロックファンに認知され、1974年頃からは地道にリーダー盤も発表していたところから、このアルバムを出した1979年にはストーンズのメンバーとしてすっかり馴染んだ存在でした。

それは自らストーンズのファンと公言しているロン・ウッドならではというか、常にキース・リチャーズの顔を立てることを忘れませんし、本来がファジーなストーンズのライプ巡業では、例えばメンバー紹介を忘れたミック・ジャガーをフォローしたり、ビル・ワイマンの女癖の悪さを見て見ぬふりをする以外にも、チャーリー・ワッツが悪いクスリに溺れていた時期にはストーンズの結束が緩まないように、何かと世話に奔走していたと言われています。

つまりロン・ウッドは、そのキャリアからしても相当の苦労人ですし、歴代ストーンズのメンバーの中ではダントツの常識人だと思いますよ。何故かといえば、怖い面々揃いのストーンズの中で今日まで過ごしているという、その我慢強さはある種のロック魂!?!

ですから、このアルバムがストーンズに入ってから初めてのリーダー作というポイントを鑑みても、実に痛快なR&R志向が強いのも納得する他はありません。

 A-1 Worry No More
 A-2 Breakin' My Heart
 A-3 Delia
 A-4 Buried Alive
 A-5 Come To Realise
 A-6 Infekshun
 B-1 Seven Days
 B-2 We All Get Old
 B-3 F.U.C, Her
 B-4 Lost And Lonely
 B-5 Don't Worry

ロン・ウッド(vo,g,b,etc) 以下、制作セッションに参加したメンバーはチャーリー・ワッツ(ds)、ポップス・ポップウェル(b)、ジェリー・ウィリアムス(p)、イアン・マクレガン(key)、キース・リチャーズ(g,vo)、ミック・ジャガー(vo)、ジム・ケルトナー(per)、ミック・フリートウッド(ds)、デイヴ・メイソン(g)、ボビー・キーズ(sax) 等々、多士済々ですが、もちろんロン・ウッドの友人関係者が多いのはアルバム全体のリラックスした雰囲気に大きく影響しているところだと思います。

それはA面初っ端の如何にもルーズで楽し過ぎる「Worry No More」からして、もう最高! いきなりラフにマスターテープをスタートさせるワザとらしい仕掛けからローリングするピアノに導かれた酔いどれR&Rの楽しい饗宴が、ストーンズとは似て非なる、どちらかといえばフェイセズ調のウキウキ感がたまりません♪♪~♪

ちなみに曲を作ったのはピアノでゲスト参加しているジェリー・ウィリアムスというアメリカのシンガーソングライターなんですが、このトラックに限らず、アルバムのほとんどを占めるロン・ウッドの自作自演曲にしても、正直に言えばロッド・スチュアートが歌ってくれたらなぁ~、と思わずにはいられないほど、往年のフェィセズ風味が強く出ています。

しかしそれが確実にロン・ウッドの世界になっているのは、当時のクイーン等々を担当してメキメキと注目を集めていたロイ・トーマス・ベーカーのプロデュースゆえのことでしょうか。

実はこのアルバムの録音セッションは1978年の新春からパリで行われていたストーンズの新作レコーディングと同時期!?! なんと、その合間に同じスタジオでやっていたという真相があるようです。

そして告白すれば、私はロイ・トーマス・ベーカーの作る音や演出は好きではないのですが、何故かこのアルバムに限っては正解だと思わざるをえません。

既に述べたようにロン・ウッドの自作自演曲における歌と演奏は、明らかにストーンズに提供しそこなったデモテープを発展させた雰囲気も濃厚なんですが、それをパンクやニューウェイブが盛り上がっていた1979年にジャストミートさせたサウンド作りは流石!

つまり長年のファンにとっては、新しさの中に懐かしい味わいを見出す喜びがあり、おそらくは新しいリスナーにとっては温故知新という感じなのかもしれません。

ですからシングルカットされてヒットしたボブ・ディラン作の「Seven Days」が、今日でもウケてしまうのは面映ゆいところなんですが、ロン・ウッド本人にとっては、なんらの問題もなく歌い、ギターを弾きまくる絶好の舞台なんでしょうねぇ~♪ もちろんファンも、それを素直に受け入れてしまうんですが。

ということで、なかなか直線的なR&Rやストーンズ&フェィセズ風味の強い好盤だと思います。しかも曲間がほとんど無い編集にしてありますから、LP片面の流れも綿密に仕上げられており、それが尚更に気持良いんですねぇ~~♪

そしてロン・ウッドのボーカル、ギターやドブロが冴えまくっているのは言わずもがな、妙に居直ったような感じを受けてしまうのは、この時期を境にストーンズでのロン・ウッドの貢献度が落ちていくことを思えば、なかなか意味深……。

後に知ったところによれば、ロン・ウッドがストーンズの正式メンバーというか、印税契約になったのは、ビル・ワイマンが脱退して以降の1993年頃からだそうですし、ストーンズが休止状態の時は自己のバンドを率いて積極的にライプ活動をやっていたことを思えば、この頃のロン・ウッドには何かしらの決意が!?!

思わずそんな妄想にとらわれるほど、このアルバムはR&Rしていると思います。

ちなみにご存じのとおり、ジャケットを飾るイラストや絵画はロン・ウッド画伯の自信作! ご機嫌な気分が、ここにも表わされているようです。

現在のロン・ウッドは恒例のアル中療養と酒の上での暴力事件、そんな諸々で逼塞状態ではありますが、まだまだ枯れるのは早いですよ。

お気楽R&R、もう一丁!

コメント (2)
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