OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

エアロスミスのファンクなお説教

2010-03-04 17:04:12 | Rock

Walk This Way / Aerosmith (Columbia / CBSソニー)

私はラップが大嫌いですけど、極僅か許せるのが「スシ食いねェ / シブがき隊」と本日のシングル盤A面曲「Walk This Way」ぐらいでしょうか。まあ別格としてジェームス・ブラウンは大好きですけどね。

で、演じているエアロスミスはアメリカ東海岸出身のハードロックバンドですが、イメージとは裏腹にブルースロックっぽさはあまりなく、逆にファンキーな味わいが隠しようもないという、ある意味では妙な魅力がありました。

もちろん若さにまかせた直線的な突進力は、まさにハードロックのど真ん中で、それは紆余曲折あった後の現在まで継続されているわけですが、個人的にはエアロスミスといえばファンキーロックの異形グループとして愛着があります。

メンバーはスティーヴン・タイラー(vo)、ジョー・ペリー(g)、ブラッド・ウィットフォード(g)、トム・ハミルトン(b)、ジョーイ・クレイマー(ds) が1973年正式デビュー時の5人組で、ご存じのとおり、ストーンズやヤードバーズを強く意識した演奏の雰囲気は些か没個性でした。しかもスティーヴン・タイラーがミック・ジャガーに風貌が似ている所為もありましょうが、あえてそういうところを隠そうとしなかったのも逆効果だったかもしれません。

そして案の定、評論家の先生方によってデビューアルバムは未熟の烙印を押されたのですが、地道な巡業によるライプステージ優先主義が功を奏したのか、翌年に出した2枚目のアルバム「飛べ! エアロスミス / Get Your Wings」が評判を呼び、我国でも昭和50(1975)年になって前述の邦題で発売され、いよいよブレイクのきっかけを掴んだのです。

というか、これは特に日本で顕著だったのかもしれませんが、レコード会社はもちろん、当時の洋楽マスコミは率先してイチオシのウリに走っていたような印象があります。

思えば当時は洋楽の爛熟期で、グラムロックの生き残り進化系としてデヴィッド・ボウイやロキシー・ミュージックが我国でも人気を集め、またシンガーソングライターやサザンロック、そしてウエストコーストロックの各分野に名盤がどっさり誕生し、ジェフ・ペックはギター殺人者となって凱旋!?! ウイングスが大きく羽ばたき、ロッド・スチュアートは大西洋を一跨ぎ!?! さらにボブ・ディランの地下室の秘宝が公になったりした中では、若さだけが特徴的なハードロックのバンドなんて、それこそ掃いて捨てるほどあったのですから、エアロスミスに限って言えば、相当にプロモーションの効果があったと思われます、

なにしろリアルタイムの我国ではクイーン、キッスと並んでエアロスミスが人気三大バンドになったほど!?!

当然ながらそこには女の子のファンが目立つという事情から、野郎どもには面白くなかったのも、また事実でした。もちろんサイケおやじも、また、しかりです。

ところが、この「Walk This Way」には全く仰天させられましたねぇ~~♪

イントロからどっしり重いドラムスとフックの効いたギターリフのコンビネーションは、ほとんどジェームス・ブラウン風で、しかもサウンド作りがブリティッシュハードロックなんですから、たまりません♪♪~♪

そしてボーカルパートはメロディを極力排したリズミックなラップ調ながら、演奏パートのカッコ良さと共謀したファンキー味が全開! 合の手や間奏でのギターソロの入り方もスリルがありますし、リフレインのキメの覚え易さもヒット曲の条件を満たしていますが、なによりもスティーヴン・タイラーのリズム感の素晴らしさは特筆されるべきでしょうね。

それとこれは完全なる個人的な推察ではありますが、ドラマーのジョーイ・クレイマーは嬉々として叩いているのがミエミエなのも、憎めません。

ちなみに「Walk This Way」はエアロスミスが1975年に出した3枚目のアルバム「闇夜のヘヴィロック / Toys In The Attic」に収録され、我国でもリアルタイムで発売されたんですが、そこでは「お説教」なんていう邦題が付けられていたのは、いやはやなんとも……。

しかし初めてラジオから流れてきた時には、思わず食っていたカップ焼きそばを落としてしまったほど、そのファンキーなビートは激烈でした。

そして翌年になって来日記念盤としてシングルカットされた時、ついにサイケおやじは我慢しきれず、ゲットしたというわけです。

さらに様々な言い訳をしながら聴いていたエアロスミスのアルバムにシビレていたのも、告白すべきことでしょうね。そういう悔悛の情から言えば、なかなか自分の好みに合っていたバンドでしたが、当時は一流の売れっ子の宿命として悪いクスリや金銭関係の仲間割れがあり、1970年代末頃からは活動も低迷……。

それが確か1986年頃だったでしょうか、突如として某ヒップホップのグループが、この「Walk This Way」をサンプリングしたヒットを飛ばしたことから、エアロスミス本隊が息を吹き返したのは、個人的に複雑な心境でした。

ただしそれによって闇雲に媚びた姿勢でファンクなロックをやらなかったエアロスミスは流石の貫録というか、その点だけは嬉しく、今日では伝統芸能的な味わいも含めて存在感を誇示しています。

その意味で極言すれば、エアロスミスは決して「Walk This Way」だけがヒット曲ではないのですが、やはりどうしてもイメージとしては、この曲に尽きるような気がしています。もちろんライプバンドとしても超一流ですし、様式美に彩られたスローな名曲もありますが、それゆえに残されたライプ音源でも、「Walk This Way」が決定的に輝くのは必然の事実だと思います。

個人的には1978年に出た2枚組のライプアルバム「ブートレッグ」が大好きなんですが、そこには代表曲に混じってジェームス・ブラウンの「Mother Popcorn」、そしてヤードバーズの「I Ain't Got You」と「Train Kept A Rollin'」のカパーが演じられていますから、「Walk This Way」のライプバージョンも、尚更に鮮やかに楽しめるのでした。

コメント (4)
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