OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

真夏のフリー

2007-08-10 18:19:55 | Rock

今日もジャズモードに入りません。

それどころか、尚更に暑苦しい、こんなアルバムを鳴らして顰蹙でした――

Tons Of Sobs / Free (Island)

外タレの来日伝説には誇張や美化が付物ですが、正真正銘、物凄かったのが、1971年4月に行われたフリーの来日公演だと言われています。

これは確か、ブラック・サバスの代わりだったか、あるいはジョイントだったものがブラック・サバスの公演中止で、単独公演になったのか、ちょっと確かな記憶が無いのですが、個人的にはフリーのライブには全く興味が無かったので、その来日公演には行きませんでした。

ちなみに我国でのフリーの存在感は、もちろん代表曲「All Right Now」のヒットも出ていましたし、深夜放送では人気もありましたが、とても大物ロックバンドという印象では無かったと思います。

ところが、その後の音楽マスコミは、ほとんど大絶賛でしたし、実際にライブに接した先輩から聞く話は、凄かった……! それが結論です。

当時の我国では、外タレの公演そのものが珍しかった所為もありますが、フリーのように若手のバリバリという本格的ロックバンドのライブには、なかなか接する機会がなかったという事もあったでしょう。

しかし、その初来日公演の壮絶なライブは、間違いなく伝説になりました。そして行けなかった私は、今でも悔やんでいるのです……。

さて、このアルバムは、そのフリーが1969年に発売した最初の作品です。メンバーはポール・ロジャー(vo,g)、ポール・コゾフ(g)、アンディ・フレイザー(b)、サイモン・カーク(ds) というイギリスの4人組ですが、愕いたことに全員が十代だったのです。

その音楽スタイルは、所謂ブルースロックなんですが、しかしメロディよりは骨太なノリと黒っぽいノリを重視した演奏が見事すぎます。

ポール・ロジャースのボーカルはソウルフルでありながら、ロックに深く根ざしていますし、大袈裟なチョーキングとビブラートが特徴的なポール・ゴゾフのギターは、まさに「泣き」のギター! そして蠢くアンディ・フレイザーのベースと正確無比なサイモン・カークのドラムスが完全に一体となっているのです。

しかもアルバムとしての統一感も素晴らしいという、その演目は――

A-1 Over The Green Hills Part Ⅰ
A-2 Worry
A-3 Walk In My Shadow
A-4 Wild Indian Woman
A-5 Goin' Down Slow
B-1 I'm A Mover
B-2 The Hunter
B-3 Moonshine
B-4 Sweet Tooth
B-5 Over The Green Hills Part Ⅱ

まず、冒頭とラストに置かれた「Over The Green Hills」が生ギター主体のフォーク調でありながら、なかなか幻想的な味わいになっているのが、如何にも当時です。そして激烈なエレキギターに導かれて始る「Worry」で、もう完全に虜になるでしょう。

あぁ、ブルースロック! 重いビートに熱いリフ、泣きのギターにブリブリ動くベース、タイトなドラムスに真っ黒なボーカル! これには、何時聴いてもグッときます。

特にスローブルースの「Goin' Down Slow」は、もう暑苦しいばかりの熱演で、本当は夏場には厳禁のはずなんですが、許せます! ポール・コゾフのギターが大袈裟に泣きじゃくり、ポール・ロジャースの何かに苦しめられているかのようなボーカルは、説得力満点! ちなみに実際にライブを見た先輩の話では、ポール・コゾフのギター奏法はチョーキングとビブラートを同時にやっているそうで、腕が大きく動きまくっていたそうです。

う~ん、そうでしょうねぇ……。でなければ、ビーター・グリーンとマイケル・ブルムフィールドを渾然一体化したようなブルースギターは弾けないでしょう。

またバンド全員が生み出す重たいノリは驚異的です。特に「I'm A Mover」の重量感や「The Hunter」の突進力は、簡単そうでいて、決してコピー出来ない境地でしょう。グルーヴィな「Sweet Tooth」も実に良い雰囲気で、アンディ・フレーザーとサイモン・カークのリズムコンビは、明らかにスタックス系R&Bから影響を受けていると感じます。

ということで、このアルバムは素晴らしい傑作盤! 要所にダビングされたピアノの存在感もイヤミがありません。

実は、この作品、前述のライブに接した先輩が感動して買ったというブツを私が借り受けて、大衝撃を受けた因縁盤です。もちろん後追いで私も入手したんですが、こんな演奏を知っていたら、絶対にライブに行ったんですが……。と今でも悔やんでいます。

ちなみに彼等は1972年にエマーソン・レイク&パーマーの前座として再来日! そこで私はようやく待望のライブに接したわけですが、なんとその時のメンバーは、ポール・コゾフとアンディ・フレイザーが抜けて、ラビット(key) と山内テツ(b) が入っていたという臨時編成でしたから、その結果は、ここに書きたくないほどの……。

ですから、初来日公演が伝説化したのもムベなるかなです。

ご存知のように、フリーはこの後、ブルースロックからハードロックに進み、ウエストコーストロックやカントリーロックまでも吸収したポップさを身につけた素晴らしいアルバムを出していきます。

しかしそれに伴ってポール・コゾフのギターが徐々におとなしい雰囲気に変化していったのは、ちょっと??? 結局、個人的にはこのアルバムが一番、好きです。

かなり鬱陶しい作りではありますが、ブルースロックに少しでも興味があれば、聴いて納得の1枚だと思います。

コメント
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