よのなか研究所

多価値共存世界を考える

「仕組み」と「刹那」の饗宴、

2012-12-19 17:25:16 | 比較文化

                         Photo (  羽田空港第二ターミナル、東京)

 

「振り子現象」という説明があったが、それにしても近年の総選挙結果はその振幅の巾が大きい。ここ三回を振り返ると、政党間の得票率が少し動くだけでその獲得議席数が大きく変わることがわかる。前回は民主党が、今回は自民党が大きく増やした。少しの波に大きく揺れる大型客船のような国家と考えればよいのだろうか。

細かく見ると自民党は小選挙区、比例代表それぞれの得票率が43.01%27.62% であり、獲得した議席数は79%31.67%であった。すなわち、小選挙区では四割の票で七割の議席を得ている。それは前回の民主党のそれの裏返しとなっている。

自民党の比例代表の得票数は、惨敗した前回より減少していることも注目に値する。ここで読み取れることは、有権者の多くは小選挙区では自民党の候補者に投票したが、その三人に一人は比例代表では他の政党に投票しているということである。

加えて投票率が過去最低であったことにより、小さな差異がことさらに大きく反映しした。

つまり、一つの社会的作用が働くと見るやたちまち全体がそちらの方向に向いてしまうようなシステムが組み込まれていることを示している。制度設計に欠陥があることからくる現象と思われる。国民にとって望ましいことであろうか。

「小選挙区比例代表併用」という制度を扱いなれない国民、あるいは扱いに不向きな国民である、と言われても仕方がない。さすがに与野党とも現在の選挙制度に対する見直しの声が出てきた。今回勝利した政党も、このままではまた次回は立場が逆転する可能性が多いにある。

「小選挙区比例代表併用」制度は「二大政党」制度を定着させる目的で始められたが、そもそも今の時代に「二大政党」では選択肢が足りないのではないか。現にイギリスでは第三党が間に入って、先の選挙では巴(ともえ)戦の様相を呈していたし、国民の多くがいずれかの支持者であるとされてきたアメリカ合衆国でも二大政党以外への投票行動、あるいは候補者擁立の動きがあった。

思えば、わが国で長く続いてきた中選挙区時代の選挙は、政党間の、候補者間の多くの興亡のドラマがあった。一つの選挙区で二人、三人、四人と選ばれるのであるから全国レベルでは三位、四位以下の党にも議席獲得の可能性があり、また、選挙協力も選挙区ごとにいろいろな形態が見られた。

日本の現状であれば、望ましい選挙区の規模は一県一区の中選挙区ではなかろうか。人口が三百万人超の自治体では、これを二つか三つに分けることで十分ではなかろうか。

それにしても、今回も各マスコミの恣意的観測による報道は目立った。中でも「第三軸」とはやし立てて、「百議席を突破確実」などと報じていた報道機関はどのように結果分析をするのであろうか。自己批判しないのであろうか。こういう時の事後の態度を見たいものである。

「原発」の再稼働には反対するが、わが村の関連施設の停止はしばらく待ってもらいたい、それで食べているひとたちのことも考えなければいけない、というわかり易い言説が蔓延していた。これでは改革どころか、改善も進まないであろう。

結局は「カネ」なのだろうか、少なからぬ数の国民の刹那的生活態度、それを映すかのような投票行動、それを増幅して映し出す選挙制度、これらが今回の選挙結果のように見える。

(歴山)   

 



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