よのなか研究所

多価値共存世界を考える

イギリスの場合、

2012-10-25 09:35:45 | 時事

、            Photo  ( 平日のバッキンガム宮殿、ロンドン )

   このところ日本と近隣諸国との軋轢が目立ちますが、ユーラシアの西の端の島国イギリスも同様に大陸国家といろんな問題を抱えているようだ。

ヨーロッパ諸国が二次にわたる大戦の惨禍に懲りて作り上げたのが欧州連合(EU、仏語圏ではUE)だった。EUは6カ国から始まり、現在は27カ国にまで拡大している。そこでは、経済面で市場統合し、また国境通過の手続きが簡素化され、司法・内務、安全保障での協力体制がとられるようになった。大戦後の地域の平和安定と協調体制確立への取り組みに対して今年のノーベル平和賞がEUに贈られたが、これについてはいろいろ議論があるようだ。

イギリスは大陸ヨーロッパとは海を挟んで離れているところが日本の置かれた立場に似ているところがある。イギリスの場合、海底トンネルで繋がっているが、何でも大陸欧州と一体化するわけではない。特に経済面では一線を画している。

経済統合の仕上げとなる共通通貨「ユーロ」にはイギリスはスウェーデンやポーランドなどと並んで加盟していない。「ユーロ危機」の言葉の通り、現在の統一通貨体制は流動的である。これがEUの結束にも影響を与ることか懸念されている

そこに、「金融取引税(FTT)」の問題が浮上してきた。これにイギリスは反対し新たな対立点として沸き上がって来た。金融制度をいじられることは、イギリスにとって死活問題ともなりかねないからである。

近年、金融業界はいろいろな商品や仕組みや制度を生みだしてきた。例えば、アメリカでは「サブ・プライム・ローン」という、支払い能力以上のローンを低所得者向けに売りだし、そのローン債権を束ねて金融商品とし、これに高い格付けをして世界中に売りさばき、多くの資金運用団体に被害をもたらした。そのなかには日本の学校法人や年金運用法人や自治体も含まれている。アイスランドやギリシャの財政破綻の原因にもなったといわれる。

これらの取引で一部の金融会社は膨大な利益を上げていた。欧米はじめ各国で「強欲資本主義」と呼ばれ始め、特にヨーロッパでは金融産業に何らかの規制をかけるべき、との論調が沸き起こった。

「金融取引税(FTT)」は全ての金融取引に対し、広く薄く取引税を課すものである。EUの執行機関である欧州委員会は10月23日、全ての金融取引に課税するFTTを加盟国中11カ国で先行導入することを発表した。フランス、ドイツ、べルギー、オーストリアなどが賛同しており、近く欧州委員会が具体的な提案をすることになっているが、イギリスは強く反対している。それは予想されたことではあった。

今日イギリスの世界に誇る産業は「金融」しかない。製造業はあるにはあるが疲弊している。ロンドンの「シティ」は欧州最大の金融市場であり、ヨーロッパの金融機関の四分の三は英国内に拠点を置いているとされる。FTTが実施されれば、投資家や金融機関が欧州からニュヨークや香港、シンガポールへ逃げ出し、ヨーロッパの為にならない、とイギリス側は主張している。

イギリスはかつて世界の富を手中に収め、その遺産と運用でアメリカと並んで世界の指導者としての地位を保持してきた。もし金融産業が衰亡することになれば、その権威は危ういものとなる。それはアメリカにも伝染することは間違いない。米英主導の世界経済体制がその基盤が揺らぐことになる。

たしかに、EUやユーロ (Euro)がこのまま続くのか、拡大するか縮小するか見通しの立たないところがある。それにしても最近のイギリスの非協力な態度は際だっている。

日本はまだ東アジアの国々と地経済協力体制を構築するに至っていない。それ以前に領土問題を抱えているが、これはいずれ沈静化することになるだろう。

日本も財政赤字が続いているが、まだまだモノ作りの精神が息づいているところに明るさがある。特に中小企業の製造業の多くが国内に留まって部品を、製品を作っており、それが世界で売れている。むしろ日本の技術への需要は高まっている。そこがイギリスとは異なるところである。

(歴山)

 



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