政権交代を果たしたマレーシアの新政府誕生で、一帯一路の最重要プロジェクトの1つとされる、マレーシア東海岸鉄道計画(ECRL)が中止されることになりそうなのだそうです。
マハティール新首相は、一帯一路のインフラ整備に伴い中国政府から巨額の債務を抱え財政難にあえぐ他のアジア諸国の同じ徹を踏まないと誓っているのだそうで、これ以上、中国に国の安全保障を“身売り”できないと考えているのだと。
ミャンマー、ネパール、パキスタンなどでは中国主導のインフラ建設計画の延期や中止が相次いでいて、マレーシアも一帯一路に反旗を翻すと、中国のメンツそのものがなくなるだけでなく、一帯一路のプロジェクトそのものが絵に描いたモチになる可能性が出てくると、産経・末永記者が説いておられます。
ECRLは、地政学的に極めて重要拠点となるマレーシアを取り込む中国の「一帯一路」の生命線。
しかし、マハティール新首相は、「ECRLは、マレーシアにとって国益にならない。凍結するのが望ましい」と発言。
ECRLも、他の諸国の「一帯一路」と同様、建設会社は中国交通建設などで、「ネジの一つひとつ」の資材にとどまらず、労働者も100%近くを中国からマレーシアに投入され、雇用創出や経済活性化にはならない。マレーシアに利益はないどころか、中国に利益がもたらされる仕組み。
おまけに、中国の支援とはいうものの実は、総工費は中国輸出入銀行からの借入で年利3.25%。
更に、その借入金の返済の他に、事業運営費が、年間7億3000万リンギの赤字見込みで上乗せされる。
つまり、マレーシアの実態のことは考慮されておらず、中国経済の収益優先なのです。そのことは、アフリカでの中国の支援でも正体が露呈していますが、「一帯一路」でも、中国の狙いの魂胆が露呈しはじめているのですね。
スリランカは、「一帯一路」計画で、債務の返済につまづき、99年契約でハンバントタ港の権利を中国国有企業に譲渡したことは諸兄がご承知の通りです。
「マハティールは、これ以上、中国に国の安全保障を“身売り”できないと考えている」とされる所以です。
無償や低金利の支援ではなく高金利の支援で、しかも資材も工事の受注も、労働者の雇用も中国がまるのみの「一帯一路」の正体が露呈し始めて、反旗を翻す動きが出始めている今、マレーシアのマハティール新首相の言動に要注目ですね。
# 冒頭の画像は、マハティール新首相
この花の名前は、ノコンギク
↓よろしかったら、お願いします。
マハティール新首相は、一帯一路のインフラ整備に伴い中国政府から巨額の債務を抱え財政難にあえぐ他のアジア諸国の同じ徹を踏まないと誓っているのだそうで、これ以上、中国に国の安全保障を“身売り”できないと考えているのだと。
ミャンマー、ネパール、パキスタンなどでは中国主導のインフラ建設計画の延期や中止が相次いでいて、マレーシアも一帯一路に反旗を翻すと、中国のメンツそのものがなくなるだけでなく、一帯一路のプロジェクトそのものが絵に描いたモチになる可能性が出てくると、産経・末永記者が説いておられます。
一帯一路のマレーシア東海岸鉄道計画中止か 1兆5000億円総工費は中国の”融資トラップ” | JBpress(日本ビジネスプレス) 2018.5.21(月) 末永 恵
61年ぶりに政権交代を果たしたマレーシアの新政府誕生で、中国の習近平国家主席が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の実現が阻まれそうだ。
「中国主導の東海岸鉄道計画(ECRL)は非常にリスクが高く、しかも、理にかなっていない。マレーシアにとって全く有益ではない」
「同計画を進めれば、新たな1MDB(ナジブ前首相設立の巨額負債を抱えた政府系投資会社)を生む結果になるだろう」
国連などの国際機関で高い評価を受けるマレーシア人の経済学者、ジョモ・スンダラム教授が、一帯一路の最重要プロジェクトの1つとされるECRLについて、このような評価を下していることが、筆者の取材で明らかになった。
同氏は、新政府に経済政策などで指針を仰ぐため、マハティール新首相が発足させた国際的に著名なマレーシアのベテラン専門家を結集させた「上級専門家評議会」の1人。
同評議会は、マハティール新首相がかつて自身の政権の経済政策の要と信頼してきたマレーシア政界の重鎮、ダイム元財務相をトップに、政権発足から100日間限定で開かれる。
上記のジョモ教授をはじめ、アジア華人財界の大御所で、砂糖精製業などで財を成し“シュガー・キング”と異名を持つロバート・クオック(香港在住、マレーシア国籍)、IMF(国際通貨基金)の専務理事の候補にもなったことがあるゼティ・アジズ(元マレーシア中央銀行総裁)ら5人で構成される。
今後、ECRLに関しては、「中国政府と交渉した上、中止になる公算が高い」(マレーシア与党関係者)という見方が現在、有力だ。
ECRLは、(米海軍の環太平洋の拠点がある)シンガポールを封鎖された場合、中国からマレー半島東海岸側に抜ける戦略的優位性があり、「(マレー半島南部のシンガポール直下)マラッカ・ジレンマ」を克服する意味で、地政学的に極めて重要拠点となるマレーシアを取り込む中国の「一帯一路」の生命線である。
習国家主席肝いりの一帯一路の目玉プロジェクトであるECRLは、総工費550億リンギ(1リンギ=約28円)をかけ、南シナ海側のタイ国境近くからマラッカ海峡まで、マレー半島を東西横断する形で、クアラルンプール近郊と東西の重要港を結ぶ総距離約680キロの一大プロジェクト。工事はすでにスタートしており、2024年7月の完成を目指す。
マハティール新首相は「外資の見直しは独自の調査結果を経て決定する」としている上、筆者との単独インタビューでも「ECRLは、マレーシアにとって国益にならない。凍結するのが望ましい」と発言している。
(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53065マハティールの野党勝利、61年ぶりマレーシア政権交代、http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53092“マレーシア・ファースト”で脱中国依存鮮明に)
マレーシア新政府に経済政策などで指針を示すジョモ教授が調査、分析を行った結果、次のような問題点が指摘された。
同計画はマレーシアと中国両政府による公開入札でなく、トップダウンによる「随意契約」で契約のプロセスやその内容事体に深刻な問題があることを念頭に指摘し(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52796政権交代で一帯一路を封印したいマレーシア)、マレーシアは、以下のような国家的リスクを背負うことになると強調。
(1)中国交通建設などの計画当初の試算では、総工費は300億リンギであったはずが、ナジブ前首相と習国家主席の合意で、「(当初の約倍の)550億リンギに膨れ上がっている」
(2)総工費は中国輸出入銀行からの借入で年利3.25%だが、20年後には「730億リンギにまで拡大する」(総工費550億リンギの85%を20年返済で、中国輸出入銀行から借款)
(3)事業運営費(1日当たり)は1000万リンギだが、鉄道開通後の売り上げは、800万リンギで、「(1日当たり)200万リンギの赤字を抱えることになる」
(4)同赤字は、1年間に相当すると、7億3000万リンギにまで膨れ上がり、巨額赤字の負債を抱えることになる
(5)マレーシア全土の鉄道貨物量(年間)は、600万トンだが、上述の採算で赤字を防ぐには、その10倍の6000万トンの貨物量が不可欠。発展途上で人口も極端に少ない東海岸地帯には、理にかなわない、空想に過ぎない非現実的計画。
また、ジョモ教授は、これ以外での深刻な問題として、「現在の総工費550億リンギが、経済状況などの理由で、700億リンギに跳ね上がることも予測される」と試算する。
その上、「総工費にはメインテナンスなどの経費は含まれておらず、最終的には想像を絶する価格になる可能性がある」と同計画に警笛を鳴らす。
上級専門家評議会議長のダイム元財務相も「1000億リンギを超える可能性がある」と批判している。
また、他の諸国の一帯一路と同様、建設会社は中国交通建設などで、「ネジの一つひとつ」の資材にとどまらず、労働者も100%近くを中国からマレーシアに投入され、雇用創出や経済活性化にはならないことも指摘。
マレーシアに利益はないどころか、“在外中国共和国”に利益がもたらされる仕組みだ。
4月中旬、マレーシアのECRLなど一帯一路プロジェクトで低融資を行う中国輸出入銀行の前社長の李若谷氏は中国・広州で開催の経済会議で、「一帯一路に関わる多くの国はプロジェクトの費用を捻出できず、財政が負債過多に陥っている国」と指摘。
マレーシアの場合も、マハティール新首相が中国の一帯一路を見直す理由の1つは、一帯一路のプロジェクトが、ナジブ前首相の政府系ファンド「1MDB」の巨額債務を救済するために始まったことにある。
借金返済を目論むナジブ前首相と習国家主席の間で「利害を一致」させ、一帯一路を通じ、チャイナマネーが大量流入してきた背景だ。
さらにマハティール新首相は、一帯一路のインフラ整備に伴い中国政府から巨額の債務を抱え財政難にあえぐ他のアジア諸国の同じ徹を踏まないと誓っている。
なぜならば、中国マネーの流入は国内政策に悪影響を与え、中国経済への依存は、南シナ海を含め、国や地域の安全保障にも大きな影をもたらすことにもなるからだ。
スリランカの場合、一帯一路計画で、債務の返済に苦労し、99年契約でハンバントタ港の権利を中国国有企業に譲渡した。
今年4月には、かつてはスリランカの港湾当局の建物だったが、そこに中国国旗が掲げられたと地元メディアが報道している。
米国の外交政策評議会(アジア安全保障)のジェフ・スミス氏は次のように一帯一路の問題点を指摘する。
「中国にとってスリランカの最大の魅力は港だ。スリランカの港は中国と欧州、中東、アフリカ地域のエネルギー供給国を結ぶ重要な貿易ルートに位置しているからだ」
「中国はスリランカの債務の一部を株式に転換し、プロジェクトを所有することも可能になり、スリランカは中国の“債務トラップ”で身動きができなくなった」
しかし、そうした隣国でのトラブルを警戒し、一帯一路に“反旗”を翻す動きも出てきている。
ミャンマー、ネパール、パキスタンなどでは中国主導のインフラ建設計画の延期や中止が相次いでいる。その建設総額は約770億ドル(1ドル=約110円)にもなる。
軍事転用への懸念がある上、中国の支援による見返りに、不信を募らせた結果と見られている。
マレーシアではすでに、1MDB傘下の「エドラ・グローバル・エナジー」社所有の発電所の全株式約99億リンギを、中国の原子力大手、中国広核集団に売却。しかも、中国広核集団は、1MDB負債の一部の60億リンギも肩代わりした。
国の安全保障に関わる発電を外資に丸ごと売り渡す国家戦略にも驚いたが、さらにナジブ前首相は借金返済のため、「発電所は外資上限49%」というマレーシアの外資認可規制を無視し、違法に中国企業に100%で身売りしてしまった。
「マハティールは、これ以上、中国に国の安全保障を“身売り”できないと考えている」(政冶アナリスト)という。
一方、中国では前述の今年4月の経済会議(広州)で中国国務院開発研究センター(政府系シンクタンク)の王副局長が、「一帯一路下のプロジェクトは、年間で5000億ドル(年間)が不足する事態に陥っている」とその苦境を初めて公に明らかにした。
スリランカの同じ徹を踏まないよう、パキスタンなどと同様、マレーシアも一帯一路に反旗を翻すと、中国のメンツそのものがなくなるだけでなく、一帯一路のプロジェクトそのものが絵に描いたモチになる可能性は十分にある。
61年ぶりに政権交代を果たしたマレーシアの新政府誕生で、中国の習近平国家主席が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の実現が阻まれそうだ。
「中国主導の東海岸鉄道計画(ECRL)は非常にリスクが高く、しかも、理にかなっていない。マレーシアにとって全く有益ではない」
「同計画を進めれば、新たな1MDB(ナジブ前首相設立の巨額負債を抱えた政府系投資会社)を生む結果になるだろう」
国連などの国際機関で高い評価を受けるマレーシア人の経済学者、ジョモ・スンダラム教授が、一帯一路の最重要プロジェクトの1つとされるECRLについて、このような評価を下していることが、筆者の取材で明らかになった。
同氏は、新政府に経済政策などで指針を仰ぐため、マハティール新首相が発足させた国際的に著名なマレーシアのベテラン専門家を結集させた「上級専門家評議会」の1人。
同評議会は、マハティール新首相がかつて自身の政権の経済政策の要と信頼してきたマレーシア政界の重鎮、ダイム元財務相をトップに、政権発足から100日間限定で開かれる。
上記のジョモ教授をはじめ、アジア華人財界の大御所で、砂糖精製業などで財を成し“シュガー・キング”と異名を持つロバート・クオック(香港在住、マレーシア国籍)、IMF(国際通貨基金)の専務理事の候補にもなったことがあるゼティ・アジズ(元マレーシア中央銀行総裁)ら5人で構成される。
今後、ECRLに関しては、「中国政府と交渉した上、中止になる公算が高い」(マレーシア与党関係者)という見方が現在、有力だ。
ECRLは、(米海軍の環太平洋の拠点がある)シンガポールを封鎖された場合、中国からマレー半島東海岸側に抜ける戦略的優位性があり、「(マレー半島南部のシンガポール直下)マラッカ・ジレンマ」を克服する意味で、地政学的に極めて重要拠点となるマレーシアを取り込む中国の「一帯一路」の生命線である。
習国家主席肝いりの一帯一路の目玉プロジェクトであるECRLは、総工費550億リンギ(1リンギ=約28円)をかけ、南シナ海側のタイ国境近くからマラッカ海峡まで、マレー半島を東西横断する形で、クアラルンプール近郊と東西の重要港を結ぶ総距離約680キロの一大プロジェクト。工事はすでにスタートしており、2024年7月の完成を目指す。
マハティール新首相は「外資の見直しは独自の調査結果を経て決定する」としている上、筆者との単独インタビューでも「ECRLは、マレーシアにとって国益にならない。凍結するのが望ましい」と発言している。
(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53065マハティールの野党勝利、61年ぶりマレーシア政権交代、http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53092“マレーシア・ファースト”で脱中国依存鮮明に)
マレーシア新政府に経済政策などで指針を示すジョモ教授が調査、分析を行った結果、次のような問題点が指摘された。
同計画はマレーシアと中国両政府による公開入札でなく、トップダウンによる「随意契約」で契約のプロセスやその内容事体に深刻な問題があることを念頭に指摘し(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52796政権交代で一帯一路を封印したいマレーシア)、マレーシアは、以下のような国家的リスクを背負うことになると強調。
(1)中国交通建設などの計画当初の試算では、総工費は300億リンギであったはずが、ナジブ前首相と習国家主席の合意で、「(当初の約倍の)550億リンギに膨れ上がっている」
(2)総工費は中国輸出入銀行からの借入で年利3.25%だが、20年後には「730億リンギにまで拡大する」(総工費550億リンギの85%を20年返済で、中国輸出入銀行から借款)
(3)事業運営費(1日当たり)は1000万リンギだが、鉄道開通後の売り上げは、800万リンギで、「(1日当たり)200万リンギの赤字を抱えることになる」
(4)同赤字は、1年間に相当すると、7億3000万リンギにまで膨れ上がり、巨額赤字の負債を抱えることになる
(5)マレーシア全土の鉄道貨物量(年間)は、600万トンだが、上述の採算で赤字を防ぐには、その10倍の6000万トンの貨物量が不可欠。発展途上で人口も極端に少ない東海岸地帯には、理にかなわない、空想に過ぎない非現実的計画。
また、ジョモ教授は、これ以外での深刻な問題として、「現在の総工費550億リンギが、経済状況などの理由で、700億リンギに跳ね上がることも予測される」と試算する。
その上、「総工費にはメインテナンスなどの経費は含まれておらず、最終的には想像を絶する価格になる可能性がある」と同計画に警笛を鳴らす。
上級専門家評議会議長のダイム元財務相も「1000億リンギを超える可能性がある」と批判している。
また、他の諸国の一帯一路と同様、建設会社は中国交通建設などで、「ネジの一つひとつ」の資材にとどまらず、労働者も100%近くを中国からマレーシアに投入され、雇用創出や経済活性化にはならないことも指摘。
マレーシアに利益はないどころか、“在外中国共和国”に利益がもたらされる仕組みだ。
4月中旬、マレーシアのECRLなど一帯一路プロジェクトで低融資を行う中国輸出入銀行の前社長の李若谷氏は中国・広州で開催の経済会議で、「一帯一路に関わる多くの国はプロジェクトの費用を捻出できず、財政が負債過多に陥っている国」と指摘。
マレーシアの場合も、マハティール新首相が中国の一帯一路を見直す理由の1つは、一帯一路のプロジェクトが、ナジブ前首相の政府系ファンド「1MDB」の巨額債務を救済するために始まったことにある。
借金返済を目論むナジブ前首相と習国家主席の間で「利害を一致」させ、一帯一路を通じ、チャイナマネーが大量流入してきた背景だ。
さらにマハティール新首相は、一帯一路のインフラ整備に伴い中国政府から巨額の債務を抱え財政難にあえぐ他のアジア諸国の同じ徹を踏まないと誓っている。
なぜならば、中国マネーの流入は国内政策に悪影響を与え、中国経済への依存は、南シナ海を含め、国や地域の安全保障にも大きな影をもたらすことにもなるからだ。
スリランカの場合、一帯一路計画で、債務の返済に苦労し、99年契約でハンバントタ港の権利を中国国有企業に譲渡した。
今年4月には、かつてはスリランカの港湾当局の建物だったが、そこに中国国旗が掲げられたと地元メディアが報道している。
米国の外交政策評議会(アジア安全保障)のジェフ・スミス氏は次のように一帯一路の問題点を指摘する。
「中国にとってスリランカの最大の魅力は港だ。スリランカの港は中国と欧州、中東、アフリカ地域のエネルギー供給国を結ぶ重要な貿易ルートに位置しているからだ」
「中国はスリランカの債務の一部を株式に転換し、プロジェクトを所有することも可能になり、スリランカは中国の“債務トラップ”で身動きができなくなった」
しかし、そうした隣国でのトラブルを警戒し、一帯一路に“反旗”を翻す動きも出てきている。
ミャンマー、ネパール、パキスタンなどでは中国主導のインフラ建設計画の延期や中止が相次いでいる。その建設総額は約770億ドル(1ドル=約110円)にもなる。
軍事転用への懸念がある上、中国の支援による見返りに、不信を募らせた結果と見られている。
マレーシアではすでに、1MDB傘下の「エドラ・グローバル・エナジー」社所有の発電所の全株式約99億リンギを、中国の原子力大手、中国広核集団に売却。しかも、中国広核集団は、1MDB負債の一部の60億リンギも肩代わりした。
国の安全保障に関わる発電を外資に丸ごと売り渡す国家戦略にも驚いたが、さらにナジブ前首相は借金返済のため、「発電所は外資上限49%」というマレーシアの外資認可規制を無視し、違法に中国企業に100%で身売りしてしまった。
「マハティールは、これ以上、中国に国の安全保障を“身売り”できないと考えている」(政冶アナリスト)という。
一方、中国では前述の今年4月の経済会議(広州)で中国国務院開発研究センター(政府系シンクタンク)の王副局長が、「一帯一路下のプロジェクトは、年間で5000億ドル(年間)が不足する事態に陥っている」とその苦境を初めて公に明らかにした。
スリランカの同じ徹を踏まないよう、パキスタンなどと同様、マレーシアも一帯一路に反旗を翻すと、中国のメンツそのものがなくなるだけでなく、一帯一路のプロジェクトそのものが絵に描いたモチになる可能性は十分にある。
ECRLは、地政学的に極めて重要拠点となるマレーシアを取り込む中国の「一帯一路」の生命線。
しかし、マハティール新首相は、「ECRLは、マレーシアにとって国益にならない。凍結するのが望ましい」と発言。
ECRLも、他の諸国の「一帯一路」と同様、建設会社は中国交通建設などで、「ネジの一つひとつ」の資材にとどまらず、労働者も100%近くを中国からマレーシアに投入され、雇用創出や経済活性化にはならない。マレーシアに利益はないどころか、中国に利益がもたらされる仕組み。
おまけに、中国の支援とはいうものの実は、総工費は中国輸出入銀行からの借入で年利3.25%。
更に、その借入金の返済の他に、事業運営費が、年間7億3000万リンギの赤字見込みで上乗せされる。
つまり、マレーシアの実態のことは考慮されておらず、中国経済の収益優先なのです。そのことは、アフリカでの中国の支援でも正体が露呈していますが、「一帯一路」でも、中国の狙いの魂胆が露呈しはじめているのですね。
スリランカは、「一帯一路」計画で、債務の返済につまづき、99年契約でハンバントタ港の権利を中国国有企業に譲渡したことは諸兄がご承知の通りです。
「マハティールは、これ以上、中国に国の安全保障を“身売り”できないと考えている」とされる所以です。
無償や低金利の支援ではなく高金利の支援で、しかも資材も工事の受注も、労働者の雇用も中国がまるのみの「一帯一路」の正体が露呈し始めて、反旗を翻す動きが出始めている今、マレーシアのマハティール新首相の言動に要注目ですね。
# 冒頭の画像は、マハティール新首相
この花の名前は、ノコンギク
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