女房どのと結婚してこの町で暮らし始めた。
間もなくこの地に家を建て、子供たちの赤ん坊から中学生までの時期、妻や子供たちと共に営む家族のダイナミズムと醍醐味を満喫した。
やがて子供たちは育ち、高校入学と共に3人は次々と家を出て行った。
その後、彼女たちは大学・大学院へと進学、そして就職。
ほどなく、長女と次女は結婚をし、幸いにも子宝に恵まれた。
2人は、私たち夫婦の下を巣立ち、新たにそれぞれの家族を持った。三女もいつの日かそうなるだろう。
私たち夫婦は、力を合わせ、子供たちの自立への手伝いをしながら、女房どのは小学校の教員を務めあげ、私は私塾を営みながら地域社会で応分の役割を務めあげた。
この町を舞台にして、やり残したことは一つもないと言えるほど、私たち夫婦は十二分に一つの人生を演じきった。
そう感じた時、自然と住み替えることを考えるようになった。