夢見るババアの雑談室

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下村敦史著「ヴィクトリアン・ホテル」〈実業之日本社文庫〉

2024-09-03 13:28:30 | 本と雑誌

 

 

高層ビルが建ち並ぶ都内の一等地に存在する『ヴィクトリアン・ホテル』は、地上九階、客室数二百八十室、贅を尽くしたレストラン七軒を誇る、日本有数の超高級ホテルだった。

従業員は二百五十名を超え、きめ細やかなサービスで国内外の客に愛されてきた。

その『ヴィクトリアン・ホテル』は、明日をもってその歴史にいったん幕を下ろす。

 

物語の始まりに掲げられた文章

この物語の舞台となるヴィクトリアン・ホテルがどういうものであるのか

それから登場人物それぞれの視点で物語は綴られていくのですが・・・・・

そこに巧みな仕掛けがあります

同じ名前でも・・・別の人物であったり

違う名前ながら 実は同じ人物だった

本名と筆名

芸名と本名

 

もしくは姓が同じだけの別人のことが語られていたりして

 

「え?」「え?」と思って読みながら 読了してから再び最初に戻り 時代の流れを確認する

 

読み始めはホテルで何が起きるかーと思いながら 描写される登場人物の気持ちに寄り添い 読み進んでいきますが

 

途中で ここは時代が違うよね

じゃあ現在はどこ ここはいつの時代を語っているーなどと

各々の時代 登場人物は最後につながります

 

そして『ヴィクトリアン・ホテル』は長い歴史にいったん幕を下ろすのです

 

SNSの心ない むしろ有害な投稿などで心傷ついた女優

羽振りのよい男

駆け出し作家

仕事先の金をくすねてホテルに迷い込んだ男

 

弁当屋を営む夫婦

それぞれが絡み合う物語

助けられたり ひと夜の恋もあり

 

ネット上での言葉についてにも ー考えなしに自分の浅い知識がすべて 自分が誰よりも賢いんだ 正しいんだーとの思い込みでーそういう厄介な人間ていますでしょー

実はただのクレーム人間 文句言いで 自分の思い通りにならないことが許せないーみたいな人間とかね

それは たぁだの我儘なのに

ー不快だから、という私情でクレームも罵倒も中傷も正当化されるー〈163頁より〉

そういう事例への的確な登場人物たちの言葉もあります

「そういうことだよ フィクションより生身の言葉のほうが何倍も切れ味が鋭い刃物なんだよ」〈66頁より〉

 

 

読みながら「これ」と思うところに栞代わりに綿棒を挟んでいました

言葉のやりとりで傷つく人へ向けてあげたい 読んでほしい言葉がいっぱいあります

 

世の中に悪意ある言葉を放つ人々は多い

特にネット上はね 自分の姿を見られないから

余計にねえ・・・・・

心優しい人が 温かな心を持つ人が傷つけられ辛い思いをするような そういう社会であってはほしくないーと願います

 

 

 

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ごめんなさい



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