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多可子さんの恋 |
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「あの人があなたを愛してるって言うのよ」そう多可子さんが言う。 {あの人}は多可子さんの恋人のはずなのに何故? すると多可子さんは照れたように笑った。 「私と彼は長い付き合いで そう限界が見えてしまってね」 男の多可子さんへの寄せる感情、それは残念ながら{永遠の愛}へは繋がらないのだと、判ってしまったのだと。 ーだから笑うしかないじゃんー (夢綴り) |
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そんな事を多可子さんに打ち明ける{あの人}も、わざわざ私に教えにきて多可子さんの気持ちも、理解できなかった
半年後、多可子さんの死を、私は教えられた。
多可子さんの親友という彼女は「バッカじゃないって言ってやったのよ」
全く何処の世界に、自分の恋人を他の女に押し売りにいくお人よしがいるのよって・・・・・
するとね「だって私・・・あの人のこと好きだもの。シアワセになってほしいじゃない」
{私といて幸福じゃないというのならー一緒にいる意味がない}
多可子さんは、目の端を指でぬぐいながら、グラスを重ねたと言う。
「病気でね。切開したけれど、手遅れで」
その親友さんは続けた。
ー病んでやつれてむくんだこんな姿、あの人に見せてたまるものですかー
本当はずっとずっと一緒にいたかったろうに。お多可はおバカ・・・・
そう親友さんは泣いた。
あの人は、多可子さんの死を聞き絶句したという
既に他の女性と同居していたそうだけど。
そんな浮気者のあの人なのに、心底多可子先輩は、愛していたのだ。
自分がどんなに辛くても{あの人}には、シアワセでいてほしい。
それが多可子さんの愛だった。
私には自分を殺しても、相手の幸福を願うーそんな恋が愛し方ができるだろうか?
多可子さんの墓前にて・・・私はそんな事を考えていた。