夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「繭の見る夢」-総力戦ー4

2013-08-31 22:01:23 | 自作の小説

母娘ながら会わないでいた時間が長い

陽秀は新聞などで母の姿を見ることはあったが 実保子は尼となってからの陽秀を見たことはない

着ていくものに迷ったが 普通の洋服で出かけることにした

髪は短くはしているが剃髪はしていないから ごく普通の人間に見えるはず

一方 実保子はじりじりしながら娘を待っていた

産みたくなかった娘 あの男の子供

それでも器として体を使えるとならば 産んでおいてよかったのか

何一つ思い通りにならなかった娘

白塗りの厚化粧 濃く塗られた口紅は赤を通り越して茶色に見える

ヴェール付きの帽子を被っていた

本人は知ってか知らずか 彼女を嫌う人間はこっそりと「不気味婆さん」と呼んでいる

かつてほどの力は実保子には無かった

今まで利用してきた闇からさえ 冷たくあしらわれている

娘の体を乗っ取ることで 少し若くなることで 「力をふるえる立場」その座にしがみつこうとしている

怨と欲と虚栄の人生

どれほどの人間を苦しめ死においやってきたか それでもまだ満足しない

巴弥都真太郎とその血縁者達の命を奪い続けてきた

皆 死んでしまえと

これまでは闇を利用してきた

その味がわすれられずにいる

案内されて陽子が近づいてくる

「お母様ー参りましたわ」

「けっこう おばさんになったわね」

「もう50ですもの」

そうだ 親が決めた許婚者(いいなづけ)の巴弥都真太郎が 自分を捨ててマツエと駆け落ちしてから

半世紀

真太郎とマツエの一族を根絶やしにするのだ

まだ生き残っている者がいる

「たまには親孝行しておくれでないかい」

実保子としては下心があるだけに 下出に出たつもりの言葉をかける

「どうしろと」

「ああ いやだね このコは何を身構えているんだか ただ買い物に付き合ってほしいだけさ

母娘で一緒の買い物すらしたことが無かったなと思ってさ

車を待たせているのさ

何か見たてさせておくれよ」

母と一緒の車ーぞっとしない話だった

運ばれてきた紅茶に口をつける

その紅茶は おかしな味がした

母親が何か話している

でも聞こえない やたら周囲が揺れる

揺れるー

向かい合った席に座る陽子の体がテーブルにつっぷすと 実保子はにやりと笑った

おもむろに「連れが具合が悪くなったようだから車まで連れて行きたい」-と言い出す

この店も実保子の持ち物だった

ー家出した娘を連れて帰るーが実保子の言い分

従業員たちは店の外まで陽子を運んだ

と 一人の女性が立っていた「友人を返していただくわ」

にっこりして従業員達から 陽子の体を取り戻す

ほっそりした女性なのに どうやったのか

「お返し!人の娘を!」

実保子が怒りの声を上げた

「陽秀さんは帰りたくないと言ってました 私は頼まれていたのです もしもおかしなことがあった場合はーと

自分の母親に会うのに用心しないといけない娘って そんな心配をしなければならないなんて悲しいものですね」

「お おだまり この子は勘違いをしているのよ」

「先ほどからのなさりようを見ては 勘違いとは思えません」

女性は実保子をじっと見て それからため息をついた「やはり そうですか あなたは老いぼれた自分の体を捨てて 陽秀さんの体を奪おうとしたのですね

闇の力を借りて

あなた そんなことが本当にできると思い込んでいるのですか」

「おまえなどに言われる筋合いはないわ 」

「ふん」女性は笑った 「たかが半世紀以上も昔の失恋に拘泥し 悪事を重ねてきた人間に言われたくありません

私は あまり似ていませんが わかりませんか? 私が」

「?」

「私は当代の巴弥都家の巫女です」と加佐矢優希は言った

巴弥都ーという言葉を聞いただけで 実保子の表情が変わる

優希はきぬえから本当の巫女の座を儀式をして譲られていた

優希は言葉を続ける「そして巴弥都マツエの娘でもあります」

母親の実保子の罪ほろぼしをしたい陽子は 一番に巴弥都真太郎に連絡を取った

優希を紹介され 今では親友の一人となっている

二人は年齢も近く 共通する話題も多かった

これまでの話はこちらです↓

「繭の見る夢」-総力戦ー3


「この夜を壊せたなら」-異形狩りー6

2013-08-31 13:58:07 | 自作の小説

デイアンの車からデレクが呼ぶ

「一旦は退散だ」

デイアンに運転させて デレクは目につく狼頭達をぶっとばしていく どんな弾丸を使っているのか 狼頭達は体が中から爆発するようだった

「できるだけ派手に運転してくれ 子供たちと教師ならライアンと妹が反対側からバスに乗せて逃げている 

これは特注の弾丸 鯨も粉々になるーって触れ込みだった」

巨大ミミズの化け物が砂漠で人を襲うことが 昔あり その時に用意されたものだと言う

狼頭たちは反撃は考えていなかったのだろう

いかなる理由か呉坤達が戦闘不能に陥っていて 町を一周して戻ってきてもまだ凍り付いたままなので

デレクは 有難くがんじがらめに坤達を縛り上げたのだった

厳重にー

象も眠るだけの眠り薬を注射して

非常用に作られたという半地下の鉄格子ある部屋に 坤達を入れる

足首には鎖もつけて 荷物のように寝台へ置いた

それから再び町を巡回 生き残りの狼頭がいないか調べて回る

死んだ狼頭達はかなり使えそうな武器を持っていたので それは没収

町の被害を見て回る

狼頭達はライアンと入れ違いあたりの時間に襲ってきたらしい

保安官事務所からバスのライアンへデレクは連絡した

無事な人々と協力し 怪我人は町の集会所へ運び 助からなかった人はー葬儀屋へと運ばれていく

点呼をとるように無事だった人々の名前を控えるのはキャスリーンがしていた

デイアンはデレクの旧友で偶然居合わせたー町の住人には そう説明した

今回デイアンは非常識な戦い方はしていないのでー どうにか受け入れられることができた

姿が見えない医師の代わりに 負傷者の手当てをしている

デイアンはミリオンの傍にいた時に治療の基本くらいは教わったのだ

吸血鬼は怪我は自分で治すしかない生き物だし 基本的には

あの化物たちが どういう理由でこの町を襲ってきたのか

それを知らなければいけなかった

呉坤達はしゃべるだろうか 言葉を話せるのだろうか

まだ その声を聞いたことすらなかった

何故 呉だけ 狼頭ではないのだろうか

呉坤達は夢を見ていた

「お前のような人間を増やせば お前は孤独ではなくなるだろう?

その為に材料が必要だ 集めてきてくれ そして邪魔するものは排除せねばならない

わかるな」

坤達には家族がいなかった

少年より以前の記憶はない

目覚めると「おめでとう お前は唯一の成功だった」

それから訓練 検査 何かの注射

その繰り返しで生きてきた

時々 声をかけてくる男

命令出す男が唯一個人的に声かけてくれる相手

その男に言われるままに

それが何故 あの女を殺せなかった

体の中から何かが止めた

動けなくなった

あの女はなんだ

何者だ

俺の体の中に何がいる

体が動かなくなる

こんなことは初めてだ

その頃 坤達に命令を与えた男は 報告を聞いた

ー呉(ウー)は帰ってこなかったかー結局はあれも失敗作だったかー

狼頭のままでもいいんだ 強くなくては意味がない

弱いから負ける

 

もっと強い生き物を作らなくては スペインの無敵艦隊さえ ついには英国に負けた

清も英国に負けた

負けない国をつくるには 強い兵隊 兵士が必要だ

殺しても死なないような 命令には従順 

逆らわず事の是非も考えず ただ任務を必ず遂行する

その目的のためなら どれほどのモノを虐げても罪ではない

我らが民族のために世界はあるのだから 他の民族 国などどうでもよい

おとなしく我らが国へ従えばいい

いっそ我らが国のみになれば よほどすっきりする

この他を顧みない思い上がりこそが 世界中の国を自分の国より下に見ることが当然という厚かましさこそが この国の政治家の考え方

口先では世界平和のどうのと言うが事実は 全く「そんなぬるいこと」は考えていない

侵略国家なのだ

攻めて分捕ればこちらのもの

その国の人間を皆殺しにして 自分の国の人間を送り込む

そんなふうにして領土を伸ばしてきた

欲しい土地は分捕る

そうしておいて元々歴史上自分たちの国土であったと言い張る

正しく「歴史を認識すべきだ」と開き直る

そんな盗人猛々しい国なのだ

 

正義も何もない厚かましいだけのバカで非道な国だ

おまけに独創性が無いからよその国がつくったものを まんまマネしてパクリ「我が国独自の」と言い張り抜く

 

この男は その考え方は当然ーと思っているのだった

そういう不思議なーよその国から見れば ーお笑い草の非常識なー教育を受けて生きてきた

 

村ごとや町ごと破壊するのも任務の前には当然のことーだった

人間をさらい血を抜き 実験材料にする

「それが どうした」というわけだ

自分たち民族や国家の役に立つのだ 有難く思え

存在理由を与えてやったのだ

 

 

どっぷりと血に染まった男だった

新らしい生き物を創る 無敵な軍隊をつくる

なんとわくわくする任務だろう

 

 

いっそトカゲのように腕が千切れても生えてくる生き物を創れたなら

 

強靭な肉体

攻撃力

不老不死もいい それができたら 自分もなる

不老不死 永遠に生き続けてやる

 

昔 不老不死を願った皇帝すら願い叶わず死んだのに

これまでのお話はこちらです↓

「この夜を壊せたなら」-異形狩り-5


2013-08-31 09:06:18

2013-08-31 09:06:18 | 子供のこと身辺雑記



朝から湿度が 高くて やたら汗が出ます

ちょっと休んだら 豚カツを揚げる予定です

長男が応援するソフトバンク 首位の楽天に中々勝てません

カツ効果を祈ってー

玉葱と豚肉を炒め 焼肉のタレで味付け 生野菜の上に盛る

野菜サラダの上にハムエッグを乗せただけ 朝御飯は手抜きばかりです

野菜 たんぱく質 果物 が あればいいというー(笑)


競演というか演技合戦というか「あまちゃん」素晴らしかったです

2013-08-30 16:42:21 | テレビ番組

アイドルを目指した少女は 新進スターの声の吹き替えをし 歌番組では影武者としてこっそり声のみの出演をしていた

そして表舞台に立つことはないままに芸能界を去った

少女の名前はー天野春子と言う

春子の娘アキは海女になろうとしていたが 友人ユイの影響からアイドルを目指すようになる

スカウトされ東京へ

所属した事務所の社長は その昔ー春子へ声の影武者を依頼した人物 通称太巻だった

アキを可愛がる女優 鈴鹿ひろ美

彼女のアキへの力の入れ方は半端なく 遂にはオーデイションでアキは主役を勝ち取る

映画は完成し 鈴鹿ひろ美の影武者で春子が歌った「潮騒のメモリー」をアキが歌うことになる

アキが歌っているのに携帯でどこかに連絡しているらしい太巻

マジメにやってよーと詰め寄る春子に太巻は言う

アキに歌の手本を見せられるのは春子だけだと

アキの言葉にも後押しされ 春子は別室へ行き歌いはじめる

やってきた鈴鹿ひろ美は 春子が歌う姿を見て声を聴く

歌う春子とひろ美の目が合う

鈴鹿ひろ美に歌を差し換えていたことを謝る太巻

鈴鹿ひろ美もまた影武者の存在には気付いていた

春子に謝る鈴鹿と太巻

このために太巻は鈴鹿を呼び出したのだ

全てをすっきりさせるために

春子よりはるかに及ばないが アキの歌の録音が始まる

「感謝しなくちゃ 」と春子が言う

隣から春子を見る鈴鹿に 「アキのおかげで鈴鹿さんに会えました」

鈴鹿「いい娘さんね」

春子の表情からは とげとげしさが消えて ただ優しい ひどくすっきりした表情

春子の犠牲の上にー

太巻 鈴鹿 春子

それぞれを演じる古田新太さん 薬師丸ひろ子さん 小泉今日子さんの表情が素晴らしかったです

それから完成した映画を観終わった後の それぞれの表情も

アキには芸能界の母 鈴鹿

そして実の母の春子がいる

なんと幸せな贅沢なー幸せな娘なのでしょう

歌うアキを眺める鈴鹿と春子の表情

薬師丸ひろ子さん 小泉今日子さん どちらもいい女優さんだなあと思って BSで7時半からのと 地上波で8時からのと続けて観てしまいました

まだ夜11時の再放送もあります

見逃した方は是非ご覧になってください

今日の「あまちゃん」良かったです


黒川博行著「離れ折紙」文藝春秋

2013-08-30 16:03:11 | 本と雑誌

黒川博行著「離れ折紙」文藝春秋
黒川博行著「離れ折紙」文藝春秋
黒川博行著「離れ折紙」文藝春秋
黒川博行著「離れ折紙」文藝春秋
黒川博行著「離れ折紙」文藝春秋
唐獅子硝子 離れ折紙   雨後の筍 不二万丈 老松ぼっくり 紫金末

六作を収録 本物はこの世にあるのか?と思えてくる いずれも曲者揃い 登場人物は誰かが誰かを騙しにかかっている

騙しの手口も凝っていて  何を信じればいいのやら

作家になる前は美術教師の経験あり 身近に画家もおられる故か 画を描くことにも詳しく

日頃のことなど想像してしまいます

とても素敵な表紙の画は 奥様の作品です

ひらひら花簪 髪飾り

どうやって描かれたのだろうと感嘆します

黒川博行氏の本は 奥様の作品が使われることが多いのですが

次の本では どんな作品が使われるのだろうかと 邪道な愉しみ方もしています


「この夜を壊せたなら」-異形狩り-5

2013-08-30 00:13:59 | 自作の小説

「はっきり言っておくわ キャスリーン 約束する

きちんとした理由なしに 私がお兄様を傷つけることはないわ 」

それからデレクの前に立つと「ここにいて あなたは手負いだわ 妹さんと二人の子供たちを連れて町へ入ることは 余りに危険すぎる

気付いているのでしょ あの匂い

まず私が見てくるから」

「クリスー」

「ああ やっと その呼び方をしてくれるのね」

「女に守られて嬉しい男なんていないんだぞ」

「甥ごさんと姪ごさん 妹さんのことを考えて」

「君のことをなんて説明すればいい」

「スーパーガールかワンダーウーマンとでも 黒髪じゃないけど」

駆けだしたデイアンの姿はすぐに見えなくなった

同じく血の匂いに気付いていたライアンとキャスリーンは 今のやりとりの意味を知ろうとしていた

そこでデレクはさっき端折って説明した話を少し詳しく話すことにする

人間の言葉を話し二本足で歩き洋服着た狼の頭持つ生き物

無表情な大男 呉坤達(ウー クンダー)のこと

「それでクリステイーネさんは ただの女性ではないのね」

「ああ 彼女は変わっているんだ」

「わたしたちの一族よりも?」

「たぶんー」

今まで黙って話を聞いていたライアンが尋ねる「それで彼女は大丈夫なのですか」

町で何が起きているのかー

焦燥感はある

だが確かにブライとエラを危険な目にあわせるわけにはいかない

デイアンの不思議な能力を信じるしかーなかった

守るべき町の住人達が虐殺されているかもーいや間違いなく「奴ら」が襲ってきているのだ

被害を食い止めなくては!

灰色の狼の頭持つ軍団が町を襲っていた 押さえつけて相手の首から食べる その大きな口で

女性に対しては犯しながら 食べている

随分な地獄絵図だった

相手の四肢を引きちぎる 武器も持っている彼等だが 素手で殺すのが楽しいらしい

様子を報告にすぐ引き返すつもりのデイアンだったがー

子供たちが襲われ始めると

目の前で子供が食い殺されるのは それはー

「おにいさん」声かけて喉に食らいつく

そうしては相手を倒す戦いを始めた

子供達といた教師がいぶかると 「保安官に頼まれてきました 彼等に保安官は捕えられていたのです」

無事な子供たちを体育館にまとめて中でバリケードして出てこないように教師たちに言い渡す

来るなと言っても どうせデレクは来る 持ちこたえていよう できる限り

敵は何人いるかわからない 

一人逃げてしまえばいいものを

デレクが暮らす町だから

せめて子供達は あんな無残な死に方をさせまいと

狼頭達は色めき立った

狼頭ながら彼等は男 オスなのだった

「いけてるネエチャン もらった!」

飲んだ血を口に含んでの目つぶし 動きの速さが一つの武器

捕まってはー怪我をするわけにもいかない

狼頭達が 子供たちのいる場所へ入らないようにしながらの戦いは難しい

いくら吸血鬼でも疲れるのだ

そうしてデイアンの前に現れたのはーあの呉坤達(ウー クンダー)だった

ぼさぼさの前髪の間から見える鋭い目

まず蹴りが来る 繰り返し続く蹴りに飛んで避けるしかないデイアン

戦闘能力では およそかなわない

そのうちデイアンはドジった

着地した場所に鞄があり足を滑らせたのだ

そこに坤達の大きな手が振り上げられた

とどめのように

が 拳が降りてこない

ふと見ると 坤達は奇妙な表情をしていた

何をしているか自分でもわかっていないようだ

ただ拳がおろせず 何か自分の中で戦っているような

まるで凍り付いているようだった

面倒くさいから そのまま放っておくことにして デイアンは他の敵に向かっていく

と向き合っている敵が弾け飛んだ

「来い!クリス」

デレクの声だった

これまでのお話はこちらです↓

「この夜を壊せたなら」-異形狩りー4


おやつです

2013-08-29 14:06:30 | 子供のこと身辺雑記




時々焼くフライパンいっぱいのホットケーキ 卵2個 牛乳 ホットケーキの素300グラム バニラエッセンス少々 溶いて一気にフライパンへ流し込み 蓋をして中火でじっくり焼きます

姑にも持っていきました

朝は魚を焼いただけ


「この夜を壊せたなら」-異形狩りー4

2013-08-28 14:48:26 | 自作の小説

走り出して暫くするとデレクが驚いたように言う

「この外観で荒地も平気なのか」

「攻撃力も戦車と変わらないわよ 特別仕様だから 色々{いい知り合い}がいるのよ」

「-知り合いーねえ」

砂とサボテンと乾いた空気 その中でデレクは殆ど食べられた死体を見つけた

その無残な食べられ方が気になった

調べに戻ってーそれからの記憶がない

死体はもう残っていなかった

どうして自分は食べられなかったのか

「餌がふえた」あの言葉

ーでは 奴らは人間を食べるのか もしや同族でも?

獣と変わらない そういう種(しゅ)がいるのか

「いつから吸血鬼に どうして吸血鬼になった」

横にいる女性へ デレクの考えは戻っていく

少し間があった 答えないつもりかと思った頃 返事があった

「ここと同じような砂漠で 私は死にかけていたの 十代初めの少女だった どうしてか大きな怪我をして血まみれでーゴミのように落ちていた

お人よしの吸血鬼が通りかかり その吸血鬼は{医者だったことも}あった まあ研究者だったらしいのだけど

そして連れ合いも金髪の女性で 金髪には弱いとかー

名前をミリオンと言うのよ 本人も見事な金髪巻き毛でね 深い緑の瞳のー

で 出血が激しい私は 傷も深くて 手の施しようがなくて

死なせないために 自分の血をくれたのよ         やがてー

私の傷は塞がり 命をとりとめた

ミリオンは私が元気になるまで面倒を見てくれたわ

そして別荘番の仕事をくれた

私の成長は緩やかになり 完全に止まった

ミリオンはそれを怖れていたのだと言った

私の吸血鬼化 だから助けた後は 人間世界へ私を戻さなかったの

異常がなければ 人間のままならいいいけれど

誰かが {異常}に気付いたらー

ミリオンも型破りな吸血鬼だったから 太陽も十字架も平気 

時には神父にだって変装する

だから私も吸血鬼としては風変りなのかもしれないわ」

デイアンが一息ついたところへ 見覚えある車とデレクは行きあった

ライアンも気付き方向転換して横に並んだ

「デレクおじちゃん」「おじちゃん」「兄さん」

デレクは停車すると車から降りた

ブライとエラがデレクの広げた両手の中へ飛び込んでくる

「心配したのよ 兄さん 一体 何があったの」

「怪我をして彼女に助けられた」非常に簡潔な説明と共に デイアンをデレクは指さす

キャスリーンはちょっと息をのんだ

「初めまして 妹さんですか? 私はクリステイーネ デイアン  デレクに会いにブラックリバータウンへ行く途中 偶然に出会ったんです」

「兄がお世話になりました 兄とは大学-でのお友達?」

「ええ 彼が暮らす街に住んでいたこともありました」

「ああ ごめんなさい 私はキャスリーン  キャスリーン ローマンです

兄ったら こんな美人の知り合いがいるなんて一言も

驚きましたわ 

これは私の子供達で ブライアンとエレイン

そして こちらは副保安官のライアン モンゴメリ」

ライアンは無言で頭を下げる

デイアンは優雅に微笑んだ

「噂通り素敵な妹さんね やっと会えて嬉しいです」

女たち二人は互いの力量をはかるように 観察しあっている

男二人は この場を和らげる話題が見つけられない

「この夜を壊せたなら」-異形狩りー3  ↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20130828

ミリオン関連作品です↓

「紅葉狩り外伝―ミリオン独白―」 

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20061026

「眠る記憶の底から・1」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071019

「眠る記憶の底から・2」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071019

「眠る記憶の底から・3」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071019

「眠る記憶の底から・4」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071020

あと関連して この先出てくる予定の高崎亜貴欧さんの出てくる話↓

「紅葉狩り外伝―妖怪始末人―1―」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20061102

「紅葉狩り外伝―妖怪始末人―2―」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20061102

「紅葉狩り外伝―妖怪始末人―3―」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20061104

「紅葉狩り外伝―妖怪始末人―4―」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20061106

「紅葉狩り外伝―妖怪始末人―5―」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20061107

「山の宿・一」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20070927

「山の宿・二」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071002

「山の宿・三」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071006

「山の宿・四」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071008

「山の宿・五」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071012

「山の宿・六」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071013

「山の宿・七」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071013

「ぼやく闇」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071015


「この夜を壊せたなら」-異形狩りー3

2013-08-28 00:21:56 | 自作の小説

時に忘れられたような町 ブラックリバータウン

そこの保安官のデレク ローマンが姿を消して五日目になる

必ず毎日事務所に姿現すし 行先ははっきりさせておく男だった

デレクの片腕で副保安官の一人ライアン モンゴメリは 暇な時間に探していたが その調査の輪をもっと広げることにした

「私たちも一緒に行くわ」

車に乗ろうとすると声をかけられた

キャスリーン ローマン  デレクの妹だ

大学へ行ったデレクと違い 18でロバート ハドソンと結婚して 二人の子供を産んだ

そのロバートがかなり間抜けな死に方をしたためか 夫の死後 キャスリーンは旧姓に戻った

一階が宿屋の食堂を営んでいる

「私の兄よ あなた一人じゃ手が回らないこともあるかもしれないーでしょう?」

キャスリーンはライアンより2学年上だった

いわば憧れの上級生

ライアンはぶが悪い

いささか憮然とした気持ちと嬉しい気持ちが半ば

仕事でなくてデートならばーたとえ子供が二人一緒でも

未亡人ということで より自分を律して生きているキャスリーン

浮ついた目で見てはいけないのだった

「ボスはー何か気がかりなことがある 確かめてくる すぐ戻るーそのまま帰ってきていない」

「デレクは肝心なことは言わない妙なクセがあるから」

キャスリーンは子供たち二人と後部座席におさまった

ブライと呼ばれるブライアンは9歳 エラと呼ばれるエレインは7歳だ

「こんにちは副保安官」「こんにちは」礼儀正しく挨拶をする

「こんにちは ブライ エラ」

「ぼくたちデレクおじさんを助けに行くんだ」

「おじさんは喜ぶと思うよ」

「どっか間抜けだから 落とし穴にでもかかったのかも」と厳しいことをキャスリーンは言う

その実ひどく心配しているのだった

「何か見つけたら教えてほしい」

ライアンは車をスタートさせた

同じ頃 本来の姿に戻ったクリステイーネ デイアンは デレクを車まで案内した

「車を持っていたのか」

「非常用よ 無免許だし」

睨むデレクにデイアンは続ける「私が吸血鬼ってことが飲み込めてないのね 

偽名を使うのは性に合わないの 吸血鬼ってね 案外生活しにくいものなのだから」

「そういえば吸血鬼って太陽の光がダメだろう」

「あれは小説ー私はクリスチャンでもないし 日焼けが嫌なだけで太陽は嫌いじゃないわ」

「日焼け」

「お肌に悪いもの」

どこまでマジメなのかもわからない 

デレクの運転でブラックリバータウンへ向かった

「そもそも どうして捕まるなんてドジ踏んだの」

デレクはむすっとした「覚えてない」

「まあ 昔っから忘れるのは得意だったものね あなた」

「何の話だ」

「別にーいつか思い出せるといいわね」

クリステイーネ デイアンは デレクが血を抜かれたことが気になっていた

消滅した村

ブラックリバータウン 共通点はおそらくー

ひっそりと暮らすしかない一族の その者達の血が何かに利用されている 研究されているとしたら

おそらく目的はろくなものではない

手に負えないことに 手をだしているのかもしれなかった

「この夜を壊せたなら」-異形狩りー2  ↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20130827


「この夜を壊せたなら」ー異形狩りー2

2013-08-27 09:50:23 | 自作の小説

「この夜を壊せたなら」ー異形狩りー2
「この夜を壊せたなら」ー異形狩りー2
その登場は まるで建物を破壊し 唐突に出現したようだった

デレクも大柄な男だが 向かいあえば 呉坤達(ウークンダー)は まだ大きい

逃げる暇はなかった

ずしずしと坤達が近づいてくる

「ああ!もう!」女はデレクの両頬を押さえると強引に口づけした

「いい?今のあなたじゃ勝てない 適当に必死に戦って! 逃げるのよ!」

随分な言い草だった

坤達は無言のまま襲い掛かってきた

その一撃めでデレクはよろめき 女の言葉が嘘で無かったことを知る

ーこれは 化け物だーデレクは自分を棚に上げ思うのだった

間抜けな手下達とは違うーハイブリット種ーどういうことなのか

大きい 強い そしてー速い!

デレクの傷ばかりが増える

坤達の表情は全く変わらない

多少の傷は見る間にふさがり治っていく

ー何なんだ!こいつは!-

そして女は -この油断ならぬ女は坤達の一瞬の隙を待っていた

デレクを倒すことに集中し坤達が自分の存在を忘れる瞬間を

なんと!女は蚊になったのだった

首の下の掌半分ばかり下がった背骨あたり もっとも手が届きにくい部分の血を吸う

坤達が膝をつくまで吸い続けた

そうして女は今度は坤達に姿を変える

デレクを背負い闇に消えていく

この女は何者なのか

夜明けが来る前に 女はデレクを地下道に連れ込んだ

坤達の姿のまま デレクの傷の手当てをしていく

時々 滴る血を舐めた

「デイアン」

「なあにデレク 愛しいあなた」

「その姿でそのセリフはやめろ あと俺に血を飲ませようとするのはやめろ」

「この姿は仕方ないのよ 自分の姿ではあなたを運べないし 血の影響もあるし

それに点滴みたいなものだわ あなたはどうしようもなく弱っていた よく効いたでしょ

私の血は」

ちょっとデレクは黙り デイアンを睨む そう女の名前はクリステイーネ デイアンという

「あのキスだって」

デイアンが坤達の前でしたキスには意味があった デイアンは咄嗟に自分の舌を噛み 流れる血をデレクに飲ませた

「大の男が思春期の女の子みたいにキス一つで うだうだぐじぐじ言わないの

妙な血飲んだから 出しときたかっただけよ」

デレクは頭痛がしてきた

「呉 坤達(ウー クンダー)とは何者なんだ」

「美しい私をしつこく追ってくるストーカー 美人って罪ね」と デイアンは まだ坤達の姿のまま答える

「また勘違いされるようなことしたんだろうさ」

「あ しつこい 根に持ってる」

「ふられた理由くらいは知りたい」

「ねぇ あなたは一族を守る立場で いつかその血を受け継ぐ子供が欲しいって言ったわ

よく考えてみて 私は吸血鬼なのよ

小説か映画かドラマ以外で 吸血鬼の出産って聞いたことある?」

「-ないー」

「ねぇ だから身を引いてあげたの 

私に子供は産めないわ あなただって吸血鬼の子供なんてほしくないはずよ」

「試したことはあるのか」

「却下 淑女には尋ねてはいけない質問もあるの」

認めたくはないが 初めて生まれた町を離れた大学時代 デレクにとって出会った女は初恋だった

夢中になった相手は 自分は吸血鬼なのだと正体を明かし 別れの挨拶にと 彼の血を一口飲んで姿を消した

再会するまで クリステイーネ デイアンは この世に存在しない幻ではなかったかと思うようになっていたくらいだ

女は全く年をとっていなかった

「幾つなんだ」

「女に年を訊くものじゃないわ」

それからちょっと優しく微笑んだ 相変わらず坤達の姿のままだが

「少し眠りなさいな 起きたら もう少し詰めた話をしましょう」

「この夜を壊せたなら」-異形狩りー1 ↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20130826


一応 作るものは決めている

2013-08-27 09:38:56 | 子供のこと身辺雑記

一応 作るものは決めている
一応 作るものは決めている
一応 作るものは決めている
朝は蒟蒻の炒め煮 板蒟蒻の両面に縦・横・左右斜めに切り込みを入れて 食べやすい大きさに切り 茹でて灰汁抜きをします

フライパンで空炒りし 胡麻油を入れて焼くように炒めます 酒 味醂 砂糖 醤油 おろし生姜を入れて味が染むまで煮て すり胡麻を加えてから ちょっとおいて火を止めます

昼はスパゲッティの予定

夜は肉を焼いて誤魔化そうかと(^-^;