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夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

宮部みゆき著「よって件のごとし」 〈角川文庫〉

2025-03-30 10:45:39 | 本と雑誌

 

 

不思議な話 恐ろしい話 いわゆる奇談的な物語

誰も信じてはくれないかもしれない けれど この胸に抱えているモノを想いを誰かに話すことで

何か心の荷物を下ろすことができる キリやケリをつけることができる人間もいるのだろうか

三島屋の黒白の間はそふいふ場所

これまでは三島屋の姪であるおちかがこの聞き手であった

けれど彼女は嫁ぎ

この場所での聞き手は 三島屋の次男の富次郎がつとめることに

絵心ある彼は この聞いても誰にも話さない 

これらの物語の印象を絵にすることで 心の区切りをつけている

第一話 賽子と虻

今回の黒白の間に現れた人物は 笑い方を忘れてしまっている餅太郎

年齢も若いのか それとも老人なのか 見た目では見当がつかない

餅太郎が語ったことは・・・・・

貧しい暮しながらも幸せだった一家

餅太郎の姉に良縁が持ち込まれた

しかし相手の家と釣り合うようにと 姉はいったん養女に出て そこから嫁ぐことになる

花嫁としてのあれこれも養家で教わりつつ

それが・・・姉が呪われてしまった

虻の呪い

誰かが妬んで呪いをかけた

飲み物 食べ物 目にするものに虻がいる

姉は弱り 返されてきた

ただ弱っていく姉

餅太郎は 姉にかかる呪いを引き受けようと 姉が「虻がいる」というその水を飲んでしまった

体中に虻が溢れる

そして彼は大きな虻に捕らえられ・・・・・宙を飛んで異世界に連れていかれた

餅太郎の住まう場所の人々が崇める賽子の神様の神域

他人を呪う為に虻の神様の力を利用した者は虻になってしまうーという

餅太郎を攫った虻は 餅太郎の姉を呪った女の成れの果て

かつて餅太郎が自分で作り 賽子神様の神殿に備えた賽子のキリ次郎が この神域での暮らし方を教えてくれる

また餅太郎は 心だけ来てしまっている弥生様とも出会う

様々な神様たちの姿 言動

ところがこの神域での暮らしも唐突に終わりを迎える

人間たちの世界で起きたとんでもないことは この神域にも大きな影響を与えた

元の世界に戻れたけれど 暮らした場所は一変しており

彼は 違う場所へ逃れるしかなかった

話を聞き終えた富次郎は ちょっとした気づきを話す

商家の息子だからこそ言えた言葉

それは少しでも餅太郎の今後の希望になれただろうか

 

 

第二話 土鍋女房

船を操り 代々人々を渡す仕事をしている家がある

その家の男は短命だと言う

その家に生まれた娘も兄の仕事を手伝っていたが やはり兄も此の世から居なくなってしまった

妹が兄について語る話はー

次男が先に結婚し子供もできて

兄は嫁はとらない それでいいんだ

などと来る縁談も断っていた

不意に現れた土鍋

客の誰かが忘れていったのか

その土鍋はいつか無くなり・・・・

誰もいないはずなのに 「誰かと」話しているような兄の姿を妹は目にする

また現れた土鍋

蓋を開けると そこには・・・尋常でないモノがいた

それは自分は兄の女房なのだと

 

それは とうとう兄を自分の世界へ連れていってしまった

 

 

第三話 よって件のごとし

水の中で見つけてしまった死体

だがその死体は動き出し 人に噛みついた

首を落として・・・・・

その謎死体もどきの化け物の正体がわからぬ人々の前に 化け物が沈んでいた場所から出てきた娘は 自分たちが暮らす場所に現れる死体もどきについて語った

この不穏な死体もどきの化け物からそこに住む人々を救おうと向かった義侠心に富む勇気ある人々

死体もどき化け物に噛まれた人間も やはり人を襲う化け物になってしまう

救出に向かった人々は 覚悟していたとはいえ 恐ろしい光景を目にすることとなる

何故 化け物は地中から出現するのか

寒い季節

わらわらいる化け物たちとの死闘

 

 

嫁ぎ身ごもったおちかの近況

それから働いていた店から実家へ戻ってきた富次郎の兄の伊一郎についても描かれる

今後の三島屋さんからも 目が離せないようです

 

解説は若松英輔さん

 

 

 

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中山裕次郎著「迷うな女性外科医」 〈幻冬舎文庫〉

2025-03-26 16:42:04 | 本と雑誌

 

 

「結婚して一緒に渡米してくれないか?」

付き合っていた男はそう言った

 

両親だって孫を抱くのを楽しみにしているかもしれない

けれどー

 

外科医の父を見て育った佐藤玲は・・・

何よりも外科医になること 外科医であることが最優先

医者であることを辞めるって こう「死ね」って言われるのと同じこと

一度きりの人生だもの

生き方について迷いもし 悩みもする

この生き方でいいのか 自分は間違っていないか

選んだ道は正しいのか

 

打ち明けた悩みにも指針を示してくれた存在

医師としても指導してくれた人が・・・患者となり その主治医となった玲

患者となった人は・・・・既に治せない症状

 

病気で倒れ救急車で病院へ運ばれ 手術を受けた父

手術は成功し 退院した父

玲の父母は 玲が産まれるまでの話をする

母親が妊娠中毒症で 母親か子供か どちらの命かー

何としても玲を産むことを選び頑張った母

産まれてきてくれただけで あなたは私を幸せにしてくれたー

そう話す母

 

同じ職業の先輩の死を主治医として看取り

 

それでも医師としての人生は続いていく

これからもー

 

 

 

割と薄い本なので 待ち時間などにさらさら読める本です

 

 

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堂場瞬一著「全悪」〈ハルキ文庫〉

2025-03-11 12:23:26 | 本と雑誌

 

 

警視庁追跡捜査係シリーズ13作目

未解決もしくは迷宮入りとなっている事件を捜査する

資料を徹底的に読み込む西川

考えるより動くが先!のような沖田

西川の妻は実家のある静岡でカフエを開店できればーと準備中

沖田の恋人の響子も西川の妻と共同経営できればーなどと 勉強中

 

西川と沖田はそれぞれタイプの違う刑事ゆえジャブのような言い合いもするが

そこは適材適所

事件解決に向けて へこたれず真相を追う

 

互いが調べる別々の事件に重なる名前や会社が現れて・・・・・

裁判で無罪とはなったものの冤罪で逮捕され人生が狂った人間がいる

金の匂いには敏い男が殺されて・・・・その男は闇金融 もぐりの金貸しもしていたことが分かる

その男とつるんでいた人間の父親は資産家だが

襲われて入院中

この事件の容疑者とみられた息子は重病で入院中

借金が返せず 弱みを握られ 実行犯となった人間

昔 殺された男

実行犯

その犯行の黒幕・・・・・

事件が解決してみれば 皆悪人だった

 

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C・J・ボックス著「発火点」〈創元推理文庫〉

2025-03-05 21:44:34 | 本と雑誌

 

これまでは講談社から出されていた猟区管理官ジョー・ピケットシリーズが出版社を創元推理文庫から出ることに

家族を愛し仕事に対し誠実なゆえに巻き込まれていく事件

妻と娘と

特異な立場からの実に頼りになる友 ネイト・ロマノウスキ

今回は登場は無しかなと思っていたら 物語後半に出現

謎多きネイト

けれどネイトがジョー一家に寄せる心は信頼できます

 

ジョーの娘の友人一家が巻き込まれた災難

殺人犯として追われる人間を この理不尽な成り行きからジョーは守り 事の裏側を暴くことはできるのか

山火事からの脱出行

そしてジョーの娘友人一家が苦しめられた・・・・・その相手側の動機も身勝手極まりなく・・・・・

 

訳者の野口百合子さんのあとがきによれば

これからも創元推理文庫さんからシリーズは刊行されそうで ひと安心です

 

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堂場瞬一著「小さき王たち 第三部 激流」 〈ハヤカワ文庫〉

2025-02-27 09:15:05 | 本と雑誌

 

 

高樹治郎と田岡総司の諍いは 遂に孫世代となる

治郎をジジイと呼ぶ孫息子の健介

学生時代はアメリカンフットボールの選手で堂々たる体格の持ち主

健介は記者となり 祖父や父と同じく新潟に配属された

彼は田岡稔の不倫現場をおさえる

総司の後を継ぎ代議士となった稔は選挙の苦戦が噂されていた

側近が次々と辞めていき パワハラの噂もある

稔の娘の愛海は地元のTV局の記者 県警担当で健介とも顔見知りだ

それぞれに家族から両家の因縁を聞かされている

健介と愛海 ふとしたことから交流が始まった二人は恋に落ちてしまった

 

家に家族に忠実であろうとすれば 喪う恋

捨て去るしかない想い

しかし・・・・・

 

思い余って健介は信頼できる人間に相談

健介と愛海の選んだ答えは・・・

 

老いたる総司と治郎は 新潟で再会

理想 正義 野望

拘泥しすぎて巻き込んでしまった人々

もしやその未来を変えてしまったこともあっただろう

 

 

解説はミステリ評論家の荒岸来穂さん

昭和から令和

世の中で大きく変わったのはパソコン インターネットの存在だと思います

X〈旧ツイッター〉などによって個人が自身の意見や感想 言葉を発信できること

それによる弊害もありますが

ただ自由の名のもとに 美しく守られてきたものを破壊するだけ・・・・・

伝統を踏みにじるやりかたは 正しくない

どれほど時代が変わっても 生きる人間の本質は変わらないのだから

なんてね 思ったりします

 

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堂場瞬一著「小さき王たち 第二部 泥流」 〈ハヤカワ文庫〉

2025-02-27 09:03:45 | 本と雑誌

 

 

高樹治郎の息子の和希も同じ東日の記者となり かつての父親と同じように新潟に配属された

田岡総司の息子の稔は 総司の秘書をしており 東京と新潟を行き来する生活だ

 

和希にもたらされたネタ

治郎と東日に深い恨み抱く総司は執念深く計画を始動

全てを支配下に置くために・・・・・

 

 

巻末には「小さき王たち 刊行記念トークショー採録」があり

著者と書評家である大矢博子さんの対談を読むことができます

 

 

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堂場瞬一著「小さき王たち 第一部 濁流」 〈ハヤカワ文庫〉

2025-02-27 08:47:56 | 本と雑誌

 

幼馴染の二人の青年はそれぞれに夢と野望があった

高樹治郎 記者として

田岡総司 政治家の息子として

しかし二人の青年の生き方はそれぞれの立場で行違う

将来の展望として汚れ仕事も厭わなかった総司

友人として・・・幼馴染の変貌が不正が許せなかった治郎

治郎が書いた記事が許せなかった総司は・・・メディアもコントロールできる政治家を目指す

こうして高樹家対田岡家 家対家 記者と政治家の半世紀に渡る争い 遺恨は始まる

第二部では執念深い総司側による陰湿な企み 意趣返しが

孫子の世代にまでも受け継がれていくことになる

始まりは・・・・・立場によるそれぞれの「正義」が何処にあったか

 

解説は佐藤憲一さん

著者の作家となる前の時代にも触れられており とても興味深い内容となっております

 

 

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柚月裕子著「教誨」〈小学館文庫〉

2025-02-13 16:49:49 | 本と雑誌

 

 

 

自分の娘と近所の幼女を殺し死刑を執行された響子

その遠縁で響子の遺骨と遺品を受け取る立場にされていた母親の代わりに 受け取りに出向いた吉沢香純

香純は遠い日 親戚の法事で一度だけ響子に会っていた

まだ子供だった香純は 響子の犯した殺人を知った時 その面影とが結びつかなかった

響子の遺した言葉「約束は守ったよ 褒めて」

これが誰に向けられた言葉であったのか

それはどういう約束であったのか

それが香純の心にひっかかる

響子の故郷の人々は その遺骨を受け取ることすら拒み 菩提寺の墓にも入れないと言う

響子の犯した事件を取材する記者の協力もあり 少しずつわかってくる響子の生い立ち その暮し

苛められて育った

それでも苛められている子には まもってあげるーと

父や親せきたちに頭があがらなかった母

いつか母と同じことをしようとしていた響子

響子が守ろうとした約束も正しいものではなかった

それでも・・・・・

解説はノンフィクション作家の堀川恵子さん

 

帯には 真実と事実が反転する慟哭のラスト!

女性死刑囚の心の裡に迫る長編犯罪小説!と あります

どうすれば事件は防げたのか すべての者の鎮魂を願うーと著者である柚月裕子さんの言葉も

 

ただ 私は物語はそれとしても

いかなる生い立ち 動機 理由づけをしても

人の命を奪うことが正当化されてはならない

将来あるふたりの子供の命を奪った人間へ 必要以上の理解や思い入れはどうだろうー

幼い子供が被害者・犠牲者となるニュースを耳にすると 

親が加害者であれば 殺すくらいなら産むな!と思うのです

 

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あさのあつこ著「おもみいたします」〈徳間文庫〉

2025-02-11 11:57:57 | 本と雑誌

 

 

 

その腕の良さもあり予約は一年先までも埋まっているという揉み療治をなりわいとするお梅

まだ少女のような姿

彼女は事情あって生家から姿を消した

自分の存在が父親を苦しめる

幼子の決断・・・・・

異界のモノに鍛えられた力

その類稀なる能力の為に お梅の視界は奪われざるを得なかったのか

視〈み〉えないぶんを補うように他の五感は研ぎすさまれて 

江戸の町で支えてくれる人もあり 盲目ながら自活できている

お梅の仕事を取り次いでくれるお筆

その仕事の時間的な割り振りや連絡もしてくれるお筆の孫娘のお昌

 

お梅が頼りにしている 見た目は大きな白い犬の十丸

見た目は天竺鼠の先生

 

自分を殺し 周囲がうまくいくように運ぶように堪えて生きている人もいる

心を抑え続けていると 体も壊れる

心と肉体はつながっているひとつのものだから

 

体をもむだけでは本当の治療にはならない

心も解〈ほど〉いてあげないと

 

物語の始まりに お吟という女が絞め殺されている

 

これが揉みを必要とする商家の妻のお清にどうつながっていくのか

お清の舅と姑も殺されて 犯人は捕まっていない

店を守るということ

商いを続けていくということ

そして人の道

本当に大切なものを見失わずに生きることは難しい

同じ日に死んだ赤ん坊

生きた赤ん坊と取り換えられて

 

死んだと思った自分の子供が生きていた

何故そんなことに

自分が産んだ赤ん坊

知りたかった一人の母親

 

律義者かつ忠義者と見えて いつか歪んでいった心の持ち主がいて

狂っていることに気づけないまま生きている

 

解説は俳優の田中美里さん

ご自身の経験を振り返りながら 書いておられます

追い込まれること ぎりぎりで生き続けるのは辛い しんどい

心がぎりぎり状態だと視野もせまくなるし どんどん生きにくくなっていきます

責任感が強い真面目な人間ほど 生きにくい世の中なのかもしれません

 

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アンソニー・ホロヴィッツ著「ナイフをひねれば」〈創元推理文庫〉

2025-02-05 14:09:36 | 本と雑誌

 

著者と同じ名前の作家が登場人物で・・・いささか的外れな推理も披露し 物語の語り手でもある

探偵役はホーソーン

まだまだ謎多き人物でもあるが 今回ホロヴィッツはホーソーンに救われる

 

ホロヴィッツの書いたものが上演された舞台

酷評した劇評家のハリエットが刺殺されて カーラ・グランショー警部は ホロヴィッツが容疑者とする

 

メキシコ湾より広大な悪意の持ち主であったハリエット

彼女によって傷つけられた人間は多い

生き直そうとしていた青年の過去を知っていたハリエット

悪意によって人生を破壊されることもある

でっちあげでも 事実をゆがめ変えても・・・・・書いた人間はそれで金儲け

事実とは全く違う「大嘘」を書かれた人間は・・・・・その荒唐無稽な大嘘すら背負って生きていかなくてはいけない

人生は続いていくのに

呪いをかけられたようなものだ

 

 

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知念実希人著「機械仕掛けの太陽」 〈文春文庫〉

2025-02-02 09:53:25 | 本と雑誌

 

 

女手一つで育ててくれた母と幼い息子と暮らす医師の椎名梓

一緒に暮らす恋人の定岡彰と近々結婚するつもりでいた看護師の硲瑠璃子

地域医療に関わり地元の人々からの信頼も厚い長峰邦昭

70代の長峰は同じく医師の息子から引退を考えてはーと 言われもしていた

ごく平凡な生活を送っていた彼らは それぞれの立場でコロナ禍〈中国武漢発 世界中に迷惑をかけ 死をばらまいた病気〉と向き合い 奮戦する

その死闘は患者の命を救う為のみならず 世評とも闘うこととなる

 

小説という形はとっているが 医師でもある著者が・・・

その医師という立場で眺めた「世間」も描かれている

 

医療に携わる方々は患者から感染し 命を落とされた方々も

この病気が出現しなければ 消えなくて喪われなくてよかった命

 

必要なマスクの医療機器の不足

感染を予防しなくてはいけないのに

完全に防ぐことができない

 

夏の暑い盛りにも 宇宙服のような姿で治療しなくてはいけない

従弟の一人が内科医で 往診にも出向いていた

どれほど多忙でも 持病ある私のことを気遣ってくれる優しく明るく冗談も得意な人間だ

その従弟は自分の大変さを自分からは言わない

従弟の父である叔父から その奮闘ぶり生活の大変さを聞くばかりだ

 

コロナと呼ばれるこの病気は まだ死滅したわけではない

罹患する人も多い

他の親戚にも「入院していた」という声は まだ聞く

 

医療に関わる方々が貶められてはならないーと思う

 

物語に話を戻そう

梓は家族と離れて暮らすことを選択

家庭に病気を持ち込んで 持病ある母やまだ幼い息子が感染することを防ぐためにも

自身が感染し死ぬこともありうる

それでも医師として 目の前の患者を見捨て逃亡することはできない

使命感持ち看護師としての職に向きあっていた瑠璃子も厳しい生活の中で心がすり減っていき 遂には自身も感染

結婚を考えていた恋人との生活も壊れてしまう

瑠璃子の心を救ったのは 母であり父の言葉

そして母の手料理

病気の後遺症で 失われていた味覚

彼女は医療の現場に立つ「心」を取り戻すことができた

そして以前の自分と同じように心がぼろぼろになっている同僚に気づく

 

クラスターを出した病院を責めるマスコミ

我慢できずに瑠璃子の放つ言葉は 実際の現場の医師たちも言いたい言葉なのではないだろうか

 

はっきりした治療方法が見つからず 混乱する現場

ワクチンに見出される希望

そのワクチンを否定するデマを流す一派

そのデマに躍らされネットで暴れる「自分こそ正しい」と思い込む人間

そのデマを信じ込みさらに拡散する「自分は賢い」と「思いあがる」人間もいる

 

外出から帰宅したら手を洗う

うがいする

なんてのは昭和の子供なら 家庭でも学校でも教わった「常識」であったはずなのだが

風邪を引いたら 人に移さない為にもマスクをする

 

自分を守り他人にも迷惑をかけないように生きる

 

他人に迷惑かけても それを考えず「自分の自由のみ」主張するのは ただの我儘だと思う

自己中心的でみっともないと

 

あなたにはあなたの権利があるかもしれないが その権利は他の人の「権利」を侵害してはいまいか

 

 

作中には様々な人が登場する

どう思って 読むかは 読む人一人一人により異なるし 感想もまた異なるだろう

 

ただ「あの時代」は 確かにこうであった

そういうこともあったね

そう振り返り 読むこともできる小説です

 

 

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誉田哲也著「アクトレス」 〈光文社文庫〉

2025-01-31 20:02:34 | 本と雑誌

 

 

ある事件で知り合った娘たち

事件は解決し それぞれの道を歩み生きている

けれどまた再び重なり合い旧交を温める時が来た

 

警察官になっていた奈緒は 母が病気となり 両親の暮しを見兼ねて退職

その後 無事に母が回復

就職口を捜そうする時 旧知の琴音に教えられ

これも旧知の芭留と同じ探偵事務所で働くことに

 

そして彼女たちの友人が行方不明になっていると・・・相談に来たミッキーは事故に遭う

希莉・・・・・彼女は自分が書いた小説と同じなことが起きて それを不気味に思い調べていた

 

希莉の小説を利用した女優が殺される

何故 誰が彼女を殺したのか

 

人はきらきら輝く部分だけでできているのではない

毒もある

 

犯人はその毒にあてられたのか

その毒は犯人の心の中に蓄積されていたのか

 

 

 

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天野節子著「他言せず」〈幻冬舎文庫〉

2025-01-30 13:27:31 | 本と雑誌

 

 

十代で地方から他家で女中として働く為に出てきた娘・よし江

彼女は素直な性質〈たち〉で 年上の人間の言う事も従順に聞き 真面目に働き 数年後 仲立つ人あり 縁あって嫁いだ

働くお屋敷内のことは たとえ仕事を辞めても よそで話してはいけない

この縛めも堅く長年守り続け・・・・・

倉元家 この家の主人は建設業の社長

亡くなった妻ののこした子供が二人

後妻となったのは元伯爵の家柄の絶世の美女

家の主人の妹夫婦が暮らしている

 

昭和30年代の倉元家の様子と 時代は異なる篠田よし江の暮しぶりが描かれていく

織り込まれる不穏な要素

二人の消えた御用聞きの青年

倉元家の住人の謎の行動

よし江が嫁ぎ 倉元の家を離れてから事件は起きた

倉元家の当主が死んだのだ

事故か殺人か

消えた御用聞きの青年二人

この行方についても倉元家を疑っていた警官は ある人物に対する容疑を深める

それからー

 

時代は昭和から令和に移り 遂に発見された死体と自転車

〈昭和の頃 御用聞きは自転車に乗り 顧客の家をまわり 配達もしていた〉

 

高齢者施設で暮らす友人を訪ねたよし江は ある人物の姿に記憶を呼び覚まされる

ある夜 よし江が聞いた物音

それに対する話した相手の説明の言葉

半世紀ばかし・・・・・ずうっとずうっと昔の話

起きていた恐ろしいこと

 

御用聞きの青年 二人 その身に何が起きたのか作中では詳しく説明されない

読み手が行間から想像するばかりだ

ーこうでは 無かっただろうかと

 

 

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山田風太郎著「八犬伝」上下 〈角川文庫〉

2025-01-29 06:54:20 | 本と雑誌

 

 

 

 

 

 

 

「虚」では曲亭馬琴が作る「南総里見八犬伝」が そして「実」ではこれを書く馬琴について描かれる

「南総里見八犬伝」はたいそう長い物語だ

その一部に私が初めて触れたのは 世界少年少女文学全集の中の日本編だっただろうか

「南総里見八犬伝」の中でも面白い部分が抜粋されていた

それからNHKの人形劇

「我こそはたまずさが怨霊~~~~~~」

「さ~~~もしい浪人 左母二郎」

などというセリフが思い出される

 

里見家に祟る「たまずさ」が起こす怪異

人々の奇縁

犬 八房と伏姫

そしてそれぞれ珠を持つ八人の男たち

彼らが繰り広げる闘いと冒険と

儚く落命する佳人

悪女

化け物

 

長い長い物語には多くの人々が登場する

この物語の執筆途中で曲亭馬琴は遂に全盲となり この後の筆記は嫁が手掛ける

ところが 嫁は漢字の読み書きができない人間

目が見えない馬琴は まず一字一字 これを教えることから始めなくてはいけない

人に物を教えるのは 目が見えていても難しい

教える側も教えられ覚える側もなんという難事に挑戦し それを完遂できたのか

嫁のお路が これは実に粘り強く諦めない人間でもあったのだなと ただただ感嘆する

そして数百の登場人物が現れるこの物語をメモもなく全て頭に入っていたのかと 馬琴の頭脳にも感心するのみ

 

読み物として面白くなければ 本は売れない

実の部分で 馬琴が北斎に物語の展開を語り

北斎が姿を見せない折には 渡辺華山に また嫁のお路にも語る

実の部分では実在人物の名前も出てくる

そこで馬琴や取り巻く人間についても綴られる

 

 

山田風太郎さんの著作は 母が結構持っていて 結構「大人な」描写部分もあるので 母は私が中学を卒業するまでは 読んではだめだーと言っていた

まあ本きちがいの私に「読むな」というのは 逆に「読んじゃえ」とけしかけるようなものだ〈爆〉

活字中毒は そこに本があれば ただ読む とにかく読む

それが幾つもの書棚に本がある

天国じゃあないか

何処にもいかず 勉強もせず ただ読みふける

そして後年 母が所持していない本も買い集め読むようになる

まあ 私はとにかく読む子供だった

山田風太郎さんは 伝奇小説も得意としており 剣豪 忍者 

映画化もされた「魔界転生」も大いに有名

数多くの作品が出版されている

 

八犬士

犬塚信乃 孝の珠を持つ

犬川荘助 義の珠を持つ

犬山道節 忠の珠を持つ

犬飼現八 信の珠を持つ

犬田小文吾 悌の珠を持つ

犬村大角 礼の珠を持つ

犬坂毛野 智の珠を持つ

犬江親兵衛 仁の珠を持つ

解説は中島河太郎さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漫画で読むのも楽しいかも

 

「南総里見八犬伝」については さすがWikipedia ↓とても詳しいです

南総里見八犬伝 - Wikipedia

 

映画化もされた「八犬伝」

2024年作品の情報も↓

八犬伝 (山田風太郎) - Wikipedia

 

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堂場瞬一著「聖刻  警視庁総合支援課0」 〈講談社文庫〉

2025-01-27 16:44:56 | 本と雑誌

 

 

柿谷晶〈かきや あきら〉 相手が上司でも自分の思ったことは言う強さを持つ捜査一課の女性刑事

若い女性を殺した犯人が自首してくる

彼は有名な司会者の長男で自身も芸能活動していたことがある

動機となると話さない 黙秘を貫く彼

真面目で妹思いでもあり 将来の夢もある青年である彼が 何故二年前に別れた相手に会いに行って 殺してしまったのか

モデルをしている妹の由依の見せる翳りも柿谷は気になりながら

 

それからネットでの炎上

父親が有名人

容疑者も芸能人だったことがある

母親もかつてはテレビに出ていた

父親に「説明責任」があるだろう

番組降板くらいで納得してやるものか

つまりは加害者家族なんだ 悪いんだ 叩くこちら側に正義はある

何をしてもいいんだ

ーなんてね論調です

説明されても その内容が理解できない

「ますます疑惑は深まった」「納得できません」

なんて言葉を現実生活でも よく耳にします

相手の「説明」や「言葉」を理解できない

逆に馬鹿あじゃないかと思う方々も多い

週刊誌などの記事を根拠にネチネチしつこく流す人も

よっぽど暇なのか 私生活が不幸すぎるのか

この作中でも こういうやりとりがあります

{「実は、ネットでかなり炎上しておりまして・・・・・ツィッターとかひどいものです。罵詈雑言の嵐といいますか。

あまりにもひどいので、ご家族には、見ないように忠告しています」

 

「そんなにひどいんですか?」

「弘大くんが芸能活動をしていたせいもあると思うんですが、あることいないこと書かれています。前尾さんも俎上に載せられています」

「前尾さんは、好感度が低いわけじゃないと思いますが」

「芸能人とかスポーツ選手・・・・・自分たちの手が届かない人が少しでもヘマをしたら叩こうと、手ぐすね引いて待っている人は多いんですよ。

それまでどんなに好感度が高かろうが、関係ありません。

ストレス解消なんでしょうが、まさに正義中毒ですね」

 

正義中毒・・・・・最近出てきた概念だ。

少しでも悪いーその「悪い」は受け取る側の勝手な感覚だーことをした相手を貶すことで自分の正義を確信し、他人に対して優位に立とうとする。

必ずしもネット社会に特有のものではないだろうが、情報が伝播しやすくなったせいもあって、やたらと「正義」をふりかざす人が増えてきたのは間違いない。

不倫がばれた芸能人を叩いたり、失言した政治家を稀代の大悪党のように非難したり・・・・・それで「いいね」が増えると、気分が上がるのだろうか。

晶には理解できない感覚だった。}

 

{井端も同じ記事を読んでいたようで、スマートフォンの画面を見せながら「これ、ひどくないか?」と言ってきた。

「前から不思議なんだけど、どうしてスポーツ紙って、こういう感じで芸能ニュースを扱うのかな」

「普段はテレビ番組や映画の宣伝で芸能人のヨイショ記事しか書かないのに、誰かがスキャンダルを起こすといきなり掌を返すんだよな」井端が話を合わせた。

「それを事務所が抑えられるかどうか・・・・・馬鹿みたいじゃない?

もちろん犯罪だったら報道する意味があるけど、今回の件、前尾さんには関係ないじゃない」

「それを喜んで読んで、ネットで無責任な噂を拡散する人がいるから、面倒なことになるわけか」

「馬鹿じゃない?」晶は鼻を鳴らした。「SNSで『いいね』をもらいたいだけなんだから。承認欲求を満たすために、適当な情報でも嘘でも発言してもいいと思っている」

「スポーツ紙やテレビのワイドショーなんかの報道姿勢にも問題があるんだよ。

SNSの内容を紹介するなんて、ニュースになっていないだろう」}

 

前尾の娘であることを隠してモデルをしていた由依は自殺する

この死に責任を感じ 自殺の理由を調べる柿谷

なんとなれば彼女も兄が誤って人を死なせてしまい その後 父親も亡くなり 家族はばらばらになった

なんとか警察官にはなれた柿谷

しかし周囲には自分が加害者家族であることはふせている

だけど自分が加害者家族でもあるだけに もっとできることがあったのではないかと

 

そして由依にストーカーがいたことがわかる

同じ大学の男

この男は自身もかつてネットで炎上した経験がある

芸能人一家である由依に狙いを定め近づき 家族の情報を得て弱みを握ろうとした

ゆがんだ思い

昏い望みの為に 男が使ったのは覚せい剤

前尾一家は逆に犠牲者だった

陥れられ 傷ついた家族

 

被害者家族だけでなく加害者家族にも支援 なにがしかのサポート必要なのだ

マニュアルなんてないけれど

そこを柿谷は期待されている

 

 

著者である堂場氏のあとがきの言葉があります

そこには私が堂場氏の著作を読むきかけとなった刑事・鳴沢了の名前が出てきました

坂口憲二さん主演でドラマ化もされております

シリーズ物で初めて女性を主役に持ってきた著者

柿谷晶 この女性刑事を「令和の一匹狼」として かつての鳴沢了を思い起こしたのだと

刑事・鳴沢了シリーズのファンだった私は いつかなんらかの形で刑事・鳴沢了メインの物語が書かれることを待っています

 

そして柿谷晶のシリーズは始まったばかり

いつか彼女が 刑事・鳴沢了と同じ物語に登場することもあるのでしょうか

 

 

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ごめんなさい